アカデミーの校長であるクラベル先生に連れられて、アカデミーへと向かった僕を待っていたのは、なんとも頼もしい同僚たちであった。
それも四天王に元ジムリーダーまでいるというのだから、まぁ気後れする。
さて、しかしそれ以上に―。
「しかし、僕が何を教えればいいか?」
この問題が待っていた。同僚たちが概ね必要な授業は受け持っている。先生たちに予定ができた時の代役、などというのもできなくはないが、そのためだけに僕を雇うのはバカバカしいとすら思える。
故に僕も何かしらの授業を担当するのだが―。
「クラベル校長からは必修ではなく、選択授業だからやりたいことをやってくれて構わないなんて言われたが」
パルデアの外の人間であるが故に、外からの知識を取り入れさせるため、と考えれば納得はできるが……ふむ、困った。
一番専門に近いのは生物だろうが、当然ジニア先生がいるのだから僕が担当する必要はない。
というか、僕の研究のメインの伝説のポケモンの話は、本当に面倒くさい話になりだすので退屈だろう。
となると、もう少し軽いノリのモノの方がいいだろう。皆のためになって、その上で楽しい話……。
となると、いろいろな地方を見てきた僕らしいことをしよう。
「やぁ、皆さん、僕の名前はヒイラギ、人々からはポケモン博士と呼ばれることもあります」
初回の授業、生徒の皆にそれらしい挨拶をしよう。となれば当然ポケモン博士らしくしようではないか。
「ところで皆さんは、もちろんポケットモンスターと呼ばれる生き物を知っていますね?」
「はーい!」
僕からの問いかけに元気よく返事を返してくれる生徒もいる。なんとも気分がいい。
「ポケットモンスター縮めて『ポケモン』この星に住む不思議な不思議な生き物たち、海に森に町に、至る所で見られる彼らの種類は1000を超え、僕たちの研究はいつも新しい発見で満ち溢れています。とは言え、皆さんに今から僕の研究論文の話をしてもつまらないと思います」
実際問題、ファイヤーの目撃証言から推測される周回ルートと、春の到来の時期の関係……なんて話をしてついてこれる人間が学生の段階でいるかと言われると、多分学生時代の僕も無理だ。
だから、僕がするのは―。
「さて、そんなポケモンたちは身近な存在、多くの皆さんはポケモントレーナーであるし、これからもトレーナーであり続けることでしょう。ですのでこの授業、トレーナー学ではより良いポケモントレーナーとして生きるための知識、そして楽しくポケモンたちと暮らすコツを学んでいきたいと思います」
トレーナー学、無論それそのままな名称の教科というものは存在しない。僕が即席で作ったのかと言われればそれで間違っていない。
ポケモントレーナー、この世界においてはレディース&ジェントルメン、ボーイズ&ガールズ問わず大半の人間が肩書として持つことになるであろうモノ。至極端的に言えば、ポケモンをボールに入れて扱う者全てを指す言葉。その中で虫取り少年だったり、エリートトレーナーだったりと別れていく。
まぁ、つまりこの世界の人々によりよい人生をつかんでいただくための学問だ。
「さて、ではポケモントレーナーである皆さんには、狭義の意味でのポケモントレーナー、ポケモン勝負を行うものとしての立場で、今からする質問について答えてもらいます」
そう告げると共に、簡単なアンケートを配っていく。
無論成績をこれでつける気等はない、どう生きようとも僕はそれを強制する権利はない。
でも、そう生きて欲しいと願いはする。
『あなたにとってポケモンとはどのような存在ですか?』
『ポケモン勝負に勝つために必要なことは?』
『どんなポケモントレーナーと戦いたい?』
『ポケモンを育てるのに大事なことは?』
『強いポケモンと弱いポケモン、どっちが大事?』
見るモノが見ればフスベシティの長老が行っている質問だと分かるだろうか。
前世のころは当たり前のことだと思っていたが、それはゲームだから。現実になるとそれが分からなくなることもある。
だからこそ、僕は彼らに考えてほしいのだ。