TS転生先でSenkaされてもしぶとく生きる 作:テレホマン
太すぎる前世の記憶が、頭の中に入っちゃっ……たぁ!
前世の記憶と繋がったまま、こんな村の中央広場にいるなんて頭がフットーしそうだよおっっ。
オレは12歳を迎えた秋の収穫が終わった頃に、前世の記憶を思い出した。
今生の12歳よりも長く、性別も、文明も、世界の在り方も、何もかも違う記憶が流れ込んだのだ。
今生の記憶と前世の記憶が頭の中でぐるぐるして、もう気が狂う程気持ち悪いんじゃ。
自我や記憶の境界線がゲシュタルト崩壊を起こしそうなので、今生の記憶を整理したいと思う。
オレが二度目の生を受けたのは、前世とは異なる世界だ。
(神の)奇跡も、魔法も、あるんだよ。皆大好き、剣と魔法のファンタジー世界です。やったぜ。
ところが、オレはド田舎で農民の娘として生まれた。冒険できないじゃないすか! やだーーー!
オレが生を受けたド田舎の村は、グランリーフ王国とパーシアン公国の国境近くにある。
両国の国境の北端は山がちになっており、村はパーシアン公国側の山間部に存在している。
特筆すべき名産品もなく、連絡路は獣道よりマシ程度な道、最寄りの村に行くのにも山越えが
必要で、街まで行きたければ数日掛かりという、隠れていない隠れ家みたいな立ち位置だ。
そのお陰か、グランリーフ王国とパーシアン公国が
この村は全く関係なく日常を送れていた。
今生では、線が細く幸薄そうな両親と3歳年上の兄の4人家族だ。
オレは女として生まれ、村の神父様に「エヴァンジェリン」という名前を授けて貰った。
貴族令嬢みたいな名前だが、神父様の単なる趣味(?)だ。
隣の1歳年上の幼馴染の男の子も、「ケンドリック」という格好良い名前を授けて貰っている。
神父様に名付け親になって頂くのは、この国が太陽の女神を信仰している一神教だからだ。
生まれた時に信仰を捧げ、神の子としてご加護をお願いするのだ。
前世だと、洗礼を生まれた時に受ける様なものか? 知らんけど。
この世界では神様が存在する。
正確には、神の奇跡である神聖魔法が存在するので、宗教というものが非常に身近にある。
身近というより、生活というか無意識の中に自然にある。
多神教で宗教色の薄い日本人だと想像し辛いだろうが、日常のちょっとした行動全てに神への感謝とか祈りが含まれている感じだろうか。
例えば、前世では食事の前後に当たり前の様に「いただきます」「ごちそうさま」と言うが、
こちらの世界では神への感謝を捧げてから食事をする。
良い事があれば神へ感謝するし、悪い事も試練として乗り越えられる様に祈ったりする。
時間に余裕があれば、ウィンドウショッピングをする様な気楽な感じで教会に行ったりする。
そうするのが当たり前な感覚だ。
そんな感じなので、
良い子の皆は、相手の神様や宗教を否定したりするのは……やめようね! この世界だと死ゾ。
前世でも、中東とかでイス○ム教を侮辱したら簡単に殺されそうでしょ? あんな感じ。
前世の記憶を思い出してからは、そういった原理主義の信仰とか、カルト宗教の洗脳みたいで
少し引いてるのは内緒だ。勿論、態度には全く出さない。
パワハラ・モラハラ・体罰当たり前の、ゴリッゴリの体育会系会社に所属していた人間の面の皮は伊達ではないのだ。
話が逸れてしまった。前世では、報連相や引継ぎの漏れがあると半殺しの憂き目にあったからね、お兄さん許し亭ゆるして。
あぁ……クセになってんだ、情報共有するの。
オレの髪の色は、両親から受け継いだ淡い栗色だ。ありふれた色で、ザ・雑種って感じだ。
母がオレの髪の毛を手入れするのが好きで、腰近くまで伸びているが切らしてくれない。重い。
顔は、かなり整っている。
印象の薄い顔立ちの両親から、福笑いみたいに相性の良いパーツを選んで、組み合わせた感じだ。
目はパッチリとして大きく垂れ目気味なので、美人というより可愛い系だろう。
ただ、パーツ元の両親が両親なので、地味なのだ。
前世風に説明すると、派手に化粧した子やハーフみたいに目立つ子が隣に居ると、そちらの方に
視線が誘導されて印象が薄くなる感じだ。
そんな隠れがちな可愛さから、「俺だけが可愛いのを知っている」と、自分でも手の届きそうな女子として、人知れず多くのクラスの男子にオカズにされるタイプだ。
でも、こういう子は進級・進学したり、長期休暇後に急に垢ぬけて可愛くなるタイプなんやで。
見ているだけだと、何時の間にか高嶺の花どころか、羽化した蝶の様に手の届かない所へ飛び去ってしまうんや。
皆もそういう経験あるだろ?(1敗)
そんなオレは、兄や幼馴染のケンと何時も一緒にいた。
喧嘩する事もあったが、何だかんだで二人はオレに甘かった。
今生のオレは可愛いからね、仕方ないね。
前世のオレだったら、この美醜不平等の理不尽さに、間違いなく「世の中クソだな」と言っているだろう。
月日が経ち、育ち始めると可愛いさが際立ってきたのか、村の年上の男の子達からちょっかいを出される事が増えた。
その度に、一緒にいる兄やケンと取っ組み合いの喧嘩に発展していた。
その時のオレは普通の女の子だから、何時も一緒にいる気の合う男の子が守ってくれるのは、
とても安心できるし普通に嬉しかった。ドキがムネムネって奴だ。
勿論、仕方なくという感じではなく、少し心が暖かくなる感覚と共にだ。色を知る歳か。
そうしてオレは、12歳の秋を迎えたのだ。