転生特典刀一本   作:護廷−十三番

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輝く功績を立て 望むは名声

輝く槍を握り 目指すは勇者

輝く戦士を引き連れ 至るは英雄

殺し 見捨てた屍など 人の目に映させはしない

『フィン・ディムナ』


悪夢

 フィン達の情報収集のお陰でダンジョンのせいで探知しにくい地下の拠点も潰せた。

 綱夜が闇派閥(イヴィルス)の拠点を探していたのは、魂の反応を追っていたのだ。

 神の恩恵を得た魂は独特の気配を持つ。器を昇華させればその分気配も強くなる。

 その気配が集まり、かつファミリアの拠点として登録されていない所に当たりを付け、調べる。もちろん外れもあるし、眷属となっていない信者の類の集まりは探知できない。

 拠点で見つけた書類を渡せばフィンが資金源たる『悪人共の違法市(ダークマーケット)』なども見つけてくれる。どういう頭脳をしているのか、理解出来ないしする必要もない。

 闇派閥(イヴィルス)の数は間違いなく減ってゆき、【アストレア・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】により市民の被害が抑えられ、成果を残せぬ彼等に援助する商人も入ろうとする混沌を望む者達も減っていく。

 

「いい事ずくめなのに、酷いと思わない!」

「急に来て何だ」

 

 本屋で剣術指南書を買い漁っていた綱夜に突然絡んできたアリーゼ。何やら怒っているようだ。

 

「綱夜の通り名よ! 屍肉鬼(グール)よ!」

 

 綱夜は表向きには都市外から来たフリーのLv.4ということになっている。精霊に似た何か、など神々の玩具にされるからだ。その上で、都市外で生まれてもギリギリありえるLv.かつ、手を出されにくいということで設定された。

 同時に闇派閥(イヴィルス)を殲滅していることも証したが、誰もが称賛したわけではない。むしろ、嘲笑や侮蔑の声が多かった。

 ことの発端はLv.1で燻る冒険者達の嫉妬。

 

『安全な場所で鍛えてから今更やってきて、幹部のほとんど居なくなった闇派閥(イヴィルス)相手に功績目当てでオラリオに来たハイエナ』

 

 などと噂を流され、多くの先達を失い悲しみに暮れる者達もその噂に乗った。

 彼等は弱くて、闇派閥(イヴィルス)相手に何かしたり出来ないから。だから不満を綱夜にぶつけた。実力があるくせに本当に危険な時期には近付かず、後がなく暴れる頻度が増えただけの死に体闇派閥(イヴィルス)を狩り功績を得ようとする浅ましい死肉喰らい。それが綱夜への評価だ。

 

「だから妙なのが絡んできたのか」

 

 本屋の外には冒険者達が転がっていた。

 噂に踊らされ、どうせ正義の味方だから自分達は安全だと綱夜に襲いかかり返り討ちにあった冒険者達だ。普通に斬られた。生きてはいる、殺気がない相手を殺して自分が闇派閥(イヴィルス)認定されては困るからだ。まあ、何名かは手足を失った者達がそうなるように、冒険者を辞めることになりそうだが。

 

「気にするな、民衆なんてのはそんなものだ」

 

 自分達は何もしないが、何も出来ない者を認めない。古代でさえ良く目にした光景だ。フィアナに突っかかる傭兵達、エピメテウスを嘲る民衆、一人生き残った綱夜を罵る兵士も時折居た。ましてや『英雄』が掃いて捨てるほど生まれるオラリオではさもありなん。

 

「……………そう。綱夜が気にしてないならいい訳ないでしょ!!」

「…………………」

 

 騒がしい。

 もっと気にしなさいよ〜と揺すってくるアリーゼを押しのける綱夜。

 

「そもそも俺を責めてくる其奴等は、俺が見捨てると決めた奴等だ。責める権利は十分あるだろ」

「綱夜って、そういうところ律儀よね。嫌いじゃないわ!」

「中途半端なだけだ」

 

 それは自分でも自覚済み。見捨てたくせに切り捨てきれないから、彼等の言葉を受け入れてしまうのだろう。それはそれとして剣を抜くなら斬るが。

 

「ところで、何の本買ったの?」

「唐突だな。剣術指南書だ」

「貴方が?」

 

 必要なの? と目で尋ねてくるアリーゼ。アリーゼの見立てではあるが、綱夜は恐らくLv.6よりも強いだろう。それに、神々曰く精霊に近いらしいし、何らかの奇跡もしくは魔法を持っている可能性もある。今更必要とは思えない。

 

「時代が進み、研磨する余裕も出来た時代の剣術だ。学んで損はない。俺の剣は我流だからな」

 

 弱いなどと言うつもりはないし、実際古代の怪物や悪に堕ちた英雄、仇の怪鳥を含めた漆黒の怪物なども葬ってきた。だからといって後人達が培った技術を不要とは思わない。

 

「それが有用だから残された技術だ。覚えておいて損はない」

「でも、随分たくさん買うのね?」

「一日あれば一冊分覚えるのなんざ簡単だろ。見れば早いんだが、俺にそこまで見せてくれる奴がこのオラリオにいるとは思えない」

「私知ってる! そういうの天才って言うのよね!」

 

 人間より優れた身体能力を持つとはいえ我流で卓越した剣技を生み出し、モンスターを狩っていた古代の戦士は、見ただけでも剣術を習得できるらしい。ふとアリーゼが思い出すのは魔導師のくせに剣も凄かった才禍の怪物。

 

「綱夜は魔法って使えるの?」

「似たようなものなら使える」

「本当に凄く強いのね」

 

 厳密には魔法とは異なるが、似ているのは嘘ではない。後は孤月の力もある。その全てを使えばオラリオの誰にだって勝てるだろう。強いだけで守れるなら、自分は何も失っていなかったろうが。

 

「そういえば、闇派閥(イヴィルス)がダンジョン内で不審な動きをしてるって聞いた?」

「ああ」

「陽動の可能性もあるから私達は地上の警護だけど、綱夜はどうするの?」

「潜る」

 

 

 

 

 

「………また、悪評が広まりそうだな」

 

 ダンジョン27階層。無数に散らばる魔石が砕けたモンスターの死骸(灰とドロップアイテム)に形を保ったモンスターの死骸。人だった者の残骸と階層主の死骸に、切り刻まれた緑肉。

 

「ふぅ、ふふ………うふふふ」

「はひ、はは………」

「うぅ、うゔうぅぅ」

 

 そして壊れた冒険者達。

 全ては闇派閥(イヴィルス)の罠。

 命を捨てた怪物進呈(パス・パレード)により集まったモンスターの群に、喰われながらも道連れにしようと迫る闇派閥(イヴィルス)の狂信者に、血の匂いに誘われた階層主(アンフィス・バエナ)と精霊とモンスターが混じり合った気配の何か。

 一人で切り抜けるのは簡単だが、とっさに卍解を使った。結果モンスター共は死に、殺さぬよう調整した人間達は綱夜の卍解に中てられ発狂した。

 

「やはり使い勝手が悪いな」

 

 範囲にいる限りは強制的に対象となり、刻まれれば最後の効果以外は敵も味方も関係なく発現する。一対一か、一対多でしか使えない。

 

「………………」

 

 他に生き残りはいないか探そうとするが、やはりダンジョン内では巨大な魂が邪魔をする。そう、魂。ここは生きている。綱夜の卍解でも殺しきれない程に。

 綱夜の卍解に反撃するかのように灰すら残らず消えた妙なモンスターを生み出すなど、意思か………あるいは本能のようなものを感じる。

 

「来たか」

 

 魂の感知は出来ずとも気配を探ることは出来る。地上に逃げきれた者達が呼んだであろう救援と思しき複数の気配が降りてくる。

 

「っ!」

 

 やってきた冒険者達は広がる惨状に目を見開く。闇派閥(イヴィルス)やモンスターの死骸、冒険者達を見て困惑し綱夜に目を向ける。

 

食人鬼(グール)、貴様! 彼等に何をした!!」

「俺の魔法に巻き込んだ」

「っ!!」

「どのみち混乱し死ぬしかできなかった足手まとい共のために俺が加減する理由はない。さっさと連れ帰って慰めてやれ」

 

 心が壊れたと称したが、そういう能力ではない。能力によって受けた苦しみから心が砕けた。時間をかければ戻せるだろう。

 

闇派閥(イヴィルス)もまだ生きている。放っておいても新たに生まれたモンスターの餌だろうが、数人連れ帰って【ロキ・ファミリア】に渡しておけ」

「貴方の言葉など、聞くとお思いですか?」

 

 睨みつけてくるエルフの少女。他にも敵意を向けてくる冒険者達に、綱夜は目を細める。

 

「フィン達はいないのか………」

「話をそらさないでください!」

「………聞く聞かないはお前達の好きにしろ」

「っ! 何故、彼等にこのような!」

「命を殺すか心を壊すか、その二通りしかなかった。お前達が散々言ってきたことだろ、屍肉を貪るしか能のない、英雄のふりをした無能」

 

 それは冒険者が、ことさら誇りとやらが高いエルフが彼に聞こえるように囁く陰口。目の前の少女も口にこそ出さぬが屍肉鬼(グール)などという呼び方をした時点で内心ではどう思っているかなど、本人がよく解っている。

 それに対して綱夜は怒りも諦めも悲しみもなくただ事実を答える。

 

()()()()()()。命も心も救えなど、無能な俺に出来るものか」

 

 後に27階層の悪夢と呼ばれる事件はたった一人の存在により、冒険者の殆どが生き残った。それでも悪夢と呼ばれた理由は、多くの冒険者がその後数ヶ月本物の悪夢に魘されたからだ。




孤月の卍解
一番近いのは『花天狂骨枯松心中』

能力的に滅却師には基本有利に立てる。
相性が悪いのはジェラルド、リジェ。戦い方次第ではグレミィも天敵。
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