TS転生先でSenkaされてもしぶとく生きる   作:テレホマン

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第6話 事情聴取

 ばっどあふたぬ~ん。

生殺与奪の権を他人に握られたまま、修羅場に突入しそうなエヴァンジェリンです。

 

 この世界には、基本的人権とかジュネーブ条約みたいな甘えた概念は存在しない。

つまり、勝者側の胸三寸で人の命が増えたり減ったりするのだ。

今のオレは、大声の主が良心的で博愛精神溢れる人物である事を願う事しかできない。

 

 こういう時、どんな顔すればいいのか分からないの。

笑えば良いと思……えません。

こんな状況だと、マジキチスマイルになりそうだ。

 

 さてここでクエスチョン。

「子供相手に何をやっているか」の後に続く、良い感じの言葉は何でしょうか。

 

1.代われ! この私がわからせてやる!

  →やっぱり魔物の巣じゃないすかヤダー! 孕み袋ルート

2.さっさと奴隷商に売り払わんか!

  →どうやら王国に拉致されたっぽい? 女奴隷ルート

3.さっさと殺そうぜ! 日が明けちまうよ!

  →お前何で助けたんだよ! お気の毒ですが、冒険の書は消えてしまいました(デロデロデロ

4.その時不思議な事が起こった!

  →何が始まるんです? 第三次大戦だ! 他の選択肢に劣らない、えげつない事になりそう。

 

 尚、神頼みをしても神様はお助けくださらない。

そも、今に至るまでのオレの状況も完全スルーされていたしね。

こいつぁ絶対に「このまま眺めているのもいいか」を選択した事がある糞野郎だぜ。

 

 まぁ、神様から見れば人間なんて、自分の家の庭に勝手に巣を作った蟻程度の認識だろう。

勝手に増え・争い・崇めてくる、どうでも良い存在なのだ。

 

 そんな無数にいる存在の、しかも個体に対して一々反応なんてしないわな。

そもそもオレだって、蟻の個体を識別する事なんて出来ないし、する気もない。

 

 皆も子供の頃に、戯れに蟻に砂糖をあげたり、巣穴に水を流し込んだりした事あるでしょ?

多分その砂糖にあたるのが、長年の修行の末に習得できる神聖魔法なんだろう。

 

 そうすると、水はなんだ? 天変地異系統か?

流石に、人間の意識を誘導して略奪とか戦争を起こさせてはいないと信じたい。

アナタハ、カミヲ、シンジマスカ? オレは前世の同人誌即売会で見たことある。

 

 そんな事を考えていると、声の主がドアから足音を響かせて入ってきた。

頭の兜から足先に至るまでの全身が鎧に覆われた、黄金の鉄の塊だ。

フルプレートっていえば、より判り易いかな?

 

「お疲れ様です、隊長!」

 

 オレの目の前にいた鎖帷子(チェインメイル)野郎が、キレのある動作で振り返り敬礼をする。

うーん、隊長呼びにこの装備って、こりゃあお貴族様かな……?

あぁ~嫌だなぁ。お貴族様相手だと、色々と厳しい。

 

 この世界は、封建時代らしく貴族と平民で明確な身分差がある。

貴族の平民に対する罪はほぼ治外法権であり、同じ貴族でしか裁けない。

反対に、平民の貴族に対する罪は大罪であり、その場でキリステゴーメンされてしまう。

 

 つまり平民は貴族に対する防御策は無いに等しく、泣き寝入りが基本だ。

貴族の放蕩息子とかが、村娘や町娘・平民の侍女等をつまみ食いして、飽きたり妊娠したらポイとか普通にある。

 

 それに腹を立てた平民の両親が直談判しても、手切れ金としてはした金を貰えればマシで、

でっちあげだと難癖をつけられ、貴族の名誉を傷つけたとして無礼討ちにされたなんて話もある。

 

 オレもな~。貴族の息子に転生して、純朴な村娘を(たぶら)かしたかった。

それが誑かされる側に生まれた所か、大勢に好き放題(なぶ)られ済みとか救いようが無さすぎる。

オイ、この転生不良品だぞ! 責任者出てこい! クーリングオフさせろ!

 

 そんな世界なので、基本的に貴族は平民を見下しているし、平民は貴族を敵視……とはいかないにしても、良い感情は持っていない。

なので、私生児が元でお家騒動とか起こると、皆ざまぁとか思ってたりする。

もしかしたら、そういうのを請け負う闇組織とかあるのかもしれんね。

 

 その隊長は、近くまで来てオレをチラ見した後、振り返り様に鎖帷子野郎を殴り飛ばした。

鎖帷子野郎は、ドラゴン○ールみたいに水平に、空いた扉から室外に吹っ飛んでいった。

室外は講堂にでも繋がっているのか、大量の長椅子や机が巻き込まれて、無理やり動かされる大音が聞こえてくる。

 

 ヒェッ……。装備含めて重量100kg以上の人間を、地面と水平に殴り飛ばすって……。

わぁ、これがお貴族様の身体強化魔法ですかー。こんなに差があるとは思わなかったぁ。

 

 そりゃぁ特権階級になるよなぁ。歩く暴力の権化だもんよ。

つうか、吹っ飛んでいった鎖帷子野郎は生きてんのか?

いや流石に、衝動的に部下を殴り殺す様なキチガイではないと信じたい。

 

「我が部下が大変な失礼をした。奴に代わり私が詫びよう。お許し頂けるかな、小さなレディ?」

 

 驚いた事に、貴族であろう隊長が平民のオレに謝罪の言葉を口にした。

それも、騎士の臣従儀礼の様に(ひざまず)き、オレと視線の高さを合わせてだ。

 

 ちょっと、やめて! オレのお漏らしに膝とかマントが浸かってますよ!

錆びたらどうするんですか! もしかして修理代請求されて、一生下働きですかァーッ!?

 

「しゃ、謝罪なんて。と、とんでもないことで御座います……」

 

 モジモジしながら、相手に最大限の敬意を払った返答をする。

ここで態々相手の機嫌を損ねる反応をする必要はない。

もし機嫌を損ねたら、あのゴリラみたいな超パワーで壁のシミにされかねないしな!

 

 ここで、ふと違和感を覚える。

このお貴族様と至近距離で視線を合わせているのに、何も起きないなと。

この体のトラウマの体現である、初体験カットインが起こらないのだ。

 

「謝罪の受け容れ、感謝する。今、そなたに顔を見せよう」

 

 オレの疑問に答えるかの様に、お貴族様が兜を外す。

すると、まつ毛の長い端正な顔立ちと、長いブロンドの髪がバサリと姿を現した。

 

「我が名はイエナ=ダンフォース。ウィルソード伯、ヴァルター=ダンフォースが長女である」

 

 

 

 あの後、淫魔(サキュバス)に身綺麗にして貰い、今は別室で机を挟んで顔を突き合わせている。

オレの向かい側にイエナと淫魔、少し離れた別の机に鎖帷子野郎と小太り神父がいる。

 

 鎖帷子、生きとったんかワレ!

男二人が離れているのは、近くに居られると体が震えて話にならないからだ。

 

 しかしこれ、なんか刑事ドラマの取調室みたいだな。

取調室といえば、かつ丼! 一度は刑事の奢りで食ってみたいよな。

でもあのかつ丼って、実際に頼んだら自腹になるってマジ?

 

「して、エヴァンジェリン。そなたの黒目黒髪は、生まれつきなのか?」

「いえ、目を覚ましたらこうなっていました。あたしは元々、碧眼と淡い栗色の髪です」

「眠られていたので瞳の色は分かりませんが、髪の色は確かに彼女の仰る通りです」

 

 淫魔、ナイス援護。オレは今、魔女裁判の一歩手前にいるのだ。

しかし、黒目はオレも分からんな。前世では確かに黒髪だったが、瞳の色はブラウンだ。

 

 知ってた? 日本人でも殆どはブラウン系の目で、黒目って凄くレアなんだぜ?

しかも黒目っていっても濃い焦げ茶色で、光に当たると完全な黒じゃないのが分かるらしい。

 

 でも、今のオレの瞳の色は光を当てても完全な真っ黒らしい。

そのせいか瞳孔と瞳の色の差が無く、虚ろで焦点の合わない目(所謂(いわゆる)レイプ目)に見えるらしい……。

 

 う~ん、誰得だよ……。表情と声の抑揚も消して、無感情娘でも演じるか?

辛い過去の経験で感情を失った少女が、色々と面倒を見るうちに自分にだけ感情を向けてくれるようになるのって、皆ドストライクやろ?

まぁでも、こいつらには普通に感情あるってバレてるから、()るなら別の所でだな。

 

「しかし、そなたの髪の色は別のようだな。光の具合によって、様々な色に見えるな……」

「緑や蒼に紫、場合によっては虹や白銀にも見えますね。初めて見た時は、見惚れました」

 

 ふふん、淫魔分かっとるやんけ! 黒髪界のヴィダルサスーンとは我の事ぞ。

……まぁ、ヴィダルサスーンってただのスタイリストのおっさんの名前だけど。

今までずっと、化粧品か何かのブランド名だと思ってたゾ。

だって、そうとしか思えないCMだったし。

 

 あ、今のオレの髪色は「(からす)の濡れ羽色」って奴だな。

カラスの羽の様に、艶のある黒色の髪って意味よ。

 

 そんな事を考えていると、比較的若い成人男性が入ってきた。

その男性に、鎖帷子野郎が話しかける。

 

「貴様は彼女を知っている筈だな? 彼女の瞳と髪の色を答えろ」

「えっ、あれっ、エヴァンジェリンちゃん? 無事だったのかい! でも、その瞳と髪は一体?」

「おい、聞こえなかったのか? まずは私の質問に答えろ」

「アッハイ。彼女は碧眼に淡い栗色の髪でした。話好きの、人懐っこい子ですよ」

「そうか。もういいぞ、出ていけ」

 

 質問だけ答えさせられて、さっさと追い出されるなんて可哀想に。

今の人は、徴税官だ。オレも会う度に、村の外のお話をせがんでいた記憶がある。

 

 しかしこの鎖帷子野郎、しれっと面通ししやがったな。

今のオレに隠す物なんて何一つないが、気分悪いぜ。

 

「ふ~む。話を纏めると、ここに運び込まれた時は元のままで、その日の夜~明け方迄の時間で

 黒目黒髪に変わったのか。俄かには信じ難いな」

「ですが! 主の御名(みな)に誓って、昨日の夜までは元の色でした」

「ならば何故、その間に神の加護を失った? 寝ている間に何があった?」

 

 オレにも分からん! 略奪強姦位で黒目黒髪になるなら、この世界は黒目黒髪だらけだ。

それはそうと、オレはここが何処かすら分からん。

多分ウィルソードだとは思うが、村からウィルソードって徒歩で1週間位掛かる筈だぞ。

 

「あの……、命をお助け頂き有難う御座いました。不躾で恐縮ですが、ここは何処ですか?」

「薄々勘付いていると思うが、ここはウィルソードにある教会だ。そなたは王国による襲撃の

 唯一の生存者でな。情報提供をして貰うつもりだったが、そなた自身も面倒な事になったな」

「唯一の生存者って……。中央広場に、あたしと同様に気を失った村の女性達が居たはずです」

「そなたは雑貨屋の2階の居室で見つかったと聞いているぞ? 他に生存者の報告はないな」

 

 う~ん、そうだとすると、オレは略奪者共の誰かに助けて貰ったのか。

だが、他の女性……母なんかは魔物に食われたか、最悪孕み袋になってる可能性があるな。

魔物の弟とか冗談きついぜ。こいつら生みの親でも平気で犯すからな。

 

 

「ふむ……。疑問は尽きぬが、話をした限りそなた個人に危険性は無い様だな。

 次は、喫緊の問題である王国軍について、辛いだろうが見た事を話して貰おうか」

 

 後ろの鎖帷子野郎が、「なりません!」とか騒いでるのは無視で良いんですかね……。

 

 




 私事により、投稿が遅れました。
大体週1話位のペースで投稿できたらと考えています。
間が空いた場合は、週2話投稿したりして、平均で週1話になるように調整できたらなと考えています。
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