幸せになりたいトレーナーとエアグルーヴ   作:たわけ

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同棲生活の終わりと大阪杯

「はぁ」

『なんなんださっきから』

「だってぇー」

 

『はぁ』

「エアだってそーじゃん」

『当たり前だろう』

 

「『はぁ』」

 

2人きりにしておいたら永久にイチャイチャし続けるこの2人が揃いも揃って新年早々絶望感を表面に大々的に押し出しているのには当然理由がある。

エアグルーヴは学生であり現在は、いや明日まで

は冬休みなのだ。世の中の学生にとって長期休みの終了など受け入れがたい苦しみでこそあるが例年のエアグルーヴはそうではなかった。

それはこの2人の関係にこそある。

2人は今現在恋人同士で婚約者でもある(親、学園公認)そして、休みである今は同棲中なのだ。

休みだから同棲中

つまり

休みが終われば今まで通り週末のお泊まり以外では彼の家には入り浸れないのだ。

 

そして、そう思っているのはエアグルーヴだけではない。

エアグルーヴ大好き教の教祖であり、彼女の恋人兼婚約者の春翔も離れがたく思っていた。

 

『な、なぁ、休みが終わってからも…「ダメだ」』

「そうなったらきっと公私の区別がつけられなくなる」

「俺は恋人である以前に1人の大人として君を正しい方向に導く義務がある」

「だから、この関係が終わるまでは」

『そ、うだよな、すまない、ワガママを言って』

「ごめんね。俺もエアと一緒に居たい気持ちは同じなんだ、でもただ欲望に従っているだけじゃダメだから」

 

グウゥー

「『!』」

『ふふっ』

『夕飯にしよう』

「うん」

 

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夜 寝室にて

 

ギュー

ナデナデ

チュー

 

『うんー?どうしたんだ急にそんな…』

「離したくないなぁーって」

「夜が明けなければ、このままエアを離さなくて済むのに」

『そうだな、』

『私も春翔さんと離れがたく思っているんだ、この温度が重さがどうにも癖になってしまって』

『…戻ったら、もう眠れないかもしれないな』

「そうなったらどうしよ、困っちゃうねぇ」

『だな…なぁ、今夜はいっぱい甘やかして欲しい』

『寝るまでこうやって撫でて甘い言葉をかけて、朝まで腕のなかで居させて欲しい…』

「いいよ」

「キスしとく?」

『あぁ』

チュッ

[newpage]

翌日 夕方

 

『…そろそろ、戻る』

「っ、あぁ」

「送るよ」

『あぁ』

 

スッ

「暗いから、危ないから」

『あぁ』ギュッ

 

ダメだ

離したくない

離れたくない

ずっと信号が赤ならば

今この瞬間にどうしようもない悪天候になれば

俺の意志が、折れてしまえば

 

そんなのは幻想でしかない

信号は必ず青になるし

天気だってどんなに悪くてもいずれ必ず回復する

俺の意志が折れれば、もう教育者には戻れないし、きっと後悔する

 

あぁ、つらい

やっと、やっと、一緒になれたのに

一緒に居られない

明日になればまた会えるのに

この冬はあんなにも短かったのに

今彼女と別れて、また明日会うまでの

たったの数時間は無限のように永いのだと思ってしまう

まだ、別れてすら居ないのに

もう、会いたい

つらいなぁ

 

ついて、しまった

 

ギュッ

『…それでは、また、明日』

「…あぁ、明日、な」

 

あぁ、離れていってしまう

温もりが、消えていく

耐えられない

 

ギュッ

チュッ

『!?』

『は、ると、さん?』

『ここは、もう、寮の前で』

「ごめん。でも、一回、もっかいだけ」

『…うん』

チュッ

「おやすみ」

『おやすみなさい』

 

スタスタ

 

スタスタスタスタ

 

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「はあぁー、寝れねぇ」

「ベッド、こんな広かったか?」

「なんか、寒いし」

「はぁ」

 

---------------------------------------------------------------------------

ガサゴソ

ゴロゴロ

 

ファ「グルーヴさん?眠れないの?」

『あぁ、すまないな眠れないだろう?』

ファ「ううん、気にしないで。グルーヴさんこそ大丈夫?」

『大丈夫、じゃ、ないかもしれんな』

『その、あまり、誉められたことでは無いことはわかっているのだが』

『冬休みの間、彼と生活を共にしていてな、その、共に寝ていたから…』

ファ「それで落ち着かないんだぁ」

『あぁ』

ファ「それは、慣れるまで大変かもね」

『すまないな』

 

[newpage]

そんなこんなで元の生活にも慣れてきた頃

 

「よしっ、この調子なら大丈夫だな」

『スタミナもまだ余裕があるぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

実況「見事サイレンススズカを差しきり、G1大阪杯を制したのはエアグルーヴ!!まだまだ止まりません!この快進撃は一体どこまで続くのか!この娘を止められるウマ娘は居るのか!?」

 

 

「おめでとう、エア!よく頑張ったな!!」

『当然の結果だ、だが春翔さんの力でもあるんだぞ?』

「ありがとう」

「さっ、ライブ行っておいで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時はまだ知らなかった

この好調が、幸せが

崩れ去ってしまうだなんて

一番大切なものを

失ってしまうかもしれないなんて

 

知らなかった

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