ソードアート・オンライン 儚き虚夢のラスベリー   作:神矢レイラ

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※今回のお話には実際に起こったある事件の内容が含まれております
内容に大なり小なり差異が存在する恐れがあります。
それでも大丈夫だという方は、この先にお進みください※

どうもお疲れ様です、神矢レイラです。
いよいよ前半戦も佳境を迎え、第三幹部のホエン戦に突入しました。

様々な想いが交差する第8話、いったい全体どうなるのか。

そしていよいよ、あの二人が……!


第8話『相棒=肌で感じて/48』

 

やぁ、お前たち久しぶり。

実験の調子はどうかな。

 

……なるほど、すでにそこまで行っているんだね。

よろしい、なら俺に教えてくれるかな。

 

お前たちの記憶を振り返ることにもなるだろうからね。

 

判った、では最初から教えてくれ。

‘彼’が目覚めたあの日――11の月、4の日からね。

 

 

 

――名前は残光晴輝。

ずいぶん厳つい名前をしているが、これは間違いなく実在したものさ。

そんな彼はその日、物語の鍵を握る少女『結城明日奈』に起こされる形で‘覚醒’を果たした。

 

何故か最初から晴輝のことを好いていたって?

当然だよ、だって二人が過ごして来た時間は真実だからね。

彼がそれを共有していないのは、‘不要なものを吐き出した’からにすぎない。

それに俺としても、その時の状況は望ましいことだ。

 

それから晴輝は彼女に先導される形で、記憶の照合を行っていったんだね。

結城明日奈に、ソードアート・オンライン。

どうやら認識は正常みたいだ。

……兎沢深澄のことを除いては。

というよりも、引き継いだ記憶は不完全というべきなのかな。

 

ふむ……じゃあここからは、仮想世界に来てからのことを話してくれ。

 

あぁ、ラスベリーという名前を与えたのは俺だよ。

えっ、凄く不服そうだったの?

まぁなんとなく思いついたものだし、何より名前なんて最悪どうだっていい。

彼がどう動いて行ったのか、そこが重要なんだ。

 

なるほど、ミトの失踪を皮切りに未来への希望が失せたか。

良いじゃないか、それを糧に二人で支え合って行けば。

……何?アスナの元を離れただって?

勝手な真似を……

 

あぁいや、こっちの話さ。

それで、以降は?

 

アインクラッドの終焉……その時まで成すべきことを成す、か。

決められた未来を崩さぬ心意、殊勝なことだが。

俺からすればそれ自体腹立たしいよ。

 

その上、かの鍛治師……リズベットを味方につけるとはね。

そう言えば謎のプログラムが確認されたのも、ちょうどこの時期か。

ラスベリーが手にしたというアウリオンなる得物、それがその正体かもしれないな。

 

唯一無二の力を携え、ラスベリーはミトの捜索を開始したのか。

くだらない、そんなことをしてなんの意味がある?

彼女は自らその道を選んだ、放っておけばいい。

まぁ、この仮想世界を掌握してくれるなら俺はなんだっていいけどね。

 

――それで今、ラスベリーは67層にいるのか。

寄せ来る脅威を退ける力を手にするため、新たに開かれし地の手前にやって来たと。

そこでまたしてもアインクラッドにはびこる敵、九の懐(ナインポケット)なる者たちが出現し、そこで巡り会った仲間とともに対処に当たっている最中……か。

 

へぇ、アスナに協力依頼を?

しかも戦が過ぎれば再会すると、そう約束したのか。

 

これは楽しくなってきた。

 

そうと決まれば有象無象など、とっとと片付けてしまうがいい。ラスベリー?

 

お前が導く心のままに、真に果たすべき使命を真っ当してみせろ。

 

 

 

……それにしても、剣の世界が終わるまでのようだね。

彼の中に残っているのは。

 

 

 

上擦った少年のような声が、ずっと脳裏に小さく響いている。

1つ1つの意味は判らなかったが、不思議と頭の中に残り続ける言葉の数々。

それらを振り払うようにして放たれた斬撃は、立ち塞がる魔物を切り裂いた。

 

車輪のように回転する床に、次々と表情を変える壁。

それらを乗り越え、時には降り注ぐ刃に出迎えられ、その隙を突こうと襲いかかってきた迷惑なプレイヤー――九の懐の戦闘員をあしらう。

 

一切気を抜くことの出来ない道中、赤みがかった黒髪の青年ラスベリーは壁と壁の間にある僅かな空間へと身を寄せ、素早く指を動かした。

 

彼が待っていたものは思ったよりも早く返ってきた。

メッセージの送り主はこのソードアート・オンラインというゲームにおいて最強クラスのギルド『血盟騎士団』の副団長、閃光のアスナ。

彼女とは色々あったが、今はひとまずラスベリーの協力者である。

 

そんなアスナからの報告によれば、九の懐の戦闘員が三人がかりで守っている石碑を発見――今は様子を伺いつつ、息を潜めているらしい。

 

すぐに手を出して自身のいるルートが塞がれれば目も当てられない。

ここは一旦行けるところまで行き、道が阻まれることがあれば仕掛けてもらいたい。

ラスベリーはその旨をメッセージにて伝え、再び先へと進み出す。

 

ヒビを生み出した床が崩れ落ちるよりも早く飛び上がり、向かい側へと着地すると同時に襲来する敵を一刀両断。

一刻を争う状況であるためクロスオーバースキルも惜しみなく振るい、巨大な魔剣がモンスターたちを無へと葬った。

 

直後に鳴り響くファンファーレ音と同時に、ラスベリーのレベルが一つ上がって75となる。

とはいえ今はそれを喜ぶよりも足を動かすことを優先しよう、そう思って数秒程度経った際、ようやく探していた人物を見つけ声を張り上げる。

 

「クライン!無事か!」

 

「ラスぅ!

ハハッ、遅かったじゃねぇか」

 

「そいつァ悪かったな。

ところで、こっちはお前さん一人かぃ?」

 

「あぁ、向こうにはオブトラとアクトを行かせた。

大丈夫だ、アイツらはそう簡単にはくたばらねぇよ」

 

風林火山メンバーの実力は高い、それもラフィン・コフィンを倒すための作戦への参加を認められるほどに。

特にラスベリー自身この日を通して、その力量を散々目にしている。

 

離れ離れであったとしても、所詮烏合の衆である九の懐に負けることはないだろう。

そしてそれは、自分とアスナも同じはず。

とはいえ今はすべてのルートにいるメンバーの連携が重要であり、そのために真っ先に知りたいことをクラインにぶつけた。

 

「クライン、早速で悪ぃが状況確認をさせてくれ。

右側のルートに行った三人のことも含めて」

 

「おう、じゃあまずはカルーたちだが……

さっき来たメッセージによると、もう奥まで着いちまったらしい」

 

「そうか……でもこのダンジョンが連動式だとすると」

 

「あぁ、確実にまだなんかあるはずだ。

あそこに渡る方法もな」

 

そう言ってクラインが指差した先には、さらに奥へと続く回廊があった。

 

だがその前にはあまりに広大な空洞が広がっているのみで、橋などは存在しない。

つまり飛行能力でもない限りは、闇の中に真っ逆さまになるのみ。

 

しかし、このゲームには魔法はない。

当然空を飛ぶことなど出来るはずもないのだ。

 

「こっちも行き止まり食らってるワケか。

……向こうの二人は?」

 

「連絡待ちだ、まだ進めそうだとは言ってたが。

もしかしたら戦闘中かもな」

 

「なるほど……ちょっと待っててくれな」

 

もしかしたらと思い、ラスベリーはアスナへとメッセージを飛ばす。

思いの外早く来た返信によると、やはりというべきか彼女が目にした石碑の前で、二人の男性プレイヤーが九の懐・アクア隊と戦闘を始めたのだという。

 

自分たちのいる場所も右側も塞がれてしまっている今、鍵となるのはあちら側のルート。

どのみち選択肢がない以上、ラスベリーはようやくアスナに指示を出す。

 

「……よし、頼んだぜアスナ」

 

「アスナって……お前まさか、あの閃光の!?」

 

「おう、ワケあって手ェ貸してもらった」

 

 

 

「――了解、すぐに片付ける!」

 

そこからのアスナの行動は早かった。

目にも止まらぬ速さでアクア隊の大男の背後に現れ、腕が千本以上に見えてしまうほどの連撃を一瞬のうちに繰り出した。

 

全損とまでは行かなかったものの大男のHPは瀕死寸前となり、突然の出来事を受けて気絶。

残った二人も風林火山メンバーことアクトとオブトラ同様、驚きを隠せなかった。

 

「あ、アンタまさか……閃光のアスナ!?」

 

「KoBの副団長が、どうして」

 

「話は後!

私が彼らを相手している間に、そこの石碑を調べてください。

あなたたちのリーダーの道を、きっと開けるはずです!」

 

二人の了承を得るよりも早く、アスナは動く。

同じ細剣使いの懐を突き、素早い五連撃を以てこれを圧倒。

迫りくるもう一人の短剣使いさえ身を翻して回避し、鋭い横薙ぎによってその身を沈ませる。

 

一方でオブトラたちはその戦闘に魅入られつつも、言われた通りアクア隊の面々が守っていた石碑の前まで来ていた。

ここに至るまでも似たようなものを見てきたのだろう、慣れた手付きで中央にある赤い水晶に触れた。

 

 

 

――そのすぐ後に、中央ルートにいるクラインに一通のメッセージが舞い降りる。

 

「カルーからだ!

どうやらそれまで行き止まりだった場所が、突然開いたらしい!」

 

「アスナだ、きっとやってくれたんだよ!」

 

「しっかし最初聞いた時は冗談だと思ったが、まさか本当にあのアスナさんとはなぁ。

……いくら払ったんだよ?」

 

「んなことしてねぇよバカ。

まぁ……色々あったんだよ、色々な」

 

これまでのことを心が痛むのを抑えながら振り返りつつ、ラスベリーがそう呟いた。

 

とにかくこれでカルーたち3人のいる右側――Bルートがさらに進めるようになった。

現在アスナたちがいるもう1つのエリア――A2ルートにBルートの封鎖を解く仕掛けがあったとなれば、やはり彼女に協力を頼んだのは間違いではなかった。

 

今は待つことしか出来ないラスベリーたちではあるが、いずれはこの中央ことA1ルートも開通するはず。

それを信じつつ、二人はそれぞれの相手にメッセージを打ち込み始める。

 

 

 

時を同じくしてA2ルートでは、無事三人の敵を退けたアスナがその際救助した二人を引き連れ、急ぎ最奥を目指していた。

 

やはり道中アクア隊やモンスターが立ち塞がるものの、それらはすべて閃光の異名を持つ彼女には相手にならない。

 

何より今アスナは、ずっと探していた人物にもうすぐ会えるという希望を抱いている。

ハッキリ言って、普段の数倍ほどの実力を発揮していると言っていいだろう。

 

そうして即席の連合軍もまた、行き止まりに直面する。

 

「っ、こんな時に」

 

「ど、どうしますアスナさん?

こうしてる間にも、またヤツらが来るかも……」

 

「大丈夫、お二人の安全は私が保証します。

それより今は周辺の探索を。

作動出来そうな仕掛けがあればすぐには手を出さず、逐一報告してください」

 

「よし、了解だ!」

 

 

 

ラスベリーとアスナが、クラインと風林火山メンバーがそれぞれ連絡を取り合い続けることで、円滑にダンジョン攻略が進んでいく。

 

その成果は確実に形を見せていき、アスナからの報告に少し遅れる形でクラインの元に嬉しい報せが入ってきた。

 

「カルーのヤツが青いスイッチを発見したってよ!

……なぁラス、こいつぁ」

 

「あぁ。そろそろ動けるかもな、俺たち」

 

確信を持って言葉を交わした二人の向く先は、遠く離れた足場から広がる青い回廊。

同じ色のスイッチが発見されたと聞いては、準備をせずにはいられない。

 

すぐにクラインが仕掛けを作動させるようにメッセージを飛ばし、ほんの数秒後に変化は起きた。

 

暗闇の中から四角いブロックが浮かび上がってきて、真っ直ぐに連なったそれが向こう岸へと続く橋となったのだ。

 

「うっし、ようやく攻略再開だ!

改めて力貸してもらうぜ、ラス!」

 

「ったりまえだクライン。

早いとこボスを倒して、ヤツら黙らせてやろうぜ!」

 

これから先へと進む。

そのことをアスナに報告しつつ、ラスベリーはクラインとともに、どこまでも深く続く紺碧の道へと足を踏み入れた。

 

 

 

それから彼らは全員で力を合わせ、少し前までの苦戦ぶりが嘘のようなペースで先へ進んでいく。

 

Bルートにいる風林火山メンバーへの指示はクラインが、A2ルートのアスナへはラスベリーが行うことで、まるで初めから連携していたかのような円滑さが実現されたのだ。

 

そうしていよいよラスベリーたち二人は最奥への扉を潜り、そこである一人の男と対面する。

 

向かって右側が青で、左側が赤という独特の配色を持つ髪を横にかき分けた、どこか不気味な糸目の人物。

一瞬性別を疑うほど中性的な顔つきはややキリトに近いだろうか、そんな印象とは真逆に低めの声を彼は発する。

 

「おやおや、まさかここまでたどり着く人がいるとはねー。

野武士ヅラの人は頭悪そうだし、そこのイケメンさんのせいかなー?」

 

「な、なんだとォ!?」

 

「……この野武士ヅラのダンディさん含め、強力な助っ人がいてくれたもんでね。

正直俺一人じゃ、どうしようもなかったぜ」

 

「ラス……」

 

多少盛ってはいるものの、ラスベリーが発したフォローには嘘偽りはない。

事実クラインたちが先行してくれなかったらこのダンジョンの攻略はより苦戦しただろうし、罠や仕掛けだらけの恐ろしい場所であることを知ることが出来た。

 

一見無謀にも思える彼ら風林火山の勇敢な行動が、後に続く者たちの道を切り拓いてくれた。

ラスベリーは所詮、その恩恵を受けたにすぎないのだ。

 

「カトーが言っていたホエンっつーのは、お前さんのことで良いかぃ?」

 

「そうだよー、俺がホエン。

九の懐で最も効率的な男、とでも言っておこうかなー」

 

「効率的って……おめぇら色んなプレイヤーたちに仲間になれとか言ってるみてぇじゃねぇか!

なのにこんなとこに隠れて、仲間にはPKさせて!

それのどこが効率的なんだよ!?」

 

「簡単なことさー、俺はカトーたちみたいに悠長じゃない。

俺が言うのもアレだけど、九の懐はウケが悪くてねー。

そんな人たちからスカウトされて、誰が喜んで入ると思う?

……だったらソイツらが邪魔してくる前にー、始末しちゃえば良いじゃない?」

 

腸が煮えくり返りそうなその発言に、クラインは我慢の限界寸前だった。

同じくラスベリーも怒りが込み上げてきて仕方がないが、同時にホエンの言い分が何一つ間違っていないのも理解出来る。

 

もし自分がある巨大組織の幹部で、敵と和解出来る余地がないと判った場合、殺すまでは行かずとも無力化という選択肢を取るだろうから。

 

事実ここまでの戦い、すべての戦闘員に対してその手段を選んでしまっている以上、納得せざるを得ないのだ。

だからといって、否定しないわけではないが。

 

「このゲームはクリアされなくちゃならない。

多くの人生を止めたこの世界を、茅場晶彦を許しちゃダメなんだ。

それなのにお前らは、それに加担するってのか?」

 

「悪いけど、ボスの決めた方針だからー。

んで俺は暇だったんで参加してみただけー。

ほらー、人って何か事件が起きるとそこに注目するじゃん?

つまり、承認欲求ってこと」

 

「んなことのためにPKさせてんのか……!?

テメェ、もう許さねぇ!

ここでキッチリやっつけて、牢獄にブチ込んでやる!!」

 

「……正義感とか、無駄なんだよねー」

 

感情に任せて突撃したクラインの斬撃は、どういうわけかホエンには通用しなかった。

 

驚愕するクラインを嘲笑うかのように口元を歪ませるホエンはどこからともなく得物を取り出し、それを構えてすぐ何かを放つ。

彼の手にあるそれの正体に気がついた時、ラスベリーの思考が急停止する。

 

「弓だと!?」

 

「ラス、上だ!!」

 

「っ!」

 

クラインの声とともに顔を上げると、いつの間にか崩れ落ちた天井がすぐそこまで迫って来ていた。

 

咄嗟にパッシブスキル《介入者》を発動することで無敵時間を適応――回避に成功するものの、同時にクラインがホエンのキックによって蹴り飛ばされる。

間一髪ラスベリーが受け止め、その際二人はある異変に気がついた。

 

「HPが減ってない……?

クラインお前、確かに体術スキルを受けたよな」

 

「あぁ、間違いねぇ。

でもHPが減ってねぇのは、あの野郎も同じだ」

 

「……その白い円に何かある、そういうことかぃ?」

 

「おー、当たり。

いわゆる無敵エリアねこれ、ここにいるプレイヤーはなんのダメージも受けないよー」

 

開いた口が塞がらないとはまさにこのこと。

仕掛けだらけのダンジョンということは嫌というほど味わってきたが、まさかこの最終盤に来てこんなものまであるとは思わず、目を見開く二人。

 

現在ホエンが鎮座する場所が本当に無敵エリアだとするのなら、確かに弓を装備するのも頷ける。

というかそれ以前にこのSAOにおいて、弓なんてものがあること自体前代未聞なのだが。

 

それにホエンが矢を放った直後に天井の一部が降ってきたことを考えると、恐らく偶然ではない。

トラップを意図的に発生させて、ラスベリーを攻撃した――どうやら組織で一番の効率派というのはハッタリではないらしい。

 

「へっ、無敵がなんだってんだ!

さっき俺を蹴れたってことは当たり判定はあるんだろうが!

お前をそこから引きずり出しゃあ良いんだろ!!」

 

「悪いけどー、近づかせないよ」

 

「アイツ、また!

クライン逃げろ!」

 

「ごめーん、狙うのそっちじゃない」

 

ナメた態度のまま放たれた矢はちょうど無敵エリアの手前にある足場に突き刺さり、同時にそこに仕掛けられていたトラップが作動。

 

クラインの行く手を阻むようにして、5体もの忍者モンスターが姿を現した。

 

突然の出現に対応しきれず、明確な隙を晒した彼を忍たちは見逃さず刃を振るう。

 

「うぉっ!?」

 

「クライン伏せろ!!」

 

いつの間にか正面にまで駆け上がってきていたラスベリーが渾身の4連撃ソードスキル《カドラプル・ペイン》を放ち、手前にいた者から次々と蹴散らしていく。

 

残った一体については高い跳躍力を生かした飛び蹴りで吹っ飛ばし、5体の忍者たちとの距離を作る。

だが、結果的に囲まれてしまった。

 

「助かったぜラス、けどこの状況は……」

 

「マズいな、とんでもなく。

引きずり出すどころじゃあねぇぞ」

 

「くっそ、せめてあの無敵エリアさえ無くなれば!」

 

「少なくとも君たちは出来ないよー、絶対に」

 

もはや神経を逆撫でるレベルで腹の立つ煽りを受けつつ、二人は忍者たちと戦う。

 

その最中ラスベリーは僅かな隙を見つけてはその度に周囲を見回してみるが、特に変わったものは何一つない。

ホエンが言っていたのは、ここに無敵を解く術はないということ。

 

――だがこれまでも同じだった。

扉を開くためのスイッチはその道になく、遠く離れた別の場所に設置されていたように、あの忌々しい円も同様ではないか。

 

そう脳裏に過ぎった時、ラスベリーは賭けに出ることを決めた。

 

「クライン、ちょっとの間でいい!

時間を稼いでくれねぇか!?」

 

「別に構わねぇが、どうするんだ!?」

 

「アスナだ!

これまでも仕掛けを解く手段は、別のルートにあった……もしかしたらアイツのいるところに、それがあるかもしれねぇ!!」

 

「ッ……仕方ねぇ、ここは一発カッコいいところ見せてやるか!!」

 

男気を見せたクラインが全力でソードスキルを放ち、忍者たちのヘイトが一気に彼へと向けられる。

それとほぼ寸分違わないタイミングでラスベリーが戦線から離脱し、急いでメッセージの入力を行う。

 

しかしそれを放っておくほどホエンも間抜けではなく、的確に矢を放ち様々な罠を作動させてくる。

崩れ落ちる天井や突如壁から発射される手裏剣に、空へと伸び始める床。

 

恐らくホエンはこの部屋にあるトラップをすべて把握している。

ならばここは下手に動き回るよりも、向こうが仕掛けてきたタイミングで避けた方が確実だろう。

飛んでくる矢の行き先をしかと見極め、そこからどんな罠が発動するのかを予想――当たり外れに関係なく、その場に応じた対処を行う。

 

それをメッセージを打ち込みながら実行するのは恐らく歴戦の傭兵でも無理難題のうちに入るだろう。

何せ戦火の中にいるのだとしても常にスマートフォンを手放せず、メールでのやり取りをし続けるようなものだ。

 

しかしここは現実ではなくSAO。

本来の身体よりも高い能力を持ったアバターを直感的に動かすことが出来るのもあり、ラスベリーはそれを見事に行っていた。

まるで曲芸やミュージカルのような、すべてがサクラであると疑うほどに完璧なタイミングで、ラスベリーはすべてを避け続ける。

 

「これで、どうだッ……!」

 

そしてようやく、打ち込み終わったそれを送信する。

 

 

 

「メッセージ、ラスベリーから!」

 

『ついに九の懐の幹部を見つけた!

でもアイツは今、このダンジョンが発生させている無敵エリアとやらに守られてやがる。

そっちに解除する手段がないか探してみてくれ!

それまでなんとか持ち堪えて見せる!』

 

「……恐らくアレね」

 

ちょうどその時、アスナはA2ルートの最奥を見渡せる位置にいた。

そこには今までのものなど比にならないくらい立派な石碑があって、それを取り囲むようにして5人もの戦闘員が待ち構えている。

 

ラスベリーからのメッセージ通りなら、ホエンを守る無敵エリアを制御しているのは恐らくあれだろう。

そうでなければ、あんな人数で構える必要はない。

狙うはただ一つ、彼らの先にある石碑――バリアジェネレーターだ。

 

「待っててラスベリー、すぐ行くから!」

 

大切なもののためなら人はどこまでも強くなれるというが、アスナに限っては特にその言葉が当てはまるだろう。

大広間にいきなり飛び込んできた彼女に反応しきれず、アクア隊の面々は神速のような8連撃ソードスキル《スター・スプラッシュ》をもろに食らってしまった。

 

それに怯まなかった一部の戦闘員が果敢に立ち向かうも、残念ながら一つの攻撃でさえかすりもしない。

閃光という異名は伊達ではないというか、今の彼女は強いとかそういう次元の話ではなく、純粋に力の差がありすぎるのだ。

 

「やぁぁああ!!」

 

刹那の時、アスナは彼らの隙を突いて文字通り光の速さで《リニアー》を放つ。

 

流星が降り注ぐ先は当然、アクア隊が守護していたバリアジェネレーター。

 

 

 

次の瞬間、中央ルート最深部に異変が生じる。

それまでホエンをずっと守り続けていた白い光が、足元から一切なくなってしまったのだ。

 

「な、何ー!?」

 

「無敵エリアが無くなったぞ!?

なぁ、これってひょっとして」

 

「おう、たった今返信来たぜ。

アスナがこのチャンスを作ってくれた、無駄にすんじゃあねぇぞ!!」

 

「おぉう!」

 

もはや阻むものは何もない。

この瞬間を迎えるまでにもラスベリーたちはホエンの繰り出す策を乗り越え続け、そのすべてを最小限の被害に抑えてきた。

そのせいで、この部屋に仕掛けられていたトラップはもう一つもない。

 

頼みの綱であった無敵エリアも目を閉じてしまった以上、彼らを迎え討つしかなくなったホエンは直ぐ様得物を変更――長距離用の弓から至近距離用のダガーに持ち替えた。

 

「行くぞ、ホリゾンタル・アーク!!」

 

「ぐ、クソぉッー!!」

 

眼前にまで迫って来たラスベリーが放つ片手剣ソードスキルを、短剣ソードスキルによって相殺しようと焦るホエン。

 

ところが技が発動しようという一歩手前で怪しげな笑みを浮かべるとともにそれをキャンセル、空いたもう片方の腕に光をまとわせて突き出して来た。

零距離で放たれる体術スキル《エンブレイサー》だ。

 

「……読んでいたぜ」

 

「ぇ……?」

 

「クライン、スイッチだ!」

 

「任せろぉい!!」

 

手刀が腹部に突き刺さるよりも1秒早く、彼と入れ替わりで現れた赤き侍がカタナソードスキル《絶空》をダイレクトに浴びせた。

 

プロが力強く蹴り上げたサッカーボールのように吹っ飛ばされたホエンはその勢いを殺せないまま壁に激突し、HPを大幅に削られる。

地に伏すしかない自分の姿を想像して、ホエンは狂ったような鬼気迫る顔をこちらに向ける。

 

「何故だ、何故判ったんだー!?」

 

「理由はたった一つ!

お前さんは自分が有利であると疑わず、手の内を出しすぎた!」

 

「つまりテメェの考えそうなこたぁ、もう判りきってるんだよ!」

 

「こ、このやろぉぉぉおおー!!」

 

もはや入れ替えたばかりのダガーすら放り投げ、怒りのままに突撃して来るホエン。

これでは組織一効率派という自称が聞いて呆れるというものだろう、まだカトーの方が賢かったかもしれない。

 

頭脳明晰ぶっていた何かが迫りくる間、ラスベリーはのんきなことにシステムウインドウを操作していた。

そのこと自体さらにホエンの感情を刺激し、どんどん走り方が荒くなっていく。

 

遂に二人の正面にまで来たホエンがその拳を高く振り上げ、渾身の大技を繰り出す。

 

――が、それは地面を打ち付けるのみであった。

 

「間に合って良かったぜ。

お前さんがあっちでヘバッてる間、アスナに連絡して無敵エリアを再起動してもらったのさ!」

 

「んな、なにぃ……!?」

 

「といっても、復活するかどうかは賭けだった。

スイッチ一つで切り替えられる仕様で良かったぜ、閃光殿様々って感じか?

……クライン、トドメは任せてくれるか」

 

「しゃーねぇな、その代わり今度はお前が奢ってくれよ?

今日飲んだのよりも高くて美味い酒だ!」

 

「ヘヘッ、おぅ!」

 

今日出会ったばかりだが、ようやくこの世界で出来た酒飲み友だちから託された想いは無駄にしたくない。

期待に応えたい笑顔と絶対悪を止める決意の入り混じった表情のまま、ラスベリーは片手剣ソードスキル《スラント》によったホエンを押し出す。

 

無敵エリアの範囲内であったことでダメージこそないものの、おかげで彼は今その外。

もはや守るものも、敵を阻む罠もない。

最後の悪あがきとして手放していなかった弓を引こうとするものの、すでに遅かった。

 

「発動条件は《カドラプル・ペイン》、《スラント》、《ホリゾンタル・アーク》。

オールクリア!

クロスオーバー・スリーフェイス!!

バニシング・ブレイザー!!!」

 

ラスベリーの周囲を取り囲むようにして、それぞれ色の異なる4つの光が十字を型取り現れる。

やがてそれらは青き龍、赤き鳥、白き虎、緑の亀の姿を見せた。

 

そこから少しの間をおいて、緑色のエネルギーがアウリオンに宿る。

展開して三本の刃を持つ剣となり、隙だらけのホエンに向かって重い一撃が降り注いだ。

 

まるで巨大な玄武がのしかかったような、恐るべき衝撃――もうそれだけでも強力ではあるが。

恐るべきことに、この技はまだ続く。

次に得物が放つ光は青――龍の咆哮が迸り、展開していた刃を一つに束ねて的確にホエンの腹を突き抜ける。

 

続けて赤い輝きが周囲を照らし、ラスベリーが剣とともに高く飛び上がる。

目測にして約5メートルぐらいだろうか。

この部屋があまり広くないために彼の強みでもある跳躍力は生かせなかったが、こうなれば話は別。

突風のような斬撃を放ち、最後に現れるのは白き猛虎。

 

すべてを押し潰す玄武、敵を凍てつかせる青龍、あらゆるものを追い越す朱雀、そして何者をも征する白虎。

四聖獣のオーラをまとい、自在に繰り出される4連撃。

これこそが、バニシング・ブレイザーだ。

 

「う、うわあぁぁぁあぁああー!!?」

 

少しの静寂のあと、身を引き裂くような爆風が吹き荒れる。

 

 

 

22層の時には反動に呑み込まれて使いこなせなかった三身合体。

さすがにまだ堪えはするものの、当時に比べれば明らかにものにしていた。

 

事実ラスベリーはトドメを刺す直前手心を加えており、最後に襲いかかった白虎の牙はギリギリホエンを喰らってはいなかった。

 

「……な、何故殺さないー!?」

 

「クラインが言ってたろうがよ、牢獄にブチ込むって。

それにお前さんにゃあ、答えてもらわなくちゃならねぇこともある」

 

「は、はぃ!答えます!

まだ死にたくないんですー!!」

 

「安心しろ、別に殺すつもりはねぇよ。

……単刀直入に聞くぞ。

さっきも言っていた、九の懐のボス。

そいつァ、一体何者だ?」

 

一歩一歩距離を詰めながら、いつになく真面目なトーンでラスベリーが問いかける。

 

すべてが始まったあの日から今日この日に至るまで、彼らはあらゆる手段で攻略を目指すプレイヤーたちの妨害をし続け、時には殺害をも行った。

 

戦闘員たちは口々にそれらを『正義の行い』だの『ボスの決めた方針』などと宣い、まったく悪びれる様子はなかった。

もはや彼らは本当にアインクラッドから、このゲームからの脱出を諦めてしまっているのだろう。

 

だがそれらを取りまとめている――もっと言えば、一番最初にそんなことを言い出した人物とはなんなのか。

それがラスベリーには、ずっと引っかかっていた。

 

「九の懐の、ボス。

そうか、元はと言やぁソイツの指示であんなことしてたわけだしな」

 

「……教えてくれ、なんの意味があってプレイヤーたちの未来を阻む?」

 

「俺は……知らない、本当だよ。

組織がなんでそんなことしてるのか、そもそもボスがどんな人なのか。

……う、嘘は言ってないよ!?」

 

「ボスのことを知らねぇって、そりゃ苦しすぎんじゃねぇか?

だとしたらどうやって動いてたんだよお前ら」

 

「幹部の中にボスのパイプ役がいるんだ、正体はソイツ以外知らない。

俺たち普通の幹部はソイツから指令を受けて、下っ端たちを扱き使ってただけさ……」

 

未だ敗北の悔しさと眼前に迫った死の恐怖に怯えた表情と声音を見るに、ホエンの言っていることはデタラメではないのだろう。

 

一部隊を取り仕切る立場にさえ一切姿を見せないというボスは、いったいどのようにして九の懐なる組織を立ち上げたのか。

そもそも素性を明かさないまま、これだけの規模の人間を惹きつけられるものなのか。

 

色々と疑問は浮かんでくるが、逆に言えばこの歪な状況こそ、今日に至っても未だにボスの正体がヒントさえ出て来ない理由とも言える。

幹部が知らないとなれば当然下っ端たちも同様だろう、それほど用心深い人物なのかもしれない。

 

「じゃあ指示を出したソイツはいったい誰なんだ?

それなら答えられるよな」

 

「それは……ッ!?」

 

ホエンが言葉を紡ぎ出すよりも早く、彼の胸から生々しい音を立てて何かが飛び出した。

 

本来なら人にあるはずのそれは、データによってすべてが形成されたこの世界にはない。

にも関わらずその鋭利なものは、何よりも真っ赤に染まっていた。

 

それから少しの時間も経たないうちにホエンの身体が淡く光り始め、ガラスのように砕け散ってしまう。

 

「っ、ホエン!?」

 

「い……いったい何が起こった!?」

 

「……ヤツは、喋りすぎたのだ」

 

先程までホエンがいた場所には、朱色のフードを目深に被った人物が赤紫色の短刀を片手に佇んでいた。

 

身長はアスナよりは僅かに低いだろうか、体格からして女性なのは間違いない。

特に性別に関しては、たった今発した冷ややかな声から疑う余地はないだろう。

 

何より彼女のまとう銀色の衣服は、女性だと簡単に判別出来てしまう程度には軽装だった。

腕と足を片方ずつ大胆に露出した左右非対称の装備は最低限の防御力を確保しつつ、それでいて一切動きを阻害しない印象を受ける。

 

肩にかかるほど長い銀髪のうち、青みがかっている方を静かに撫でながら、その少女はフードの奥から僅かに見える真珠色の瞳を向けてきた。

 

「はじめましてだな、ラスベリー。

お前のことはカトーやジットから聞いている。

私はシオウ。

彼らやさっき死んだ者同様、九の懐の幹部をしている」

 

「九の懐の、幹部……!」

 

「……なんで殺した」

 

「ラス……?」

 

このタイミングでさらに現れた敵の幹部を前にしてなんとか言葉を絞り出したクラインだったが、少し遅れて聞こえてきたラスベリーの声色に思わず戦慄した。

 

それまでの彼とは真逆にあまりにどす黒く、それでいて深く沈んだような暗い感情。

濡羽色の瞳に宿っていたそれは、憤怒。

シオウと名乗った目の前の少女に向けて、それを爆発させる。

 

「なんでホエン殺したんだって聞いてんだ!!

お前ら仲間なんだろ、なのになんで……!?」

 

「仲間?

……フフ、アッハハハ……」

 

「んでそこで笑うんだよ……ふざけてんじゃあねぇぞッ!!」

 

「ラス!!」

 

クラインの必死の叫びも虚しく、ラスベリーは怒りに囚われ刃を力任せに振るった。

 

だがその一撃は空気すら切り裂くことはなく、僅かな力のみでシオウの持つダガーによって受け止められてしまう。

 

「私に仲間はいない、そもそも人間などすべて悪だ」

 

「何ィ……!?」

 

その言葉に気を取られてしまったせいで得物ごしに突き飛ばされ、尻もちをつくのとほぼ同時にシオウがその鋭利な刃を眼前に向ける。

初めて見上げることとなったあどけなさの残る少女の表情は、あまりにも冷たかった。

 

「利用価値があるから属している……そんな組織の同僚が仲間などと、片腹痛い。

九の懐を度々阻む存在がどのような者か見に来てみれば、ここまで幼稚とはな」

 

「くっ……」

 

「テメェ、ラスから離れやがれ!

さもねぇと――」

 

「――状況が判らないのか?

風林火山のリーダー、クライン」

 

現在ラスベリーの目と鼻の先には、直前にホエンを葬った紅い刃。

シオウの機嫌次第でいつでも振り下ろせるそれは、簡単に命を刈り取れる位置にある。

 

パッシブスキルである介入者があるため無敵時間を利用すれば抜けられないこともないが、効果が切れたあとに彼女の攻撃を凌ぎきれる保証はどこにもない。

何せシオウはたった今彼らの前に姿を現したばかりで、なんの情報もない。

 

その上、クラインはそもそもラスベリーの持つ特異性を知らないのだ。

この状況を前にして、一歩を踏み出せないのも無理はない。

 

「そうだ、まだ質問に答えていなかったな。

ヤツが口にしかけたことは、私にとって都合が悪い。

元から消すつもりだったし、ちょうど良かったんだ」

 

「組織を利用している、そう言ったよな……?

お前さんの目的は、なんなんだ」

 

「……答えても構わんが、そろそろギャラリーが多くなりそうだ。

場所を変えよう」

 

「……判った」

 

得物を突きつけられたままゆっくりと立ち上がったラスベリーは、シオウとほぼ同時に転移結晶をその手に出現させる。

 

シオウの言葉を鵜呑みにするなら、もうすぐこのダンジョンに潜っていた仲間たちがこの部屋に集まってくる。

彼らが来た瞬間、クラインは真っ先に彼女の素性を伝えるだろう。

そうなってしまえば、戦闘は避けられない。

 

未だ得体の知れぬ敵ではあるが、明日の作戦に多かれ少なかれ、支障をきたしてしまうことは確実だろう。

クラインたちがやるべきことは、シオウと戦うことではない。

だからこそラスベリーは単身、引き受ける決意をした。

 

「悪ぃクライン、酒を奢るのはしばらくかかりそうだ。

アスナには、上手く言っといてくれ」

 

「お、おいラス!

本当に行く気かよ……?」

 

「んな情けねぇツラすんなっての、せっかくのハンサムが台無しだぜ?

……絶対生きて戻る、そん時は飲み比べだ」

 

「……おぅ」

 

「話は済んだようだな」

 

意外にも不意打ちなど無粋なことはせず、律儀にも黙って待っていてくれたシオウに対し、一応感謝を示すため軽く頷いた。

 

自分に注意が向いている限り、彼女の凶刃がクラインたちへ襲いかかることはない。

この判断はみんなを守るためのもの。

無謀であることくらい百も承知だが、これ以上彼らの手を煩わせることは出来なかった。

 

しかしこの選択は同時に、あの約束を破ってしまうものでもある。

 

「待って、ラスベリーッ!!」

 

一番この事態を放っておかないであろう人物にして、この一件が終われば会いに行くはずだった少女――アスナが必死に手を伸ばして走ってくる。

だがラスベリーがその声に反応するよりも早く転移が完了してしまい、彼の背中が見えていた場所で力なく立ち止まる。

 

今から追えばもしかしたら間に合うかもしれないが、アスナは二人がどこへ向かったのかを知らない。

この部屋に飛び込んだ時には、転移結晶が起動していたから。

もはやフレンドリストに掲載される現在地の仕様すら忘れ、震える感情を傍にいるクラインにぶつけた。

 

「クラインさん、ラスベリーはどこへ行ったの!?

早く彼を追いかけないと……!!」

 

「……アスナさん、大変言いづらいんだが。

もう、8時過ぎだ」

 

「ぁ……」

 

「そろそろ戻んねぇと、間に合わねぇよ」

 

予定ではもうとっくに全員55層のグランザムに集まって、各自最終調整に入っている頃。

九の懐の鎮圧に時間をかけすぎた現状、他のことに時間を費やしている余裕などない。

 

ましてアスナはかの血盟騎士団の副団長。

自分がいなければ、メンバーの統率が乱れることぐらい考えなくても理解出来る。

 

「……判りました」

 

――その後、リーダーのホエンが死亡したことを受け、九の懐・アクア隊の面々は全員沈黙。

名乗りを上げた一部の風林火山メンバーによって、黒鉄宮の牢獄にまで連行されたという。

 

 

 

「――ここで良いだろう」

 

第48層のとある高原、午後8時半ごろ。

すでに闇へと染まった空が見下すストーンヘンジの中心部に、彼らは来ていた。

 

一切人の気配がない静寂に包まれたその場所で、身を翻したシオウがようやくフードを脱ぐ。

 

それまで肩にかかっていた銀髪は阻むものが無くなったことで本来のツインテールとなり、左側からグラデーション風に入り込んだ青色のメッシュが露わになる。

 

どこか冷たく儚い真珠色の瞳は真っ直ぐにラスベリーを見つめ、一見鋭い印象を与える性格に反し、幼さの残る顔つきは可憐なものだった。

 

「へっ、意外とカワイイ顔してんだな」

 

「生憎それで得をしたことはないな。

……一つ聞かせるがいい。

先ほど刃を向けた時、何故逃げなかった?」

 

「……気付いてやがったか」

 

「カトーと戦った際、あらゆる干渉を受けぬスキルを行使したと聞いた。

それを用いれば、容易かったはずだが」

 

《介入者》スキルの存在を知りながらクラインにあんなことを言っていたということは、あれは脅しではなく彼への挑発と見て間違いないだろう。

 

その意図は定かではないものの、少なくともハッキリしているのは彼女がただものではないということ。

ラスベリーたちがあれだけ苦労した忍びの罠園を容易く突破し、彼らに気づかれないままホエンの背後に現れ殺害。

あまつさえ、明らかに異常なまでのパワーを見せつけて来た。

 

特にホエンの件に関しては、あまりに唐突すぎた。

まるで人を殺すことに慣れているような、機械地味た不気味さ。

元から消すつもりだったという発言も合わせ、相当な危険人物であることは疑いようがない。

 

故に一瞬でも気を抜けば、いつ喉元が引き裂かれてもおかしくはない。

未知なる恐怖に呑み込まれぬよう、真っ直ぐに彼女を見据えて静かに口を開く。

 

「これはただの勘だが。

あの時俺が動いていた場合、すぐ近くにいたクラインを真っ先に始末するつもりだったんじゃねぇか?

それにお前は、アスナたちが来ることに気付いていた。

駆け込んで来たところを不意打ちして、そのままキル……あとは風林火山のヤツらを一網打尽ってところか」

 

「中々冴えるな。

風林火山もそうだが、閃光は攻略組の中でもなくてはならない存在。

それらを一気に葬れる機会など、そうそう回ってこないからな。

お前が隙を見せてくれなかったために、叶わなかったがな」

 

「俺からも良いかぃ?

人間がみんな悪だの葬るだの、なんでそうなっちまった?」

 

「……何故、そんなことを問う」

 

どうしてかと言われれば、正直ラスベリー自身もよく判ってはいない。

 

そもそもシオウとはさっき初めて会ったばかりで、判らないことのほうが多すぎるのだ。

寧ろ、それがほとんどと言っていいだろう。

 

だが彼にとって明確なのは、この少女はこれまでに遭遇してきた三人の幹部とは、決定的に‘何かが異なる’ということ。

ラスベリーはその正体を、朧げながら見出していた。

 

「理由はたった一つ。

お前さん以上に冷たい目をしたヤツを、俺は見たことねぇ」

 

「フ……中々面白いことを言う。

協力者がいてこそとはいえ、幹部を三人も退けてきたんだ。

良いだろう、話してやる。

私が獣を知った、あの日々のことを」

 

「獣……だと」

 

「……ラスベリー。

お前は、東日本大震災を知っているか?」

 

 

 

――東日本大震災。

日本人なら知らない者はいない、全世界を震撼させた恐るべき災害。

その名前をあげるだけで震え上がる者もいるほどであり、人々の心に大きな傷跡を残していった、一生歴史から消えることのない絶望。

 

当時小学生だったラスベリー――残光晴輝が住む東京も少なからず被害を受け、街中が阿鼻叫喚のパニックに陥った。

決してあってはならない犠牲を出しながらも、結果的にまだ軽傷な方という形で一旦は幕を閉じた。

 

でもそれは被害の少なかった地域の話。

シオウが住んでいたのは、まさに揺れの中心にほど近い場所。

当時5歳だった彼女にはワケも判らず、為す術もないまま土砂に呑み込まれてしまう。

 

ところがシオウは無事だった。

彼女の命を守ったのは、ことが起きる直前まで一緒に遊んでいた幼子たちだったもの。

それが盾となったからだと理解したのは、もう少しあとのこと。

 

一万人以上もの死傷者や負傷者、ないしは行方不明者が出たものの、幸か不幸か彼女の両親もまた生きていた。

彼らに拾われてすぐ、シオウは被災者としての生活送ることになる。

 

しかし避難所に来てから彼女が見たのは、あまりに生々しく凄惨なものだった。

 

そこにいるはずなのに、まるで生気のない顔色をした者たち。

もはや現実を直視出来ずにおかしなことを叫び出す者もいれば、ずっと泣いている者もいた。

そんな中でも率先して負傷者を介護する人間もいたが、特に被害の大きかった地域の被災者ばかりが集まっているこの場所では、その数は極めて少ない。

 

このような光景を目の当たりにして、当時シオウは何を思ったのか――本人曰く、何も覚えていないという。

子どもらしく泣き叫んだかもしれないし、いっそ無だったかもしれない。

寧ろ彼女が鮮明に記憶しているのは、少し経ってからのこと。

 

住む場所を奪われ、それまでの人生すべてを打ち砕かれた彼らを生かしていたのは、国から支給された物資たち。

当然被災者たちは老若男女問わず、それに群がった。

最初こそは限られた食料を分け合い、みんなで支え合っていた。

 

だがそれだけで腹が満たされるはずがない。

すでに余裕のなくなっていた彼らが願ったのは、『死にたくない』という当然の生存本能。

そんな欲望が最初に暴走したのは、翌日分の非常食に手を出した者が現れた時だった。

 

お腹が空いて仕方なかったという彼を擁護する者は一人もおらず、誰もがその男を非難した。

しかしその内容はいずれも『自分に寄越せ』という、自分本意なもの。

みんなのためなどという綺麗事は、ただの一つもなかった。

 

それから彼らは食べ物を奪い合うようになってしまい、時には子どもたちのためにと用意されたお菓子にまで手を出すこともあった。

当時シオウが楽しみにしていたドーナツも、例外なく彼らの標的として狙われてしまう。

 

はじめの頃には優しかった者たちでさえ一人の例外なく化けの皮を剥がし、獣のように獰猛な目で迫る。

何も悪いことはしていないのに罵倒され、暴力さえ受けた。

力のないただの子どもである当時のシオウに何か出来たわけもなく、ドーナツを奪われてしまう。

 

娘の涙を良しとしない両親がすぐ食ってかかるものの、彼らはあろうことか寄ってたかって夫婦を袋叩きにし、これを死に至らしめてしまった。

災害によるものではなく、被災者の暴走によって引き起こされた死。

それが悲劇の引き金となった。

 

誰も彼もが自身を生かすことに躍起になり、他者への攻撃を躊躇わなくなった。

シオウの両親を殺した者たちもすでに同じ方法でこの世を追われており、このような悲劇の犠牲者はすでに40人を超えていた。

シオウはその一つ一つを、眼前に焼き付けていたという。

 

一緒に遊んでいた友だちを、それまで住んでいた街を、大好きだった両親を立て続けに失い、仕舞いにはその復讐を行う相手さえすでに殺された。

もはや生きる意味さえ失ったシオウは、道端で偶然見つけたナイフを片手に避難所を去って行った。

 

最後まで人間だったのは自分の両親だけ。

それ以外は全員、自分のためならどこまでも残酷になってしまう化け物ばかりだった。

何もかも失って追い詰められているのはみんな同じだと言うのに、結局人は極限状態になると考えるのは自分のことばかり。

そんな者たちのために、自分の両親は死んだ――

いやそもそも、これまで誰かと絆を育むことに意味があったのだろうか。

全員があのような怪物ならば、結局最終的には搾取される側になるだけではないか。

 

まだ10にも満たない歳の少女は、誰も信じられなくなった。

明確な力や決まり事、まともに受け止められるのはその程度だろうか。

そんな彼女は流れ着いた先の街で、人を刺した。

 

信号無視やゴミのポイ捨て、時には軽い冗談で口にしただけの悪口。

そんな小さなものでさえ行おうとした者、ないしは行おうとした者を、手当り次第襲撃していったのだ。

何度も警察に補導され囚われの中にいようと、シオウはその衝動を抑えられず、気がつけばいつも少年院にいた。

 

少女にとってすべての人間は穢らわしい獣、この世から排除すべき存在。

だがそんなことをしようとすれば、法律が彼女を容易く抑え込む。

しかしそれでもシオウは凶暴性を増していき、同じ受刑者たちに乱暴を働き続けた。

前科者だからこそ、思考せずとも悪だろう。そんな短絡的とも言える判断によって。

 

当然そんなことをしてただで済むワケもなく、シオウは完全に身動きを封じられた上で、他に誰もいない暗闇だけが存在する場所に隔離された。

未成年にして傷害事件を起こし続けた彼女にとって、ある意味では優しい措置とも言えるかもしれない。

 

誰の声も聞こえない、何も見えない。

指一つ動かすことも出来ず、やれることと言えば呼吸ぐらい。

どこまでもこの静寂が続くのだろう、そんな風にすべてを諦めていた時だった。

 

ある日少年院に、アーガスの社員を名乗る一人の男が現れた。

どうやらその年の冬頃に正式サービスを控えたあるゲームのベータテスターを募るためやって来たらしく、当然施設の子どもたちはそれに殺到。

その頃にはシオウにつけられた傷も完治した頃であり、自らの罪を受け入れ切った者が多かった。

 

ただ希望すること自体はみんな平等、当然シオウにも知らされた。

どうせこれからも食事と睡眠ぐらいしかやることがないのならと、単なる暇潰しのつもりでその話を承諾――その後、なんの因果かベータテスターとして当選してしまう。

 

初めてゲームをやって、その世界に入ってシオウの心は躍った。

 

久しぶりに身体を動かせる感覚もそうだが、何よりもその空間に限っては刃物を振るってもいい。

しかもそれによってモンスターを倒しても、人を切ったとしても犯罪ではない。

プレイヤーにダメージを与えた場合はペナルティが課せられはするが、幸いそれを解く術はゲーム内に存在する。

 

その世界は、渇いていた心を潤した。

刃を突き刺す感触を何度も確かめるように、ひたすら戦いに明け暮れた。

獄中生活であることが幸いし、時間ならいくらでもあったため、一日中ゲームをしていた日もある。

 

だがそれでも、シオウは満たされなかった。

何故ならこの世界における人は、何度殺しても復活してしまうから。

自分も含めたすべての人間はプレイヤーとして、電子上のアバターを操作しているにすぎない。

本物のその人を殺せているわけではないのだ。

彼女にとってそれは、結局世の中の悪を葬れないのと同義だった。

 

ところが正式サービスが開始したあの日、真紅に染まる空から現れたあの漢が告げた言葉が、シオウの狂気を覚醒させた。

 

『ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し……同時に。

諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される』

 

――この世界は、現実と繋がった。

茅場晶彦が仕掛けたデスゲームに巻き込まれた、役一万人のプレイヤーたち。

ログアウトの手段を奪われた彼らはシオウにとって、鎖に繋がれた獣たちと同じ。

しかもこの世界で彼らを屠っても、すべての罪はゲームマスターへと着せられる。

 

シオウの衝動を阻むものは、このゲームには存在しない。

 

「ソードアート・オンラインなら、欲望の獣たちを葬れる……!」

 

生まれて初めて、人を殺した。

その悦びが、悪を滅したという達成感が。

シオウの渇きを、何よりも満たした。

 

それからシオウは止まらなかった。

他者を出し抜こうとするプレイヤーから真っ先に手にかけ、気がつけば最前線のプレイヤーたちみたいな異名で恐れられるようになっていて、その手には赤紫色の刃――マッドオニキスが握られていたという。

 

 

 

「あの災害が、私からすべてを奪った。

だがおかげで、私は天命に出会えた!

……私は、すべてのプレイヤーを始末する」

 

「すべてのって……まさかお前、自分のことも」

 

「あぁ、人間はすべて悪だ。

どれだけ優しい者だろうと、心の奥底では何を考えているか判らない。

いやそもそも!人の善悪など何故判る?

追い詰められれば皆一様に、他のすべてを切り捨てるかもしれぬというのに。

だからこそ私は、私も含めたすべてを消す」

 

嬉々として語るその様子に、ラスベリーは思わず言葉を失う。

 

愛する者を亡くし、人間の残酷さばかりを見せつけられ。

私刑が許されない世界で、心なき獣たちを葬る機会を偶然にも手に入れた。

 

被災者時代に復讐が出来ていればまだマシだったかもしれない、でもそれをする発想も当時無ければ、それよりも早く仇は討たれてしまった。

もはや何を破壊すれば良いのかさえ判らない悲しき存在、そんなシオウを責められなかった。

 

「……やらせねぇよ」

 

「ほぅ?」

 

「お前の悲しみは俺には計り知れない。

あと何回話をされたとしても、本当の意味じゃあ理解出来ねぇんだろう。

それはあくまで、内容を知っただけなんだからな」

 

「……何が言いたい?」

 

彼女を責める権利など存在しない。

だからと言って判った気になって、下手に慰めるのも違うだろう。

まして彼女はこれまで罪を重ねすぎている以上、自分一人が許したところで救えるものではない。

 

だからこそ、せめて全力で止めてやるぐらいは出来るはず。

それまで恐れを抱いていた瞳は決意の色に変わり、力強く引き抜いた刃をシオウへと向ける。

 

「お前さんを止める。

失いたくねぇ大切なモンが山ほどあるんだ、それをやらせるワケには行かねぇ。

何よりそうなっちまったら……お前の言う獣に、お前自身が染まっちまう」

 

「なるほど、まだ間に合うと。

その上で私を、獣を殺そうというのか」

 

「違う、これはゲンコツだ!

お前さんの父ちゃん母ちゃんの代わりに、俺がお前さんを叱ってやる」

 

「……良かろう」

 

それまで浮かべていた冷たい笑みすら完全に消し去り、無となった表情の少女は音もなくその懐からあるものを取り出した。

 

ホエンを殺した際にも使っていた、歪な形状の紅い刃――マッドオニキス。

それを逆手に持ち、姿勢を下げて背後に構える。

 

「私はシオウ……死を宣告する王!

それに歯向かうことの愚かしさ、命を以て知るがいい!!」

 

「……何が死王だ。

俺がそんな肩書き、引っ剥がしてやる!

リニアー!!」

 

先に仕掛けたのはラスベリー。

それまでとは比較にならないほどの速度で、一際強烈な突き攻撃を放った。

積み重ねた経験によるものか、あるいは直前に出会っていた少女の武勇を少しかじったのか。

イシュから授けられた『閃光』の名に恥じぬ、見事な一撃。

 

しかしシオウはあろうことか、それを正面から受け止めた。

ダンジョンにいた時とはワケが違う、文字通り先端と先端のぶつかり合い。

狙ってやることさえ難しい防御方法を、彼女は容易く実行してみせた。

 

「何ッ!?」

 

「黒い流星、そんなものか」

 

常識外れな方法によるガードに驚いているうちに、シオウは背後にいた。

そのまま十字を描くようにしてダガーを振るい、ラスベリーは後ろ袈裟に傷を負ってしまう。

 

自分よりも早く、それでいてカトーなど話にならないほどの強烈なパワー。

極めつけはそれを利用した防御による、副次的な鉄壁。

今の一瞬のみで、そのすべてを見せつけられた。

 

「くそっ、こっからだ!

スラント!」

 

「遅い」

 

展開された三つの牙を持つ剣を斜めに切り下ろすも、シオウは瞬時に得物を逆手から順手に切り替えながらそれを受け止めた。

 

直後にまたしてもラスベリーの背後を取るが、先ほどこの手を食らっていたこともあり、今度は盾でシオウの不意打ちを防ぐことに成功。

僅かに出来た隙を狙い、一気に仕掛ける。

 

「クロスオーバー!

ディメンション・ソード!!」

 

「やはりそれが狙いだったか。

では私も、そろそろ」

 

次元を引き裂いて現れた凶刃が鈍い音を響かせながら振り下ろされ、それと同時にシオウが短剣ソードスキルである《アーマー・ピアス》を使い、なんとそれを相殺してしまった。

 

ソードスキルでさえただの斬撃によって防がれたことはあったが、それまであらゆる強敵を退けてきたはずのクロスオーバーは、たった今破られてしまった。

その衝撃は計り知れず、驚きを隠せないラスベリーは一瞬動きが止まってしまう。

 

「隙アリだ!」

 

「なっ、曲刀スキルだと!?」

 

突然刃を湾曲させたマッドオニキスから放たれたそれは、間違いなく曲刀ソードスキル《リーバー》だった。

 

状況を呑み込むよりも早くさらなるクロスオーバースキルである《ライトニング・スロー》を放ちなんとか防ぐことには成功するも、砂煙の中から覗いたシオウの表情は微かに微笑んでいた。

 

――ダガーかと思えば異なる種類のソードスキルを放ってきた。

この現象を、ラスベリーはよく知っている。

 

「まさか、お前のその武器は」

 

「クロスオーバーはお前だけのものではない、その身を以て知るがいい!!

クロスオーバー、デッドリー・レインっ!!」

 

これまで何度もラスベリーの窮地を救ってきた、どんな時でもともにあった存在。

他の者にはない、自分だけが使える特別な力だったもの。

 

それがたった今、彼に初めて牙を向いた。

 

シオウが先ほど使った二つのソードスキル《アーマー・ピアス》と《リーバー》を要件として放たれたのは、目を覆いたくなるほど暗い闇色の嵐。

 

強風によって動きが制限されてしまっているうちに、頭上からいくつもの閃光が迸る。

それらすべてが鋭利な刃と同じ働きをすることで、ラスベリーに途方もない衝撃を与えた。

 

「ぐぁっ……!?」

 

HPはすでに半分を大きく下回り、残り3割未満。

予想外の出来事が連続したのもあるが、何よりもシオウの動きが速すぎる。

 

見えないとか残像が出来るとか、もうそんな次元ではない。

まるで瞬間移動なのだ。

 

ましてラスベリーはダンジョン攻略とホエン戦を終えたばかりであり、こんな達人クラスを相手に対応し切ることなど出来るはずもない。

驚愕と絶望が、頭の中を埋め尽くす。

 

「判っただろう、自分が何者に挑んでしまったのかを。

この私を叱るなどということが、到底叶うはずもないことを」

 

「……お前も、クロスオーバーを」

 

「言っただろう、お前だけのものではないと。

まさか己のみの才能と自惚れていたわけではあるまい?」

 

22層で受けたクエストの一環で素材収集をしていた時、キリトが言っていた。

公にはされていないだけで、アウリオンのような武器が他にもあるかもしれないと。

 

本当にあったのだ、クロスオーバーを使用可能にする複数の特性を持った得物が。

しかもそれは最悪なことに迷惑プレイヤーたちを束ねる犯罪ギルド、九の懐の幹部――あらゆる人間の命を刈り取る死王の手中にある。

 

「……負けねぇ」

 

「うん?」

 

「お前がクロスオーバーを使おうが、俺は負けるわけにはいかねぇ。

俺の大切なダチを守るために。

何よりお前をこれ以上、奪う側にさせないために!

カドラプル・ペイン!!」

 

「ッ……!」

 

瞬間ラスベリーが見せたのは、闘神の如き気迫。

直後にソードスキルを放った時にはすでに目と鼻の先まで迫っていて、それまで完全に戦況を支配していたはずのシオウが初めて顔色を変えた。

 

特になんらかのバフが発生しているわけでも、ましてやシステムブーストがかかっているわけでもない。

にも関わらず降り注ぐ四連撃は尋常ではないほどに早く、一撃に込められた重みも明らかに違った。

この事態にはさすがに反応が遅れ、咄嗟に短剣ソードスキル《アーマー・ピアス》を使ってしまう。

 

――相殺、だがこれでいい。

ラスベリーの装備やスキルなどは、すべてホエンと戦った時の状態のまま。

ならば勝敗を明確に分けるのは間違いなく、彼にトドメを刺したあの技だろう。

指定された技はあと一つ、ラスベリーはそこに賭けて全力で狙いに行く。

 

「おおぉ!

ホリゾンタル・アークッ!!」

 

「また速く……!

ふっ!」

 

さらにスピードとパワーをあげるラスベリーだったが、それでも尚シオウは完璧なタイミングで反応してくる。

 

曲刀ソードスキル《リーバー》がホリゾンタル・アークの威力を完全に殺し、続け様に襲い来る彼女の凶刃を間一髪左に装備した盾で防ぐ。

 

眼前の少女は今、明確な隙を晒している。

一瞬しかないこのチャンスを前に、ラスベリーの時計がスローモーションになった。

1秒にも満たないこの刹那の中、どのタイミングを突くべきなのか、どんな技を仕掛けるべきか。

 

判断が終わった時、シオウの両手首を蹴りつけていた。

 

「チッ……!」

 

「天まで、届け!

ライジング・ノヴァぁぁあああッ!!」

 

対戦相手そのものを踏み台にして飛び上がり発動された、正真正銘ラスベリーだからこそ可能なシステム外の必殺技。

 

普段なら直接空高くまでジャンプするため敵にある程度行動の余地を与えるが、今回に限ってはその相手の両腕を強く蹴って空へと躍り出たことで、その暇さえ作らせない。

 

これこそがラスベリーが導き出した唯一の勝ち筋にして、圧倒的なほどの実力差を埋めるための手段。

遥か格上の人物であるシオウを倒すには、文字通り何もさせずに攻撃を続ける必要がある。

だからこそ彼女の予想を遥かに超える速さで、それでいて確実に行動を封じるように動かなければならなかった。

 

正直無謀にも等しい賭けではあったが、結果的にそれは成功した。

自分自身の限界すら超えて、本来あり得ないような動きをすることで掴んだ最大の好機。

 

この状況で超高所からの落下攻撃を防ぐことは、例えシオウであっても容易なことではないだろう。

命中さえしてしまえば強烈な衝撃が彼女を襲う。

その際に間髪入れず、現状最強クラスのクロスオーバースキル《バニシング・ブレイザー》を叩き込む。

 

これこそが、彼の考え出した勝利の方程式。

破壊と暴虐の覇道を進まんとする少女のために放たれる、渾身の平手打ち。

真っ直ぐな想いを乗せて、刃がシオウの元へと向かう。

 

――だが。

 

「クロスオーバー、デッドリー・レイン!」

 

「ッ……!!?」

 

もはや抵抗する余裕などないと思われたシオウが突如として叫び出したのを合図に、ラスベリーを阻むようにして強風が巻き起こり、無数にも錯覚してしまうほどの剣が降り注ぐ。

 

実はシオウの使うクロスオーバースキル《デッドリー・レイン》は発動者の状態に関わらず嵐を巻き起こし、それに捕らえた相手に対して刃物と化した雨を降らせる凶悪なものだった。

どうにかして行動をさせないようにしたそのすべてが水泡に帰したその瞬間、背中に突き刺さる無情な刃。

 

一気に危険領域にまで陥るHP、勢いを殺され落下していくだけの力なき身体。

そして彼の手から離れてしまった白銀の聖剣が、シオウの元まで落ちてきたその瞬間。

 

あろうことかそれは、彼女の振るう凶刃によって真っ二つにされてしまった。

 

「ッ……!!」

 

初めは一人の少女を助けたくて手に取った力。

それからずっと自分を傍で支え、幾度となく助けてくれた存在。

いつの間にかそこにあるのが当たり前で、自身も全面的に信頼を寄せていた最高の相棒。

 

そんな得物が、アウリオンだったものが。

呆気なく壊されてしまう様を、何も出来ず見ているしかなかった。

 

途方もない喪失感が思考を埋め尽くすのとほぼ同時に、ラスベリーの身体が地面に打ち付けられる。

残り2割弱程度のHPを目にしつつも、そんなことが頭に入るわけがない。

彼が認識出来ているのは、たった今シオウが蹴り渡してきたアウリオンだったもののみ。

 

「お前の力足らしめるものは、息吹を失った。

お前の負けだ、ラスベリー」

 

「……ぅ、ぅぁあああああ!!!」

 

もはや自分を突き動かすのはなんなのか、それさえも判らないままラスベリーは叫声をあげながら突撃していく。

 

無我夢中というべきか、感情の暴走というべきなのか。

理性などない衝動的な拳が振り下ろされるも、当然そんな見え見えの攻撃が通用するはずもなくシオウはアッサリ回避。

 

そればかりか背後に回るとほぼ同時に左手にある盾を弾き飛ばし、同時に消滅させて見せた。

 

自分が相棒と呼んだあの少女が初めて造り、託してくれた大切な盾。

あの日からずっと使い続けて、耐久値が減る度に何度も修理してきた。

いつでも彼女が傍にいてくれる気がして、何があっても手放せなかったそれは、たった今光となって消え失せた。

 

剣は真っ二つに折られ、盾は跡形もなく無くなり。

もうラスベリーには、何も残されていない。

 

「抵抗は止せ、苦しむ時間が増えるだけだ」

 

「……」

 

「はぁ……」

 

すべてを失い、それでもなおラスベリーはシオウに向かってくる。

そんな彼の心を完全に折ろうと無情な刃を振るうが、その牙が肉を裂くことはなかった。

 

ラスベリーの持つパッシブスキル《介入者》。

それを今、彼は無意識的に発動しているのだ。

 

だが振るわれる拳はいずれもフワっとしていて、例え当たったとしてもなんのダメージにもならない程度のもの。

無論そんな攻撃に当たってやるワケもないシオウは、静かに溜め息を吐く。

 

そうして、勢いのないパンチが10回目を迎えようという時。

ラスベリーの背中に、何かが突き刺さったような感触が三つほど起こる。

シオウは確かに目の前にいて、その手に握られたマッドオニキスは何もしていないというのに。

 

「なん、で……」

 

「あの世に抱かれろ」

 

謎の刺傷によって倒れ、すでに抵抗一つ出来ないラスベリーに対し、無表情のままシオウが赤紫色の刃を容赦なく振り下ろす。

 

間もなく自分は死ぬ、そう理解してゆっくりと瞼を閉じていく。

本来この世界には存在しない自分にしては、よく生きた方だろう。

そんなことを思い、斬撃を受け入れようとした時だった。

 

シオウの攻撃を、黒い影が阻んだのだ。

 

「……貴様、何者だ?」

 

「……滅龍」

 

その名前には達人たるシオウも驚きを隠せないようで、即座に黒い外殻をまとうその人物から距離を取る。

 

顔をすっぽりと覆うほどの黒の中からは微かに紅い瞳が覗いていることや、華奢な身体つきから女性であることしか見受けられないが、彼女の背に見えるものから、シオウは目の前の人物が言ったことが真実であることを理解した。

 

「なるほど、そういうことか。

龍は龍でも、蛇龍を駆るか」

 

「生憎、誰かが勝手に呼び始めただけ。

私はこの呼び名を認めていないわ」

 

「フッ、なるほどな。

してお前は、何故その男を庇う?」

 

「理由はたった一つ。

彼には、生きてもらわなくちゃいけないから」

 

意識が朦朧としていて反響して聞こえるその声は、何故か自分と同じ言い回しで返答していた。

だがどうしてと問う気力もなく、顔の見えない彼女を見上げるだけで精一杯だった。

 

「……興が冷めた。

悪いが私はもう行かせてもらおう。

お前がいるのでは、その者を殺せぬからな」

 

「待ちなさい。

せめて理由だけでも吐いていってもらおうかしら」

 

そんな義理などない、そう言おうとしたシオウだったが。

振り返った彼女の前には、滅龍が従える蛇龍がいた。

 

正確には龍に例えられるそれが、シオウの行く道を阻んでいると言ったほうがいいか。

自らを前にしても一切動じる気配のない彼女の力量を認め、不本意ながら口を開く。

 

「深夜3時、55層グランザムに襲撃を仕掛ける。

上からの指示でな」

 

「グランザムに……まさか、選抜メンバーを」

 

「あぁ、皆一様に葬る。

これは私自身も望んだこと、あらゆる害悪を抹消出来る千載一遇のチャンスだ」

 

「……歪んでるわ、あなた」

 

倒れているラスベリーを抱え、滅龍は一瞬でその場をあとにした。

遠くなっていくシオウの表情は冷ややかながらもどこか狂気に満ちていて、笑っているようには見えても虚ろなもの。

 

そんな彼女はこのあと、史上最悪の事件を起こそうとしている。

そのことを理解したところで、辛うじて繋ぎ止められていたラスベリーの意識が途絶えるのだった。

 

 

 

「――きさん、晴輝さん!」

 

「っ……!」

 

微かに聞こえてきた女の子の声に意識を覚醒させた時、目の前に広がっていたのはたくさんの女性物の洋服だった。

 

周囲を一通り見渡して、今自分がいるのはとある街の中にある服屋であることを理解する。

それも決してゲームの中などではない、限りなくリアルな現実世界のもの。

 

そして自身の隣にいる濃紫混じりの長い黒髪の少女――兎沢深澄は、困ったような表情を向けていた。

 

「みすみ、ちゃん……?」

 

「ちょっと、しっかりしてよね。

私の服一緒に選んでくれるって約束したじゃない」

 

「あ、あぁ……そうだったな。

悪ぃ、色々想像してたらボーッとしてたわ。

だって深澄ちゃん、今のままでもカワイイからよ」

 

「口説くなら他の場所でやってよ?

いくつか良さそうなの見つけてきたから、試着してみるね。

それじゃあ晴輝さん、採点よろしく!」

 

それから晴輝は、ここに至るまでの経緯を少しずつ思い出していく。

 

明日奈に深澄を紹介してもらってから数ヶ月の時が経ち、回数は決して多くないながらも何度か会って一緒に遊ぶ機会が増えてきた頃、次の土日のどちらかに洋服選びに付き合ってほしいという電話が飛び込んできたのだ。

 

女の子同士ではダメだったのかと当然質問をした晴輝だったが、深澄曰く『男の人の意見も大事』らしい。

そもそも女性が常に可愛くあろうとするのは自分を磨きたいのもあるだろうが、多くの場合意中の男性に見てほしいからという理由がある。

 

特に自身の妹分が人一倍そういったことを気にする少女であったため、深澄の言い分にすぐに納得出来た晴輝は日曜日が休日であることを伝え、こうしてわざわざ遠くのショッピングモールまで車を出したというわけだ。

 

だが一つ困ったことがある。

こうして約束通り彼女に同行したはいいが、一緒に来るとばかり思っていた明日奈の姿がないのだ。

 

どうやら深澄の方から断りを入れたらしく、完全に二人きり。

これの意図が判ってしまう晴輝だからこそ、色々と気まずい。

何より彼女はまだ中学生であり、大学生の自分がいつまでも傍にいたら問題だらけである。

 

早く終わらせて帰りたいが、深澄の気持ちも無碍にしたくない。

そんなジレンマに責め立てられながらあっという間に時が過ぎ、気がつけば午後2時を迎えていた。

 

まだお昼を食べていなかった二人は、ショッピングモールから少し離れた場所にあるという評判のいいレストランを目指し、ゆったりと雑談をしながら歩いていた。

最も、晴輝の両手は現在紙袋で塞がっているので若干辛そうな顔ではあるが。

 

「大丈夫?重くない?」

 

「いやいや、このぐらい問題ねぇっての。

中坊なら中坊らしく、大人にガッツリ頼りなって。

……でもまぁさすがに緊張したぜ。

明日奈のヤツがいりゃあ、もっと早く終われたのかな」

 

「……今明日奈の話はしないで」

 

「深澄ちゃん?」

 

そっと包み込むように、左手を握られた。

若い女の子は歳上の男性に憧れを抱くものとも言うし、きっと深澄もその類いなのだろうとは考えつつも、こんなことをされては彼女の顔を直視出来ない。

 

一方の深澄も顔を赤くして、彼から目を逸らしてしまっているが。

 

「今日は私と一緒なんだから、私のことちゃんと見てて?

せっかく勇気出して誘ったんだからさ……」

 

「……バカやろ、お前さんなら相手選び放題だろうが。

大人をからかうんじゃあ、ねぇよ」

 

「っ……

そっか、ごめん。

変なこと言っちゃって」

 

「気にすんな、そういうのを許すのも大人の仕事だ。

……って、ありゃあ」

 

正面に向き直った晴輝が目にしたのは、道のど真ん中でしゃがみ込んで泣いている男の子の姿だった。

周囲の人々は訝しげな視線を向けるのみで何もしようとはしない。

そんな様子に腹を立てつつ、二人は迷わず子どもの元へと駆け寄った。

 

「ねぇ君、どうしたの?

どこか痛む?」

 

「うぅ……お母さん、どっか行っちゃった……」

 

「迷子、みてぇだな。

ここから一番近い交番は……あっちだ」

 

「もう大丈夫だよ、お姉ちゃんたちがお母さんを探してあげる。

だからそれまで、安全な場所で待っててくれるかな?」

 

なんとか男の子を泣き止ませることに成功し、深澄が手を引いて行く。

 

道中『ミナセ』という苗字を知ることが出来たことで、晴輝は早速警察に連絡――近くの交番へと送り届けることとこの子の母親を探していることを伝え、三人は交差点を渡る。

 

だが通話中であった晴輝がわずかに遅れたことで、彼は最悪の状況を目の当たりにすることになった。

 

目の前を深澄が歩いていて、その少し離れた位置に迷子のミナセ少年。

 

その二人に弾丸のような速度で迫って来ている一台の車は、信号が赤色を示しているにも関わらず止まる気配がなかった。

 

「……深澄ちゃん!!!」

 

気がつけば晴輝は無我夢中で駆け出していて、突き出された両手は深澄の背を強く押し出していた。

 

それからほどなくして、視界がグルグルと踊り出す。

中を舞ったその身はコンクリートに打ち付けられ、正面にあったのは爽やかに澄み渡った空と、恐怖と戸惑いに染まった深澄の顔。

 

頬に伝う冷たい感触の直後に、彼女の悲痛な声が響き渡る。

 

「晴輝さん……?

嘘、目を開けて!晴輝さん!!」

 

 

 

「――深澄ちゃん!!」

 

「うわぁっ!?」

 

「……って、え?」

 

目が覚めるとそこは、見覚えのないファンタジー世界のような洞窟の中。

どうやら夢を見ていたらしい、それも恐らく失っていた記憶そのものを。

 

何故こんなところにいるのかは判らないが、どうやら自分以外に誰かいるらしい。

声のした方へ振り向くと、アッシュグレーの髪をしたやや幼い顔つきの少年が尻もちをついてこちらを見ていた。

突然飛び起きたために、驚かせてしまったようだ。

 

「悪ぃ、ビックリしたよな。

アンタが俺を助けてくれたのかぃ?」

 

「……いえ、違います。

当てもなく彷徨っていたら、突然黒いフードの人があなたを抱えてやって来て……僕に一方的に託して来たんです」

 

「黒いフードの……あっ!」

 

その瞬間、ラスベリーは思い出した。

67層のダンジョンでホエンが突如殺され、シオウという新たな敵が現れたこと。

彼女の抱える闇を知り、その上で暴走を止めようと戦ったが殺されかけたこと。

そしてその際に、滅龍と呼ばれるプレイヤーに助けてもらったことを。

 

もし彼女が駆けつけてくれなければ、自分は間違いなく死んでいただろう。

だがそもそも何故滅龍が自分を助けてくれたのか、ラスベリーには一切検討もつかなかった。

すでに途絶えかけていた意識の中だったこともあり、声もろくに覚えていないため尚更に。

 

「そいつ、何か言ってなかったか!?」

 

「え、えぇ……あなたが起きたら、伝えておくようにって言われました。

どうやらシオウという人が今夜3時、グランザムを襲撃するみたいなんです」

 

「グランザム……微かに聞こえちゃあいたが、確かあそこは今」

 

「はい。

とある大作戦のため、攻略組の面々が多数集められています。

黒の剣士や閃光、灰の騎士も」

 

ただ単に街が襲撃されるというだけなら、攻略組の面々には大した問題ではないだろう。

圏内なのでそもそもダメージを受けることはないし、仮にあったとしても最前線をひた走り続ける英雄ばかり。

そう簡単に負けるはずはない。

 

ところが今回それを仕掛けるのはあのシオウ。

九の懐の幹部である以上自分の時とは違って部下を引き連れてくるだろうし、彼女自身相当な実力の持ち主。

クラインやアスナはもちろん、キリトが挑んだって無事に勝てるか判らない。

 

しかも決行されるのは深夜の3時。

例えどれだけ夜行性のプレイヤーだったとしてもほとんどが眠りにつく時間帯であり、その瞬間だけは皆一様に抵抗する術を失う。

そうなれば力の抜けた身体に忍び寄り、腕を取ってシステムウインドウを操作――知らずのうちにデュエルを発生させ、県内であってもHPを0に出来る状況を作り出す。

 

俗に言われる睡眠PK。

恐らくシオウは、これを大量に起こそうとしているのだろう。

そうなれば仮にトッププレイヤーの彼らだとしても、為す術もなくあの世に送られてしまう。

 

「ってことは、急がねぇとみんなが危ねぇ!

なぁ、今は何時だ!?」

 

「22時過ぎですけど……まさか、止めに行くつもりじゃ」

 

「ったりめぇだ!

アイツらが死んだら、いったい誰がこの世界を解放すんだ!?

それにシオウを放っておけば、いずれすべてのプレイヤーが同じような目に遭っちまう……大事なヤツらみんな、死なせたくねぇんだ!!」

 

「……そう、ですか。

判りました」

 

そう言ってアッシュグレー髪の少年はウインドウを操作し、ストレージから何かを取り出してラスベリーに渡した。

 

それは先のシオウ戦で破壊された、アウリオンだったもの。

刀身部分とその下の部分の二つだった。

 

改めて直面する残酷な現実に打ちのめされ、思わず頭がクラっとなってしまう。

だが直後に気がついたのは、この事態に対する強烈な違和感。

このゲームにおける仕様と、アウリオンだからこそ存在したはずの例外に関しての矛盾。

 

「アウリオン……

どうして、こんな状態のまま残ってるんだ……?」

 

「僕には判りません……でも、本来耐久値の切れた武器は砕け散って消えるはず。

そうならないということは、それにはまだ何かあるのかもしれませんね」

 

「耐久値……そりゃあ、ねぇんだ。

こいつには、耐久値なんて項目なかったんだよ!」

 

「そんなことが……いやでも、こうして折れたまま残っていることと関係しているかもしれない。

この層の主街区にマスタースミスがいるんです、彼女なら何か知っているかもしれません」

 

彼からマスタースミスの存在を示され、ラスベリーはふとここが48層であったことを思い出す。

 

同時に浮かび上がるのは、一年半以上も前に別れたとある女の子の顔。

夢を叶えるために旅立って行ったあの娘は本来の筋書き通りなら、この層で武具店を営んでいるはず。

 

得物も盾もすでに存在しない今、どのみち選択肢はなかった。

 

「……ならよ兄ちゃん、案内してくれるかぃ?

俺はどうしても、そこに行かなきゃあならねぇ」

 

「それは、大事なものを守るためですか?」

 

「っ……あぁ」

 

「……だったら道すがら、僕の話を聞いてくれますか?

そう長くはかかりませんので」

 

どこか無気力に、でも確かに芯の通った声で少年は語り始める。

 

彼は幼馴染みの少女を誘い、このSAOという世界にダイブしてきた。

かつてから秘めていた想いを告げるため、そのきっかけとなることを願って。

 

しかし二人で飛び込んだのは、あろうことか脱出不可能なデスゲーム。

多くの人々が絶望し、阿鼻叫喚の巻き起こったあの日から少年は、幼馴染みの少女を現実へと帰すためだけに戦い続け、地道に力を着けていった結果攻略組に参加、果てはあの血盟騎士団への入団にまで至った。

 

ところがあるボス戦の際、彼の身体は動かなくなった。

理性では戦わなくてはならないと判っているのに、まったく言うことを効かなかったのだ。

それまでそんなことは無かったのに、強敵を眼前にした途端にである。

 

その後も同じ現象は起こり続け、この症状を鑑みた副団長アスナによってボス攻略メンバーから除名され、失意の日々を送っていた。

 

そんな時、数人のプレイヤーがあるダンジョンのトラップに引っかかり、命の危機に晒されていることが少年とその幼馴染みの少女に知らされる。

 

彼女は自らの力を救助に役立てるためそれに参加し、当然少年も同行。

彼らを含めた複数人のメンバーで助けに向かった。

 

狭いマップの中、彼らは必死に戦った。

少年も元はボス攻略に参加していただけあって、特に凄まじい活躍を見せていたのだが、そんな彼の前に一際大きなモンスターが一度に複数体出現する。

 

瞬間、またしても彼を例の現象が襲う。

恐怖に支配され命令を拒絶する身体は無力なまま、戦火の中で立ち尽くすのみ。

そんな中で、幼馴染みの少女が囮役を買って出た。

 

これを以て辛うじて救出という目的は達することが出来た。

だが肝心の少女は大量のモンスターに囲まれたまま。

身体の動かない少年は仲間に彼女を助けるよう懇願するも、彼らは全滅の可能性を恐れ自分たちの保身を優先――

 

結果的にモンスターたちは葬れたものの、少女の命の灯火は呆気なく尽きてしまった。

それも少年の目の前で、手を伸ばすことさえ出来ないまま。

 

何も出来なかった自分自身の無力さはもちろん、彼女を殺したこの世界や創造主たる茅場晶彦、そして何より彼女を見捨てた攻略組を激しく憎悪した。

 

何もかもを投げ出そうにも自殺することさえ叶わず、生きる気力さえ保つことが出来ず。

そのまま彼は、血盟騎士団を脱退したという。

 

 

 

「……辛かったんだな。

けど、どうしてその話を俺に?」

 

「あなたはまだ、誰も失っていない。

立ち向かう勇気も、それを叶える力もあるんだと思います。

だからこそ、僕のようになってほしくない……そう思ったんだ」

 

「……優しいんだな、兄ちゃん。

そんなお前さんだからこそ、その娘は一緒に来てくれたんだと思うぜ」

 

「けど、そのせいで彼女は……」

 

「上手く言えねぇが、その娘は兄ちゃんがずっとくよくよしてんのを望んでねぇ気がすんだ。

……お前さんにしか出来ないこと、あるはずだぜ」

 

たった今何があったかを聞いただけで、直接その現場を見たわけでもないし彼の辛さは完全には理解出来ない。

シオウの時と同じではあるが、彼の場合は何か罪を重ねたわけではない。

 

まだ若い彼だからこそ、この先の未来でなんだって出来る。

そう思っての言葉だった。

初対面の自分に言えることはこの程度でしかない、というのもあるが。

 

「……ありがとうございます。

あなたは、失わないでくださいね」

 

「おぅ、そっちこそ頑張れな。

……ってそういや、名前聞いてねぇや。

俺ァラスベリーってんだ。

変な名前って覚えとけよ」

 

「なんですかその挨拶。

……僕は、ノーチラスと言います」

 

それからお互いなんとか明るさを取り戻したのか、特になんでもない会話をしながら街へ向けて歩いていく。

 

アスナを見捨てて、もう一年半以上も経った。

あの時に見た彼女の悲しそうな顔がいつまでも脳裏から離れず、何度後悔したか判らない。

自ら離れたというのにずいぶん情けない話だが、幸いにも彼女はまだ生きている。

 

裏切りの罪悪感が渦巻く絶望の中で手を差し伸べてくれたあの少女や、自身がずっと探しているミト。

自分に協力してくれるアルゴやパルディア、紆余曲折の末絆を結んだキリトにクライン。

 

そんな彼らを失うまいと、ラスベリーは再認識するのだった。

 

 

 

――時刻はすでに23時を回りかけている頃、リンダースの一角に存在するとある建物。

その場所こそ、このゲームの中でも極めて少ないマスタースミスが経営する武具店であり、無事今日の営業が終了した頃。

 

店主でありマスターメイサーでもあるピンク髪の少女は、慣れた手付きで閉店作業を行っていた。

作業とは言いつつも、ほとんどがウインドウから出来てしまう極めて簡単なものではあるが。

 

ある程度片付けたらあとは、適当に食事を済ませてお風呂に入ってから布団に潜るだけ。

今日もそんな感じに終わるんだろうと考えていた時、店の扉が開かれる音が聞こえた。

 

「あぁすみません、本日はもう営業を終了しまして――」

 

「――よぉ、‘リズベット’」

 

「……ぇ」

 

その時、ピンク髪の少女は――リズベットは言葉を失った。

いや、面食らったとか目が飛び出したとかそういうことでもない。

それ以上の衝撃が今、彼女の視界に飛び込んできた。

 

そこにいたのは、この一年半近くずっと会いたくて仕方なかった、でもその気持ちを必死に抑え込んで我慢していた、そのせいで恋心を自覚することになった相手。

今や黒い流星という異名で騒がれているプレイヤーの正体にして、かつて相棒としてともに旅をしていた男。

 

ラスベリーだった。

 

「……ラスベリー」

 

「あぁ、俺だ。

約束通り、来たよ」

 

「……ラスベリー、ラスベリーッ!!」

 

彼女が胸に飛び込んでくるのは初めて会ったあの時、モンスターたちから助けた際に感極まって叫び出した時以来だろうか。

久しぶりに感じるその温もりは優しく自分を包み込んでくれるようで、それでいてがっしりと力強く捕まえている。

 

顔を見せないようにしてすすり泣くリズベットの背に腕を回し、そっと壊れないように抱き返す。

ラスベリー自身、もっと早くこうしてやりたかった。

だが彼女の追う夢はあまりに大きく、そして険しい道。

その邪魔をするわけには行かなかったのだが、すべてを失いかけている彼に残された光は、今はリズベットしかいなかった。

 

だからこそ、本心からその存在を求めたのだ。

 

「バカ……ずっと会いたかった。

応援のメッセージ一つ残したっきりで、一切連絡寄越さないで。

気を遣ったつもりだろうけど、心細くてしかたなかったわよ……」

 

「ごめんな、こんなに待たせて。

俺……強ェからさ?

中々行き詰まること、なくってよ」

 

「……なら、なんでそんな辛そうなのよぉ……

本当バカ、バカベリーなんだから」

 

やはりリズベットには嘘はつけない。

というよりも、どうしても彼女には弱みを見抜かれてしまうようだ。

 

二人はともに、心の孤独を味わった者。

だからこそ通じ合い、手を取り合ったのがすべての始まり。

そこから一緒に色んな困難を乗り越えていくうちに、お互いなくてはならない存在となった。

 

ラスベリー自身、本当は甘えたかったのだ。

でもそんなことをすればカッコ悪いところを見せるし、彼女の道を閉ざすことになりかねない。

そういった大人のプライドから、彼女のことを考えないようにしていた。

 

でも、ダメだった。

リズベットを目にした瞬間、封をしていたはずの気持ちがどんどん溢れてくる。

二人はその後、気が済むまでお互いの存在を感じ合いながら感情を爆発させていた。

 

 

 

「――そう、選抜チームが3時間後には襲われるのね」

 

「あぁ。

急がねぇとキリトやアスナはもちろん、全員の命が危ねぇ。

しかもこのことを知ってるのは、俺たちを含めて数人しかいないんだ」

 

「しかもすぐ動けそうなのはあたしたちぐらい、か。

……厳しいわね」

 

あれからラスベリーはリズベットに、これまであったことを手短にではあるが説明した。

 

九の懐の幹部でありアウリオンと同じ性質の武器を持つ狂人、シオウを止めなければ攻略組は半壊――それどころか自然消滅、ないしは彼女による全員虐殺まであり得る。

 

しかもタイムリミットはあとわずか、一切のんびりしている暇などない。

だが対抗しようにも、アウリオンは無惨な姿にされてしまった。

 

「……なぁ、リズベット。

こいつを見てくれ」

 

「アウリオン……本当に、折れたまま残ってるのね。

……って、これ」

 

「どうした?」

 

「ラスベリー。

どうやらこれ、インゴット扱いになっているみたい」

 

リズベットの鑑定スキルによって判明したことなのだから間違いないだろうが、あまりに予想外の展開に思わず大きな声をあげるラスベリー。

 

折れた刀身も、そこから下に当たる柄の部分も。

そのどちらも特殊なインゴット《破損したアウリオン》となっているらしい。

しかも名称こそ同じだが、それぞれ微妙に性質が異なっているという。

 

――そう言えばアスナが、ミトから受け取ったウィンド・フルーレと自身が渡したスモールレイピアを溶かしてインゴットにした後、新たに強力な得物を生み出したことを、キリトから聞いた時のことを思い出す。

 

ここには二つものインゴット、そしてリズベットはあれから腕を上げてマスタースミスとなった。

 

こうも条件が揃ったのならば、やることは一つだろう。

 

「……リズベット、ならそいつを使って武器を作ってくんねぇか?」

 

「奇遇ね、あたしも同じこと考えてた。

けど、良いの?

こんな状態で武器が素材化するなんて前例がないし、何が起こるか判らないけど」

 

「理由はたった一つ。

俺は、俺の相棒を信じてる」

 

「……判った」

 

そうして二人は、裏手にある作業部屋へと移動した。

表とは対照的にかなり無骨なイメージで如何にも鍛治師の職場といった感じだが、よく見れば壁にはいくつもの写真が貼られていた。

 

あれから様々な人物と出会い、別れ、そして経験を重ねてきたのだろう。

数々の思い出がそこにはあった。

まだ茶髪だった頃や、今の姿になってからのもの。

そしてよく見れば部屋の中央には、あの日キリトも含めた三人で手に入れた黒闘のアニール・ハンマーが飾られている。

 

「じゃあ……始めるわよ」

 

「マスタースミスの腕前、拝見させてもらうぜ」

 

「うんっ……」

 

キリトのために剣を造ったのとはワケが違う。

何せラスベリーは、『最強の鍛治師になる』と約束した相手。

そんな彼に対して見せたいものは、あの時の比ではない。

自分でも驚くほどの緊張感を抱えながら、リズベットは槌を打ち始める。

 

「……にしてもさ、髪色変えたんだな。

服装もそんなヒラヒラして、メイドさんみてぇな」

 

「実はあのあと、アスナとばったり会っちゃってね。

どういうわけかいつの間にか仲良くなっちゃって、あの娘に色々いじられちゃった。

……その、変かな」

 

「いいや、凄く可愛くなった。

相棒として、鼻が高ぇよ」

 

「へへ、そっか」

 

一つ一つ、言葉を噛み締めていく。

久しぶりの会話がこんなにも満たされて、そして何を言えばいいのか判らなくなるなんて、二人とも思っても見なかった。

 

話したいことは山ほどあったはずなのに、いざそこにいるとなると頭の中が真っ白になって。

気がつけばお互い無言になって、鋼を打つ音だけが部屋に響くだけになる。

それから少しの沈黙の後、次に口を開いたのはリズベットだった。

 

「あのさ、ラスベリー。

あたしね、キリトやアスナからはリズって呼ばれてるの。

……だから、その。

アンタもあたしのこと、そう呼んでくれる?」

 

「……俺も、ラスって呼んでくれねぇか?

そうしたら、俺も何回だって呼ぶよ」

 

「……ラス、ラス。

ふふっ、なんか変な感じ。

でも……いい気分」

 

「そっか、そいつァ……良かったよ。

リズ……ベット」

 

「ちょっと、結局そっちに戻ったじゃないの!」

 

以前は二人とも遠慮がなかったはずなのに、何故こうも気恥ずかしさを覚えてしまうのだろう。

今こうしている間にも時間は過ぎているというのに、危機感ではなく彼らだけの世界がそこにはあった。

 

時計の針とともに、金属音がリズムを刻む。

迷いのないその槌は他でもない彼のために、そして自身の成長を見せつけるために音を立て続ける。

そんな真剣な様子のリズを見つめて、ラスは一つの決心をする。

 

「その、リズ。

……俺は、みんなを助けたい。

今までずっと表に出ないようにって、アスナから逃げるようにばかり動いていたけど。

俺はやっぱり、アイツが大事なんだ。

キリトもパルディアも、クラインも……失いたくねぇ。

そしてお前も」

 

「……ラス」

 

「新しく得物が出来たら、また俺とパーティを組んで一緒に戦ってほしい。

俺はみんなを救うためにシオウと戦いたい、お前は完成したばかりの武器の性能を間近で確かめられる。

……俺たちの利害は一致してるはずだ。

断る理由、ねぇだろ」

 

「……えぇ、そうね」

 

まるであの時、リズが自分に手を差し伸べてくれたように。

フレンド申請を飛ばしながら笑顔を向けてくれたように。

今度は自分が、リズに対してパーティ申請を投げる。

 

そしてラスがこういったことをやってくるのを判っていたかのように、リズは躊躇いなく承諾した。

久しぶりに、彼女の名前が自身の下に浮かび上がる。

それだけで、とてつもない安心感を覚えた。

 

「あたしたちが組むからには、何にも負けない。

全力でサポートするわよ、ラス!」

 

「俺もお前のこと、何があっても守るよ。

どうか最後までよろしくな、リズ!」

 

当時のように、いやそれ以上に固い結束の証の握手を交わす二人。

ラスはどこまでも力強く、リズは何よりも温かく。

 

お互いの笑顔が、それぞれの心に確かな光を宿す。

これまでの空白を埋めるかのように見つめ合う二人の顔が、自然と熱くなってくる。

 

でもリズはまだ未成年、さすがにまだダメだろうと自身を叱咤しようとした時だった。

 

第2層にいた時、脳裏に直接響き渡るようにして聞こえてきた声が語りかけてきたのは。

 

『再び見えたな、反逆の意志を持つ者よ』

 

 

 

 




【現在のラスベリーたちのレベル】

ラスベリー Lv75
リズベット Lv71
アスナ Lv81(離脱時)
クライン Lv78(離脱時)




あとがき

どうも皆様、神矢レイラです。
儚き虚夢のラスベリー、第8話を読んでくださりありがとうございます。

中々に重く、そして我々にも関係のあるお話が展開されておりましたが、いかがでしたでしょうか。

内容が内容なだけに、今回はかなり自信がございません。
シオウの過去もそうですし、少しだけ出てきたノーチラスのことについても……

というか途中から少し不調な状態で書いていたので、色々ヘンテコなことになってるかもしれません(汗)

さてさて、ようやく姿を現した滅龍に、再会を果たしたラスとリズ。
なんだかいい雰囲気でしたねぇ!
テンション上がりますねぇ!!!

ではまた次回お会いしましょう!
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