転生特典刀一本   作:護廷−十三番

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英雄になればお前達を失い

英雄にならねばお前達に出会えない

『綱夜』


オラリオ

 親友のそっくりさん、性格はめちゃくちゃ違った。根は女好きの部分とお人好しの部分が同じかもしれないが、こっちはまだ無垢だ。ただし教育に悪い()()のせいで穢されるかもしれないので壁にめり込ませた。全然めげない、何なの此奴?

 浪漫とか使命とか言ってハーレムや覗き行為を推奨してる。もうぶち殺してやろうかと思ったがそっくりさん………子供だからそっくりちゃんに止められた。名前はベルというらしい。元気な男の子だ。

 親友同様英雄に憧れている。後ハーレムにも。

 顔は良い。性格も良い。料理でも覚えさせれば女にモテるだろう。でも英雄は無理だ。そこも親友に似て才能がない。よくて『一』しか救えまい。『百』は救えないだろう。

 それでも英雄に憧れている。物語の英雄のように、誰かを救える存在になりたいと。その為に将来はオラリオに向かうらしい。

 

(…………『大穴』を塞ぐ街か………)

 

 自分の時代には存在しなかった。精々囲むように壁を作っていただけだった。黒竜を追い払っても、無限に湧くモンスターは着実に人類を追い詰めた。

 そんな人類を救ったのが、精霊を送るばかりだった神々だ。建設した蓋の崩壊。モンスターの蹂躙に再び心折られかけた人類の前に現れ、人類に恩恵を与えた。

 才能ある極一部の者が命を賭して行えるか行えないかという『覚醒』を擬似的に行い、精霊との契約が主流だった『魔法』を手軽に使えるようにした。

 いい時代になったものだ。あの頃とは大違い。人類が簡単に強くなれ、『祈祷』とやらでモンスターの生まれる数も減っているらしい。

 手軽に強くなれる人類。古代よりも大人しいモンスター。なら、ベルも強くなれるだろうか?

 あまり想像できない。手軽に強くなれると言っても才能が関係ないわけではないらしい。

 

「ならお主が鍛えたらどうだ?」

 

 そう言ってきたのはベルの育て親の老人。人ではない、神だ。歳を取らないらしいから、存在し始めた頃からこの姿なのだろうか?

 

「鍛えるつもりはない」

「そんなに恐ろしいのか、ベルが英雄を目指すことが」

「…………………」

 

 ベルに才能はない。才能はないけど、英雄を目指すのだろう。そして何時か、英雄なら見捨てないなどと自分を奮い立たせて誰かの為に自分を犠牲にするのだろう。あれはそういう人間だ。あの馬鹿と一緒なのだ。顔も思い出せぬ親友達も、きっと呆れているだろう。

 

「あれは英雄になれない。お前もそれを解っているだろう」

「むう…………」

「………だが」

 

 と、喧しい親友を思い出しながら虚空を見つめる。英雄になれずとも英雄を目指し、その心根は誰よりも英雄だった彼は喜劇として扱われているが、最弱ではあるが、英雄譚ではないとする者もいるが、英雄とされている。

 

「手助けはしなくとも、見守ってはやるさ」

「……………そうか」

 

 フッ、と老神は安心したように微笑む。

 

「とはいえ、今のオラリオは相当荒れているらしいが」

 

 闇派閥(イヴィルス)というらしい混沌と殺戮を好む神々の眷属達が暴れているらしい。数ヶ月前に『大抗争』と呼ばれる衝突の果て、秩序側が勝利し士気も上がっているようだが、まだまだ闇は残っている。

 

「…………俺は先にオラリオに向かう」

「道の小石をどかしてやるばかりが、相手を思うということではないと思うぞ?」

「過保護と思うか? 言われるまでもない。彼奴の冒険を邪魔はしないが、する必要のない殺し合いを先に終わらせておくだけだ」

 

 そもそもベルが憧れている英雄は怪物退治の英雄達。人間同士で争う余裕が出来てから現れた人殺しの英雄とは違う。まあベルが読んだ英雄譚に人と人との争いが全く無いとは言わないが、経験させる必要がないならさせなくてもいいだろう………。

 

「ベルには宜しく言っておけ」

「おう! 夜露死苦!」

「………………………」

 

 

 

 

 オラリオ。

 巨大な塔、バベルとその地下のダンジョンを中心に栄えた街。最早掠れている前世の記憶でも、あそこまでの高さの建物はあったろうか?

 老神のコネで手に入れた煙管を吹かしながら近付いていく塔を眺める。馬車の業者はそんな綱夜を温かい目で見つめる。

 まだそれなりに距離があり、物資を狙った盗賊達を皆殺しにした後はヘコヘコしだしたが。

 未だ闇が蠢く時代、秩序側の大勝利があった後とはいえ、訪れる人間は少ないのか物珍しげに見てくる門番に背中にランプのようなものを押し当てられ神の恩恵とやらを確認させられ都市に入る。

 

「…………………」

 

 笑顔が少ない。全くない訳では無いが、この規模の街としては少ないほうだろう。古代の都市のほうがまだ笑顔に溢れていた。

 

(都市の外に敵が居るのと、中に居るのでは違うか………)

 

 基本的にはモンスターを警戒しているだけで良かった古代より、内部の、それこそ隣に歩く誰かを疑わなければいけないというのは精神をすり減らすだろう。

 

(…………つけられてるな)

 

 オラリオに来たばかりの丁度いいカモだとでも思われたのか、加虐的な感情を隠しもしない視線が向けられていた。それも複数。

 綱夜の前にいる者達が上手く人を退けるように隙間を作り、背後にいた獣人の男が駆け出す。片腕で殴りかかりながらもう片方の腕は先程屋台の品を買った際にしまった財布を狙う。

 が、遅い。

 腕の骨を殴り折り、顎を軽く打つ。白目を剥いた男はその場で倒れた。男の仲間達は何が起こったのか解らず固まり、その間に何事もなかったかのように抜けようとすると正気に戻った男達が囲んでくる。

 

「て、てめぇ! 良くもやりやがったな!?」

「…………何の話だ?」

「俺の連れを良くも!」

「俺が? 何時?」

 

 男達は綱夜の動きなどまるで見えていなかった。それは彼等の視線の動きから察していた。単に綱夜に向かった仲間が突然気絶したから綱夜がやったと思っているだけだ。いや、実際に綱夜がやってはいるのだが。

 

「くだらん因縁をつけるな。さっさと其処をどけ」

「っ!!」

 

 男達からすればなめられる行為が許せないのだろう。だが、自分達は綱夜が何をしたか見ることも出来なかった。それだけの差があるのだ。それを解っていながら、愚かにも敵対を選ぶ。

 

「いいから謝罪として金を置いてけ! その極東の剣もだ!」

 

 ナイフを抜く男達に目を細める綱夜。暴力は振るえど人を殺すことも出来ないであろう木っ端な悪党共など見逃してやっても良かったが、武器を構えるなら話は別だ。たとえ脅しだろうと、人の命を簡単に奪えるものを抜いたのだ。

 

「剣を抜いたな、小僧共…………」

 

 柄に手を当てる綱夜の威圧感に今更自分達の間違いに気付く男達。空間が軋むかのような圧力に呼吸を忘れ白目を剥いて気絶した。

 

「……………む」

 

 だいぶ人類も平和ボケしている。人間相手に恐喝行為を繰り返していたのだからそれもそうだろう。泡吹いて気絶した。

 

「………まあ良いか」

 

 鈍ってはいるが、霊力──知り合いのエルフ曰く綱夜が扱うのは魔力とは全くの別物らしく、孤月曰く魂に関わる力らしいのでそう名付けた──自体は変わっていない。今後チンピラの相手は霊圧でもぶつければいいだろう。

 

「あら〜、すっごいわね! 一人残らず気絶してる!」

「………………誰だ?」

 

 綱夜が彼等に絡まれ始めた時点で街の住民が距離を取る中、男達が武器を持った瞬間近付いてきていた気配の主が声をかけてきた。赤い髪の美少女だ。

 

「私? 私はアリーゼ・ローヴェル! 正義を愛する【アストレア・ファミリア】の団長で、オラリオでも数少ないLv.4なのよ! ふふん!」

「…………そうか。正義の味方とやら、此奴等を牢にでも閉じ込めておけ。今日が初めてというわけでもないだろう」

「もちろんそのつもりよ! というかこの人達の被害を聞いて探してたんだもの。ありがとう、助かったわ! お礼に………えっと……デートしてあげる!」

 

 何かないかと探し、財布も出てこない美少女はそう言って胸を張る。

 

「絡まれただけだ、礼は不要だ」

「そう? ん?…んん?………」

「なんだ?」

 

 

 

()()()()()()?」

 

 

「……………神や精霊にでも見えるか?」

「うん」

 

 即答してきた。

 まあ自分が歳を取らなかったり、転生者であったりと普通の人間と違うのは自覚していたが、堂々と言ってきたのは兎のような親友以来だ。

 

「でもどちらとも違うような………なんか、貴方変ね!」

『なんか、君は変わってるなあ!』

「…………どうかした?」

「昔の友人を思い出していた」

「あら、私のような美少女が他にもいて?」

「お前のような馬鹿なふりをした聡明な道化だった」

「……………ごめんなさい」

 

 それが死者であると綱夜の表情から察したのか、謝罪するアリーゼ。と………

 

「おい団長、見つけたんなら連絡ぐらい寄越せよ」

「あら全員泡を吹いて気絶しておりますねえ。よほど恐ろしいものでも見たのでしょうか?」

「アリーゼ、おまたせして申し訳ありません」

 

 彼女の仲間だろう、少女達がよってきた。見覚えがある。あったことはない。

 一人はエルフとは思えない騒がしいエルフで、一人は何度か人とモンスターの戦場で出会い共に街を救った騎士団の団員。うち一人は……

 

「………………」

「あ? 何見てんだよ」

「やめないか、ライラ」

「…………この街には案外、知人に似た奴が多いらしい。そう思ってな」

「へえ、アタシに似たやつねえ? そりゃ嘸かし素敵な美少女なんだろうな」

「………性格が捻くれてそうな所もそっくりだな」

「おい」

 

 このやろう、と睨んでくる小人族(パルゥム)の少女。が、自覚はあるのか本気で怒っているようではなさそうだ。

 

「ところで貴方見かけない顔だけど、オラリオは初めて?」

「ああ………」

「闇派閥が大人しくなり始めたとはいえ、こんな時期に来るなんて変わった方ですねぇ」

「将来オラリオに来ることを夢見てる知り合いが居てな、其奴のために闇派閥を殺しておこうと思ってきた」

「言い方はともかく、なら仲間ね! 何処のファミリアに所属するかは決めたの?」

「………これから決める」

 

 嘘だ。今のところ何処かの神の眷属に入る気はない。ただ勘のいい少女でも気付くのだ。神も間違いなく気づくだろうし、聞く限り神々の殆どは暇潰しで降りてきた。玩具にされるのは目に見えている。

 

「そう、しっかり選ぶのよ」

「ああ」

 

 

 

 【アストレア・ファミリア】と別れた後、適当に宿を探そうかと思ったが昼間の奴らの仲間が報復にでも来たら迷惑をかけそうなので人気のない廃墟を探す。

 そして見つけた教会。神が直に降臨した時代によくもまあ残っていたものだ。

 屋根に大穴が開いているが、場所によっては雨を凌げるだろう。

 

「………ん?」

 

 そう思っていたら地下に続く階段を見つけた。丁度いいので、そこに住むことにした。




クロキ・綱夜(こうや)
呪われてるのでは、と思うほど身近な者から死んでいく。しかし強さは本物で、間違いなく英雄級。
『百』を救ってきたが『一』は救えなかった。
始解や卍解を使えば現状誰にも負けない。(黒竜は例外)。
卍解は鬼道、物理どちらに対しても相性は良いが山じいや剣八なら力付くで破られる。
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