2026年10月8日〜9日の深夜帯
場所:ローデスヒル療養所
隔離されたようにポツンとあるその建物は、外観は洋風の議事堂のような屋敷であり、中はどことなく洋館風である。
例によりどこぞの洋館設計者が関わっていそうな場所だが、そういう所は悪事に使われる決まりでもあるのか。
ここでは秘密裏に"最新の試験的医療"を患者に施す場として使われており、表面上は懐古的でも、地下では悍ましい実験施設や処理場が広がっている。
しかしヴィクター(ギデオン博士)は放棄。
目当てのグレースを手にした事で用済みらしい。
タイミング良くDSOに嗅ぎつけられた為もある。
証拠隠滅も兼ねてコード6(激ヤバ)状態へ。
意図的なバイオハザードを発生させ、何も知らない多くの患者や医療従事者がゾンビ化。 或いは喰われて犠牲となってしまった。
グレースとレオンはそれぞれのやり方でゾンビを捌きながら脱出、或いは院長のヴィクター博士の逮捕を目指す。
そしてEDFはゾンビを殲滅するのが主目的だ。 真っ先に只野が単身乗り込み、増援が来るまで暴れ回って戦うのが仕事となる。
アレだ。 マーセナリーズ、というものに似ているかも知れない。 後続が来るまでどれだけ倒せるかな?
「只野だ、ローデスヒル療養所に現着。 呻き声と銃声あり。 ここもバイオハザードだ」
『本部了解。 突入してゾンビを殲滅せよ。 応援も間も無く到着予定』
『こちら戦略情報部です。 内部に拉致されたFBI分析官のグレース・アッシュクロフトがいます。 彼女の安全を確保してください。 またDSOのレオン・S・ケネディもいます。 誤射に注意してください』
「イエッサ。 内部に突入し敵性勢力を殲滅。生存者がいたら確保する」
そういうと、操縦桿のトリガーを引く只野。
ドゴォオオンと豪快な音と共に主砲が火を噴けば瞬時に正面扉に着弾。 ドカンと爆煙が立ち込め、瓦礫が四散した。
「挨拶のノックだ。 派手な方が熱烈歓迎してくれるだろ? こっちから出向く手間も減る」
格式がありそうな、古風な面構えが崩壊。
エントランスの様子をパックリと只野にお見せする。 中には呻き声を上げ徘徊する、ゾンビの群れが見えている。
只野は砲塔上部の出入り口、キューポラの扉を開けて外に這い出ると、地面に降り立った。
装備は先程同様のPA-11SLS只野仕様。
通常と異なるのは、照準し易くする為に旧式概念的なハンドキャリングを撤去。 レールに変更され、ダットサイトを装着。
ストックは射手に合わせられるよう伸縮式。
ハンドガードにフォアグリップを装着し、しっかりと保持できるようにされていた。
シンプルだが現代的なアサルトライフルとして改修。 スマートになった様相である。
そうして未だに使用され続けるEDF初期小銃のPA-11だが、それだけ信頼されているのもあるだろう。
ストーク系やブレイザーなど次世代ライフルへの転換で、当銃は大量の在庫が発生したが、この処分を兼ねて、傭兵や民間向けに広く放出されてもおり、行き先でのパーツ交換は比較的容易。 使用弾薬も5.56mmと広く浸透しているので補給も特別困難ではない。
また対人戦を想定する場合、ブレイザーなどではオーバーキルなのと、現場における整備面の問題の解決手段としても用いられる。
「イゲまぜ、ンンン……」
「逃ゲ、テエェ」
「ナンデ、汚じだのオオオ!」
「ウルザイイイッ!!」
迫り来る喋るゾンビたち。
只野は臆するでもなく苛ついて、コレを撃つ。
「お前らが五月蝿えんだよ、死ねッ!!」
拳銃弾の1発や2発では十分な抑止を狙えなくても、EDF式の謎の3桁マガジンから吐き出されるライフル弾の弾幕を前に、耐えられるヤツはそうそういなかった。
「四肢切断用なのか知らんが、なんかチェンソーあるし、どうせ最初から碌でも無い場所だったんだろ。 破壊し尽されても文句ねぇよな」
小銃を構え、目につくゾンビを撃ちながら施設内部へ突入する只野。
砂塵が舞い、血飛沫が上がり、床に赤い花が咲き、花火が上がって消えていく。
「おらおら踊れ踊れ! ラクーンシティの惨劇よりマシだ! プラーガな寄生体でもない! 俊敏じゃないしマシンガンも使ってこない! ちょっと理性や知性が残って生前の動きや言動をする程度のゾンビなんてただの的だ! 同情なんてしてたらこっちが死ぬ! だから死ね! 俺の為に死ね! お前らのような奴らがいるから俺は安心して死ねねぇんだぞ!」
鬱憤を叫び散らしながらゾンビを蜂の巣に。
ただノロノロと近寄って来るだけのゾンビなんて、十分な火器と経験を積んできた只野の敵ではなかった。
知性が残る為か、偶に武器を振り回し、投擲する事もあるものの、ボディアーマーとヘルメットのEDF完全装備なら、怯みはしても並大抵では死なない。
「変異型tウィルスと聞いてるが、生前の記憶や行動をトレースしてる程度。 攻撃パターンは変わらない。 所詮こんなもんか……まぁ軍事訓練を受けていない、良くて拳銃1挺の一般人には脅威だわな。 ましてや群れて襲って来ると来ちゃ火力不足よ。 その意味じゃEDFの武器様々だ。 俺も老いたが、まだ戦えるくらいだもんな……それにtウィルス症候群を発症してないとはいえ、な」
tウィルス症候群。
ラクーンの生還者が発症する病気。
黒いアザがある変死体も、これで死んだ。
黒いアザができる以外にも咳が出たり吐血までし、やがて死に至る。
汚染度が劣悪だったラクーンにいた事で、ゾンビ化しない程度にtウィルスに感染。 長い潜伏期間を得て、今、発症している者が出始めていた。
あのラクーン事件に投入されたEDF隊員にも発症した者がいる。 レオンとシェリーもその1人。
手には黒いアザが出ており、その兆候が見られる。 手袋で隠しているが、具合は悪くなる一方だ。
ヴィクターを追うのは、その解決手段を求めているのもある。 EDFとしても、正直に言えばそのおこぼれに預かり、病に苦しむ隊員や人々を救いたいところなのだ。
若い頃、ラクーンにいた只野もいつ発症するか分からない。 その意味でも今回の事件を追う事は重要といえよう。
「あ、あの!」
ひとしきりエントランスで暴れ終わると、1人の女性がおろおろと声をかけてきた。
白髪よりの、短めの髪の毛。 白いTシャツ1枚にジーンズと軽装。 いや、拳銃で護身はしているか。
1挺は低反動の一般的な物のようだが。
尻に挿すようにして携行しているのは華奢な腕、体で撃つには不相応な大型で肉厚、銃身が下側についたマグナムリボルバーに見える。
DSO謹製の超大型アサルトリボルバー。
レクイエムだ。
シリンダー下部にバレルが配置されており、マズルジャンプが抑えられる。
フレームがブローバックする構造で衝撃を軽減しているが、それでも扱いは困難。
けれど屈強なEDF隊員なら使えるか。
対物ライフルを走りながらやジャンプして撃てるような者ほど苦では無いかも知れないが、グレースのような華奢な女性が振り回すには向かないように思えた。 見た目からして重そうだし。
だがここぞ、という場面では切札となる。 故に持ち歩いているのだろう。
そう判断したレオンと出会い、護身用にと貰ったのかも知れない。
当人は隔離設備に邪魔をされて別行動中だが。
そんな彼女は主要人物の1人。
FBI捜査官のグレースだ。
ヴィクターにここまで攫われた被害者である。
「あ、あなた、EDFの兵士?」
「そう、只野だ。 FBIのグレースか?」
「な、なんで私の名前を?」
「上から教えられた。 ここに攫われたから、見つけたら助けろってさ。 もう直ぐ仲間も来るから、それまで安全な所にいろ。 俺は感染者を始末して回る。 邪魔はするなよ」
「ま、待って! 助けて欲しい人が別にいるの!」
「DSOのレオンか? アイツなら並大抵の相手じゃ死ぬ男じゃない。 平気だ」
「レオンも知っている? じゃなくて、女の子なの! ここの投薬室という所に閉じ込められてるの! 白内障みたいで、目が見えてないみたいで!」
「実験体か何か? 本当に人間だったか?」
こんな所で隔離されている少女?
しかも投薬室という不安ワード。
只野は訝しみ酷い事を言ってしまう。
それだけバイオテロと戦い、心身を擦り減らしてきたのだ。 だとしても褒められた言葉遣いではない。 グレースは怒った。
「そんな言い方やめて! 本当に、その、人間よ! だから助けて欲しい、お願い! じゃなきゃ、私が助ける為にあちこち彷徨くわよ!」
「わかった。 その子はどこにいる?」
「こ、こっちよ。 レベル3のカードキーが無いと、扉が開かないみたいで……」
そう案内された先は、奥まった、如何にも他と雰囲気が違う部屋。
他と違う、温かみの無い鉄扉を開けたなら、冷たいコンクリートに囲まれた空間。 そこに強化ガラスの仕切り部屋が2つある。
内1つは壁や天井に穴が空いており、BOWに襲われたか、被験者がBOW化して逃げたようだ。
もう1つは、ベッドの上に白髪の女の子が座っていて、目が濁っている。 グレースの言う通り白内障か。 目が見えないから点字の本を手で読み取って大人しくしている。 表情は乏しい。
「だれ? 警察のお姉さんとは違う声。 おじさんがいるの?」
「お兄さんだろぉ? と、言いたいが、まぁそういう歳だ。 そしておじさんはEDF。 兵隊さんだ」
「兵隊さん? よく分からない……」
ガラス壁越しにも、愛らしい声が鼓膜を震わす。
どうやら幼女は普通に会話はできるらしい。
だがそれもまた、過去に事例のある話だ。
なんならラクーン事件から喋る化物はいた。
スタアアズと叫ぶんだけど、知ってる?
「なるほど。 本気で助ける気か?」
「あなた軍人でしょ!? 市民を助ける為に戦ってるんじゃないの!?」
案内させておいて、未だ煮え切らない表情の只野に繰り返し怒るグレース。
とはいえ、散々に現場を経験した只野から言わせれば、この子を助けるのはリスクがある。
こんな場所で隔離されているとか、絶対ワケアリだ。 何かの被験者で、ヤバいのを投薬されている生物兵器の可能性だってあるのだ。
ナタリアやエヴリンの例もある。 油断はいつだって命を落とす事に繋がる。
「ゾンビ殲滅が仕事だし、状況次第では子供も撃たなきゃならない」
「そんな!」
「でも生存者がいたら確保するって言った手前、何とかするのも俺の仕事か。 少し離れていろ」
そういうと、ガラス部屋の脇の扉にスローターEZを構え発砲!
最終作戦仕様な威力をゼロ距離で受けた頑強そうな強化ガラスの扉は、バリィン! と豪快な音を立て粉々になり、その勢いのまま部屋の中に破片を飛び散らせた。
「きゃっ!」
「すまないねお嬢ちゃん。 取り敢えずこれで外には出られる。 グレース、あとは自分で世話する気でいろ。 それはお前の役割だ」
「そんな強引な開け方……」
「この手に限る。 "マスターキー"は便利だぞ。 貸してあげようか?」
「い、いい」
「あっそう。 ところでお嬢さん、名前は?」
「エミリー」
「そうかエミリー。 これからお姉さん、グレースの言う事を聞くんだ。 きっと君を守ってくれる」
「お、おじさんは?」
「おじさんは悪いヤツを倒しに行かなきゃいけない。 危ないから一緒にはいれないよ。 その代わりがグレースだ……助けろと言ったのはアンタだし、その後の責任は持つ気でいるんだぞ。 良いな?」
「わかったわよ……嫌味なヤツ」
態度がお互いに気に入らない様子だが、構っていられないのも事実。
まだまだゾンビがいる。 どれだけいるのか。
どれだけ患者やスタッフを入れていたのやら。
「本部、グレースと施設で隔離されていた少女を発見。 ただちに回収班を向かわせてくれ」
『ヘリを1機回した。 只野准尉は2人を護衛しつつ、施設にあるヘリポートへ向かい迎えを待て』
「ネガティブ。 ゾンビが多過ぎて脱出は困難。 引き続きゾンビの数を減らして対処する。 ヘリと応援部隊を急いでくれ」
『了解。 周囲の安全を確保せよ』
とはいえ、神出鬼没の敵もいる様子。
単純なゾンビばかりじゃない気配に心が躍りつつも、己を鼓舞する。
「グレース。 正面玄関は破壊してあるから、そこから外に出る事もできる。 だがゾンビだらけだ。 俺の仲間が来るまで何処かで安全を確保しろ。 そうだな、戦車が止まってるから、その中にでも隠れてな」
「戦車!? あの大きな音、やっぱりタダノの仕業だったのね」
「目立ちたがりでね、派手な登場をした……俺もできるだけゾンビは減らす。 だが油断するな。 どうもただのゾンビだけじゃなさそうだからな」
「ええ、もう見た……デカいヤツをね。 その内の1体は光が苦手みたい」
「わかった。 まぁなに心配するな。 EDF製の銃火器は強い。 的がデカいぶん弾も当たりやすい。 アンタも強そうなの持ってるし、なんなら俺の戦車を使って更にデカいのをぶっ放しても良いぞ。 ただし、俺には当てるなよ」
「ええ……タダノさんも気を付けて」
そういい、グレースはエミリーを抱っこ。
部屋を後にし、戦車に向かったようだ。
「さて、ヤバいヤツもいりゃ地下にもどうせいるってオチだろ。 俺は詳しいんだ。 じゃ、尚更にレオンと合流したいな。 そこには戦車、入れないだろうし」
只野は再び、小銃を構えて療養所の探索開始。
流石にレオンも只野の砲撃や銃声を聞いているだろうから、向こうから来る可能性もある。
お互いゾンビと間違えて撃たないようにしなきゃな、と薄ら口角を上げた。
上げつつ、迫り来るゾンビを蜂の巣にする。
夜明けまでには片付くと良いが……。
更新常に未定……