春翔「よしっ、それじゃ今日のトレーニングは終わりだな」
秋華賞を終えたエアグルーヴの次走は来年のG1大阪杯
直近はレースもないので年末までスピードメインの軽めの調整だけだ
『あぁ。では、また後でな』
後で。今日は金曜日で放課後のトレーニングはたった今終了したところだ。生徒会業務も花の水やりも本日は終了している。本日エアグルーヴがトレーナーに会うタイミングはないはずだ。
現に、トレーニングを終えた他のウマ娘たちも各々のトレーナーに「また、来週ね」と伝えている。
ということは、エアグルーヴには、トレセン学園外でトレーナーに会う予定があるのか。
軽いシャワーと着替えを済ませたエアグルーヴが向かった先は自身の部屋がある栗東寮…ではなく、トレセン学園から程近いスーパーマーケットだった。
『ふふっ今日は何にしようか♪』フンフン
鼻歌まで歌ってご機嫌な様子だ。エアグルーヴは他の生徒たちと同様にカフェテリアや寮で食事をとれる。なのにわざわざ食材を買いに来るのは弁当のためだろうか?
しかし「今日は何にしようか」という言葉が気になる。今日はもう学校はおわっている。彼女に残ってる食事は夕食だけのはずだ。
買い物を終えた彼女が向かった先はやはり栗東寮…ではなくとあるマンションの一室。
玄関前の表札には「四宮」。そう、ここは彼女のトレーナー…いや、恋人の部屋なのだ。
慣れた手つきで合鍵を取り出しガチャリと開けると、何の挨拶も、躊躇することもなく中へと足を進めていく。
洗面所で手洗いうがいを済まると、クローゼットから適当な部屋着に着替え、買ってきた食材たちを冷蔵庫へと収納していく。
炊飯器をセットし、ランドリールームへ行くと洗濯物を回収し丁寧に畳んで所定地へとしまっていく。ワイシャツはシワひとつ残さずアイロンをかけ、ハンガーにかけておく。
続いて寝室へと向かうと軽くベッドメイキングをしてリビングに戻る…かと思いきや…?
彼の枕へと手を伸ばすと…
スゥー
はぁー
それに顔を埋めて深く深呼吸をした。
ピコンッ
LANEの通知音で目覚めると
「今から帰る」
との彼からの簡易的なメッセージを見て自然と笑みがこぼれ、尾が揺れるのを感じる
『急がなければ』
忙しくエプロンを身に付けキッチンへ向かうと手際よく料理を作っていく。
ガチャッ
『!』
彼が、帰ってきた…!
パタパタ
『お帰りなさい春翔さん』ブンブン
「ただいまエア」チュッ
『ふふっ』
『もうすぐ夕飯ができる』
『着替えて待っていてくれ』ピコピコ
「おう。いつもありがとうな」
スタスタ
『うんっ、上出来だ』
ピピーピピーピピー
炊飯終了の音がする
完成した料理とツヤツヤの白米を盛り付けて食卓へと配置すると丁度彼が戻ってきた
「おおっ、今日もうまそうだ」
『「いただきます」』
モグモグ
「はぁーやっぱエアの手料理は最高だな」
「これなしじゃ俺もう生きてけないかも」
「今日のために一週間頑張れるまである」
『ふふっ嬉しいことを言ってくれるな?』
「はやく毎日食べれるようになりたいなぁ」
『いずれ、な?いまはまだ、おあずけだ』
「むぅ」
『ほら、はやく食べないとせっかくの料理が冷めてしまう』
『この後の時間も減ってしまうぞ?』
「ほんっと、俺の扱いがうまいなぁ」
モグモグ
「『ごちそうさまでした』」
以前のように
「片付けは俺がやるよ」という言葉は聞こえなくなった。
代わりに彼は浴室へ行き、風呂掃除をして浴槽にお湯を張る
夕食の片付けを終えたエアグルーヴと風呂掃除を終えた春翔は入浴の準備ができるまでソファーでテレビなんかを見ながらくつろぐ。
この日は金曜ロードショーで某有名映画が地上波初公開だったため、それを見た…というのはこじつけだ。
本当は
『ん、んぅ、もっとぉ』
「うん?はむっ、ちゅっ」
「エア?」
『うん?』
「口、軽く開けておいて」
『?』アー
「嫌だったら言ってくれ」
レロッ
『!?』ビクッ
突然、彼の舌が入ってきた
「んー、ちゅるっ、れろ、はむっ」
彼の舌が私のに絡み付いてきたと思いきや、吸われ、歯茎をなぞられ、くすぐったい
そう思ったのも束の間見よう見まねで彼の舌を吸うと、えもいわれぬ快感が襲ってくる。
もっと、もっと彼を味わいたい、そう思うとしただけでは足りなくて、彼の唇や頬の内側、歯や歯茎に至るまで己の舌でなめ回した。
まだ足りない、もう少し…
「お風呂が沸きました」
全くもって空気を読むことができない機械ふぜいに邪魔をされ、彼とのお楽しみは終わりを迎えた。
それが悲しくて、寂しくてシュンと耳と尾を垂らしていると「また後でな?」「今は風呂入っておいで。今日も疲れたろう?」と彼の優しい声が垂れているはずの耳に届く。
ほんとか?約束だぞ?
そう言い残して彼女は浴室へと向かった。
「はあぁー」
助かった
そう思った
このままお知らせが来なければ、俺はドコまでしていたのだろう。
もし、もしも、この先に進みかけたとして、彼女は抵抗してくれるだろうか
いったいいつから自分はこんなにもガマンが効かなくなったんだろう。
いや、彼女のせいだ。エアが可愛すぎるのが悪いんだ。軽率に愛する人へと責任転嫁をする。
ガチャリ
浴室の扉が開く音がする。
それと同時に春翔は戸棚から何かを取り出す。
『あがったぞ』
「おかえり、ココ座って」
『よろしく頼む』
彼女からそう言われると春翔はドライヤーとブラシを手に取り彼女の綺麗な髪と尾をケアしていく。
丁寧に。丁寧に。傷つけないように。
最後にオイルとブラッシングをして、入浴後のケアは終了だ。
『ありがとう。もう、かなり板についてきたな』
「おかげさまで?」
「んじゃ、俺も入ってくる」
浴室からシャワーの音が聞こえるとエアグルーヴは再びキッチンへ立ち、食後の紅茶の準備をしておく。彼は少し甘めのアールグレイが好みだ。代わりにお茶請けは甘さを控えめにしておく。
「はぁ落ち着くなぁ」
入浴を終えた春翔が愛する人が用意してくれたお茶を口にすると、いつもその言葉が返ってくる。
「そろそろ寝るか」
ティータイムや後片付け、歯磨きを終えると彼がそう言った。
『そうだな』
私もそれに同意を示すと、二人別方向へと向かい、戸締まりや消灯をチェックしていく。
そして寝室で再び合流すると、エアグルーヴは既にベッドに入っている彼の腕のなかに潜り込む。
「おやすみエアグルーヴ」チュッ
『あぁ、おやすみなさい』
愛するヒトの体温や大好きな匂いに包まれながら、こんな日々が永久に続けばいいのに…そんなことを考えて微睡みへと落ちていく。