VTuberなんだけど百合営業することになった。   作:kattern@GCN文庫5/20新刊

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第一部 金盾凸待ちに失敗したら事務所で一番怖い先輩が来た件について
第1話 金盾凸待ちに誰も来ないなんて、嘘バニじゃん……。


 やばい!

 やばいやばい!

 やばいやばいやばいやばいやばい……!

 

 コメント欄を埋め尽くす「凸待ち0人」「15分経過」「配信事故」の文字。

 わざわざ言われなくても、配信している本人が一番よく分かってる。

 

 これが取り返しのつかない大事故だって。

 

 そんな状況で赤スパが飛んだ。

 投げたのはデビュー当初から応援してくれている古参のメンバーさん。

 

『ばにらちゃん。金盾達成おめでとう。DStars3期生は、忙しくてこれないみたいだけれど、俺たちカメコ(メンバーの愛称)がいるよ。だから泣かないで』

 

 気づかいで泣いてまうわ。

 感極まって天井を見上げると、私のアバター「川崎ばにら」も上を向いた。

 

 不幸というものは突然降ってくる。

 それも「人生最大の幸福」が「壮大な前振り」であるかのように。

 

 VTuberアイドルグループ「DStars」。

 

 3期生。

 川崎ばにら。

 

 レースクイーン×バニーガールがコンセプト。

 ちょっぴりセクシーな衣装に清純派な黒髪ロング。大人びた印象のアバターはゲームをやらせても、雑談をやらせても、企画をやらせてもウケが良い。

 

 動画再生数は常に10万以上。

 同接数も平均5万人。

 1回の配信のスパチャ総額は100万越え。

 

 VTuberの王。(レースクイーンだけど)

 

 そんな「川崎ばにら」の記念すべき金盾配信(チャンネル登録者数100万人に到達した配信者に、YouTube運営から金の盾がおくられる。これを祝福する配信)で、私はよりにもよって凸待ち(ゲストからの電話を待つ配信)を選択した。

 

 グループ内でちょっと浮き気味。それでなくてもコミュ障な私。

 だが、世話してくれる先輩もいるし、頼もしい同期もいる。

 大丈夫。

 凸待ちしてもゼロはない。

 

 そう信じたのだ。

 

 なのに、誰も来ない!

 15分間、気まずい空気が流れっぱなし!

 言いわけのできない「配信事故」を私は起こしてしまった!

 

 もちろん、こうなったのには理由がある。

 

「このたびは、私こと網走ゆきの配信の中で、リスナーを不快にする不適切な発言があったことをお詫び申し上げます」

 

 頼りにしていた先輩「網走ゆき」が金盾配信前日に炎上した。

 ゆき先輩は謝罪配信のあと、一ヶ月の配信自粛を宣言。

 当然、私の凸待ちに出られるわけがない。

 

 さらに不幸は続く。

 

 金盾配信の時間を発表した矢先、スマホに通話が入った。

 相手は、同期の頼れるまとめ役「八丈島うみ」。

 

「ばにら! お前、金盾配信やるのか!」

 

「うん、やるよー。うみたちも出てよ」

 

「バカ! 全体のスケジュールを確認しろ!」

 

「……へ?」

 

 言われて事務所からもらったスケジュールを確認する。

 そこには――金盾配信と同時刻に「同期4人の企業案件」の予定が書かれていた。しかもよりにもよって客先収録。「ちょっと失礼して、ばにらちゃんの配信にお邪魔しまーす」など、とてもじゃないができない。

 

 完全に私の不注意だった。

 

 かくして、「根回しなしのガチンコ」になった金盾凸待ち。

 はじまる前から事故の気配が漂う配信は、誰も凸する者がいないまま現在に至る。

 

「……あ、あはは。みんなきっと、忙しいバニな」

 

 空元気で笑っても流れは変わらない。

 

 同時接続者数は過去最高を更新。

 Twitterでは「ばにら配信事故」がトレンド入り。

 コメント欄には心配の声に混じりアンチのコメントが流れ出す。

 

 配信画面から染み出るお通夜感。

 意地で川崎ばにらは笑顔を浮かべる。

 

(こんなの、もう無理だよ)

 

 けれど、川崎ばにらの中の人――私の心は限界だった。

 

 今すぐこの場から逃げ出したい。

 VTuberなんてやるんじゃなかった。

 そもそも王なんて柄じゃない。私はただ、ゲームが好きで、みんなと雑談するのが好きで、誰かを楽しませたり驚かせたりするのが好きなだけ。

 

 それくらいしか取り柄のない人間なのだ。

 

(なのに、なんでこんなことになっちゃうかな)

 

 罵詈雑言で埋め尽くされるコメント欄。

 私はDiscordでそれを隠す。

 

(もう、無理だよ……)

 

 金盾配信がそのまま引退配信に代わろうかというまさにその時――Discordにメッセージが届いた。

 差出人は謹慎中のゆき先輩。

 

『banira daijoubu ka?』

 

(……大丈夫じゃないよ、ゆき先輩!)

 

『yuki ga nanntoka siteyaru de!』

 

(……なんとかって?)

 

 返信する間もなく凸待ち用のボイスチャンネルに入室音が鳴り響いた。

 アカウントを確認する暇も凸へのリアクションする暇も与えず――彼女は私の金盾配信に降臨した。

 

「あ、こんバニこんバニ~♪ DStars3期生の『川崎ばにら』バニ~♪」

 

 私の挨拶のモノマネで。

 

 なまりの入ったロリボイス。

 声だけで伝わる底抜けに陽気な感じ。

 しかし、その中に滲む圧倒的なVTuberとしての存在感。

 

 反応が遅れた私に先輩が無言の「圧」をかける。

 それでようやく我に返った。

 

「ちょっ、人の挨拶パクらんでもろて!」

 

「でゅははは! どうも、DStars特待生の『青葉ずんだ』だよ!」

 

 凸待ちに現れたのは「青葉ずんだ」。

 3期生の前にDStarsに「特待生」として加入した先輩だった。

 

 急いでずんだ先輩の立ち絵を私は用意する。

 

 黒いボブヘアに丸い犬耳。

 茶屋で働く女の子のような和服に白エプロン。

 まさに「和ロリ」というガワ。

 

 こんなかわいい娘が人気にならないはずがない。

 彼女もまた日本国内では五本の指に入る人気VTuber。

 ちなみに「川崎ばにら」が世に出る前「金盾達成が最も期待できるVTuber」と言われていた人でもある。

 

(ゆき先輩のなんとかするって、こういうこと……?)

 

 ただし――。

 

「すごい! ずんだ先輩が来てくれたバニ! ありがとうバニ!」

 

「いやぁ~、やらかしたなぁ、ばにらちゃん」

 

「な、なにバニか?」

 

「15分誰も来ないなんて大事故だで。しかもよりにもよって金盾配信て」

 

「いやいや。ずんだ先輩が来てくれたから、今日はもう大成功バニ」

 

 彼女にはとても強烈な個性があった。

 一瞬で場の空気を変容させる――「圧」という個性が。

 

 スッとずんだ先輩の気配が代わる。

 

 どこか騒がしかった会話の空気が一変する。

 コメント欄も途端に静まりかえる。

 アンチさえ、彼女の迫力の前に黙り込んだ。

 

「……え、分かってるよね?」

 

「……あ、ちょっ」

 

「ずんだがさぁ、今日はなにしてたかばにらちゃんは知っとるん?」

 

「あ、ずんだ先輩は。今日の昼まで、レトロゲーの耐久配信しててぇ……」

 

「そう。昨日の8時から。ロックマン2クリア耐久。完徹16時間コースよ」

 

「よ、よく起きられたバニね……あはは……」

 

「そこ、笑うとこちゃうでな」

 

「はい」

 

 これぞ、ずんだ先輩をVTuberの頂点へと導いた伝家の宝刀。

 リスナーも共演者も問答無用で黙らせる「圧」だ。

 

 この強烈な個性のせいか彼女は基本的に他人の配信に顔を出さない。

 おそらくだけれど、自分の配信ならまだしも他人の配信でうっかり「圧」を使ってしまい、場が凍りつくのを彼女は危惧しているのだ。

 自分でそうしているのか、事務所に止められたのかは分からないが。

 

 コラボNG。

 誰が呼んだかDStarsの「氷の女王」。

 

(凸待ちゼロ人は回避したけれど、よりにもよってずんだ先輩だなんて!)

 

 息を飲んで私が黙り込む。

 すると特徴的な笑い声をずんだ先輩が上げた。

 

「冗談よ、冗談」

 

 それは彼女が自分の配信で、リスナーに「圧」をかけたあとにするリカバリ。

 緩んだ空気にようやく私は息を吐き出した。

 

「……なんだ、びっくりしたバニ。本気の説教がはじまるかと思ったバニ」

 

「ゆきちがな『ばにら事故ってる! 助けたってずんだ!』ってLINEくれてさ、あわてて確認したらこれだでな」

 

「いや、ほんと。ゆき先輩ありがとうバニ」

 

「ゆき先輩?」

 

「もちろん、ずんだ先輩もありがとうバニ! ばにらはいい先輩を持ったバニ!」

 

「待って、ばにらちゃん?」

 

「なにバニか?」

 

「前のコラボの時はずんだちゃんって呼んでたよね? なんで呼び方戻したん?」

 

「この人めんどくせーばに!!」

 

 かくして、私は配信事故をギリギリで回避した。

 ずんだ先輩が「3期生が駆けつけるまで」配信につき合ってくれたのと、彼女が呼び水となり他の先輩が凸待ちに顔を出してくれるようになったのだ。

 

 気づけば、開始当初の沈んだ空気はどこへやら。

 

 Twitterのトレンド「ばにら配信事故」は「ばにら&ずんだ突発コラボ」に代わり、集まったリスナーたちは金盾の祝福もそこそこに私たちの絡みを弄った。打って変わって「事務所人気VTuberふたりによる突発コラボ」になった配信は、誰もが認める「今年一番の文句なしの神回」だった。

 

「ずんだ先輩、よかったらまた今度、普通にコラボやりましょうバニ!」

 

「いいよいいよ。ばにらちゃんの得意なゲームで勝負したげる」

 

「余裕バニな! 絶対ずんだ先輩をキャン言わせてやるバニ!」

 

「言ったなぁ~!」

 

 しかしこのあと、私はあまりに大きい「奇跡の代償」を払うことになる。

 いや、私たちと言うべきだろう。

 

 まさか、この配信がきっかけで、私とずんだ先輩が――。

 

 

 会社の命令で「百合営業」をするはめになるだなんて!




 現トップの元トップのVTuberふたり。
 それが「百合営業」して「バチギス」にならないはずがない――という百合配信コメディです。気になった方は、評価よろしくお願いいたします。m(__)m

 カクヨムにて先行公開中です。
https://kakuyomu.jp/works/16817330649719403871
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