巨神絶唱シンフォギアGR   作:あーくこさいん

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Qubit:0 巨神(2)後編

「セレナ・カデンツァヴナ・イヴだと⁉︎」

 

キエフの正体が明らかになり本部は騒然としていた。

オペレーターが急いで映像を解析し、その結果当時の写真から比較してキエフとそっくりどころか瓜二つだった。

 

「…確かに当時の写真から比較してもほぼそっくりです!」

 

「しかしセレナさんは8年前にネフィリムの暴走事故の際に死亡した筈では…?」

 

本人かクローンかは定かではないが、混乱は装者達にも広がっていた。

 

 

 

 

 

「え…なんで⁉︎」

 

「セレナ…だと⁉︎」

 

「マリアの妹が何故⁉︎」

 

響、クリス、翼もキエフの正体に驚愕する中、主任はこことぞばかりに畳み込む。

 

『ははははっ‼︎どうだい?特にマリア。死んだと思ってた妹が生きてて?感動したかい?それとも驚きのあまり言葉も出ないかい?是非とも感想を聞かせて欲しいもんだねぇ‼︎』

 

死別してから8年経ったセレナは体つきがマリアにそっくりでありまさに大人の女性である。

ただ彼女の目はどこか虚ろな印象であり、彼女の胸元には深紅色の宝石らしきものが埋め込まれていた。

 

それを見たマリアは主任に問う。

 

「貴方…セレナに…セレナに何をしたの⁉︎」

 

『おいおい()()()()に対してその言い草は無いんじゃないかなぁ?』

 

装者達は主任の言葉に理解が追いつかなかった。

 

「何を言って…?」

 

『あ〜まぁ当然か。8()()()、俺がF.I.Sに赴いて何をしたかなんて。』

 

そう言うと主任は当時何が起こったかを話す。

 

 

 

 

 

8年前…まだF.I.Sが存在していた頃だったか……

 

当時はGRの発掘及び発掘したGRの起動実験を主にやってたから、うちにシンフォギアなんてものは無かったし開発すらしていなかった。

 

だが、日本の特異災害対策機動部二課が対ノイズプロテクター『シンフォギア』を開発したという情報を掴み兵器としての有用性からシンフォギアをGRの護衛として運用する事を決めた。

早速シンフォギアシステムの開発者である櫻井了子(さくらいりょうこ)を拉致する為数多の工作員や特殊部隊を派遣したが…思いの外手強くて思うように進まず、しまいには風鳴訃堂(護国ジジイ)の日本刀で工作船が真っ二つに切られるというギャグみたいな事態を受けて断念せざるを得なかった。

 

だが二課に対する諜報や工作の結果、どうやら櫻井了子はアメリカの聖遺物研究機関F.I.Sにシンフォギアや聖遺物等のデータを横流ししている情報を得る事が出来、F.I.Sにスパイを派遣して機会を待った。

 

日本での失敗が原因で特殊部隊が壊滅し、補填に相当な時間がかかる為手をこまねいたがある日スパイから完全聖遺物ネフィリムの起動実験を行うという情報を掴んだ。

 

そこでぼくは考えた。

この起動実験にて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事を。

 

直様F.I.S施設内に侵入し起動プログラムにあちらの操作を受け付けずにネフィリムにエネルギーを与え続けるよう細工を施した。

 

その結果ネフィリムは暴走し現場は大混乱。

俺もネフィリムってのがどんなのか見てみたが、精々暴れるだけが取り柄で制御もままならない欠陥品だと言う事が分かり、その隙に聖遺物やらデータやらを奪おうとその場を後にしようとした。

そしたら…

 

シンフォギアを纏った少女がネフィリムに近づくのを目撃した。

 

何をするのかと気になった俺は様子を見ると、少女は歌い始めた。

やがて少女が歌い終えた次の瞬間、膨大なエネルギーが解放されネフィリムに直撃、ネフィリムは繭状態となり活動停止するに至った。

 

もちろん少女…セレナは無事じゃ済まなかったが、あのまま死なせてしまうのは惜しいからな……拉致する事にした。

 

無論セレナを研究所に拉致して治療した後F.I.Sに戻って様々な聖遺物やデータを強奪。

特に中身が空のシンフォギアを手に入れたのは大きかった。

 

頭上に瓦礫が降り注ぐ寸前に救出したからな…マリアの目線じゃ瓦礫の下敷きになって死んだと思っても無理ないだろ?

だって血溜まりとアガートラームのシンフォギアしか残って無いからな‼︎

 

 

 

 

 

主任の暴露に装者達は絶句する。

特に元F.I.S所属のマリア、調、切歌はネフィリム暴走事故の原因が主任によって意図的に起こされたものだと知り憤りを覚えた。

 

「…貴方のせいで、セレナは!」

 

『まぁ落ち着け、話はまだまだある。』

 

そう言うと続きを話す。

 

 

 

 

 

セレナの治療が終わりF.I.Sから奪った聖遺物の一つである『アリコーンの角』を中身が空のシンフォギアに移植した。

当初はGRを制御するシステムは不完全ながら存在しており、そのGRを護衛する目的でシンフォギアを運用しようとした。

その為最初のうちはデータ収集に専念してたが、事態が一変した。

 

ある日データ収集の為キエフに歌わせているとGR格納ベースから緊急報告があった。

それは格納していたGRが制御システムを介さず動き始めた。

その時は大事に至らなかったが、調査した結果キエフが歌い始めてからしばらくしてGRが反応し起動した事が分かった。

俺はある仮説を立て翌日に最も強い反応を示したGR-3の前で歌うようキエフに命じた。

キエフが歌ってしばらくするとGR-3が突如として起動し、その時のデータを調べた結果GR-3から発していたヴァイタルウェーブとキエフのフォニックゲインが共鳴していた事が判明した。

共鳴した事でGRを制御する事が可能であり、尚且つ従来の制御システムでは比べ物にならない程の精度・安全性を誇る代物だという事に!

その結果を受けてペンダント型のシンフォギアに様々な機能を追加したブローチ型に改造しそれをキエフの胸元に移植した。

 

こうしてGRO初の装者兼オペレーターが誕生した訳だが、そんなキエフには致命的な弱点があった。

それは優しすぎる事だ。

うちのシンフォギアの運用ドクトリンは対ノイズだけでなく対人・対兵器戦闘を視野に入れたものだから必然的に人を殺める事になる。

当然ギアの力を戦いに用いる事に抵抗を覚えていた彼女の戦闘訓練は遅々として進まなかった。

 

 

 

 

 

『…だから我々は彼女を立派な虐殺兵器(キリングマシーン)に育て上げる為にF.I.Sからくすねたある薬品を使う事にした。確か…『P30』だったか。』

 

「P30…?」

 

装者達はやな予感を感じながらも主任の話を聞く。

 

『こいつは継続的な投与により肉体強化と同時に被験者の意識を保ったまま自由意志を支配する効果を持ったオモシロい強化薬物だ。』

 

主任の説明に皆戦慄する。

 

『とどのつまり、本人が拒もうがこちらの命令で制御出来るっていう代物だ。いや〜それにしても効果覿面だったよ!投与した翌日の戦闘訓練では戦闘エリアに放った50人のゲリラ兵やテロリスト共を数分で躊躇なく殺したんだぜ⁉︎無論、本人の意思関係無くなぁ‼︎』

 

装者達は言葉も出ない。

 

『…まぁとにかくだ。マリア、今目の前にいるのはお前が思い浮かべている様な…こんな素晴らしい力を戦いに用いる事に抵抗を覚える様なセレナ(甘いガキ)じゃねぇ……非戦闘員含む万単位の人間を殺戮した虐殺兵器(キリングマシーン)であり、何よりGR-3を操り周囲に数え切れない死を撒き散らす悪魔なんだからな!ハハハハッ‼︎』

 

彼はハイテンションな様子で装者達に…マリアに対して畳み掛ける。

それに対しマリアは……

 

「……す」

 

『あ?』

 

「殺す‼︎」

 

マリアは主任に対し殺意を剥き出しにする。

 

『お〜怖い怖い。まぁやる気になったんなら……おっ始めっか‼︎キエっち、GO‼︎』

 

ハイテンションな主任の指示でキエフもといセレナはシンフォギアを起動する。

頭部はアリコーンの角を模した装飾品付きのヘッドギアに目元を覆うバイザー、銀色のインナーに加えて脚部・腰部・腕部に白色の装甲を装着し背部には翼を模した飛行ユニットを装備している。

まさにアリコーンをイメージしたシンフォギアである。

 

キエフがシンフォギアを纏ったと同時に待機していたGR-3の飛行ユニットが起動し飛び上がる。

飛び上がったGR-3は装者達に向けて掌から展開した『リニア・ラピッドガン』を連射する。

 

「散開しろッ‼︎」

 

レールガンが発射されたと同時に装者達は散開する。

放たれた徹甲弾が着弾した瞬間砂塵が舞い、辺り一面砂埃で視界が悪くなる。

やがてGR-3が砲撃を止め様子を確認すると砂埃から複数のミサイルが飛んでくる。

頭部の角から放つ電撃『グラビトン・ライトニング・ブレイカー』でミサイルを撃墜するが、蒼炎を纏った双刃刀が飛んできた。

すかさず雷撃で破壊を試みるが破壊し切れなかった為、双刃刀が胸部に命中した。

 

ーーー『炎乱逆鱗斬』

 

双刃刀が当たった事によりGR-3は大きく怯む。

怯んだ隙に響は突貫し胸部にダメージを与える。

続け様にクリスがロングボウ型のアームドギアを形成しそこから矢の形をしたミサイルを放つ。

 

ーーー『ARTHEMIS SPIRAL』

 

ミサイルは真っ直ぐ飛んでいくが、GR-3はそれを右手で掴みへし折った。

爆発に巻き込まれるがGR-3に目立った損傷は無い。

 

「嘘だろオイ⁉︎」

 

「あれだけ攻撃を受けても傷一つつかないなんて…!」

 

GRの頑丈さに装者達は改めて驚愕する。

 

 

 

 

 

一方、キエフと交戦しているマリア、調、切歌は…

 

「セレナッ‼︎私よ、マリアよ‼︎」

 

マリアが必死に呼びかけるがセレナもといキエフに反応は無い。

明らかにマリア達を敵と見ているのは明白だった。

キエフの右手に乗馬用の槍を持ち翼型の飛行ユニットからジェット噴射してマリアに肉薄する。

 

説得は意味がないと判断したマリアは応戦する。

 

ーーー『EMPRESS REBELLION』

 

蛇腹剣を出し巻き付けて動きを止めようとするが、キエフは強引に引きちぎる。

するとキエフのシンフォギアの形状が変化、飛行ユニットが開く様に展開しそこから数多くのロケット弾が現れ右手に持っている槍も変形、先端部に穴が開く。

 

ーーー『広域制圧形態 カチューシャ』

 

形態変化したキエフはマリア、調、切歌に向けて飛行ユニットから多数のロケット弾、変形した槍からはグレネード弾を速射で叩き込む。

3人は何とかこれを躱し、調と切歌が反撃に移る。

 

「セレナ、ごめん!」

 

「ちょっと痛いデスが、我慢してくだサイ!」

 

調は4本のアームから4つの丸鋸を、切歌は2本の鎌を合体させ三日月型の刃を左右に備える大型の鎌を形成し切り掛かる。

 

ーーー『裏γ式 滅多卍切』

 

ーーー『対鎌・螺Pぅn痛ェる』

 

すると翼型の飛行ユニットがキエフの身体を包み込む様に展開し、やがて重厚な鎧を形成する。

 

ーーー『重装甲剛力形態 ウラジミール』

 

新たな形態変化に驚く二人だがお構い無しに突っ込み、調は丸鋸を切歌は鎌を鎧にぶつける。

その瞬間……

 

ドゴォォォォン‼︎

 

当たった箇所から激しい爆発が起き、その爆風で二人は大きく吹っ飛ばされる。

 

「調‼︎切歌‼︎」

 

マリアは二人に駆け寄ろうとするが、その直後キエフの姿が変わる。

重厚な鎧は元の飛行ユニットに戻り、キエフはジェット噴射で加速し持っている槍にエネルギーを纏いながらマリアに突貫する。

キエフを止める為、彼女は左手の籠手から複数の短剣を周囲に展開、回転させて竜巻を発生させる。

その竜巻を纏ったマリアはキエフに突撃する。

 

ーーー『TORNADO IMPACT』

 

両者は衝突し拮抗するが、最終的にマリアが競り勝ちキエフの槍と飛行ユニットを破壊する。

飛行ユニットを破壊されたキエフはバランスを崩し地面に激突する。

シンフォギアを纏った事により大事には至らなかったが、キエフは沈黙した。

3人はキエフの元に駆け寄る。

 

キエフは沈黙したまま動かない。

 

「セレナ…」

 

「元に戻るんデスか…?」

 

調と切歌がそう心配する中、とにかくキエフを本部に連行し洗脳を解かなければならない。

そう思っていた時だったーーー

 

突如キエフのシンフォギアから光が放たれ、やがて収まるとキエフの姿がまた変わっていた。

翼型の飛行ユニットは戦闘機の主翼を形造り、各所の装甲は空気抵抗を極力削いだ形状へと変化した。

極め付けは頭部の角とバイザーはそのままに口元が戦闘機パイロットが付けている酸素マスクに酷似していた。

 

ーーー『高機動空戦形態 フランカー』

 

まさに戦闘機の様な姿となったキエフに3人は驚く中、キエフはさらに高出力のジェット噴射をし一気に上昇する。

上昇した後一気に急降下し、主翼のウェポンベイからミサイルやら爆弾やら雨霰の様に降り注ぐ。

さながら急降下爆撃機の如し。

 

3人は何とか回避するが爆撃したら離脱し、再度急降下してまた爆撃そして離脱…それを繰り返すヒット&アウェイ戦法でマリア、調、切歌を翻弄した。

 

 

 

 

 

キエフとGR-3、装者達との戦いが起こっている場所から遙か上空…

そこにGR-2を格納した超巨大ステルス全翼機が待機していた。

GR-3もこの機体で輸送され発艦した。

 

機内には多数の人員が搭乗しており、その指揮所では数人の操縦士、研究員、そしてGRO実働部隊司令官であるマイク・ホッジス大佐とその副官であるイザベラ・レイド中尉がいた。

ここは機体の操縦はもちろんのこと、リアルタイムでの戦況確認やGRとそのオペレーターの各種チェックが逐一行われている。

 

「GR-3及びキエフの損傷レベルいずれも危険値を下回っています。」

 

「ヴァイタルウェーブとフォニックゲインの共鳴指数、現在に至るまで安定した状態を維持しています。」

 

白い装束を着ている研究員がそう報告する中、中尉が口を開く。

 

「ダブリンとGR-2の時もそうですが、主任が開発したGRオペレーティングシステムは安全性・精度において高水準を叩き出しております。」

 

「そうだな…従来の制御システムでは起動するだけでオペレーターを死に至らしめる物だったが、このシステムはGRが破壊されない限りオペレーターの安全は確保されている代物だからな。」

 

すると主任から連絡がくる。

 

『マイくーん、データは充分取れたしさ、そろそろ撤収した方がいいんじゃない?』

 

あまりにフレンドリー過ぎる主任の態度に眉を顰める中尉だが、特に気にしていない少佐はしばらく考え命令する。

 

「…そろそろ潮時か。オペレーターに帰投命令を出せ。直様GR-3とキエフを収容し現空域を離脱する!」

 

こうしてGROの空中空母メルクリウス号はGR-3格納の為動き出す。

 

 

 

 

 

一方、装者達と戦っていたキエフは帰投命令を受けマリア達3人との戦闘を中断し一気に急上昇、GR-3も飛行ユニットを勢いよく噴かし現場からの離脱を試みる。

 

「マズいッ!逃げる気だぞ‼︎」

 

クリスがそう言うと大型ミサイルを数発撃ち込み装者達はミサイルの上に乗る。

装者達が追跡してる事に気づいたGR-3とは装者達の方を振り向き、飛行ユニットを前方に向ける。

次の瞬間、飛行ユニットの前方部が翠色に発光し始め強力な突風を引き起こす。

重力子ハリケーン砲『グラビトン・ブロークン・ストーム』を拡散モードで放ち装者達をミサイル群諸共吹き飛ばす。

 

ミサイル群はすべて破壊され、装者達もダメージを負った為追跡する事が出来ない。

装者達を退けたGR-3とキエフはそのまま上空へ撤退する。

 

「セレナァァァァ‼︎」

 

遠のいていくキエフもといセレナに手を伸ばすも届くはずも無く、マリアの悲鳴が木霊する……




このコーナーではBFNが独自に入手したGRに関する裏情報を皆様にお伝えします。

今回はGR-3のオペレーターキエフについて。

本名はセレナ・カデンツァヴナ・イヴ。
8年前のネフィリム暴走の際に死亡したと思われましたが、暴走事故の張本人である主任に拉致され強化薬物『P30』による洗脳により彼女は立派な虐殺兵器(キリングマシーン)に成長しました。

彼女が纏うシンフォギアは『アリコーンの角』
F.I.Sから奪った聖遺物であり、かつてカストディアンが作った生物兵器だと推測されるアリコーンの角を纏ったキエフは頭部の一角、背部の翼型飛行ユニットからまさにアリコーンの姿を模した装備をしています。
GR-3と連携して目につくものを蹂躙する様はまさに『恍惚とした破壊』を齎す魔獣と呼ぶに相応しいものでしょう。
果たして装者達…特にマリアはキエフを元に戻す事が出来るのでしょうか……?

さて次回は、中南米の古代遺跡を襲撃し破壊する新たなGR。
そのオペレーターであるカンザスが率いるサイボーグ部隊に苦戦を強いられる中、もう一つの国連機関UNISOMが現れる。

次回、『Qubit:0 巨神(3)』にご期待ください。

BFNのマックス・チャンプリンでした。
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