TS転生先でSenkaされてもしぶとく生きる 作:テレホマン
「おどりゃクソ森! 死に晒せ!」
「ファッ!?」
──パン、パン、パン
草木も眠る丑三つ時。
灯りの無い寂れた繁華街に、運動会開催の号砲が響き渡る。
イカれた出走者を紹介するぜ! 参加者、オレ、総勢1名! ゴールはあの世!
蜂に刺された様な鋭い痛みと衝撃を感じ、地面に倒れ込む。
鋭い痛みがジクジクとした鈍痛に変化し、ゆっくりと全身に広がっていく。
こんなの嘘でしょ……何故なんですか……。
最早、状況は
「ギギギ……」
「くやしいのう、くやしいのう」
オレの呻き声を聞き、男が嬉しそうに煽りを返してくる。
少しぼやけた視界で男の顔を凝視するが、どうにも見覚えはない。
オレの名字は雨森ではない(森も入らない)ので、通り魔だろうか?
この治安の良い日本で、通り魔に遭うってどんな確率だよ。いい加減にしろ!
何とか周囲を見渡すが、人の気配も灯りがついた様子もない。
そりゃそうだ。発砲音とか下手に関われば自分の命も危ないからね、仕方ないね。
それはそうとして、せめて通報くらいしてくれよな~、頼むよ~(懇願)。
そんな事を考えていると、既に何分か経っていたのだろうか。
しめた! オレは少しでも生存確率を上げようと、スマホを取り出そうとした。
が………駄目っ………!
血が流れ過ぎたのか判らないが、手に力が入らない。
おまけに、少し前まで感じていた全身の鈍痛も無く、
なんて事だ、もう助からないゾ。
視界が暗転するのを感じながら、オレはPCのHDDを爆破してくれと、最期の神頼みをした。
オレは、一般的な普通の日本人男性だった。
正月は神社に参拝し、お盆は寺に墓参りをし、クリスマスはケーキを食って性夜を過ごす。
そんな、宗教観ガバガバガバリンチョな普通の日本人だ。
オレの両親は、高校中退の元ヤンDQNだ。在学中に妊娠が発覚して仕方なく結婚した。
子はかすがいというが、両親の人生設計を狂わせたオレは、二人にとって呪いの装備だった。
高校中退者の稼ぎが多い筈もなく、家は貧乏で両親の喧嘩は絶えなかった。
うむ、清々しいまでに典型的な日本の低所得家庭だな。
良い子の諸君! 「ヤればデキる」 我々に避妊の大切さを教えてくれているな!
オレは頭は良くなかったが、幸いにも生き残る為の感覚(?)は、人一倍あったらしい。
そのお陰か、早い段階から親ガチャは外れを引いたと理解できていた。
体が大きくなる迄の間、とにかく息を潜めて両親のヘイトを稼がないように努めた。
子は親の鏡というが、中学入学後は親を見習って色々と
15の夜に盗んだバイクで走り出すのは、一般的な日本人なら誰もが通る道だよなぁ!?
そんな経緯もあってか、近所の底辺高校に進学した先輩のそのまた先輩の伝手を使い、
中学卒業時に何とか住み込みの仕事を斡旋して貰った。
家を出てからは色々きつかった。日中は肉体労働、夕方は寮の切り盛りをやらされた。
毎日が死に物狂いだったが、あの家に戻りたくない一心で日々を乗り切る事が出来た。
今では、何処に嫁に出されても恥ずかしくないレベルの生活力だと自負している。
20歳を過ぎた頃には金融業務に異動となった。主な業務内容は、借金の督促や取立てだ。
他人様から金を借り、契約通りに返済しない不届き者を、風呂や海に沈める清く正しいお仕事だ。
初めて一人で担当した案件では、見事に夜逃げ高飛びコンボをかまされ先輩に半殺しにされた。
オレにこの仕事を振った上役も、同じ経験があるらしい。「俺もやったんだからさ」は悪い文明。
そのお陰か、注意深く人を観察する事を覚えた。もう許せるぞオイ!
こんなありふれた日本人男性としての前世を、二度目の人生で突然思い出したのだった。