幸せになりたいトレーナーとエアグルーヴ   作:たわけ

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過去と真実とこれからと

これは、退院後のお話

 

春翔の退院後女帝は「まだ心配だからお世話をする」という大義半分「一緒にいたい」という欲望半分で些細な同棲生活を送っていた

 

『では、おやすみなさい春翔さん』

「うん、おやすみエア」チュッ

 

 

早く消えろ

無能

クズ

穀潰し

お前なんていなければ

辞めろ

死ね

 

 

 

バッ

「っ!はあっ、はあっ、、ゆめ?」ビクビク

「えあ」ギュッ

『…う、ん?』

『どうしたんだ?からだがいたむか?』

「…そうじゃ、ないけど…」

『…夢か?』

「うん」

ピッ

「エア?わざわざ常夜灯なんて…」

ギュー

『大丈夫だぞ、』

『わたしがいるからな』

「!」

「…うん」

『…どんな夢だったんだ?』

「いろいろ」

「ちっちゃいときのもあれば、この間のも」

「…いっぱい嫌なこと言われた」

『…そうか』

『なあ、春翔さん』

『あなたを傷つけるもの全てと、私』

『貴方にとって大きいのはどちらだ?』

「エア」

『そうか、なら安心してくれ』

『奴らがあなたの事を認めることはあっても、私が貴方を侮蔑することは決してない』

「でも、怖いんだエアに会えなくなったら、エアを傷つけてしまったらって」

『そうだな、私が春翔さんを拒絶することはない』

『私はずっと側にいる。だから、嬉しいのも悲しいのも傷つくのも全部一緒だ』

「…うん」

『それでも不安ならこれからも証明し続けていこう』

「ありがとうエア」

『な、なぁ、その結局この前の顛末は…?』

「あ、れはな」

「その、ネットとか手紙とか雑誌とかでイロイロ言われて、自分でも納得しちゃって」

「どうにでもなれって居酒屋で潰れるまで飲んで、帰りに偶然アイツらに出会って」

アイツら…彼に暴行を与えた者共だろう

「俺はエアのトレーナーだから相手に暴行を加えるわけにいかなくて」

「諦めちゃったんだ」

『そう、だったのか…』

『すまない、もう誰にも傷つけさせないと言ったのに…』

「ううん、今は傷ついてもエアが癒してくれるから」

『それでもだ』

『それでも、私は、春翔さんに傷ついてほしくないんだ…』

『傷つくことに慣れて欲しくないんだ』

「そっか…じゃあエアに守って貰おうかな」

「俺はエアを守るから」

『っ、また都合の良いことを…』

「でも生きていく上で傷つかないなんてムリでしょ?」

『はぁ、わかった』

「よかった、よかった」

『寝るぞ』

 

 

 

『眠れそうか?』

「んー」

『こちらへ来い』

ギュー

トントン

「ん、良い」

「…エアの声ききたい」

『あぁ』

『なんの話をしようか』

「なんでもいいよ」

『では昔ばなしでも読んでやろうか?』

「ふふっ、それもいいかも…」

 

 

[newpage]

退院後の同棲生活

 

『ああっ、こら、勝手に動くな』

『悪化するだろう』

「トイレ行くだけだって」

『両手使えないのにか?』

「…どうにかなるかなって」

『ならなかったらどうするつもりだったんだ…』

『ほら、行くぞ』

テクテク

ガラガラ

『動くなよ、脱がすからな』

シュルシュル

『ん、ほら、支えてやるから座れ』

 

 

 

エアは流石に過保護がすぎると思う

食事、風呂、睡眠、果てには下の世話まで住み込みでやっている。

もちろん嬉しいのだが…

さすがにさ!!トイレはね!!

恥ずかしいんだよ!!俺だって!!!

 

いや、まあ、でも、方法が見つからないんだし、しょうがないような気がしないでもないんだけど

 

 

『ん?どうした?あぁそろそろ昼食の時間だな、すまない』

「あ、ありがとう」

 

そして恐ろしいことに何故か声を発することなくコミュニケーションを取れつつある

 

 

『よし、できたぞ』

『ほら、口を開けろ』

「あーん」

モグモグ

ゴクッ

「ん、今日も美味しいよ、ありがとエア」

『当たり前だろう、何を今さら、まったく…』

 

 

 

 

 

『ん?もうこんな時間か風呂に入るぞ』

シュルシュル

『っ、やはり、痛々しいな』

ナデナデ

「大丈夫だよ」

『…私が大丈夫じゃない』

 

傷のある部分をビニールで保護し、適度な水温の湯で頭のてっぺんから爪先まで洗って貰う

 

余談だがエアのシャンプーはめっっっちゃ気持ちいい

 

風呂から上がり暖房の効いてる部屋で身体を拭かれた後は保護してあったものを剥がし消毒して薬を塗り、また新しく保護して貰う

 

嬉しい、嬉しいのだが

…つらいな

エアが均整の取れたキレイな顔を歪ませ、今にも泣きそうな顔をしながら、腫れ物でも扱うかのように傷に触れる

その姿を見るのが、つらい

 

 

『終わったぞ』

「ありがと」

 

 

 

 

 

『ほら、寝る前の白湯だ』

いつもは、寝る前にお茶やホットミルクをいれてくれるのだが退院してからは薬を飲まなければならないため白湯に変更になった

エアは今まで通りで何にも問題がないはずなのに彼女もまた同じく白湯を飲む

 

彼女のことだ、きっと「エアはお茶飲んでも良いんだよ」なんて言っても『私もおなじものを飲む』と言って聞かないんだろう

 

でも、自然と同じものを口にし、同じことをして過ごすのは、なんとも"家族"らしさを醸しているようで、くすぐったい

 

 

 

歯磨きだってそうだ

彼女の膝の上で仰向けになり、えずくことの無いように優しく、優しく磨いてくれる

 

 

寝るときは不安にならないように俺が眠るまで優しく撫でたり話しかけてくれる

 

俺が悪夢や身体の痛みで夜中に目を覚ましても彼女はいつもすぐに気がついてケアしてくれる

彼女だって眠いだろうに、疲れているだろうに

 

『私は春翔さんの役に立ちたい』

そう言って止めてはくれないんだろう

 

そんなことを考えながら今日もまた眠りにつく

彼女の温もりに触れながら

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