カントー地方に近い、元無人島のムアグ島。
一年中暮らしやすい気候のこの島に、僕は研究所を構えポケモンたちの研究をしている。
僕の名前はヒイラギ、マサラタウン出身の22歳。現在ポケモン博士として独り立ちして数年が経過したところの、新米ポケモン博士だ。
この年齢ともなると、まさに天才として多少は有名になったモノの、僕なんかよりも有名な人物が同年代に2人もいる。
オーキド博士の孫であり、ポケモンリーグ本部であるセキエイ高原にて四天王を破ったチャンピオンであるグリーン。
そんな彼をも破り、リビングレジェンドともいわれる伝説的ポケモントレーナーであるレッド。
そう、かの初代ポケモンである、赤・緑の主人公とそのライバルだ。
……うむ、彼らのことを指してそう称する人間というのはつまるところ、彼らが主人公とライバルであることを知っている人間である。
まぁ、結論から言えば僕ヒイラギは、異世界転生という奴をしたのである。
ガキのころから大好きだったポケモンの世界に転生した時、俺は正直絶望した。
ポケットモンスター縮めて『ポケモン』この星に住む不思議な不思議な生き物たち、海に森に町に、至る所で見られる彼らの種類は、俺の前世の記憶が正しければ当時ですら4桁に近づこうとしていたところだ。
そしてそのポケモン、非常にすさまじい能力を秘めている。
それも伝説のポケモンなどというすさまじい存在だけでなく、一般的なポケモンですらそうなのだ。
正直気が付いたらぽっくり死んでしまうのではないかと思った。
いくら好きとはいっても、ゲームとしてキャラクターとして好きなのであって、その世界で行きたいと思ったことは少ししかない。自分の命はいつだって大事だから。
まぁ、それはそれとして今の俺はどうなのかと言えば……結論から言えば、この世界に転生した後の生活には大満足である。
さて、一般的な異世界転生ならば、転生チートで俺ツエーとか、前世の知識で俺スゲーってなるのが妥当なところだろうが、ゲームはゲーム、現実は現実である。
ポケモン一匹一匹を育てるには時間もかかるし、理想通りには到底いかない。
つまるところ、ポケモントレーナーとして容易く行き止まりにぶつかった。無論一般的なトレーナーには負けるつもりはない。しかし、レッドとグリーン、そしてもう一人には置いて行かれた。
ポケモントレーナーとしての才能の差を見せつけられたといっても過言ではない。
まぁ、そんな彼らに唯一勝っていたのは人生2回目ということでの一般的な勉強である。彼らが足し算引き算を学ぶ間も、ポケモンについて勉強することに専念できた。故に傍目には天才少年に移っていた僕は、時間ができればオーキド研究所でポケモン研究の最先端を間近で学んでいた。
そしてタマムシ大学を飛び級で卒業し、オーキド博士の下で助手として活動し、いろいろあって今ではポケモン博士として独り立ちしている。
その間にロケット団が壊滅したり、他の地方で大事件が起きたりと、大体ゲーム通りに進んでいったが、正直僕自身にはあまり関係ない話だ。
そう、関係ない話のつもりだった。
さて、ポケモン博士となった僕には当然、研究テーマというものが存在する。
ウツギ博士であればポケモンのタマゴ、オダマキ博士であればポケモンの生態、ナナカマド博士であればポケモンの進化と言ったところだ。
無論彼らは自身のテーマ以外でも優れた知識を有しているが、それでも専門分野と言うものは存在する。
では僕の専門分野とはなんなのか、結論から言えば伝説のポケモンである。
概ね神話などに記されている、通常のポケモンと一線を画する強大な力を持ったポケモン。
その存在は非常に希少、下手すれば世界に一匹しかいないのではないかと思われるポケモン。故に正直なところ研究は進んでいるとは決して言えない。これはほぼ全てのポケモン研究に関わる者が首を縦に振ることだろう。
僕のメインの研究テーマはソレについてだ。
まぁ、実際の所はメインではなく、もう一つの研究テーマであるポケモンとの共存の方が成果は出ているのだが。
しかしやはりメインの研究テーマが進んでいないというのは実によろしくない。
はっきりと言えばスランプとなっていた僕の下に、あるメールが届いた。
メールの送り主は恩人であるオーキド博士。
「なになに、パルデア地方に行ってみないか?」
結論から言えば、アカデミーでの特別講師の依頼である。向こうで色々あってオーキド博士に相談があったらしい。
断る理由もなければ、研究が進む目途もない故に2つ返事で了承の連絡を送る。
さてさて、僕が教師なんてできるのかは分からないが……まぁ、どうにかなるだろう。
ムアグ島:本作独自のカントー地方近くに存在する島。ナナシマよりは間違いなく遠い。もともと無人島だったところを、島全体をヒイラギの研究所とした。モチーフはグアム
タマムシ大学:ゲーム本編には登場しないが、他の媒体で登場する大学。オーキド博士の出身校でもある。(ただし一部書籍ではタマムシ大学という呼称が書籍内に登場するにもかかわらず、T大学となってるため、異なると考える場合もある。本作ではタマムシ大学出身設定とする)