ドミトレスク撃破
脇腹を刺されようが、正史で指や腕を落とそうが、ピンピンしてるイーサン。
高所から落下した際は、ドミトレスクが下敷になり衝撃が和らいだ事で助かったが、流石に文句は言いたかった。
「お前……! 俺を殺す気か!?」
フラスコを手にし、塔から這い出たイーサンは合流してきた只野准尉と少女に物申す。
対して少女……TOWAは嘘泣きで対応。
「私は ただイーサンの為を思って!」
「それ犯罪者の常套句じゃね?」
ツッコミを入れる只野。
血も涙もない癖して生意気な人形である。
「……この女の子は部下なのか?」
「遺憾にも。 上層部に押し付けられた人形だ」
「人形?」
「オートマタ、人間じゃなく機械なんだ」
「なんだって?」
怒りが消えて驚くイーサン。
理解の及ばない存在は化物のみならず、機械にも及ぶかと。 人類の業は深い。
「そうそう、私は機械なんだよ!」
「信じ難いが……人間そっくりだ」
「TOWAだよ! 宜しく!」
「あ、ああ……宜しく」
状況が上手く飲み込めず、理解が追い付く前に相手のペースに乗せられていく。
気が付けば挨拶と握手を交わしていた。
その感触も機械とは感じさせないものだから、余計な疑いも生まれ混乱しかけてしまう。
「EDFだからな……」
イーサンは呟き、無理矢理納得して頷いた。
只野が塔から落下しても生き延びている件含め、過去の記憶も参考にしつつ。
二足歩行ロボットなコンバットフレームとか、歩く要塞なプロメテウスとか、強いけど見た目が変なのを量産、保有、運用しているEDFのことだ。
ドローンだけでなく、アンドロイドがいても良いのだろう。 そう思う事にする。
……そんなイーサンだったが、普通なら死ぬ目に遭おうと体が切り裂かれようと平然と生きている自身の体を変だと思わなかったのか。
エヴリンにもツッコミ入れられていたが。
何かフィルターでも掛かっていたのか。 村人がミランダに支配されていた様に。
「信用するなよ」
只野の言葉に現実へサルページ。
「コイツだからな、ミサイル撃ったの」
「教育の方は どうなってる」
「マリスって糞AIが教育したんだ、察しろ」
「詳しく無いが"悪意"か、納得したよ」
あまり話し込んでも仕方ない。
イーサン達は切り上げ、道らしき道を往く。
取り敢えずは娘のローズを取り返したら、こうした危険少女に育たない様にとは思った。
「ローズは何処にいるんだ……」
「歩いてれば道は拓けるよ!」
「他人事だなオイ」
「他人事だからね!」
「……只野。 苦労するだろうが責任持てよ」
「上層部に言ってくれ」
しょうもない会話をしつつ瓦礫を潜り、雪道を歩いていると、待ち受けていたは馬車に乗るデュークだった。
「お待ちしておりましたよウィンターズ様。 ここにいれば会えると思っていました。 娘さんは見つかりましたかな?」
「いや、完全に無駄骨だった」
「そうですか。 ですが何か手に入れたのでは?」
「ああ、何かは分からないが……」
手に入れた長方形の箱……フラスコを見せると、デュークは言葉を続けた。
「おや、その中に娘さんがいらっしゃるではありませんか」
「何を言っている?」
「よくご覧なさい」
「…………ッ!?」
言われるがまま、フラスコの汚れを払いながら見れば浮かぶ文字。
そこには『ローズマリー・W』『頭部』とある。
イーサンは息を荒くし、理解し、次にはフラスコを落としてしまった。
娘がバラバラにされ、封入されている。
受け入れ難い事実で混乱と絶望に支配されたイーサンは、言葉通りなら体の部位が封入されているソレに悲しみより恐怖、悍ましさが勝ってしまったのだ。
発狂するなという方が酷である。
「どうやら娘さんの頭部が入っている様ですね」
「そんな、嘘だ、こんな事あり得ない!!」
「娘さんは……」
「ちょっと黙っててくれ!!!」
狼狽え、膝をついてしまう。
その様子を只野は苦虫を潰した様に、人形は愉快そうに眺めるばかり。
「なんで……誰がこんな事を!!」
「助ける方法ならあります」
「助ける? どうやって!」
「村の西にある、赤い煙突の家にいる男を訪ねなさい。 話の続きは その後で」
「なんだよ、勿体ぶるなよ……!」
「信じなくても結構。 ですが娘さんの為です。 全ては お客様次第。 そうでしょう?」
「……騙したらタダじゃおかないからな!」
「ぐわっはっはっ!」
「畜生めが……!」
デュークはどう思ってか高笑いし、イーサンは絶望と怒りのままに吐き捨てる。
会話が終わるや、只野も駆け寄った。
「……ローズを助ける、そうだろ?」
「なぁ只野。 こうなるのを分かっていたか?」
「いや。 まさかこうなるとは」
「そうかよ」
適当に誤魔化す只野。 軽く睨むイーサン。
対して人形は人間同士のやり取りを笑う。
「残虐だねぇ、これは徹底的に潰そう!」
「そうだな、だが今は黙ってくれ……!」
「糞人形、少しは配慮ってのを分かれ」
感情を煽り楽しむ人形。
苦言を言おうと笑顔でスルーする。
取りつくだけ無駄なので、此方も無視だ。
「……装備を整えたら出発しようか」
「分かってる。 死んでられないんだよ」
「あっはっは! 面白いジョークだね!」
「笑ってろ糞人形が」
「いい加減にしないと口を縫い合わすぞ」
多少人形に構ってしまいつつ、敵か味方か分からないデュークの商いに付き合う只野とイーサン。
城で盗ん……手に入れた貴重品等を売却し、その金で弾薬や傷薬を購入していく。
その際、結晶化したドミトレスクを売却。
安い女な虫娘達より高い女であった。
「ドミトレスク夫人、死してなお美しい。 このくびれが……ふむ」
「分かる。 生前は胸と尻も中々で……」
「きゃー! ケダモノー! へんたーい!」
「タダノ、状況分かって言ってるのか?」
馬鹿騒ぎをする奴らに呆れつつ、イーサンはPA-11を更に改造して貰った。
発射速度や精度を上げつつ、マガジン挿入部を広げて貰いリロードし易くする。
ストックは折り畳みではなく、伸縮式に。
サイドアームの拳銃の先端にはコンペンセイターを取り付け、跳ね上がりを抑制。
マガジン挿入部も大きく広がり、入れ易くした事でリロード時間の短縮へ。
加えてトリガープルを軽くし、速射性を上げた。
スライドストッパは延長され、リリースボタンは小さく切り落とし、操作性の向上と誤作動防止に役立てる。
マガジンも多弾倉にし、継戦力を高めた。
新たな武器として、KFF51LSが入荷していたから購入、背中に背負った。
レーザーサイト装備。 性能は50より上。
「タダノ、準備出来たか?」
「少し待ってくれ」
一方、只野は丸腰なので新たに銃を購入。
スラッガーNN2とグレランUM1を背負う。
例により2つとも旧式で、下手すると骨董品と言われそうな代物である。
が、EDF製の銃火器。 威力は馬鹿に出来ない。
「もっと良いの用意できなかったのか」
文句は言う只野。
スラッガーライフルの初期性能は悪いので。
スラッガーは見た目AKぽいライフルでありPA-11以上の性能を目指して多額の予算を投じて開発されたが、期待を裏切る結果となり計画は凍結。 試作品のNN1のみが残された。
その後、開発が再開され製造されたのがNN2である。 NN1よりマシなのだが、安定した性能を出し始めた後継やオーキッド等と比較すれば粗末な性能で、至近距離の威力だけ多少良くて、後の射程や精度は犠牲となっている。
UM1も初期型の6連グレランだ。
精度は後継と比較して悪い。
あと売られていたものに光学照準器が無い。
予測して撃て という お粗末さ。
EDF6同様に兵士の勘が頼りである。
J型と異なり接触信管の弾頭を使用するので、至近距離であれ起爆する、誤爆に気を付けるばかりである。
イーサンがゲームで使用出来た単発グレランも似た事を言えるかも知れないが、アチラはほら、まだアイアンサイト的なのがあったから(震声
バックパックには初期型手榴弾MG11。
これも時限信管のJ型と異なり、接触式。
「贅沢は敵だよ!」
「用意して売り払った張本人が何を言うか」
「仕方ないから銃剣あげる!」
「なんで銃剣で許されると思った」
とはいえ買える物がコレしかなかった。
素手よりマシだと銃剣も取り付ける事に。
「待たせたな、行こう」
「ああ……」
そうして只野とイーサンらは再び村を歩く。
殲滅した筈の敵が再び、何処からともなく現れては跋扈していた。
「またかよ」「新種もいるぞ!」
「やったね只野! 殺戮出来るよ!」
再度銃声が村に響いた。
最早動いているのはライカンと只野達のみ。
狼の度合いが増加した化物やら、城にもいた空飛ぶ舌長亡者に銃撃を浴びせて退けていく。
村の状況は良くなるどころか悪化している様にも感じられるが、只野が早々に乗り込んで暴れていた結果、助かった村人は少なくない。
只野達は自然と、避難所となっていた大きな家、ルイザの家へと足が向いていたのだった。
道中、廃墟と化した民家にお邪魔して使えそうな物品を物色しつつ、せめぎ寄るライカンの群れを蜂の巣にする只野とイーサン。
ガラクタに混じり、中には良い物もあった。
「散弾銃じゃん」
テーブルの上に置かれていたショットガン。
ポンプアクション式、スローターE20。
それを手にした人形はチャンバー、ローディングゲートをパカパカと確認して言う。
「初期型だね。 要らなくなったのを民間向けに売却、村に流れて来たのかもね。 ショットシェル持ってる系?」
「ない。 自分で探せ」
「おk。 内蔵された探知機で探すよ!」
「……やっぱ見た目じゃ分からない娘だな」
引き出しや棚の上等を漁り、ショットシェル入りの箱を物色、装填していく人形。
次には窓から侵入してこようとするライカンに銃口を向けると、至近距離で容赦無く発砲、吹き飛ばした。
振る舞いといい、ここまで来るとロボットか否かは兎も角、只者では無いのは疑いようがないイーサンであった。
「……ここの村人は皆、化物に?」
「いや、避難した筈だ。 畑の横の、大きな家に」
「ルイザって人の家だね!」
外を伺う。
ここら辺の崩壊した民間の数々と比較して大きく立派で、それでいて何故か襲撃されてないのか壊れていない。
話と見た目通りならば、生きている村人がいるのだろう。 今は先を急ぎたいが……。
「EDFは救助に来ないのか?」
「俺達が救助隊だ。 増援は期待出来ない」
「全く、何がEDFだ。 聞いて呆れる」
「上層部に言ってくれ」
只野に直接文句を言う訳じゃないが、ごもっともな意見である。
世界規模の軍隊であるEDFが、村ひとつ相手に慎重になり過ぎだ。 或いは他に忙しいのか怠慢か、碌な用意をしていない。
現状、スカウト部隊と只野班のみが動く。
ガチでヤバくなったら増援が来るかもだが。
ただ、これでも只野なりに頑張ったと思う。
ハイゼンベルクと交渉したし、イーサンが来る前にライカンをある程度倒した事で、助かった村人もいた筈だ。
問題は修正力で避難所にライカン発生、燃え落ちないか否かである。
「まぁ俺も思う所はある。 こうしよう、俺と人形が避難所の様子を見てくる。 イーサンは このまま煙突の家を探りに行ってくれたら良い」
「……助けられる命が目に見えてるってなら、俺も手伝うさ。 煙突の家を調べ終わったら合流する」
「イーサン、格好良い! 惚れちゃいそう!」
「人形は黙ってろ」
そうして再び別れる事に。
この先で見るのは絶望か希望か。
「村人、生きてると良いねぇ!」
「そうだな」
大勢死ぬ光景は気分が悪い。
ループの中で何度も生きていた物体がグチャグチャの肉塊となり蠢く光景は見てきたし、多少慣れているも、願わくば助かって欲しいと願う内は、人である証なのかも知れない。
「ライカンをシバきつつ避難所に接近。 カバー頼むぞ、俺のはポンコツライフルだ」
「りょーかい」
レーダーを参考に雪道を歩む2人。
民家の屋根を飛び跳ねる奴、弓矢を放つ奴、棍棒を振り回す奴に現代兵器を喰らわせる。
「次から次へと、この野郎!」
突撃してきた奴を撃っていたら、ストーブパイプを起こし動作不良のNN2。
命懸けの戦場で起きるという悲惨さ。
チャージングハンドルも固まり動かない。
緊急排莢が出来ない、こうなれば。
「ジャムった、くそがっ!」
只野は銃を逆さまに持つ。
ハンドガードを両手で握り、バットにしてEDF隊員パワーでフルスイング。
ストック部分で相手を殴り飛ばした。
「なんだこの銃、ふざけてるのか!?」
叫びながらも、倒れたライカンに銃剣でトドメを刺していく。
元気に動くライカンにも同様に銃剣で戦う羽目になり、銃身を槍として突いたり、横に切り裂いたりして原始的に戦った。
「チープアーモだからね、仕方ないね!」
「ざけんな糞人形めが!」
デュークより人形が悪いだろうと、只野は文句を叫び散らしながらライカンを刺殺。
人形は散弾銃でテキパキと吹き飛ばす。
そこを起き上がる前に只野が駆け寄り、同様に刺してトドメ、息の根を止める。
「暴発して吹き飛ばなかった分、感謝して」
「出来るか! そもそもンなモン、仕入れるな!」
戦いながら、ふと思う。
デュークは良くも悪くも安心と信頼の商売をし、料理、銃を改造する器用さと知識を持つ。
謎の人物ではあるが、その辺はちゃんとしていると取れるのだ。
そんなデュークが、安かろう悪かろう以下の粗悪品を売り付けるだろうか。
「まさか、お前が……?」
疑いの眼差しを向ければ、頬を染めて。
「……あたり❤︎」
「よっしゃ死ねッ!」
キレた只野は銃剣を振り回すも、人形は回避。
代わりにライカンが切れた。 ままならない。
「私は生き物じゃない。 殺せないよ」
「壊れやするだろ、なので壊れろ!」
「戦場で人形遊びなんて流石だね!」
そうこう暴れている内にライカンは死滅。
蚊取り線香に寄った蚊の如く、自ら刃と鉄の暴風に入り込み自滅した。
つよい。 刃物は切っている内に刃こぼれしたり、血で汚れたりして切味は落ちそうなものだが。
如何に只野達EDF隊員と装備が異常か、改めて分かる。 トラブル含めて。
「はぁはぁ……これ以上遊んでられない」
「偉い! 遅過ぎる成長期かなぁ?」
「言ってろ……村人の安否を確認する」
「今のが生きてる村人全員分だったりして」
「行きゃ分かる」
そうして、ようやっとルイザの家の前まで。
脇の民家を一応覗くも、誰もいない。
正史では村娘のエレナと、負傷した父レオナルドがいるのだが、自力で避難出来たか、やられたか。
他の民家と違い重厚な鉄の門が鎮座、かんぬきで施錠され、正面から普通に入れない。
が、そんなに高い塀がある訳でもない。
EDF隊員流よじ登り行使、敷地に侵入。
そのまま玄関の扉を叩いて反応を伺う。
「EDFだ、救助に来た!」
「開けろ! 不法侵入者の余所者だーッ!」
「テメェはマジで黙ってろ!?」
余計な発言で拗らせる悪癖でもあるのか。
そんな屑人形を小突いていると、音なくゆっくりと扉が開かれる。
同時に猟銃用であろう垂直二連式散弾銃の銃身が生え始め、騒ぐ只野の頭を小突く。
「静かにしろ! 奴等が寄って来る!」
そう言うは若い男、ユリアン。
見張りの仕事をしていたらしい。
「落ち着いて、銃を下ろしてくれ」
「……EDFとか言ったな? 本当に救助か?」
「そうだって言ってるじゃん。 銃声が聞こえなかったのかな、外の化物をバタバタ倒してるところだよ」
人形が偉そうに言えば、村の様子をビクビク確認するユリアン。
多くのライカンだった肉塊の山を見て、次に血が滴る只野の銃剣を見て、漸く話を聞く気になる。
「あんたらだけか?」
「村外れにも仲間がいる」
「……3年くらい前から余所者がいるらしいとは聞いていたが、アンタらか。 こうなったのはお前達の所為だな!」
「は? 落ち着けよ」
「巫山戯るな! よくも村を滅茶苦茶に!」
なにやら激昂して、また銃口を向ける。
この事態をEDFの所為だと勘違いしたのだ。
安堵の表情も一瞬、敵意丸出しの顔に。
只野は困惑。 崇拝されるミランダの所為だと言おうにも、余計に怒りそうだ。
それを馬鹿だと笑うは毎度の人形様である。
「滑稽だね! 犯人はミラ、ぐへっ」
ネタバレ寸前で、頭に銃床を叩き込む只野。
決定的決裂は避けたい。
「黙ってろと言ったよな?」
「暴力反対!」
インターフェースら辺がどうなってるのか。
こんなだから可愛くても愛想を尽かされたのだ。
そうこう揉めていると、騒ぎを聞きつけ中から家主、年配の女性ルイザが現れて、ユリアンを咎める。
「何の騒ぎ?」
「コイツらが助けに来たと抜かしやがる」
「コイツらですって? 彼は本当に私達を助けようと化物と戦っていたのよ」
ユリアンは困惑するも、匿ってくれる家主側の意見に噛み付く程、恩知らずでもない。
結局了承し、無言で見張りの仕事に戻る。
「さぁ入って。 こっちよ、中へ」
「ありがとうございます」
「お邪魔しまーす」
ユリアンの脇を通り、家屋へ入る2人。
只野は、ここまで正史通りじゃないか緊張しつつ、人形は どんな結果であれ楽しむ気で堂々入る。
「待ってて。 奥の様子を見てくる」
ルイザに玄関前の部屋で待たされる。
その間にも只野はポンコツライフルを見る。
血濡れの銃剣を構えパイプを咥え続けている。
「いい加減直しなよ」
「誰の所為だ、誰の」
只野は溜息を吐きながらマガジンを抜き、銃剣を拭う。 頼れるモノが少ない現状、刃物だろうと有難い。
目に見える、挟まっている空薬莢が外れようと使える保証も無いのだし。
またパイプを起こすか、異常燃焼でチャンバーに張り付くか、暴発の様な、それ以上に悪い状況も考えられる。
撃てる状況にあるのは背負うグレランだろうが、室内で爆発物はリスクがデカい。
手榴弾もだ。 生存者がいない密室なら容赦無く使うだろうが、やはり難しい。
やがてルイザが戻ってきて、只野を迎え入れる。
「こっちへ。 さぁ皆待ってるわ」
奥の部屋に通されると、そこには生存者が大勢集まっている。
それは明らかに正史より多い人数で、その事に安堵を浮かべる只野だったが、気持ちを台無しにする様に酒瓶を持つ酔っ払いが叫び散らした。
「なんだコイツは、余所者が殺しに来たのか」
「黙ってアントン。 助けに来てくれたのよ」
ルイザが窘めるも、ここまで歴史通りを辿ると、この後の展開も同じかと不安しかない。
「誰も助けなんて頼んじゃいない」
「父さん、やめて……」
座るお爺さんが睨み付けて言い、脇の若い娘が軽く注意した。
イーサンが正史で助けた親子、村娘エレナと父レオナルドだ。
記憶と違うのは、彼はマチェットで武装しつつも怪我らしい怪我を負っていない点である。
ならばライカン化を起こさず済むか。
「……どうぞ、座って」
「いえ、直ぐ外の化物退治に向かいます」
ルイザが言うも只野は軽く手を上げ遠慮する。
ルーティンの輪から脱却するつもりなのだ。
その為には、なるべく記憶違いの真似をして、修正力が悪く働かない様にしなければならないと考える。
「今のところ、俺らだけで化物は倒せていますし、じきに仲間も来ます。 皆さんは外の安全が確保されるまで、ここで静かに隠れていて下さい」
只野はイーサンとは違う道を往く者だ。
イーサンのやり方が悪い訳じゃないが、同じ道を辿る事で悲惨な光景になるなら、そのやり方を回避したいと思う。
それと下手な慰めの言葉やらダラダラ話し合えば、余所者に厳しい村人が悪態を吐くので、ここは淡々と任務を熟し、行動するのが建設的かと判断する。
「どうせ明日には全員殺されるに決まってる」
「この酔っ払い煩いなぁ、殴って良い?」
「やめろ、構うんじゃない」
笑顔で突っかかる人形を止める只野。
イラついてるというより、それを口実に言葉責めや暴行をして反応を楽しみたいだけの屑であるが故に。
「ここにいれば安全よ」
「言ってろ」
ルイザがいい、酔っ払いが吐き捨てた。
以降、村人達は薄暗い部屋のままに沈んだ。
只野は見回した後、頷くと家を少し見て回る許可を貰い、ドライバーを借りると、それで小銃が咥えて固まる空薬莢を抉って取り除き、チャージングハンドルの動作を見る。
「……まだ使えると良いが」
マガジンを一応取り替え、状況に備える。
ライカンも何匹いるのか分からない。
大分片付けたつもりだが、何処からか湧いて来るサマは、良くも悪くも ある意味で いつも通りである。
武器装備弾薬は、いくらあっても良いのだ。
が、今はあるもので何とかするしかない。
「まぁまぁ、何処かで良い装備手に入るよ」
村でマトモな散弾銃を手に入れた人形がほざくので、只野はイラっとする。
「誰の所為だ。 なんならその、村で拾った散弾銃を俺に寄越せ」
「嫌だよ。 コレはもう私のだもんね! どうしてもってなら、ショットシェル1個ならあげるよ!」
「銃とセットじゃなきゃ意味ないだろ」
「只野ならデコピンで発射出来るよ」
「出来るかよ」
しょうもない会話にケタケタ笑う人形に、只野は怒りを通り越して呆れつつ、ルイザの家を後にする。
レーダーを確認、扉を左手で軽く押し開けつつ、銃は右手で保持、銃口を前方に向けて警戒しつつ外へと出ていく。
「レーダーだけ見とけば良いじゃん」
「警戒するに越した事はない」
機械へ絶対の信頼を寄せる訳ではない只野。
そうでなくても、今までの機械への信用が落ちたとすれば、人形を見ていた影響である。
出来るなら、コイツと共同作戦を張るどころか銃も持たせたくない、酔っ払いの時といい何をするかも分からないのだし。
やがてレーダーに別方面から民間人反応。
見やればイーサンだった。
赤い煙突の家で鍵を手に入れ、デュークから説明を受けた後の様子だ。
「イーサンか、無事で何よりだ」
「そっちもな……村人も?」
「大丈夫、最悪の事態は避けたと見る」
「そうか……避難の手助けを?」
「いや、それは仲間に任す。 そっちは?」
「俺はローズのビンを回収していく」
「なら化物退治ついで、付き合うよ」
「ありがとう、1人より心強い」
「只野の武器は頼りないけどねー!」
人形が茶々を入れる。
それに只野はイラッとし、イーサンは眉間に軽く皺を寄せたが慣れてきたらしい、スルースキルが磨かれた事で無視する事にした。
「……俺も装備を整えてくる」
「その銃は駄目だったんだな」
「ああ、どこぞの人形の悪癖の所為でな」
只野は村を駆け出し、装備を整え直しに。
道中、また湧いて襲撃して来るライカンにポンコツライフルを振り回して撃退、落とす小銭で軽く稼ぎつつ、デュークのいる元へ。
「まぁ次は装備関係ないかもだけどね」
「どう言う事だ?」
正史通りなら、次は人形使いのドナ。
ビスク人形アンジーと、機械仕掛けの人形が出会う時、果たしてどうなるのか。
「どうとでも。 燃やすなり刺すなりする!」
「よく分からないが、敵なら構わないさ」
一行、ドナの屋敷へ。
分散して沼と同時攻略した方が時短になりそうなものだが、一応、イーサンの行動を見届けるという事で。
「あと私は機械。 幻覚は通じないよ」
機械人形の目を通した真実の景色。
それは只野にもイーサンにも分からない。
更新未定
メモ
村娘:エレナ 避難所の家の女性:ルイザ
父レオナルド
銃持ちの見張り やや若い男:ユリアン
消えたエルネスト 酒飲みアントン
亭主を亡くしたロクサーナ
マザーミランダ
城娘:ベイラ ダニエラ カサンドラ
商人:デューク
貴族ドミトレスク ドナ モロー ハイゼンベルク
人形アンジー
城内 使用人の日記1958年6月9日〜
2017年 ダルヴェイ 有毒ガス事故
近隣に住むジャック・ベイカー(当時57歳)
ヴェレッジ 2021年 2月9日 ヨーロッパ
ローズマリー・ウィンターズ
誕生日:2020年8月2日
視診・触診・聴診 全て問題なし
追加実施:
真菌感染症検査は検査協力機関BSAA
DNAシークエンシング
ダルヴェイの特異菌と99.95%一致
差分は人為的加工 ヴィレッジ側が原種
コネクションは どうやって菌を見つけた?
→調査が必要
TOWA
命令優先をオーバーライド
スーパークラス メソッド サブクラス
管理者権限で再構築
データオーバーフロー 緊急停止