転生特典刀一本 作:護廷−十三番
人は誰しも自分なら出来ると思い込む。ましてやそれをなした相手が嫌いな相手なら、尚更。
綱夜の評判は更に下がり、石を投げた子供が投げ返された石で頬の肉を少し抉られたらしい。大人がやったら鼻と歯茎の骨を砕かれた。
何時かの正義の派閥が受け入れた民衆の詰りなど受け付けず、やり返す綱夜に表向きにはつっかかってくるものも居なくなる。ギルドとしても
「だからといって街へ出れば睨んでくる奴も多いやろうによく気にせんよな彼奴」
「人を見捨てるために人に興味を持たないようにしてるのさ。根は僕なんかより遥かに善良だね」
フィンは自身の名声のためにあえて綱夜の悪評を放置している。関わり、自分達の名に傷をつけたくないからだ。そんな自分に比べれば大概の人間は善良だろうが命を狙わぬ限り殺さず子供にも手心を加え、
おかげで刃傷沙汰に発展したのはあの後も一度だけだし。合計2回。成長を嫉妬され襲撃を何度も受けた【ロキ・ファミリア】の過去を考えればまだ数ヶ月とはいえ少なすぎる。
(彼を追い出そうとする眷属を煽って同盟を組む主神達もいるけど、その中でも誰が先に襲撃するかで揉めて足並みが揃ってないようだし)
誰も最初の生贄にはなりたくない。そして、それだけの猶予があれば裏で対処するのは容易い。正義の派閥である【アストレア・ファミリア】の団長のアリーゼが彼によく絡んでいるのもあって、冒険者はともかく一般人からは悪評が減りつつあるらしい。
「さっすが私の人気ね、フフーン」
近所の野良猫と戯れていた綱夜にまたなんの脈絡もなく絡んできたアリーゼ。最近多い。
「相変わらず鬱陶しい」
「辛辣! まあ別にいいけど、気にしませんけど!」
「ほら、ジャガ丸くんやるから」
「はむ! もぐもぐ……こんなんで、むぐ。騙されないんだからね!」
「………何故俺に構う?」
綱夜について回る悪評と、アリーゼに向けられる期待。それは相殺しうる。勝手な希望を押し付け、違えれば裏切られたと喚き散らす。事実時折アリーゼを裏切り者を見るような目で見るエルフの冒険者を見かけたりする。
「え、だって私貴方を独りにしたくないもの」
「………………」
何でこういう奴等がどの時代にも一人はいるのだろうか。
「どうせ俺をおいて先に死ぬくせに」
「むむ。説得力が違う」
古代から生きる存在なら、さぞ体験したであろう言葉。そして冒険者でなくとも人はいずれ綱夜より先に死ぬ。
「でも、生まれ変わった時代にも、きっと貴方が居るわ」
ない、と言い切れない人間を見ている綱夜としては言葉に詰まる。
「もちろん私は何も覚えてないんでしょうけど、私の正義の心が転生した程度で変わったりしない! 綱夜みたいな面白……んん。寂しそうな人を放って置けるわけないし、絶対また仲良くなろうとするわ! そしたら『お前は変わらんな』って、懐かしくなるの」
「そういう体験ならした」
小人族の英雄とか、勇者とかで。後フケ顔のドワーフとドワーフの戦士とか、エルフの喪女もとい処女と3桁間近の小娘とか。
王女と幼女は容姿は似てるが性格は似てない………。
「あら、じゃあまた体験できるわね」
「だがそれはお前じゃない」
「それはそうだけど」
あっさり納得した。何なんだ本当に。説得したいのかする気がないのかどっちなんだ。
「私はただ貴方と友達になりたいのよ」
「お前が?」
『百』と『一』なら一を取ると決めた綱夜。一の割合を増やせばその分、綱夜は動きづらくなる。仮にも都市の平和を願う女がそれでいいのだろうか。
「『一』を守るために『百』を捨てるのは、『一』が弱いからでしょ? なら簡単よ、私達が死なないぐらい強くなるの!」
「お前より強い奴等も古代にいた。死んだがな」
「んむぅ………でも、友達にならなきゃ私の来世を見つけられないわよ?」
「だから、それはお前じゃないだろ」
「でも、
「────」
核心をついてくるアリーゼに固まる綱夜。否定はしない。
「綱夜って、神様みたいに魂が見えるんでしょ? だから、本当はもう知ってるんじゃないの?」
知らない人間は知らないが、魂を覚えている存在なら、生まれ変わりを見つけられる。だが、見つけたところでそれは別人。別人だが、やはり生前を思わせるところが容姿以外にもある。
「でも、それが『ああ、やっぱりこいつだ』って思うには相手を知らなきゃでしょ? だから、友達。私は何度だって貴方に会いに行ってあげる。ちゃんと私という人間を理解しなさい? 簡単よ、私ってば神様達にきゃら? が濃いって言われてるもの!」
確かに濃い。様々な性格のいる冒険者の中でも一際輝いている。
「友達にならないと言ったら」
「付き纏う!」
──おい待て、いつから俺とお前が親友になった
──出会ったその時からさ! 未来の英雄たる私の親友になれるんだ。サインあげようか?
──いらん。というか勝手に友にするな
──え〜。はっ! さては照れ屋だな? 仕方ない、周りが勝手に友達だと思う程に付き纏ってあげよう! あ、フィーナさんやめ──! あー!!
どんな時代にも一人といったが、此処までの奴は流石に二度目だ。
「………解ったよ。ただ、俺の友達になるのなら俺がお前を優先して誰かを見捨てようと文句言うな」
『ああ、やっぱりこいつだ』、か。と空を眺める綱夜。ベルは今の所見た目と英雄を目指しているところ。フィンなら戦略眼、ドワーフの戦士なら酒………は、ドワーフはだいたいそうだ。ライラは結構そのまま。と………
「ムギャ!?」
考え事をしていた綱夜に人がぶつかる。持っていた袋から魚が一匹落ちる。
「あー!」
「……あ?」
その容姿を見て固まる綱夜。記憶の、一番古い場所が刺激される。
「おミャーのせいで魚が落ちちまったニャ! まけにまけさせて母ちゃんから受け取った金の余りで買ったのに!」
「…………それは、店に戻したほうがいいんじゃないか?」
「ニャ? おミャーはアホニャ。母ちゃんには全部使ったって言って、言わなければミャーのものなのニャ!」
──おい、それは冬の備えだ。勝手に食うと叱られるぞ
──ニャ? おミャーはアホニャ。どうせ春先にちょっと残ってるんだから、言わなければバレないのニャ
いや、まあ。前世との共通点を見つけて嬉しいと思うことは確かにあるけど、こんな共通点の見つけ方は流石にないんじゃなかろうか。よりによって、妻なのに……
「? なんニャ。人の顔をジロジロと……ミャーに見惚れたかニャ?」
「ああ」
「……………!? フニャー!!」
即答した綱夜にしばし固まった
「ああ、アーニャちゃん! あっちの豊穣の女主人で働いてるよ」