VTuberなんだけど百合営業することになった。   作:kattern@GCN文庫5/20新刊

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第10章 嘘つき猫の一生
第69話 君は百合営業を感じたことがあるか?(前編)


『zunzun: vanirachan!? doushite kokoni iruno!?』

 

『vanira: soreha kottino serihu desuyo zunsan!?』

 

 突如として現れた『青葉ずんだ』こと美月さん。

 いつも私がピンチの時に、颯爽と駆けつけてくれる彼女。

 どうやら今回も――。

 

 って、流石にそれは無理があるでしょ!

 

 どういうこと⁉

 たしか美月さんは、りんご先輩とブランチマイニングしてたはず。

 それがどうしてエンド要塞に――。

 

 その時、私の頭の中にとある可能性が過った。

 

 美月さんがブランチマイニングで掘っていたのは高さ25の辺り。

 エンド要塞が生成されるのも一般的に25の周辺。

 

 そして、何を隠そうここは『とある有名なスポット』の地下。

 

 

 そう――『ゆき先輩のしけた村』の地下!

 

 

「ずんさんに変わって僕が説明しよう!」

 

「りんご先輩⁉ 勝手にボイスチャットに入ってこないでもろて⁉」

 

「細かいことおっしゃらずに。同じDStarsの仲間じゃないですか」

 

「これ、後輩のデビュー配信なんですけど⁉」

 

 ボイスチャットに人が入ってくる。その声は、かつて私と一緒に「あひる先輩の家の地下に、巨大な住居を作った」先輩――津軽りんごに間違いなかった。

 

 そう、彼女が絡んでいる時点で気づくべきだった。

 

「ブランチマイニングをしようと思い立った、津軽りんご。しかし、あひるちゃんの家の地下は開発し尽くしたあと。『流石にこれ以上は、あひるちゃんでも泣いちゃうかぁ』と、仏心を抱いた僕は考えた」

 

「……何をですバニ?」

 

「次は誰の家の地下を掘ろうかな――と!」

 

「アンタって人は!」

 

「は~っはっはは! 泥棒系VTuberだからねぇ~!」

 

「くっ! そのブレないキャラが、今は羨ましいバニ!」

 

「それで、『ゆきちのしけた村』の地下を、ずんさんと一緒にブランチマイニングしてたんだよ。そしたらなんと、ばにらちゃんと偶然出会っちゃってさぁ~!」

 

 この人は『こういうことを平気でやるVTuber』だった。

 

 あひる先輩の地下の次は、ゆき先輩の村の地下を掘る。

 起こるべくして起きた奇跡だった。

 

 二窓して、私と美月さんの配信を見ていた人たちは、きっと「ずんさん、後ろ後ろ!」みたいに思っていたことだろう――。

 

「ずんだ⁉ ずんだがそこにいるのかい、ばにらちゃん⁉」

 

「あ、はい! ゆき先輩の村の地下でブランチマイニングしてたみたいで!」

 

「だったらちょうどいい! 装備をずんだから分けてもらうんだ! 最低限の装備を身につけてエンドに戻って来てくれ!」

 

 バカバカしい展開に落胆するのはあと。

 今、私が成すべきことは『エンダードラゴンの討伐』と『ニーナちゃんのデビューを成功に導く』こと。

 

 ちょうどその時、美月さんもボイスチャットに入ってくる。

 

「ちょっとばにらちゃん⁉ これいったいどういうこと⁉ なんでばにらちゃんがいきなり出てくるの⁉ 今日はインドネシアの新人ちゃんとお仕事なんでしょ⁉」

 

「ずんさん! 何も言わずに装備を貸してくれませんか! 今、大切な仲間たちが、この『エンドポータル』の向こうで戦ってるんです!」

 

「ばにらちゃん……!」

 

「一刻もはやく戻らないと! ブランチマイニングで集めた鉱石を譲ってください! 必ず倍にして返しますから! それでも足りないならなんでも言ってください! 私にできることなら、なんでもします! ですから――お願いします!」

 

「心配には及ばないよばにらちゃん。既に君のための装備は一式作ってある」

 

「……りんご先輩⁉」

 

 ずんだ先輩が現れた穴から、ひょっこりと飛び出す囚人服のアバター。

 津軽りんごはぴょんと私たちの前に出ると、おもむろにチェストを置いた。

 

 なぜだろう。

 嫌な予感がする。

 同時に今日一番の撮れ高の予感も。

 

 マウスのフォーカスをチェストに当てる。

 すると、チェストの上に名前が浮かび上がる――。

 

「なんです『うさぎ座の黄金聖衣箱』って?」

 

「いいから! はやくチェストを開けるんだ! すずちゃんたちを助けるんだろ!」

 

「……うわぁ、思った通りの金装備バニ」

 

「さぁ、それを装着するんだ! ばにらちゃんがセブンセンシズの持ち主だというのなら――身につけることができるだろう!」

 

「……すみません、この配信、インドネシアの方々も見ていらっしゃるので。そういう日本人のオタクにしか分からないネタは」

 

「大丈夫! 聖闘士星矢は全世界で大人気のコンテンツだから!」

 

「言っちゃったよこの人!」

 

 中に入っていたのは黄金装備一式。

 まさしく黄金聖衣箱(聖闘士星矢のネタ)だった。

 しかもご丁寧に、装備にも『うさぎ座の黄金聖衣(兜)』って名付けてある。

 

 どんだけ聖闘士星矢が好きなのよ。

 

 あぁ、けど――こんな装備でもないよりマシだ!

 私は金装備を一つずつ装着した。

 

「でぇでん!」

 

「でんでん!」

 

「でぇでんでんでん!」

 

「「セイントセイヤー!!!!」」

 

「効果音付けるのやめてもろて!」

 

 私がアイテムを装備するたび効果音を入れる先輩たち。

 同じボイスチャットでは、エンダードラゴンの猛攻にすず先輩たちが苦しみの声をあげているというのに――こいつら本当におかまいなしだ。

 

 完全に「りんずん」の悪ノリでチャンネルをジャックしちまいやがった。

 

 ごめんなさい運営さん。

 悪いのは全部――人の家の地下に住むのに異様なこだわりがある泥棒猫です。

 

 私と美月さんは何も悪くありません。

 こいつに唆されたんです。(責任転嫁)

 

「どうやら黄金聖衣が、ばにらちゃんを持ち主と認めたみたいだな」

 

「どうばにらちゃん? 内なるコスモの声を聞いてみな? 今、どうしたいって、ばにらちゃんのコスモは言ってる?」

 

 

「……こんなアホみたいな茶番を、インドネシアのみなさんにお見せして、申し訳ないって気持ちでいっぱいバニです」

 

 

「なんだと! 僕たちが必死に集めた金で作った黄金聖衣だぞ!」

 

「そうだそうだ! こんな強そうな防具を着ておいて! 贅沢言うな!」

 

 

 ぷんすこと怒るりんご先輩と美月さん。

 そりゃまぁ、この一時間頑張っていらっしゃいましたものね。

 

 けど、あえて言わせていただきたい。

 今後のマイクラ生活のために――。

 

「ずんさん、そしてりんご先輩。金装備を用意してくださってありがとうございます。けど、これだけは言わせてください」

 

「なに、どうしたのばにらちゃん?」

 

「やっぱりうさぎ座よりバニーガール座の方がよかったの?」

 

 

「金装備はマイクラにて最弱……覚えておけ」

 

「「嘘でしょ⁉」」

 

 

 本当だった。材料の金の入手難易度から誤解されがちだが、「ネザライト>ダイヤ>鉄>チェーン>金>(皮)」の順番だった。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 セイントセイヤー!(ヤケクソ感)

 全ては黒幕こと津軽りんごの思惑の中。

 あひるがダメならゆきという発想もさることながら、絶妙のタイミングで乱入&ネタ装備を用意してくる。この泥棒猫を、止められるVTuberはいない。

 ニーナちゃんとは違う方向でマインクラフトの天才。

 

 というか、こうなることを予測して、ずんだとコラボを仕組んだのか。

 だとすればいったい彼女はばにらとずんだをどうしたいのか。

 VTuberだから撮れ高が大事? 本当にそれだけでここまでする?

 

 ますます深まる津軽りんごのパーソナリティ。彼女がいったい何を考え、何を目的にこういう行動をしているのか。ばにらとずんだに何を求めているのか。この章でその辺り、まるっと解説いたしますのでお待ちください。それはそれとして、面白かったらぜひぜひ評価のほどよろしくお願いいたします。m(__)m

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