転生特典刀一本 作:護廷−十三番
今日も誰かが笑えている。貴方が嘗て望んだように。
貴方がいないこの世界で、貴方の面影を感じている。
『リオン』
「………またか」
第一級の殆どを『大抗争』で失ったとはいえLv.3や4すら殺されている。襲撃犯は少なくともLv.5クラスの力を持つことになる。
「何者だ、一体?」
「
リヴェリアの言葉に肩を竦めるフィン。
敵の敵は味方、などと軽く考えられるフィンではない。余計な警戒対象が増えたことで、むしろ考えなくてはならないことが増えた。
「そちらもか………」
「という事は、君達の方も?」
ギルドの会議室で集まる有力派閥の代表達。議題は
「手際がいい。余程の使い手が、複数いると見るべきかな?」
「情報収集能力も高いしな。こちらが掴んだ情報に飛び込んで見れば血が乾くほど前に殺されていたりと…」
大した抵抗もさせず、全員が切り刻まれていた。フィン達なら同じ事もできるだろうが、逆に言えばそのレベル。
「ただ、情報収集というよりは探知なのかな? 地下は苦手のようだけど」
フィン達を先回りする程素早く拠点を潰している割に、地下の拠点は見逃している。全てではないが、簡単に目撃情報を得られる所が数ヵ所だ。襲撃を逃れた地下よりも念入りに隠された場所は見つけているのに。であるなら、情報ではなく何らかの探知で場所を割り出していると見るべきだろう、それが地下には及ばない。
そういうスキルか魔法なのか、本来は可能だがオラリオの地下にあるダンジョンに邪魔されているのか……。
「シャクティ、ここ数日でオラリオに入った冒険者で、高レベルのものはいるのかい?」
「高くてLv.3だ。ステイタスはきっちり確認させてもらった」
時代が時代だ。本来ならLv.以外は秘匿すべきステイタスであるが、謝礼金を払う代わりに一部の神に確認させている。その中に今回の騒動──騒ぎにはなっていないが──を引き起こせそうな者は存在しない。
「…………ザルド達も、誰に悟られることなくオラリオに侵入していた」
オッタルの言葉に緊張感が走る。数ヶ月前の大抗争。多くの冒険者が壁を超え、多くの冒険者が死んだあの事件の主力である二人は、確かに何処からともなくオラリオへと侵入し、未だその方法は不明。
「同じ方法の可能性はある、か。身内揉めにしても行き過ぎているとは思うけど」
「………………」
「君もなにか気になるのかい?」
と、何やら考え込んでいるアリーゼに視線を向けるフィン。
「えっと………私、もしかしたら犯人知ってるかも」
「団長?」
「それは………本当かい?」
「ええ、
と、アリーゼは自分達が出会った自称
「まあ、そうよねぇ………」
「その人物が何らかの方法で侵入したと?」
「どうかしら。恩恵を持ってないだけかも」
恩恵を持っていなかったらこんな事できる筈がないだろうという視線を気にせずアリーゼは数日前に出会った男の顔を思い浮かべるのだった。
「はい。プレミアムジャガ丸くん5つ」
「ん」
壊滅させた拠点から奪った金で買い物をする綱夜。屋台のおばちゃんから受け取ったジャガ丸くんなる揚げ物のプレミアムを受け取る。そのまま帰ろうとすると、彼の真横を小さな影がトテトテと通り過ぎる。
「………?」
なにか心の端がザワついた。
「プレミアムジャガ丸くん、ください」
「あ、ごめんねアイズちゃん。売り切れちゃって」
「────え」
背後でこの世が終わったかのような幼女の声が聞こえた。そのまま行こうとしたらトテトテと走ってくる。
「あの、少し分けてもらえませんか?」
「断──」
断ろうとして、幼女の姿を見て固まる。嘗ての記憶など掠れていても、きっかけがあれば思い出せる。そして少女の容姿はきっかけになり得た……
「ちっこいアリア?」
「っ!?」
バッと飛び退き剣の柄に手を添える。警戒、疑心、敵意、殺意。様々な感情が入り混じった幼女は困惑しながら叫ぶ。
「貴方は、誰!? どうして、その名前を知ってるの!!」
「………知り合いに似ていた」
「嘘! お母さんの知り合いに、あなたはいなかった!」
「お母さん? お前がアリアの娘だと? いや、ありえんな。時代が違うし、あの女がアル以外に身を任せるとも」
「っ! お父さんも、知ってるの………?」
親友の愛称を呟けば警戒心が薄れる。自分が知らないだけで両親の知り合いだとでも思ったのだろう。つまり彼女の両親の愛称はアリアとアルで、彼女は見間違えるほどあのアリアに似ている。どんな偶然だ、と頭を抱える綱夜。
「恐らくお前と俺の中のアリアは別人だ。アリアは愛称、本名じゃない。そっちは?」
「…………本名」
「アルは滅茶苦茶弱かった。そっちは?」
「すごく、強い」
「なら別人だ………」
そっか、と落ち込む幼女。両親の知り合いを見つけたとでも思ったのだろう。嘗ての親友の恋人に守ってくれと頼まれ、結局約束を果たしそこねた女の面影を感じる幼女が落ち込むのを見て、綱夜は仕方ないとしゃがみ込みプレミアムジャガ丸くんを2つ渡す。3つではない、2つだ。そこは譲らない。
「これをやる。もう日も沈む、家に帰れ」
「うん。ありがとう………ございます」
「……………」
人違いとはいえ『アル』と『アリア』の娘。少し気にかけてやってやろう。と、その時だった。
「あ、いたいた! 居たわ!」
「? お前は、この前の」
と、不意に駆け寄って来る気配に気づき振り返ると初日に出会ったアリーゼ・ローヴェルと………
「アリーゼ、この人が?」
「ええそうよ。
「よろしくなイヴィスレ」
「よろしくお願いします、
「知らん人だ」
そのまま去ろうとするとアリーゼがバッと眼の前に移動する。
「…………知り合い?」
「ストーカーだ」
「すとーかー? 知ってる。それ、良くないってリヴェリアが…………ジャガ丸くんのお礼………戦うよ?」
「あらちびっ子ちゃんが凄くやる気」
「チビじゃない…………」
ジャガ丸くん幼女は剣を構える。綱夜は面倒事の気配を察してため息を吐いた。
「良い。用を聞こう」
「うにゅ」
血の気の多い幼女の頭を軽く叩きやめさせる。助けようとしたのに、と非難がましい視線を向けてくる幼女。
「話が早くて助かるわ。ついてきてくれる?」
「やあ、はじめまして…………あれ、アイズ?」
「何をしてるんだお前は」
連れてこられたのはギルドの一室。
部屋には他にも数人の男女と神々が居た。
「さて、単刀直入に聞きたいのだけど、ここ最近
「そうだ」
「っ…………あっさり認めるんだね」
と、僅かに動揺したパルゥムはチラリと神の一柱を見ると、その女神は無言で頷く。
「嘘かどうかは解る………せやけど、自分
その言葉に綱夜に視線が集まる。アイズに関しては他のものと違う感情が見え隠れする。
「何者かなど俺も知らん。ただの人間ではないのだろう、とは思うが………じゃあ何か、と言われても同族にあったこともないのでな」
「…………さよか」
それ以上情報は得られないと判断したのか女神は座り直す。話が終わったのを見てパルゥムの男性が再び話しかけてくる。
「精霊に近い、か。恩恵を用いず
「将来オラリオに訪れるあるガキのために露払い」
「へえ、貴方のような存在が未来を憂うほどの子が、オラリオに来るの?」
と、女神の
「取り柄のない凡人だ。心根だけは優しいから、人と人との争いなんて見せたくないだけだ」
「過保護だね」
「自覚してる」
「君がオラリオ、ひいては下界を害する気はないと?」
「ああ」
「……………」
本題に入ろうか、とパルゥムの男性、フィンが切り出す。
「君の目的がオラリオの平穏なら、目的は同じだ。僕等と手を組んでくれないかい?」
「断る」
「…………何故?」
「お前達はいわゆる正義の味方だろ? いや、少なくともお前は
民衆を守る気などないと言うような言葉にエルフや一部の冒険者が僅かに肩を揺らす。
「君も未来を憂う相手がいるんだろ? なら、脅かされる者たちの気持ちも解るはずだ。手を貸してくれると信じているよ」
「聞こえのいい戯言はやめろ小僧。俺は二度と人々を守るために力を振るわないと決めている」
パルゥムの言葉をバッサリ切り捨てる綱夜。その態度にエルフの一人が立ち上がる。
「貴方は………! 貴方は、何とも思わないのですか!? 力なき民が、殺されることを、貴方にとってのその子供のような存在が奪われる恐怖に怯えることを!」
「…………だからどうした。
「なっ!?」
「顔も知らぬ誰かが安堵したからなんだと言うんだ。名も知らぬ誰かが救われたからなんだと言うんだ。その間に、俺は身内が奪われることに怯えなきゃならない。身内が死んでいるかもしれない」
感情の籠もった言葉に誰もが声を失う。綱夜はそんな様子など気にせず言葉を続けた。
「俺は二度と英雄なんぞになってたまるか。民衆の守護者などお前等がやっていろ。俺は俺が守りたいものを守れればそれでいい」
『孤月』
髑髏をもした仮面を被った和服の女。
物腰は丁寧だが時折暴力に訴える事もある。
もしBLEACH世界の異聞編に巻き込まれたら綱夜がこれ以上失う経験をしないように『卍解』を使用し閉じ込める。