沼地へ。
キモい緑の肉壁の様な、見るのも嫌なグジュグジュをTOWAが散弾銃で崩し道を開けていく中、只野准尉は唐突に言った。
「イーサンは先行。 俺は別ルートで往く」
この先の展開を知るからと、民間人を先行させるという屑行為をする。
「税金泥棒だな、言いふらして良いか?」
「面白い冗談だ。 俺より若くて動ける強い妻子持ちが、都合の良い時だけ民間人のフリは辞めろよな、笑っちまって手ブレが酷くなる」
「はっ、引退したらどうだ?」
「俺もジジイ手前だからな、労ってくれ。 という訳だから頼んだわ」
「アンタも都合の良い時だけ年寄りになるな」
「おお、何処かの婆さんにも聞かせたいわ」
「えっナニ。 ババアって私?」
「テメェじゃないから黙ってろ」
「ムカつく野郎達だ」
「私は野郎じゃないよ!」
「良いから黙って仕事を続けろ」
しょうもない軽口の応酬をしたが、なんだかんだイーサンは言う事を聞いてくれる優しさを見せたのだった。
これは単なる優しさだけではなく、只野は未来を知っているかの様な振る舞い、先回りをしている節がある為だ。
なら、ここは指示に従うのが吉かと納得し、しぶしぶ先へ進んでくれたのだった。
「なんかあったら恨むぞ」
「逆に感謝したくなるさ」
「言ってろ」
その背中を見送る只野。
その姿を人形は褒めていく。
「歴史通りで良いなら、それが正解。 修正力に働いて欲しい時は、言葉や行動を同じにするのは大切だよ。 少しでも歴史通りになる確率が上がると予想されるから。 戦時、プロフェッサーもやっていたんだって」
「当時の事情は知らないが、俺の予想が当たっているなら良かったよ」
只野は一応の満足感を得ながら後を進む。
EDF6にて、リング攻撃の際にプロフェッサーはルーティンなんだと同じ台詞を敢えて繰り返していた。
それは歴史を繰り返させたい部分だったから、少しでも今まで通りにする事で成功率を高めたい意図があったからだ。
その行為が何処まで効果があるか分からないが、参考にする価値はある。
『只野』
それが効を奏したらしい、イーサンは史実通りの展開を見せていく事になった。
無線越し、トーンを落として話し掛けてくる。
『瓶を手に入れた。 すぐ戻「ま、まって、それが無いと皆に馬鹿にされるんだ!」コレは貰っていくぞ』
只野が返答する間もなく一方通信となり切れてしまったが、暫くして周囲の緑のグジュグジュが活発化、気持ち悪く蠢き始める。
「無事、目的のモノは手に入れた様子で」
「正史通りだね」
只野らも行動を開始。
沼地へ繰り出すと、発電を担う大きな風車が2台、立派な水門が鎮座、水に沈むは家屋や船の残骸だ。
「そうだな、ただ」
只野はグレランを肩に担ぎて言う。
「ここからは違うルートだ」
遠くで鯨並の大きな魚類、いや怪物が水面に現れては飛沫と波を無数に生み出していく。
「分かった、申し訳程度に弾着観測するよ!」
「視界良好なんでね、自力でやる」
只野はグレランを構えた。
フォアグリップを握り、ストックをしっかり肩に押し当て安定姿勢を取ると、次には勘を頼りに発砲。
ぽんっ、という小気味良い音と共に放たれた榴弾は、放物線を描いては吸い込まれるように水面に ぼとん と落ち、次には大きな水柱が立ち上がる。
「ア"ァ"ッ!?」
それに押し上げられる様に、怪物も飛び跳ねると、何事かと悲鳴に似た叫びを上げた。
「ちくしょう、なんでぇッ!」
見た目の醜さは、言動によって拍車をかけているとも取れる奴が現れた。
怪人モロー。
カドゥ適合率が低かったのか、醜悪な見た目になり知能は低下、幼稚な言動が目立つ。
人間の時は聡明だったのだろうが、今となっては見る影もない。
「大物が釣れたね!」
「初弾から幸先が良い」
只野は続けて発砲。
水場という奴のテリトリーの外からのアウトレンジ攻撃を繰り返し、一方的に奴にダメージを与えていくのだった。
只野と別行動をして直ぐ、モローのいる部屋の前に到達したイーサン。 窓から手を伸ばすと、ローズの瓶をアッサリ手に入れた。
間抜けにも奪われた事で焦ったモローは時間稼ぎをし、沼地から出る出入口を塞ぎ込み、イーサンを始末しようと動く。
「待てコソ泥め、逃すもんかぁ……!」
「早くここから出ないと……」
取り敢えず最低限の目的は達成したイーサンは、無理に戦わず逃げる選択肢を取ったが、その道中、沼地に浮かぶ様にある家屋内にてクリスに出会うのだった。
「クリス!?」
「イーサン、こんな所で会うとは。 残念だ」
「どうして本当の事を教えてくれなかった!」
「待て、その言い方だと既に……ッ、離れろ!」
「クリス、ぐわっ!?」
魚みたいな怪物が突進、家屋が木っ端微塵に。
会話強制終了。 水中に放り出されたイーサンは直ぐに近くに浮かぶ足場に這い上がったが、モローもまた、苦しそうにしながらも追い詰める様に来るのだった。
「やめろ、近付くんじゃない……!」
「もう、遅い……ミランダ母さんは、儀式の準備を進めている……!」
「お前は時間稼ぎか、哀れだな」
「ミランダ母さんと一緒になるのはオレなんだ、お前じゃない……!」
「何の話だ?」
よく分からない会話に疑問符を浮かべていると、モローは苦しみ、緑の気持ち悪いナニかを大量に吐瀉し始めた。
「もう駄目、我慢出来ない……!」
「お前、何か変だぞ!?」
「ああ、どうして! どうしてぇ!」
モローは足をよろけ、そのまま水に落ちたと思った次の瞬間、巨大な魚の様な怪物が現れ、水中を自在に泳ぎ回り始める。
「マジかよ!」
怪物の正体はモローだった。
バイオ名物の、質量無視な巨大化である。
「あんなの、どうしろってんだ」
イーサンは水面に浮かぶ瓦礫や家屋の屋根を伝い逃げ惑う。
時々、水面から飛び出すモローを狙撃してみるも、あまり効果が見られない。
「出口は水中だって? 抜かないとな」
水門へと移動するイーサン。
それを妨害する様に泳ぎ回るモロー。
正史の様に水面アスレチックをしながら移動するイーサンだったが、不意に爆音と水柱が上がったと思えば、モローが打ち上がり水面に叩きつけられていた。
「ちくしょう、なんでぇ!」
「なんだ!?」
イーサンも思わず叫んだが、無線が入り納得。
『援護する。 水門で合流だ』
『誤射して吹き飛ばしたら御免ねぇ!』
短く通信が入り、即切れた。
「本当、ムカつく野郎だ」
その癖、少し口角が上がるイーサンであった。
只野の援護を受け、無事に水門を操作する部屋まで到達したイーサン。
水門越しに沼地の方を見やれば、モローが泳ぎ回っている様子が見てとれる。
「水を抜いてしまえば……!」
只野の到着を待たず、水門レバーを操作するも、電力不足で動かない。
「くそっ、電気が足りないのか」
周囲のメモ書きを見たり、何故か別室にいたデュークと売り買いしつつ対策を練っていると、只野が部屋に入ってきた。
「イーサン、無事辿り着けて何よりだ」
「お互いにな。 問題は これからだが」
イーサンは視線で訴え、只野は残弾ナシのUM1、そのシリンダーのフタを解放、大きな空薬莢をカランカランと転がしながら応える。
「水門を開けて水を抜き、化物を始末ないし脱出って考えているな?」
「ご名答。 ただ水門を動かす為の電気が足りない。 風車を動かして発電しないと」
「そんな面倒、しなくて良いよ」
人形が笑顔で提案してきた。
手にはCA90爆弾。
最強クラスの設置式爆弾だ。
それにツッコミを入れるは只野である。
「なんで持ってるんだよ!?」
「こんな事もあろうかと!」
「だったらポンコツライフルを用意するな」
「あー、なんだ。 それで水門を?」
「そう! 爆破しちゃうよ!」
「また乱暴な」
「良いじゃん、どうせ村は おしまいだよ!」
容赦無い人形。
ドン引きするイーサンだが、風車を巡って苦労するより、それが1番楽で早い気がする。
「わかった、頼むよ」
そうして水門に爆弾を設置し始めた人形と只野。
大きく重厚な水門は、ちょっとやそっとの火器では破壊出来ない見た目をしているが、EDF製の爆弾、それもCA90とあれば簡単に吹き飛ばせる。
「設置完了、爆破ッ!」
人形がリモコンを押した刹那。
ドゴォンッ!!
グレランとは破壊力と規模が違う爆音と爆発が発生、重厚な水門が丸ごと吹き飛び、大量の水がドバァと流れていった。
「ひょほー! 創造物の破壊は楽しいね!」
「賛同しかねる」
只野はツッコミしつつ、沼地を見やる。
水があっという間に抜け、沈んだ数々の家屋と怪人モローの醜い姿が露わに。
「ちくしょう、よくもオレの水を!」
「今だイーサン。 奴を始末する」
「それはアンタの仕事だろ」
「まぁまぁ。 慌てる時間じゃない、そこの部屋で仕事道具を整えて行けば?」
「のんびりする時間は無いが」
ただ、お気楽人形の言う事も一理ある。
今も この先も装備が無いと目的達成どころか自分の命すら危うい。
と言う訳で人によっては楽しい買い物へ。
「新しい商品が入荷しました」
デュークのいる部屋に戻ると、それぞれが装備を整え始めた。
「全ては投資の一環です」
イーサンはKFF51LSに更新。
スローターE20LS購入、フォアグリップを取り付けて貰い、廃莢/装填をやり易くする。
他、小型手榴弾のT5マウス、只なインパルスY8を買って攻撃手段を増やした。
「それを選ばれると思っていました」
只野は自動散弾銃SGM-8、UMRA、MR98ファングを用意、手榴弾はMG12に更新して、かなり火力を高めた。
「お目が高い」
TOWAは自身への皮肉なのか、M4レイヴンを装備、支援用なのかMLRAを背負う。
バックパックにはテルミット弾を忍ばせた。
「成る程、それを選ばれますか」
会話も続かず、黙々と装備を整える面々。
暫く細かい金属音が響き、次には落ち着いた。
「今後とも御贔屓に」
只野達は互いに顔を合わせると、沼地へと再び繰り出していく。
遠くでは水陸両用なのか、のっしのっしと干上がった沼地を逃げ惑うモローがいる。
「イーサン先行。 俺は高台から援護する」
「同じく! イーサンは餌役ね!」
「またかよ!」
民間人をデコイにするEDF隊員に顰めつつも、なんだかんだ信じてモローの元へ走っていくイーサンであった。
「くそ、臭うな……だが、それも終わりだ」
モローの背中に追いつくと、KFF51LSを構えて撃ち始める。
キモい背中に着弾、汚い飛沫が上がるも頑丈なのか、怯む事なく振り返るモロー。
「今度こそやるよぉ! 見ててよ、ママァ!」
不快な声を上げ、突進してくる。
イーサンはインパルスを撒いて時間を稼ぎつつ家屋に入り、危なげなく避ける。
「只野!」
『急かすな、配置についた所だ』
『同じく!』
只野と人形はそれぞれ風車によじ登り、高台を確保、戦場を見渡した。
『よぉく見える』
只野はデカい狙撃銃、ファングを構える。
「オレが1番だァ!」
『急いでくれ!』
急かされても慌てず息を吐く。
十字線を合わせ、トリガーを引く。 刹那。
ドゴォンッ!
デカい反動、轟音と共に放たれた高威力の弾丸は一瞬で目標に到達、モローの体に当たると、弾丸は食い破り貫通。
「ウ"オ"オ"オ"ッ!!?」
悲鳴を上げ、その巨体を横たえる怪物。
KFFには無い、凄まじい威力は弱点の人間部分を狙わずとも良い程であった。
『畳みかけろ!』
只野が無線越しに叫び、弾かれる様にイーサンはモローに向き直る。
E20LSを構え、口内にある露出した人間部分を撃ちまくっていく。
それでも起き上がろうとしたところにマウスを投擲、牽制しつつ距離を取る。
「お前と遊んでる暇は無いってのに!」
悪態を吐いていると、モローも吐き返す。
空への吐瀉、汚い酸性雨攻撃を。
「これは とっておきだぞぉ!」
イーサンは本能的にヤバいと、家屋の屋根下に避難、只野らは範囲攻撃圏外なのか問題なかったが、イーサンの周囲は強い酸性の雨が降って煙が上がる程の事態に。
「浴びたらヤバいな」
臭いだけでなく、どこまでも醜く、汚い攻撃のモローにはそろそろ退場願おう。
それが皆の意見であり、そして、人形もようやっと攻撃を始めていった。
『やっとロックオン圏内だよ』
人形は箱型のミサイルランチャーMLRAを構え、ロックオン完了と同時にミサイルを全弾発射した。
MLRAは旧式の小型ミサイルランチャーで、1発の威力は低いが、そこは人形がカバー。
内蔵するアシスト機能、ミサイルの多重ロックオン機能、レーダーアシストにより、ロックオン距離を稼ぎつつ、全ての弾を1つの目標にして火力を集中させた。
ミサイル群は吸い込まれる様にモローに命中、倒せずとも怯ませる事に成功。
「あちゃー、やっぱ威力不足かぁ」
『いや十分だ!』
イーサンは感謝、リロードが間に合わない散弾銃を背負い、代わりに小銃PA-11を構えてフルオート射撃。
これが最後のひと押しとなり、モローは体が限界を迎えたのか、大きく膨張し始める。
「ちくしょう! 助けてママ! ママァァ!」
刹那、ボカンと破裂。
汚物が辺りにばら撒かれ、やっと静かになる。
「最期まで汚ない野郎だ」
イーサンは吐き捨てた。
「次はハイゼンベルク。 ここまで音沙汰ないが、本当に味方なのか?」
そして続く不安。
ここまで順調であるが故もあった。
更新未定
メモ
グルメリポート
魚の香草焼き 平皿
鳥獣のスタミナ盛り 深皿
三位一体のミティティ 平皿
稀鳥のトキトゥーラ 平皿
稀獣のチョルバ・デ・ブイ 皿
稀魚のサルマーレ 平皿
前回武装
イーサン:KFF50LS PA-11改 拳銃〜
只野准尉:M1レイヴン UM1 MG11〜
TOWA:スローターE20 MG11〜
今回武装/更新
イーサン
KFF51LS:各種性能が向上
PA-11改&拳銃:パーツガチャガチャ状態
スローターE20LS:改良型 拡散性を抑えた
T5マウス:小型ハンドグレネード
インパルスY8:対地用指向性地雷 只
只野准尉
SGM-8:自動散弾銃 弾倉大型化で手間がある
UMRA:連射性能に優れたグレラン
MR98ファング:単発の大口径狙撃銃
MG12:11の強化型
TOWA
(CA90爆弾):最強の破壊力を持つ高性能爆弾
M4レイヴン:安定性を欠き失敗作の声も
MLRA:連射性能のある小型ミサイル発射
テルミット弾:手投げ式焼夷弾