幸せになりたいトレーナーとエアグルーヴ   作:たわけ

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悪夢であれ

7月

「うん!いい仕上がりだな」

『タイムは?』

「ん」

『ふふ、これなら来週の宝塚記念も申し分無いだろうな』

「だな、だが慢心は良くないぞ?」

『当然だ結果が出るまで休まる気などない』

「なら良かった」

 

 

 

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宝塚記念当日

「行ってこい、エアグルーヴ!」

『あぁ、しかとその目に焼き付けておけ』

 

実況「さて一番人気はもちろんこのウマ娘だ!」

実況「ここまで無敗、史上初無敗でトリプルティアラを制した女帝エアグルーヴ!!」ウォー

 

ガコンッ

実況「さあ、ゲートが開いて各ウマ娘一斉に飛び出して行きます!」

実況「まず先頭に立つのは6番サイレンススズカだ、一番人気エアグルーヴはその4バ身後現在3番手です!」

 

 

実況「曲がって最後の直線!おおっと!ここでエアグルーヴが仕掛けた!エアグルーヴがあがってきたぞ!!先頭サイレンススズカは逃げ切れるか!?」

実況「異次元の逃亡者に女帝が迫る!!先日の大阪杯の雪辱を果たせるのかサイレンススズカ!それともエアグルーヴがまたも差しきるのか!?」

実況「2バ身、1バ身!着実に迫ってくるエアグルーヴ!!おおっと!ここでサイレンススズカも加速する!!!速い!速いぞ!どちらが勝つんだ!どちらが前へ出るんだ!分からない、分からないぞ!!」

実況「負けじとエアグルーヴも加速する!だが!だが!サイレンススズカも譲れない!!どっちだどっちが先だ!もつれあってゴールイン!!!」

実況「掲示板は!?…写真判定です!!!」

 

実況「さあ、まもなく判定結果がでまs6番だ!!サイレンススズカだ!!!女帝敗北!G1宝塚記念を制したのはサイレンススズカだ!」

 

[newpage]

負け、たのか…?

私が?

なぜ?

自分でも最高の状態で、最高の走りが出来たと自負している

なのになぜ、負けたんだ…?

 

スズカ

なぜ、私は…

 

どんな顔をして彼に会えば…

 

 

 

 

 

「エア…」

『…すまない。負けて、しまった…』

「エアのせいじゃないだろ。謝らなくていい」

「まずは、お疲れ様。よく頑張ったね」

『…』

「…ライブ、行っておいで」

『…あぁ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[newpage]

それからというもの数日間話題はそれで持ち切りだった

 

女帝敗北!

エアグルーヴ初の敗北!!

最高の走り!

作戦が悪かった

敗北はトレーナーに原因

トレーナーが無能

トレーナーは責任をとるべき

トレーナークビにしろ

トレーナー変われ

トレーナー死ね

 

 

「すまない。エア」

『もう謝るなと何度も言っただろう』

「うん、でも、ごめん」

「それと、しばらく俺の部屋に来るのは控えて欲しい」

 

 

 

そう、だよなぁ

俺が、ちゃんとしていれば

俺が、無能じゃなければ

スズカの二の足を予測できていれば

もっと早く仕掛けさせていれば

俺がトレーナーじゃなければ

俺が彼女と出会わなければ

俺が生まれて来なければ

 

 

 

 

 

おれのせいじゃないか

 

[newpage]

翌日

 

ん?

おかしい

いつもならとっくに来ているはずなのに

体調でも悪いのか?

であれば連絡は来るはず

ではなぜ

 

『はぁ、仕方ない』

 

 

春翔自宅

ピーンポーン

ガチャガチャ

『いないな』

そう言って合鍵を使うと

そこには衝撃的な光景が広がっていた

その様子はまさにゴミ屋敷だ

そこらじゅうにお酒の空き缶やテキトーなお惣菜のゴミが散らばっていて、普段キレイ好きの彼からはまず想像できない姿だった

 

そして

見つけてしまった

 

『こ、れは…』

プルルルルル

ビクッ

『は、はい』

お母様「あんた!いまどこにいるの!?テレビ見れる!?」

『!?は、はい』

ピッ

 

速報です

先ほど路上で

トレセン学園所属でエアグルーヴの担当トレーナーである四宮春翔さんと思われる男性が、全身に2ヶ所の切り傷、刺し傷や複数の打撲痕を負った状態で発見されました。

発見時にはすでに心肺停止のようでしたが…

 

 

 

 

 

え?

なんて

しんぱいていし?

はるとさん

トレーナー

刺し傷

打撲痕

 

うそ、だ

 

バタッ

お母様「ちょっ!エアグルーヴ!!?」

 

たったったったったったったっ

 

 

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トレセン病院

 

たったったったったったったっ

バタバタ

『はあっ、はあっ、はあっ』

『はると、さんっ!』

『すみません!こちらに四宮春翔という患者は』

ナース「四宮さんの担当さんですね」

『はい』

ナース「申し訳ありませんが、ご家族以外の方は…」

『婚約者です!彼に血縁のある者はいません!』

ナース「ですが、『お願いします!!』」

ナース「…まだ、処置中ですが…」

『!ありがとうございます!!』

 

 

おいっ!輸血まだか!!

心破裂してます!!!

血ぃ止まんねぇぞ!!

オペ室まだか!!

頭蓋骨も損傷あります!!

なんだよこのひでぇ折れ方は!

 

 

『あ、ああ、は、はるとさんっ!!』

『やだ!死んじゃやだ!!!』

『たのむ!起きてくれ!!』

『はるとさんっ!!起きてっ!!』

 

たったったったったったったっ

お母様「エアグルーヴ!」

お父様「春翔くんは!?」

『死んじゃう、はるとさんが、わたしの、わたしのせいで!!!』

お母様「落ち着きなさいっ!」ギュッ

『で、でもっ!』

お母様「きっと、大丈夫だから」

お父様「大体、どうして彼が傷ついた原因がエアグルーヴになるんだ」

『い、えに、春翔さんの家に手紙が』

お母様「手紙?」

『私がレースで負けたから』

『彼に誹謗中傷の手紙がいっぱい、きてて、雑誌も』

お父様「そういうことか」

お父様「彼はそういう非人道的な連中に傷つけられたのだろう。心もあの身体も」

お母様「そんな…」

 

よしっ、オペ室運ぶぞ!!

ガラガラガラガラ

 

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数時間後

『…まだ、終わらないのか…?』

お父様「大丈夫だ。出てこないということはまだ生きているということだろう」

『でも、』

お父様「落ち着きなさい。私たちに出来るのは待つことくらいだ」

 

 

 

 

 

 

ウィーン

ガラガラガラガラ

 

『「!」』

『春翔さんは!?』

医者「…とりあえず一命は取り留めましたが…」

医者「脳の損傷も激しかったので身体が治っても意識が戻らなかったり記憶障害、言語障害などの後遺症が残る可能性が高いです」

医者「それに、身体もとても損傷が激しかったのと元々の骨の形成が不自然だったのであまり満足の行く仕上がりではないです」

医者「万が一のことも覚悟しておいてください」

『そ、んな…』

 

[newpage]

 

『なあ、寝すぎではないか?』

『一体何日寝てると思ってるんだ』

『流石に寂しいぞ、もう皆夏合宿も始まっているんだ』

『…覚えているか?去年約束しただろう』

『今年こそ一緒に花火を見ようと』

『あぁ、ということは、私たちはもう付き合って1年になるんだな』

『…はやいなぁ』

『…頼む、たのむよ、起きてくれ』

『もう半年したら卒業なんだぞ』

『けっこん、するんだろう?』

『私を妻として娶ってくれるんだろう?』

『…起きてくれっ』

 

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