VTuberなんだけど百合営業することになった。   作:kattern@GCN文庫5/20新刊

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第18話 第一回DStarsレトロゲータッグマッチ選手権(前編)

 組み分けは意外にバランスが考えられていた。

 ゲームチームは全員がゲームの達人――と思いきや、実はそんなことはない。

 彼らには明確な役割分担が存在している。

 

 まず、うみと組んだぽめら先輩はTPSの達人。

 バトロワ系ゲームにおいて的確な指示を出す司令塔ポジション。

 ただし、レトロゲーマーとしての実力は平凡なものだ。

 

 次に、ずんだ先輩。彼女はレトロゲーム配信をよくするが、「好き」というだけで「得意」ではない。事実、耐久配信をすると配信時間が長時間に及ぶ。

 

 代打のあひる先輩は自分で言った通りレトロゲー初心者だ。

 しかし、事務所所属のVTuberの中では、一番のフィジカルの持ち主。

 運動神経のよい彼女と頭脳より反射が重要なレトロゲームは相性がよさそうだ。

 

 そしてリーダーのすず先輩。

 彼女はどんなゲームでもすぐに習熟してしまう天性のゲーマー。

 

 以上を総合するとレトロゲーの実力は。

 

 1.すず先輩

 2.ずんだ先輩

 3.あひる先輩

 4.ぽめら先輩

 

 という感じになる。

 

 対して3期生。

 

 まず、3期生で一番ゲームが強いのは――実はうみだ。

 彼女は弾幕ゲームや任天堂のパーティゲームがとてもうまい。

 初見ではそこまでの強さは見せないが、やりこませるとすぐに腕を上げる。

 なにげに天才肌のゲーマーなのだ。

 

 二番手がしのぎ。

 いや、うまいというか彼女は剛運の持ち主なのだ。スロットやヨットなどの運の要素が強いゲームをやると、彼女はここぞというタイミングでミラクルを起こす。

 ゲームの神にしのぎは愛されていた。

 

 三番手が私ことばにら。

 

 最後にえるふ。

 彼女自身はゲーム好きなのだが、適性は完全にRPGに寄っておりアクション系は全般的に苦手。スマブラもマリカも同期で対戦するといつも最下位だ。

 

 というわけで、3期生のゲームの実力は。

 

 1.うみ

 2.しのぎ

 3.ばにら

 4.えるふ

 

 という順になる。

 

 ゲームの腕前の高い相手と低い相手を組ませたらこうなった。

 組み合わせは妥当なもの。そこに意図はない。

 

 ないはずなんだけれども――。

 

「おや! 奇しくも、話題の『ずんばに』チームですね!」

 

 結果として、私とずんだ先輩が一緒になってしまった。

 

 嬉々として私たちを弄るBちゃん。

 サプライズに公式チャンネルのコメント欄も賑わう。

 連日だし、「このカップリング飽きた」というコメントも出るかなと思ったが、そんな気配は微塵もない。むしろ祝福コメントばっかりだった。

 

 どんだけ需要があるのよ私とずんだ先輩の関係性に。

 

 わざわざ「百合営業」を指示するのも納得だ。

 こりゃ金になります。てぇてぇの気配しかない。

 

「くそっ! 社長め! やってくれたわね!」

 

「まぁまぁ。ずんだ先輩、落ち着いて」

 

「なにのんきしてんの! この調子じゃなし崩しに『百合営業』させられるわよ!」

 

「それは嫌ですけれど。ただ、もうはじまっちゃいましたし」

 

「我慢しろっての?」

 

「いや、その……」

 

「その?」

 

 すごい剣幕で私に突っかかるずんだ先輩。

 そんな彼女に、こんなことを言っても怒りに火を注ぐだけかもしれないが――。

 

「ずんだ先輩とチーム組めて、私は、嬉しい、かな、って」

 

 素直な気持ちを私は告げた。

 

 併走コラボは楽しかった。

 対戦相手としてずんだ先輩は申し分のない相手だった。

 また別のゲームで勝負したいと思っている。

 

 そんな自分が認めた好敵手とタッグを組んでゲームをする。

 こんな心が躍る企画があるだろうか!

 

 ぱちくりとずんだ先輩が瞬く。

 心ここにあらずという感じにその顔から力みとすごみが抜けた。

 あまりにも急激に表情が変わったものだから心配になって顔を覗き込むと、彼女は頬を林檎のように真っ赤にして後ろに下がった。

 

「ったく、しょうがないわね! 今回だけよ!」

 

「やったぁ! ずんだ先輩とチームバニ!」

 

「けど、絶対に『百合営業』は認めないんだから!」

 

「分かってますって! 今回だけ、今回だけ!」

 

「よし! やるからには勝つでな――ばにら!」

 

「まかせてくださいバニ! ばにらとずんだ先輩が組めば無敵バニ!」

 

 そんなこんなで、社長の思惑にうまく乗せられて企画は動きだした。

 

「それではさっそくゲームに移りましょう。最初のゲームはこちら――ファミコン発売時のローンチタイトル。アーケードで高い人気を博したのみならず、『マリオ』をこの世に生み出すきっかけとなったゲーム。ずばり『ドンキーコング』です」

 

 いきなり直球なアクションゲームだ。

 けれど、ドンキーコングならなんとかなる気がする。

 

「一人プレイ専用のゲームですので、各チームは代表者を選んでください」

 

 ここはまかせてくださいと私は隣のずんだ先輩を見る。

 すると、力強くずんだ先輩が頷いた。

 

「分かったでばにら。言わんでもその心が伝わったでな」

 

「ずんだ先輩」

 

「自信がないんやな。よし、ずんだが『ドンキーコング』は引き受ける」

 

「まったく伝わってねーバニですじゃん!」

 

「まかせて! 『ドンキーコング』は得意よ、たぶん!」

 

「たぶんてなにバニ! さてはテメーもやったことねえバニな!」

 

「ずんだが『ドンキー』やるの! 他のゲームはできる自信がないから!」

 

「アンタレトロゲー配信者でしょ! なに日和ってるバニ!」

 

 ダメだ、これっぽっちも以心伝心してなかった。

 このチーム、想像以上にダメかもしれない――。

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