ポケモン博士ヒイラギは伝説を見る   作:藍戸優紀

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博士、パルデアに立つ

 飛行機に身を任せること数時間、地上に降りればその地はパルデア。

 

 事前に調べる限り、他の地方と同じように自然と文明のバランスの取れた人も動物も暮らしやすい地方。

 

 気候としては乾燥帯のこの地方だからこそ見つかるポケモンもいるのだろう。

 

 ……この地方独自の現象やあまり調査の進んでいない地帯もあるらしい、これはもしかしなくても伝説のポケモンの伝承があるかもしれない。

 

 これは研究が進むかもしれないな。

 

 

 

「さてと、迎えの人が来るらしいが―」

 

 空港から出て来れば、アカデミーから迎えが来るらしいので周囲を見回してみる。

 

 しかし残念ながらそれらしい人というのは見当たらない。

 

 スマホロトムを確認すれば、どうやら少し遅れてしまうと連絡があった。しっかりと事前に連絡をしてくれるのは本当に助かる。これだけで学園の責任者というものを信用ができると僕は考えた。

 

 さて、であれば何らかの手段で時間を潰さなければならないのだが……。

 

「……では空港近辺のフィールドワークをしておきます……っと」

 

 連絡を送れば、そのまま空港近くのポケモンが生息しているであろう場所へと向かっていく。

 

 

 

 向かった先は沼地の当たり。手持ちのポケモンの一体の力を借りて軽く空を飛んでここまで来た。

 

 目当てのポケモンはいるかな……。

 

 パット見たところ見当たるのはココガラやシキジカ、カムカメといった僕もよく知っているポケモンたち。事前に軽く調べた資料にも乗っていたが……いたっ!

 

 ピンク色をした一目に着きやすい派手なとりポケモン!

 

「確か名前はカラミンゴだったか!」

 

 シンクロポケモンのカラミンゴの群れ、ざっと見たところ7匹ほどいるようだ。

 

 研究のために連れて行くなら群れで捕獲したいと思っていたところ。

 

 昔の時代ならばそのまま危険に身を晒し、ボールを直接投げるのだろうが、今はポケモンの捕獲の定石というものが存在する。

 

 体の弱い人間が正面に立つのではなく―。

 

「よし、カイリュー!! 君に決めた!!」

 

 相棒のポケモンを前に出す。

 

 僕が出したのはカントー地方でも有名なドラゴンポケモンの一つ、カイリュー。

 

 僕が連れてきた、というよりも僕が捕まえたポケモンの中でも最古参。僕が旅に出る前に、おじいちゃんに連れて行ってもらったサファリゾーンで捕獲したミニリュウが進化した、一番の相棒だ。

 

 正直なところ野生ポケモンとは鍛え方のレベルが違う!

 

 7匹のカラミンゴが一気に攻め込もうとするも軽々と身をかわし、僕のカイリューは敢えて反撃をしない。

 

 なぜなら―。

 

「捕獲する前に倒してしまったら意味ないからね!」

 

 カイリューに意識が向いているカラミンゴの群れの背後に回り、脳天目掛けてモンスターボールを連続で投げる!

 

 さて、これが前世からの影響なのか、今世での僕の持つ才能なのか知らないが、僕は物を投げることに関しては天性の才能を持っている。

 

 マサラタウン内では、ピッチャーかポケモントレーナーのどちらかになるだろうと話題になったことも、あった気がする程度には名をはせている。

 

 故に、隙だらけのポケモンにボールを当てることなど造作もない。

 

 命中したボールはパカっと開き、その中にカラミンゴが吸い込まれて行く。そうなってしまえばボールは重力によって地上に落ち、まるで中に入ったポケモンが抵抗するように揺れ始める。

 

 ……この瞬間はゲームでもそうだが、現実となった今何年も繰り返してきた行為だが緊張する。

 

 そうしてアルセウスにもすがる気持ちで祈っていると、カチッという音が7つ鳴った。

 

「よーっし! カラミンゴゲット!」

 

 それ即ちカラミンゴの群れの捕獲に成功したということ。

 

 いつだってポケモンの捕獲に成功した時というのはテンションが上がる。

 

 それが初めて捕獲するポケモンであればなおのことだ

 

「よし、この調子で他にもポケモンを―」

 

 と、ポケモンの調査のための捕獲活動をしようとしていると、懐のスマホロトムが震え出した。

 

 どうやら調査している時間はもうないらしい。

 

「カイリュー、僕がぶっ飛ばない範囲で全力頼むよ!」

 

 それだけ告げれば、カイリューは頷き両の手で僕をつかむ。そうなってしまえばもう距離なんて関係ない。

 

 なにせカイリューは地球を約16時間で1周できる。無論全力では僕の方が耐えられないが、それでもすごい速さで移動できるのだ。

 

 

 

「遠路はるばる、わざわざお越しいただき―」

 

 空港に戻った僕を待っていたのは、間違いなく僕よりも年上の男性。

 

 その雰囲気はどこか僕の恩師たちを感じさせるものがある。多分、これはポケモン博士枠だな?

 

 ……ふむ、これは現ポケモン博士としての立場が危ぶまれるかもしれない。だって現地のそれっぽい人がいるということは、影が薄くなってしまうのでは?

 

 あちらもキャラ被りを恐れてか、こちらを値踏みするような―。

 

「……その、何かあったのですか?」

 

 いや、髪はボサボサ、服も泥まみれの僕の心配をしていたらしい。

 

 ……いかんな、助手以外の人間とのかかわりが少なくなっていたから、細かいことへの気配りが抜けていた。

 

「いえ、パルデアは初めてなもので、ポケモン博士として、そしてポケモントレーナーの性に従ってしまいまして……」

 

 言い訳にもならないことを口にしつつ、申し訳なさを表に出せば、向こうもどこか納得した様子でうんうんと首を縦に振っている。

 

 どうやらこれが通じる辺り、根っこはポケモンバカ(誉め言葉)の類であると見た。

 

「っと、自己紹介が遅れました、僕はヒイラギ。これからそちらでお世話になります」

 

 ひとまず全力のにっこりスマイルと共に、軽い自己紹介というか名前を名乗ってお辞儀する。

 

 挨拶は大事だし、名前を名乗るのも大事だ。それはどこの世界でも、どこの国でもきっと変わらないだろう。




 カラミンゴは強い。
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