GR-2とダブリンとの戦いから三日後、装者一行は本部にて情報の整理をした。
モニターには『GR-2』とシンフォギアを纏った『ダブリン』が映し出されていた。
「司令、ダブリンに関する情報が出ました。」
オペレーターの藤尭朔也がコンソールを動かしモニターの映像を切り替える。
するとダブリンの詳細な情報が映し出された。
「本名はトーマス・ラヴクラフト。『ダブリン』の名前の由来は彼自身がダブリン出身から来ているようです。また欧州を中心に海洋保全の名目で海洋資源を取り扱う企業に対し爆破テロを行なってる所謂『環境テロリスト』として国際指名手配されています。」
情報によると彼が起こしたテロにより数千人のも罪の無い人々が犠牲になっている。
「彼はこの犠牲すら小さいと一蹴するわね…」
マリアの呟きに装者達は改めて彼に対する憤りを覚える。
続いて彼の纏っていたシンフォギアについての分析を始める。
「まず彼のシンフォギアの核はアウフヴァッヘン波形から『トライデント』であるのは確実です。ですが彼の纏うシンフォギアは追加搭載決戦ブースターであるイグナイトモジュールを模倣し、それをシステムの根幹として組み込んだ代物だと推測出来ます。」
彼女は続ける。
彼のシンフォギアは響達のシンフォギアと比べて多くのプロテクターが装着されているのが特徴であり、何より聖遺物の力を引き出すのに必要不可欠な歌を歌わないのが一番の特徴だ。
ではどうやってシンフォギアの力を発揮しているかというと…
「それが信じられない事に彼自身からフォニックゲインが生成している事が分かりました…」
その報告に皆驚愕する。
だが彼女は信じられないと思いつつそれを裏付けるデータを見せる。
先の戦いでダブリンがシンフォギアを纏った瞬間、彼の身体からシンフォギアと同程度のフォニックゲインが発生した。
予想外の事が判明する中、映像を『GR-2』に切り替える。
GR-2の武装は…
・口元のマスク部を開放して発射されるビーム砲
・頭部の角を射出する質量兵器
・両腕部のバーニアで発射されるロケットパンチ&両腕部に格納された巨大なブレード
…と、かなり豊富だ。
「この巨大ロボット…GR-2の全長は推定36m、ロボットからヴァイタルウェーブの様な波動を常に放っており、また水中から出現した事からこのロボットは水中戦用の機体だと思います。」
映像では実際に水柱を立てながら出現するGR-2が映し出されていた。
「そしてロボットから発せられるエネルギー反応…この事からこのロボットは『聖遺物』とカテゴライズされます。ですが…」
「分かってる、神話や伝承に記載されてない聖遺物だろ?」
「はい、世界中の神話や伝承に載ってないのとアウフヴァヘン波形が確認出来なかった事からアヌンナキ産の聖遺物なのかは現段階では不明です。」
エルフナインの説明が終わり、弦十郎が装者達にこう告げる。
「さて、このロボットの脅威も当然だがそれ以上に問題なのが……」
映像が切り替わり、GR-2を収容した超巨大ステルス機が映し出される。
「30m以上もあるGR-2を丸々格納出来る輸送機…それを秘密裏に建造している…」
「現在各国が総力を挙げて追跡していますが、未だ発見できておりません。」
これまで幾多の敵と戦ってきた装者達にとって新たな敵の存在に緊張が走る中、突如として警報が鳴り響いた。
「何事だ⁉︎」
「パキスタンの軍事基地にて巨大ロボットが襲来‼︎GRと思われます‼︎」
「GR-2か⁉︎」
「いえ、全く違うGRです!」
すぐさま映像が切り替わり、状況が映し出される。
「こ、これは…!」
そこに映っていたのは………
ところ変わって、ここはパキスタンの軍事基地。
上空から飛来した巨大ロボット…GRによりここは完全に破壊された。
軍事基地を破壊したGRは背中の飛行ユニットを起動し上空に飛び立つ。
無論パキスタン空軍の戦闘機4機はそれを甘々と逃すわけにはいかない。
すぐさま追跡する。
戦闘機は飛翔するGRをロックオンし、対空ミサイルを撃ち込む。
ミサイルはGRを追尾するが、突如としてミサイルの方を振り向きそのまま滞空する。
ミサイルはそのまま命中するが、GRには無力だった。
戦闘機部隊は慌てて回避を試みるも、その内の1機は回避が間に合わず胸部に激突する。
意図しない
回避に成功した残りの機体は体勢を立て直して再度攻撃を試みるが、GRに動きがある。
右手を戦闘機のいる方向に向けると、指先が展開し紫色の光線…『フォトニック・スマート・レーザー』を放つ。
光の速さで飛ぶレーザーを避ける術は無く、残りの戦闘機はあっという間に撃墜された。
重厚な黒鉄色のGR-2とは違い、全体的にスタイリッシュな白いボディ。
胸部の赤い模様に両脇のブースター。
背中に接続された飛行ユニット(超大型ブースターと主翼)と凛々しい顔立ちに頭部の一本の角が特徴的なGR…
悠々と空を舞う一角の白き巨神…GR-3だ。
S.O.N.Gの本部である潜水艦は新型GRの出現を受けてアラビア海に急行していた。
映像にはGR-3が映し出されている。
「今回パキスタンに現れたGRは水中戦用のGR-2とは異なり空中戦用の機体、確認できる武装は指先から放たれるレーザーのみですが基地の損傷具合から鑑みてその他の武装も備わっています。」
エルフナインが解説する。
現に襲撃を受けた軍事基地には複数のクレーターが確認できる為、武装はレーザーだけとは考えにくい。
だが問題はそれだけでは無い。
「パキスタンの軍事基地を破壊したGRは救援に駆け付けた戦闘機部隊を全滅させた後、インド方面へと飛びそのまま消息を断ちました…」
インドとパキスタンは長きにわたって対立関係にある。
そんな中でパキスタンの軍事基地を破壊したGRがインドへと逃げた為、一部ではインド軍の秘密兵器なのではという疑念が起こり両国の関係は悪化、一触即発の事態に陥っている。
「よりにもよってこんな所で破壊活動を行うなんて…」
パキスタン軍もインド軍もGRだけで無く相手側の軍も警戒している。
その時だった…
「司令!今度はインドの軍事基地で先程のGRが出現!パキスタンの時と同様破壊活動を行っているとの事‼︎」
「やはり来たか…!総員出撃せよ‼︎」
弦十郎の命に彼女達は出撃する。
インドの軍事基地に出現したGR-3は掌を展開させて放つ電磁速射砲『リニア・ラピッドガン』で施設を破壊する。
高速で射出される徹甲弾により施設の殆どが跡形もなく吹き飛び、所々にクレーターが出来た。
上空から飛来したGR-3はそのまま着地する。
チャンスとばかりにインド陸軍の戦闘ヘリ部隊がGR-3を包囲する。
対戦車ミサイルを放ち殆ど命中するが、GR-3はダメージを受けるどころか怯む様子もない。
すると頭部の角が発光し戦闘ヘリ部隊に向けて凄まじい電撃…『グラビトン・ライトニング・ブレイカー』を放つ。
強力な電撃により戦闘ヘリ部隊は全機撃墜される。
GRの前に軍相手ではなす術がない。
軍事基地を破壊したGR-3は主翼を展開して飛び立つ。
そのまま今度はパキスタン方面へ逃げようとすると異変を感知する。
GR-3にミサイルの雨霰が降り注いできたのだ。
GR-3はミサイル群をレーザーとレールガンで迎撃する。
ミサイルの殆どを迎撃する事に成功したが、今度は多数の大型ミサイルがこちらに飛んで来る。
それらのミサイルも迎撃しようとすると、その内一発のミサイルから影が飛び出してくる。
その影はそのままGR-3の胸部目掛けて突貫しその勢いのまま重い一撃を繰り出す。
GR-3は仰け反るが背部の飛行ユニットで体勢を立て直す。
が、それから立て続けに攻撃を受ける事になる。
X字状のエネルギー刃、大きな二つの丸鋸、鎖のついた手裏剣、高出力のエネルギー砲、etc…
5人の装者がGR-3に間髪入れず攻撃を仕掛ける。
装者達は大型ミサイルを乗り物の様に扱い、ヒット&アウェイ戦法で攻め立て迎撃する暇を与えない。
そしてGR-3のオペレーターは気付かない。
6人いるはずの装者は今は5人しか攻撃に参加していない…
では後の1人は何をしているのか?
彼女…雪音クリスは遠くからスナイパーライフル状のアームドギアでGR-3を狙っていた。
そう、5人の装者の攻撃はクリスから目を逸らさせる為の陽動。
敵の注意が5人に逸れている間にクリスは背部の飛行ユニットに狙いを定めていた。
「もうちょい…もうちょい…今だ‼︎」
狙いを定めると彼女はトリガーを引く。
その瞬間銃口から強力なビームがGR-3目掛けて放たれる。
ーーー『RED HOT BLAZE』
ビームはそのままGR-3の飛行ユニットを貫通。
飛行ユニットは炎上、機能停止した。
飛行能力を一時的に失ったGR-3は両脇のブースターで姿勢制御しながら砂漠へ不時着する。
クリスはその隙を見逃さず背部から射出器を形成しそこから12基の大型ミサイルと多数の小型ミサイルが一斉に発射される。
ーーー『MEGA DETH INFINITY』
ミサイル群は不時着の衝撃で身動きが取れないGR-3に殺到し、殆ど命中した。
大きな爆発がありやがて爆煙が晴れるとそこには……
「………っ!」
「そんな…!」
あれだけの攻撃を受けても尚目立った損傷が無いGR-3がいた。
その光景に唖然とする装者達であったが、これまでのダメージが蓄積していたのかGR-3は数歩動いた後膝をつきそのまま倒れた。
倒れた事で砂が舞うが、やがて収まる。
GR-3が倒れた為、装者達は地上に降り状況を確認した。
一方、その光景をモニターで観ていた者がいた。
彼は白衣を着ており研究者と思われる。
モニターにはGR-3と装者達の戦いの光景だけで無くGR-3の損傷状況、各種メーターなど様々な情報が提示されていた。
「オペレーターがいないとはいえ、GR-3を行動不能に追い込むとは…伊達に世界を救っていないな〜」
彼はこの状況でも余裕を崩さない。
するとモニターの映像が切り替わりオールバックの男性が映し出される。
服装からして司令官らしいが…
『主任、GR-3が自己修復モードに入った。あの様子じゃしばらく動かせないぞ。』
「あ〜分かってる分かってる。要は自己修復が完了するまで時間稼ぎをすれば良いって訳だ。」
『…手はあるのか?』
「まあ見な。」
男はそう言うと通信を切り、コンソールを操作する。
どうやら周波数をS.O.N.G側に合わせている。
周波数を合わせ終わると…
『あーあーあー、マイクテストマイクテスト……』
GR-3を調べていた装者と本部の元に第三者からの通信が入る。
「司令、何者がこちらの通信に割り込もうとしています!」
「誰だ⁉︎」
現場が騒然とする中、主任は挨拶をする。
『えっとー?S.O.N.Gのみんな聞こえるー?ぼくの名は…主任。そう呼ばれている。』
「主任…て事は貴方が!」
「ダブリンにGR-2を手引きした“主任”って奴か!」
『…まあ、そういう認識で問題ない。いや〜それにしても凄いな!オペレーターが現地にいないとはいえGR-3を行動不能するとはね!』
彼は装者達の問いに難なく答える。
「何が目的だ?」
『…う〜ん、目的ねぇ……まあ“力の行使”って事かな?』
飄々とした態度でそう答えた。
「何を言って…?」
『ん〜分かりやすく言うなら…せっかくこんな凄いもんを発掘したんだからさぁ、ありがたく使わなきゃ勿体無いだろ?』
彼の回答に彼女らは愕然とする。
要はGRという力を行使する…その為だけにダブリンにGR-2を与え破壊活動を支援したのだ。
「巫山戯るな!それでどれだけの人が犠牲になったと思っている‼︎」
『おー怖い怖い…それで?』
そう一蹴すると彼は本部に映像を表示する。
「これは…!」
そこにはGR-2が都市に上陸し破壊活動を行っている有様だった。
「情報によるとシドニーにGR-2が出現!」
「何だと⁉︎ならGR-3は陽動という事か‼︎」
『既にこの惨状はBFNが報じている。世界がGRの力と脅威を目の当たりにしたって訳だ。』
現にBFNのリアルタイム映像が本部のモニターに映し出され、女性リポーターがシドニーの惨状を伝えている。
『ご覧ください!シンガポール、ブルネイ、そして香港を破壊した巨大ロボットがシドニーに上陸‼︎オーストラリア軍の攻撃を物ともせず都市を蹂躙しています‼︎』
GR-2の攻撃によりオペラハウスは全壊、都市の大部分は『ヘキサ・クォーク・キャノン』によって一面焼け野原となった。
『どうだ凄いだろ〜♪GR一体で周囲一帯を軒並み破壊する圧倒的な攻撃力…そして君達装者の攻撃を受けても傷一つつかない桁外れな防御力…まさに超古代文明の遺した最高の芸術品……そうは思わないかなぁ?』
「…悪趣味。」
彼の反応は自分の玩具を無邪気に自慢する子供の様だ。
『さて、自慢話も済んだ事だし……そろそろやろうとするかなぁ‼︎』
彼がそう言った瞬間、倒れていたGR-3は突如として起き上がった。
「嘘…!」
「あれだけの攻撃を受けてもまだ動くというのか…!」
『GRを見くびっては困るなぁ…あと一つ言い忘れていたが、GR-2のオペレーターにダブリンがいた様にGR-3にも戦うオペレーターがいるんだぜ?」
主任の言葉に装者達はハッとする。
先のGR-2襲来の際にオペレーター兼装者としてダブリンがいたのでGR-3にもオペレーターがいると考えた方が自然だ。
「まさかオペレーターが…!」
次の瞬間、前方の空間が歪みそこから人が現れる。
ローブを羽織っていて顔は確認出来ないが背丈や体格はマリアに似ている事が分かった。
装者達が警戒する中、マリアはある違和感を覚える。
(あれがGR-3のオペレーター…でも何故かしら?初対面の筈なのに何処かで見覚えがある……)
マリアがそう思うと、主任がこう言う。
『紹介しよう。彼女はGR-3のオペレーターキエフ。またの名を……』
すると彼女はローブを掴み投げた事で姿が露わになる。
「…………え?」
「…………!」
「嘘デス…!」
キエフの姿が露わになった事で衝撃を受けたのはマリア、調、切歌だった。
…それもそのはずである。
背丈と体格はマリアに似ているというかほぼ同じであり、長い長髪の女性…
何より顔が見覚えがあるというかマリアの記憶に深く刻まれている…
「セ…セ…セレナ……⁉︎」
そう…
『…セレナ・カデンツァヴナ・イヴだ。』
完全聖遺物ネフィリムの暴走を食い止めるべく絶唱を放ち、そして散った最愛の妹…セレナ・カデンツァヴナ・イヴだ。
※本作の主任は『ACⅤ』の主任をイメージしたらいいです。