TS転生先でSenkaされてもしぶとく生きる   作:テレホマン

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第5話 PTSD(トラウマ)

 ばっども~にんぐ。

目を開くと、薄暗い空間の中で、ぼんやりと陰気臭い石か岩(?)の見知らぬ天井が見えた。

意識があるという事は、生きているという事だが、目覚めの気分と状況は最悪だ。

 

 魔物、それも人型の魔物の多くは、洞窟や地下・廃墟等に巣を作る事が多い。

当然、天井は土や石・岩で構成されている事が多いだろう。

つまり、オレは間抜けにも力尽きた所を、人型の魔物に巣に持ち帰られたという訳だ。

 

 あそこまでやった努力が、全て水の泡になった事が、嫌でも理解できた。

努力は必ずしも報われる訳ではない。前世で嫌という程知っている。仕方ないんだ。

そう考えていても、体の何処に水分が残っていたのか、ジワリと視界の両端が滲む。

 

「あははは、はは……。ひっ、ふぐっ、うぐぅ、うううぅぅぅ~~」

 

 歯を食いしばって耐えようにも、どうしても隙間から嗚咽が漏れる。

泣くまい。泣くな、男だろ! ……体は女だからセーフか?

 

 大の大人が情けないとは言わないでくれ。これから、死んだ方がマシな目にあうんだ。

そんな感じでえぐえぐと泣いていると、ガチャリとドアが開くような音と、何かが近づいてくる足音が聞こえた。

 

 泣き声も、息も殺して足音のする方を見る。

ドアから入る光が逆光となり、入ってきた奴はシルエット位しか分からない。

そいつは近くに来て、オレが目を開けている事に気付くと、人間の言葉を喋った。

 

「良かった、お目覚めになられたんですね。少々お待ちくださいね」

 

 女の声でそう言うと、そいつは少し歩いてから何かをガタガタと鳴らし始めた。

あれは……雨戸? 窓を開けようとしているのか?

 

 ガタン! 勢いよく窓が開く音と共に、眩いばかりの光が飛び込んでくる。

その眩しさに目を細めながら、のろのろと上半身を起こして、相手を観察する。

 

 頭は白い布で顎や肩付近まで完全に覆われ、髪の毛は全く見えない。

その白い布の上に、両脇から背中まである、ゆったりとした紺色のベールを被っている。

この装いは、シスターが頭に被るアレだ。白い布は、ウィンプルってやつ。

 

 顔は、妙齢の女性だ。おっとりとした柔和な印象を受ける。

服装は、足首近くまである、飾り気のない紺色の服だ。まんま修道服やん。

そんなボディラインの目立たない、ゆったりとした服の上からでも判る、暴力的な質量の胸!

 

 こいつの種族、絶対サキュバスだろ(疑心暗鬼)。

若くて優しいエロボディシスターとか、そんなファンタジーな存在、現実にいるわけねーだろ。

ここは剣と魔法のファンタジー世界だって? まぁ、そうねぇ……。

 

 そんな事より、サキュバスの巣に持ち帰られたオレは、どうなるんだ?

体をサキュバスに作り替えられて、メスガキサキュバスとして生まれ変わるのか?

それとも、感度3000倍で退魔忍されてしまうのだろうか。

 

 どちらにしても、孕み袋兼保存食よりかは、マシな残りの人生を過ごせそうだ。

……悪い、やっぱ辛えわ。

 

「あら、御髪(おぐし)の色が……。今、神父様と騎士様をお呼びしますね」

 

 そう言って、コスプレサキュバスはドアから出て行った。

髪の毛の色が何だって言うんだ? 当たり前のように、()()()()()()じゃないか。

 

 この状況、オレは助かったのか? 洞窟だと思った天井は、石造りの教会の天井だったのか?

やっぱりここは魔物の巣で、神父様(ゴブリンシャーマン)と騎士様(オーク)をお呼びしますね、とかいうオチじゃねーだろうな!

 

 生きてる(上げて)、魔物の巣(落として)、教会で助かった(上げて)ときて、ここからまた落とされたら、オレの脳が破壊されてしまう!

 

 そんな事を考えていると、ドカドカと複数人の大きな足音が近付いてきた。

入ってきたのは、小太りの神父と、チェインメイル(鎖帷子)を装備した男と、さっきのサキュバスだ。

入り口で足を止めた3人と、オレの視線が絡み合う。

 

「黒目に黒髪だと!? 無神論者か魔女じゃないか!」

 

 武装した男がそう言い放ち、オレに向かってドカドカと詰め寄ってきた。

近付いた男が、オレに向かって手を伸ばそうとした所で、景色が急に切り替わった。

 

 

 

 ならず者に抑え込まれた()は、そのまま中央広場の地面に押し倒された。

そして上着を破かれ、スカートをずり下され、武骨な手が()の肌を這い回る。

 

「いやっ、やめて! お兄ちゃん、ケン、たすけて!」

「お前、何やってんだ! リンに触るな! やめろよ!」

「おい坊主ぅ。ナイトを気取るには、ちぃとばかし役者不足だったなぁ?」

 

 そんな声が聞こえたと思ったら、隣にボトリと丸い何かが落ちて転がった。

転がるのが止まった何かと目が合う。

 

「愛しのナイト様には、特等席でお前が女になる所を見て貰おうぜ?」

 

 それは、()の、大事な、幼馴染、だったもの。

 

 

 

「い、いやああああああっっっっ!」

 

 ()()に、耳をつんざくような悲鳴が響き渡った。

えっ、何!? 今の光景と感情、そして悲鳴がオレとリンクしていない。

 

 いや、違う。感情は共有されている。

オレの意思とは関係なく、その感情に体が()()()()()()()()()のだ。

まるで、もう一人の()がいるかのように。

 

 突然の悲鳴に驚いたのか、オレを掴もうとした男の手が、空中で止まる。

その隙を突いて、体が勝手に動きだした。い、いかん……体が勝手に風呂場の中に……?

 

 ベッドから降りようとしたのか、上半身を捻って足をベッドの(ふち)から降ろそうとしたが、

下半身の動きがついていかず、上半身だけがベットの縁に向かって勢いよく動いてしまった。

 

 村での行為の影響が残っており、下半身の感覚がまだ十分に戻っていないせいだ。

その結果、男の反対側にベッドから転がり落ちる事になった。イタァイ!

オレが地面に落ちた音で、固まっていた男がベッドを迂回して近付いてくるのが見える。

 

 また、気持ち悪い事をされる。また、痛い思いをする。また、自分が自分でなくなる。

逃げなければ。誰でも良いから助けて! 何で、こんなことに? もう、いやだ……。

 

 そんな絶望と諦観を煮詰めた様な感情が、何処からかオレに流れ込んでくる。

その感情に反応する様に、体はずるずると壁際へ這って行った。

 

 これ以上進めないと判ると、背中を壁に押し付けて足を引き寄せ、体育座りの様に縮こまる。

そんなオレを見て男が動きを止めかけるが、それでも至近距離まで近付いてくる。

また、さっきのように、勝手に景色が切り替わる。

 

 

 

 ()は、生まれて初めて男に体を許していた。

ケンでも、村の男の人達でもない、突然現れた名前も知らない男にだ。

 

 隣では、そんな()を虚ろな瞳のケンがじっと見つめている。

肉を引き裂かれる痛み、内臓を無理やり動かされる気持ち悪さが、()を殴りつける。

 

「うぐっ、気持ち悪い。痛い、痛いよ。お母さん、お母さん……」

「お母さん、じゃねえんだよ! 今からお前がママになるんだよオラッ!」

「お前のママも、向こうでお楽しみ中だぜ? 一緒に弟か妹も出来るから安心しな」

「妊娠確実ッッ! 豊穣の女神のご加護があったな?」

 

 げらげらげらと、周囲から野卑な笑い声が沸く。

目の前の男が動きを止め、肚の中に熱い何かが流し込まれる。

()の中で、何かが砕け散るのを感じながら、私は意識を手放した。

 

 

 

 ……ハッ!? まただよ(笑)。

「初体験.mp3」を執拗に見せつけてくるのは、誘ってんのか? 誘い受けか?

 

 もう分かったと思うが、これは「エヴァンジェリン」の心と記憶の残滓だ。

彼女の受けた強烈な体験が、この体に染みついているのだ。

 

 そんな風に冷静に分析をしているが、体の方はとんでもない事になっていた。

顔は涙と鼻水でぐちょぐちょ。多分、楳図かずおの叫び顔みたいになってると思う。

体が、制御できない位にガタガタと震えている。うん、怖いからね。仕方ないよね。

 

 下半身が、股間と尻の辺りがじんわりと温かく湿っていて、水溜まりが出来ている。

そうです、粗相しちゃってます。失禁です。お漏らしです。

ちょっと???

 

 どうすんだよこれ! 男の方も、心なしかドン引きしてるじゃん!

男の後ろでは、小太り神父とサキュバスがオロオロしている。

子供が大変な事になっているのに、誰も動かないので微妙な雰囲気になっている。

 

 おいィ? オレはこのままタイムアップでもいいんだが?

そんな、奇妙な緊張感が漂う空間に、張りのある大声が響き渡った。

 

 

「貴様ら! 子供相手に何をやっているか!」

 

 

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