事の始まりは中国の軽慶市で光る赤子が生まれたというニュースだった。
それを機に世界各国で『超常』は発見され、それは日常となり、架空は現実となった。
たった数年で架空とされていたヒーローは職業という形で現実となり人々を照らした。
だが、光があれば影がある。ヒーローのように尊敬をあつめる存在がいれば軽蔑される対象もいる。
日が沈み外に人がほとんどいないような時間帯、一人の少女が路地裏に設置されているゴミ箱に体を預けていた。少女を照らすのは裏口を照らすためにある非常灯のみであり目を凝らしてみると、通常の人間では確認できない
静寂に包まれた空間に相応しくない音が響いた。少女のお腹の音だ。少女はお腹を摩り、立ち上がると先ほどまで体を預けていたゴミ箱を開けゴミを漁り始めた。
自身の行為がゴミ箱の持ち主に迷惑を掛けているのを自覚している、だが少女は自身の空腹を満たすためにゴミ箱を漁り始めた。
少女は齢8才という幼い年で人は差別しなくては生きることは出来ない生き物だというのを理解した。
少女の家庭はどこにでもいるような一般家庭であった。優しい母親と少し厳しい父親に育てられながら少女はほとんど不自由なく育ち、幼稚園に入園した。周りが個性を発現している中ほぼ同じ時期に少女も個性を発現させ周囲の子たちと特に蟠りもなく卒園することが出来た。
だが、小学校に進学した頃少女の人生は一変した。足に砂利のような石が生えてきたのだ。
最初のころは両親も周りも個性に関係しているのだと考えていた。しかし、砂利は少しずつ大きくなりペットボトルの蓋ほどの大きさになると足から血が出る事態になってしまった。
流石にまずいと思った両親は少女を連れて病院に行ったがどの病院でも原因不明と言われ別の病院へと言われ、先の病院でも同じことを言われるたらい回し状態となっていた。
少女の現状を知った周りは、少女の接し方を変え始めた。始めて赤ん坊を抱えるように接し方がぎこちなくだからといって雑に扱うわけでもない、少女の立ち位置がよくわからない所で右往左往しているような状態であった。
そんな中、少女に関する噂がどこかから流れてきた。
彼女は病気なのではないかと
人間だれしも、未知なるものに対しては恐怖を抱くことが多い。たった一つの噂で少女は迫害の対象となってしまった。
恐怖から少女を迫害する者が出てきた。
くるな病原菌!! 病気が
迫害する者から避けられて欲しくなく少女と距離を謝罪しながら置く者も現れた。
ごめん〇〇ちゃん…私まで嫌われたくないの…
こうして少女は学校で孤独となった。だが、少女にはまだ最愛の両親がいた。しかし--
お前の医療費のせいでどんどん生活が苦しくなるんだよ!!どうしてくれるんだ穀潰し!!
ついには両親からも突き放されてしまう事態となってしまった。
それでも少女は両親を愛していた。日に日にエスカレートしていく迫害に少女が耐えることが出来ていたのも両親に少しでも迷惑を掛けたくないという両親を愛しているのがゆえの原動力となっていた。
その日がくるまでは--
その日も少女は学校から帰りいつも母親がいるリビングの扉に手を掛け、ただいまを言おうとした時だった。
えぇ…あいつの生命保険の掛け金を上げといてね…あとあなたの知り合いに個性研究の関係者がいたわよね?死体でもあの娘なら高くつくんじゃないかしら?
気づいたら少女はランドセルを捨てて家を出ていた。目的地なんてない、ただあの会話で対象が自分自身と分かった瞬間本能というべきなのだろうか、一刻も早くここから逃げようという考えだけが少女を支配し体を動かしていた。
それから何日も経った。捜索願いが出されていないのか昼間に外に出ても何も言われずただ不潔な子として周りから見られるだけであり、衣食住に問題はあるが少なくとも両親の元に連れ戻される事態にはならなかった。
そして現在に至る。
両親から逃げる前の少女と比べ現在の少女はひどく痩せ細っており、ゴミ箱を漁るだけでも軽く息が荒くなってしまうほど衰弱していた。
ゴミ箱を漁った結果はハズレであり、ロクな食べ物は無かった。漁るのを諦め少女はゴミ箱の前で横になる。時間帯のせいでもあって少女の呼吸の音が鮮明に聞こえる。
横になった途端、少女に睡魔が襲ってきた。少女はここで眠ってしまってはもう二度と自分は起き上がることは出来ないことを察したが、睡魔には抗えず目を細めていく。
完全に目を瞑る前にコツコツと足音が聞こえてくる。
足音は少女の前で止まり、声が聞こえた。
「ごめん、私の調べが早ければ君はここまで苦しまなかったはずなのに」
少女の視界はぼやけており、顔ははっきりと見えないが、声の主が自身に手を翳そうとしているのだけが分かった。
「大丈夫、次目が覚める時は君は自身を少しだけ好きになるようになっているはずだよ」
翳された途端、少女は一気に睡魔に飲み込まれ意識は闇の中に落ちた。
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