VTuberなんだけど百合営業することになった。   作:kattern@GCN文庫5/20新刊

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第58話 インドネシアから来た少女(後編)

 気まずい沈黙が私とニーナちゃんの間に流れた。

 

 そりゃそうでしょう。

 テスト配信に挨拶もしていない先輩が乱入してきたんだから。

 しかも外国人。言葉の通じない相手。

 

 言うに事欠いて「hey! neena!」である。

 

 こんなん、どうしていいか分からないよ。(白目)

 

 一方で、挨拶をした私もこれ以上どうしていいか分からない。

 配信中ということもあり、逃げるのも失礼と挨拶したが――こんな気まずい沈黙が訪れるくらいなら、何も言わなければよかった。

 というか、そもそも地下室から出る方法が分からないから逃げようがない。

 

 地下室に落ちた時点で詰んでた。

 いや、この城に足を踏み入れた瞬間に、私は終っていたのだ。

 

 川崎ばにら完。

 

『neena: vanira senpai? why are you here?』

 

 そんな諦めムードの私に、ニーナちゃんの方から話しかけてきてくれた。

 これくらいは中学レベルの英語力しかない私でも分かる。

 

 けど、どう答えていいか分からない!

 こういう時って、どこから説明するのが正しいの!

 

 配信終ろうとして城を見つけた所から?

 それとも、隠し通路に落ちた所から?

 教えて英語に詳しい人――!

 

 テンパった私は唸った末にテキストチャットでこう返した――。

 

『vanira: vanira is hole in one!』

 

 なんだホールインワンって!

 ゴルフでもしてるんか!

 

 けど、穴に落ちたってどう言えばいいの!

 義務教育で教えておいてよ! 「これはペンです」より使うでしょ!

 

 終った。

 完全に終った。

 英語力が死んでいることが全世界にバレた。

 さらに後輩と『まともにコミュニケーションが取れない』と思われた――。

 

『neena: OK!』

 

『vanira: OK!?』

 

「嘘だろ⁉ 英語伝わってるんだが⁉」

 

 嘆いた矢先、ニーナちゃんが返信してきた。

 どうやら何が言いたいか把握してくれたみたいだ。

 

 この子、うみとは違うタイプのコミュ力おばけか?

 

 すぐにニーナちゃんは『come on!』と、小学生でも分かるテキストチャットを送ると、私に背中を向けて歩き出した。

 

「ついて来いってことで、いいバニですよね?」

 

 一応、リスナーに確認をとる。「それでいい」「あってる」「むしろそれ以外の何があるのか」「ばにら、英語の勉強しような」というコメントが溢れたので、どうやらばにーら翻訳は間違ってはいないみたいだ。

 

 上の階と同じシラカバの床を歩いて、私はニーナちゃんの背中を追いかけた。

 やって来たのは――ちょうど倉庫の中央にある広間。

 

 シラカバの葉を使った観葉植物のようなモニュメント。

 その前でニーナちゃんがアイテムを投げた。下にホッパー(上に落ちたアイテムを収拾する機能のあるブロック)があるらしく、アイテムが瞬時に吸い込まれる。

 

 そして――!

 

「うわぁっ! なになになに! 何が起こってるの!」

 

 急にピストンの音がしたかと思うと、天井が割れて床が盛り上がる。

 

 目の前に現れたのはシラカバの階段。

 上の階の階段と接続するように現れたそれに、私は素っ頓狂な悲鳴を上げた。

 

 回路式の隠し階段だ。

 動画で作り方を見たことがある。

 けど、かなり複雑な構造で、まったく仕組みが理解できなかった。

 

 こんなものまで作り上げてしまうだなんて――。

 

「もしかして、ニーナちゃんって天才なのでは?」

 

 間違いない。

 彼女はマイクラの申し子だ。

 私やゆき先輩なんかじゃ逆立ちしたって敵わない。

 天性のセンスを持っている。

 

 少しマイクラの知識がある程度で天狗になっていた。

 私は心からの賞賛をニーナちゃんに伝えようとして――。

 

『vanira: oh! neena! you are geeneus!』

 

 スペル間違いまくりのテキストチャットを送ってしまうのだった。

 

 いや、使いませんやん。

 天才(genius)なんて。

 響きを覚えてただけえらいですやん。

 

 ただ、言語の壁を向こうから越えてくるニーナちゃん。

 彼女は、私のパッションイングリッシュ(勢いだけの英語)にもう慣れたしたらしく、ぴょんぴょんとその場で跳ねるのだった。

 

『neena: thx!』

 

『vanira: oh! very very thx! I love you neena!』

 

 調子に乗ってさらにテキストチャットオを送る私。

 まぁけど、これは流石に大丈夫。

 私の感謝は伝わったはずだ。

 

 すると――。

 

「はにゃん? どうしたのニーナちゃん、そんなもじもじして?」

 

 私の思惑とは裏腹に、これまでで一番長い沈黙が私たちを襲った。

 もじもじして後ろに下がるニーナちゃんのアバター。

 

 あれ?

 なんか間違ってた?

 

『neena: vanira senpai ... we are girls ... OK?』

 

『vanira: OK! OK! I'm very very cute rabit girl!』

 

『neena: umm...OK! what should i call you?』

 

(なんて呼べば良いって聞かれたんだろうなこれ。ここは、親しみをこめて名前で呼んでもらった方がいいよね……)

 

『vanira: vanira is OK!』

 

『neena: NO! NONONO! I'm afraid!』

 

(なんか嫌がってる? まぁ、先輩を呼び捨てにするのは気が引けるか?)

 

 先輩から後輩の呼び方は自由だけれど、後輩から先輩への呼び方は難しい。

 美月さんとの百合営業でさんざん弄られてるから分かる。

 

 それだけに気負わずに使える、呼び方を提示してあげたい。

 あだ名呼びや「さん」や「ちゃん」、「先輩」付けというのはなんか嫌だ。

 せっかく仲良くなっただの、特別感がありつつ、気負わないのがいい。

 

 なにかいい愛称はないだろうか?

 

 その時、私の頭に稲妻のようにアイデアが降ってきた。

 マイクラの天才を囲い込み、呼称問題も解決する、画期的なアイデアが――。

 

『vanira: neena! do you join vanira kensetsu?』

 

『neena: vanira kensetsu? What is that?』

 

『vanira: vanira kensetsu is building company! many many house make and show!』

 

『neena: wow...I just wanted to do it too!』

 

『vanira: hey neena! vanira kensetsu syacho is vanira! OK?』

 

『neena: OK!』

 

『vanira: you call me "syacho!"』

 

『neena: OK! vanira syacho!』

 

 マイクラ内で建築会社を設立するのだ。

 そして、その社長にばにーらが就任してしまえばいい。

 そうすればニーナちゃんは私のことを「社長!」と役職で呼べるようになる。

 

 まさに悪魔的発想!

 冴えに冴えた自分の知恵に恐ろしくなる!

 おまけにニーナちゃんに仕事と称してコラボができる!

 ついでに、便利なお洒落な施設も建ててもらえる!

 

 素晴らしいアイデアに、私は心の中で自分に拍手を送った。

 そして、DStars公式マイクラサーバーの覇権を握ったと確信した。

 

『neena: syacho! syacho! syacho!』

 

『vanira: OK OK neena I am syacho vanira kawasaki.』

 

『neena: vanira syacho! I Love you too!』

 

「ただ、面と向かって好きっていわれるのは、ちょっと照れるバニな」

 

 かくして、私は頼もしい外国人後輩とのコネを手に入れたのだった――。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 英語できないと本当にたいへんですよね。(白目)

 高専出ているので英語と独語は習ったはずなのですが、Google先生(翻訳)に頼りっぱなしの僕です。ちなみに上の会話は、まぁノリで分かるやろと書いてます。

 分かるよね……?(バニラが無自覚に、ニーナに告白しちゃってるのとか)

 

 後輩に対して無自覚ハーレムムーブをするばにら、そういう所やぞ――と、思った方は、感想&評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m

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