モロー撃破
「噂通りだな、イーサン・ウィンターズ」
部屋にあった砂嵐のTVから声が聞こえる。
どうやってるのか知らないが、イーサンは警戒心を露わにして尋ねる。
「誰だ?」
「おいおい、俺の事を聞いてないのかよ」
一方的に呆れた声を出された。
正史ではイーサンを捉え、数々の罠に嵌めた磁力男であるが、この世界線では人形が身代わりとなり面識すら無い。
「あの機械娘、仕事が杜撰だな」
「じゃあ、お前がハイゼンベルクか」
「御名答、それすら知らなかったら、あの人形を改造して軍団に加えていたところだぜ」
「協力してくれるってのは本当なんだな?」
「ああ、二言はねぇ」
「その割には音沙汰無かったな」
「まぁ落ち着けよ。 俺だけ働くってはフェアじゃねえだろ? それに俺が早々に動いてミランダにバレても困るだろ?」
「なんだ、今度こそ助けてくれるってのか」
「ああ、村の外れにある砦に来い。 待ってるぜ」
一方的に告げられると切れてしまった。
イーサンは舌打ちしつつ、戻る事にする。
「ムカつく野郎が多い村だ」
言うても仕方なし。
只野准尉と合流し、あった事を説明。
「───ハイゼンベルクって奴が砦に来いと」
「砦? あそこはライカンの巣だった筈だ」
「磁力男の事だよ、何か用意したんじゃない」
皆で語らいながら村まで戻る。
またもライカンが点々としているので、それを只野は無表情に散弾をばら撒いて撃ち殺していく。
TOWAも真似る様に多砲身ライフルから銃弾を吐き出して弾幕を張り蹴散らすも、彼女より只野のは機械作業だ。 極めていくと人間に見えなくなりそうで怖い。
「本当に信用出来るのか?」
「余計な欲を掻かなきゃな」
「最悪、殺せばヨシ。 ミニオンバスターで」
会話しながら、今度は手榴弾投擲。
前方に群れるライカンを吹き飛ばす。
TOWAはテルミットで燃やした。
「……冷静に話しながら戦えるのも凄いな」
「この程度なら、もう慣れた」
「イドニアよりマシじゃない?」
「現代兵器を使われたのでツライさん」
「じゃあラクーンだね」
「数の暴力は共通して駄目だな。 もうヤダ」
流れで軽く昔話をする只野。
ラクーンの言葉には、イーサンも反応。
「待て、ラクーン? ラクーン事件か?」
「そうだ。 あの時、あの場所に俺は居た」
「マジかよ」
同情というか、何とも言えないイーサン。
アメリカ中西部ラクーンシティ。
Tウィルスが蔓延、ゾンビだらけとなった地獄の街。 汚染地域拡大を危惧し、滅菌作戦決行。 ミサイルが撃ち込まれて何もかも吹き飛び、地図から名前を消した。
その惨劇から何十年と経ち、それでも未だラクーンの真実が全て公開されてないとしても、知る限りだけで悲惨な運命を辿った事に違いない。
「聞き齧った程度だが……生き延びたんだな」
「何度も死んでルートを覚えた」
「なんだって?」
「いや、こっちの話だ。 気にするな」
ここで事情を話しても混乱するだけだ。
口が滑ったが、今に集中する。
「あの戦場を生き延びても、今日死んだら笑えないがな。 皆も油断するなよ」
レーダーを頼りにし、先へ往く。
村外れ、村人が先史者と呼ぶ者達により造られたらしい遺跡だかの、石作りの大きな建造物の敷地へ侵入していけば、ライカンと機械の激しい唸り声が児玉する。
「なんだ? なんで砦から機械音が?」
これには只野も困惑した。
記憶には、ここまで喧しい音は知らない。
近いものでゾルダートシリーズがあるが、ハイゼンベルクが何かしたのだと当たりをつけた。
その答え合わせの様に、部外者から無線が入る。
これまたどうしてか知らないが、疑問に思わす前に向こうが一方的に語り始めた。
「よぉお前ら、待ってたぜ」
ここまで空気だったハイゼンベルクも、満を喫して登場とばかりにテンアゲしていく。
「くれた鉄屑でな、あれこれ試した結果、鋼の軍団は最強となった。 まぁ見学していけよ、少なくとも悪くねぇ出来だぜ?」
返答する間もなく通信終了。
聞こえるは獣の咆哮と対峙する機械音のみ。
「ハイゼンの奴、何をしたんだ?」
記憶外の事をされると不安になる只野。
臨機応変に動くにせよ、あまり予想外の事態は勘弁して欲しいと思う。
「あれれー? 変だねぇ、情報だと、砦はライカンばかりだって話なのに」
「俺が聞きたい……とにかく進むぞ」
「本当に大丈夫なのか?」
罠なんじゃないか、と疑う只野達。
銃口を構え警戒しつつ先へ進むと、広場に出た。
「これは……!?」
そこで見た光景。 それは。
「ライカンとゾルダートが戦ってる!?」
獣なライカンと機械化死体兵なゾルダートが殺し合っている光景が広がっていた。
いや、正確にはゾルダートが一方的にライカンを殺戮している。 それ自体はまぁ、想像の範疇だ。 ハイゼンベルクの記録によれば、実戦用に改造されたゾルダートは、ライカンを数分足らずで倒したというから。
問題は見た目だ。 記憶と違うのだ。
EDFの二刀装甲兵、フェンサーが纏う鎧である強化外骨格、パワードスケルトン装備。
手にはガトリングやキャノン、肩にはパワーダインや迫撃砲が括り付けられている。
それら砲口から大威力の弾が放たれ、ライカンは次から次へとミンチより酷い何かになっていく。
重装備に見えて機動力もある。 正史に登場したジェットの様に、ある者はブースターでジャンプしたり、スラスターで高速移動。
立体的に動き回る事で、相手を翻弄した。
「フェンサー部隊か。 挙動に甘さがあるが」
「中身が死体だからね、仕方ないね」
「無線の奴の仕業か? 何がしたいんだ」
評価する只野、笑う人形、困惑のイーサン。
三者三様の表情を浮かべつつも、加勢する訳でもなく、壁沿いに迂回して先へ往く。
「構うだけ時間と弾の無駄だ」
正史だとイーサン1人に、村の様に寄って集って攻撃してきたが、今回は状況が色々違うので無理に戦う必要もなかった。
そうじゃなくても、初めての村の時の様な、拳銃とナイフな貧弱武装スタイルではないので戦える訳だが、戦わずに済むなら越した事はない。
ゲーム的な事情を入れると、余裕があれば金目当てに討伐するだろうけれども。
やがてTVやテーブル等が置かれた小部屋に辿り着けば、ローズのフラスコが。
「ローズ……!」
イーサンは最後のフラスコを手に取った。
肝心のハイゼンベルク本人は居なかったが。
この辺は正史通りの展開だから、特別驚く事はない只野。 問題は今後だ。
「もっとショーを見物して良かったんだぜ」
TVから奴の声が聞こえ始めた。
相変わらず、どうやってるのか不明である。
「契約通り、準備は整ったのか?」
「味方だか知らないが邪魔はしないでくれ」
「私以下の人形遊びして満足した?」
「お前ら、そう焦るなよ。 俺達はこの後、肩組んでミランダをブッ殺す。 そうだろ?」
「そうだが、イーサンは?」
「俺はローズを元に戻したいだけだ」
「瓶揃ったのに治し方、分からないもんね」
「なら決まりだ、イーサン・ウィンターズ」
「勝手に決めるなよ」
「ならご自由に。 1人で頑張りな、パパ」
「……今日1番ムカつく野郎だ」
結局、イーサンはパーティから離脱せず。
治し方が分からないので仕方なくである。
正史だとミランダが儀式とやらで復活させるが、ミランダ以外に出来るか不明である。
もし行き詰まっても、デュークからヒントを貰えるやも知れないが。
「取り敢えず、そうだな……俺の工場に来い。 ローズを祭壇に納めろよ、そうすりゃ工場までの橋が上がる、大丈夫だ罠なんかじゃねぇ。 だから自分の足で来るんだ、ほら、さっさとしろ!」
「……まったく!」
どうやら、その辺も正史通りになりそうだ。
「あっはっは! 裏切る様なら殺すから!」
「お前、奴に酷い目に遭ったからか?」
「それもある! ロボットが人間に復讐だよ!」
「早まるなよ」
イーサンはハイゼンの言動が気に入らない。
それでも只野らEDFが間に挟まっているから渋々ついて来てくれている、といったところ。
仮に決裂しても只野は構わないと思った。
殺し合いになったら、その時はその時だ。
人形の言う通り、始末するばかりである。
更新未定
メモ
機械化死体兵ゾルダートシリーズ
ゾルダートとはドイツ語でソルジャー
アイン 最量産型? ドリル1本
ツヴァイ ドリル2本 背中弱点
ジェット ロケットエンジン 頭部安定翼装備
パンツァー 人間戦車 全身にアルミ合金装甲
シュツルム 試作機 ターボプロップエンジン
制御ヘッド装置装着
電極から発生する擬似脳波で挙動安定
出力を補う為にカドゥ制御リアクター移植
人工血液メタアルブミン
この世界線ではフェンサー装備も