ソードアート・オンライン 儚き虚夢のラスベリー   作:神矢レイラ

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※あてんしょん!※
今回はyoru07#青薔薇様執筆の作品『ソードアート・オンライン〜白鷺の剣聖と剛腕の戦鬼』とのコラボ回です。
本作、並びにあちらのネタバレを含みますのでご了承ください。
また、このお話ではyoru07様に倣い、ソードスキルをSSと表記しております。
そのソードスキル内の攻撃回数により、表記が変化します
例:リニアーやスラントなどの1回攻撃=SS1
 :バーチカル・スクエアなどの4回攻撃=SS4

また、クロスオーバースキルはCSとなります。

ちなみにそれぞれの時系列ですが、
◆儚き虚夢のラスベリー:5話と6話の間
◇白鷺の剣聖と剛腕の戦鬼:1章『SAO編』11話以前のどこか
を想定しております

以上のことが大丈夫な方は、先へとお進みくださいませ!


【共演の章】
EX1『葵楓=闇夜照らす者たち/12』(ソードアート・オンライン〜白鷺の剣聖と剛腕の戦鬼〜)


『アンタはいなくなった仲間を探したい。

あたしは、このアインクラッドを冒険したい。

お互いの利害は一致してる。

断る理由、ないと思うけど?』

 

 

 あたしは今でも鮮明に思い出す。

自分の運命が大きな音を立てて姿を変えたあの日のことを。

 

 ラスベリー。

右も左も判らない世界でこの命を救ってくれた人。

あたしの王子様――とは言わない。

だってこの感情は、まだどういうものか判らないから。

 

 でもこの人なら信頼出来る。

これまでもずっと背中を任せ合い、何度も苦難を乗り越えて来た。

そうして時を重ねていくにつれ、あたしたちの絆は強くなっていく。

誰よりも大切な相棒だと、胸を張って言えるほどに。

 

 そうしている間にもこのゲームは少しずつ攻略されていって、すでに最前線は19層。

あたしたちがいるのはそこから大きく離れた12層。

 

 察しているかもしれないけど、あたしたちの役目は先陣を切って戦うことじゃない。

かつてラスベリーと行動をともにしていた、ミトというプレイヤー。

行方不明となった彼女を探し出すことが、あたしたちの目的だ。

 

 あ、自己紹介が遅れたわね。

あたしリズベット、期待の新人プレイヤーよ。

命の恩人であるラスベリーの助けとなるため、彼の旅に同行しているの。

 

 今回訪れた階層は、広大な海のフィールド。

白い砂浜に大きなヤシの木と、南国を思わせる景色がどこまでも続いていた。

 

「わぁーっ!」

 

 あたしは今、そんな雄大な景色に見惚れている。

 

「とんでもない広さだな。

見た感じ海の中にモンスターはいないようだし、いっそ泳いでみるか?」

 

 隣からそう茶化してきた男こそ、あたしの相棒ことラスベリー。

頭一つ分近く高い身長のこの人は、いつもこうして爽やかな微笑みで見下ろしてくる。

 

 ここだけ切り取ると気配りも出来るクールな人に見えるが、彼はその印象とは真逆に陽気な性格。

少し話すだけでも外見とのギャップがよく判ることだろう。

 

「あたしたち水着持ってないでしょ。

持ってても泳がないけど」

 

「いやマジに返すなよ冗談だっての」

 

 この人に下心がないことくらいこれまでの付き合いの中で判っている。

もしあたしをそういう目で見ているとしたら、とっくに襲われていてもおかしくないから。

 

 けど実際そうはなっていない、だからラスベリーの言葉がいつもの軽口であることは理解出来た。

だからこそあたしは、彼を困らせるようなことを言ってからかいたくなる。

 

「それで、ここにミトさんの手がかりがあるの?」

 

「ちょっと違うな。

アルゴ曰く第1層のボス戦でミトと一緒に戦っていたプレイヤーが、この12層にいるらしい」

 

「一緒に戦っていたって、アスナさん以外にもいたってこと?」

 

「ボス攻略の時は基本的に、集まったメンバーでいくつかのチームを編成して戦いに挑むんだ。

おそらくだが、その時ミトの仲間だったヤツなんじゃないかな」

 

 なんとなくラスベリーの狙いが見えてきた。

ここにミトさん本人はいないけど、彼女の傍にいた人物ならいる。

要はその人から情報を聞き出すのだ。

 

 現在の動向を知っているとも限らないが、せっかく掴んだ尻尾なら手放すワケにはいかない。

彼としても、藁にも縋る思いなのだろう。

 

「判ったわ、じゃあその人を探しましょ。

特徴は聞いてる?」

 

「どうやら二人組の男子プレイヤーらしい。

一人は黒っぽい紺の髪に、空色の瞳。

もう一人は黒のストレートで、俺の髪みたいな目だそうだ。

どっちも身長高めだから、並んでたら一目瞭然だろうぜ」

 

「わざわざ‘男子’っていう辺り、成人はしてなさそうね。

ならラスベリーよりは低いのかも」

 

 本人曰く、ラスベリーは二十二歳の大人。

デスゲームが宣告されたあの日すべてのプレイヤーが現実の姿と同等にされたことから、彼の姿はその発言通りと言える。

 

 この一定の基準を得て、早くも手がかりが形となる。

幸いというべきかこの層はとっくに踏破された場所であり、ここにいるプレイヤーはそう多くはない。

一人一人当たっていけば、自ずと見つかるだろう。

 

「そういえばラスベリー、二人の名前は?

アルゴさんのことだし、掴んでいそうなものだけど」

 

「いや、聞いてないな。

ひょっとすると、そこまで有名なプレイヤーじゃあないのかもしれない」

 

「良くて中層ぐらいかしら。

ならとっとと探しましょ、いつこの層から離れるか判らないし!」

 

「それもそうだな。

……ってオイ、アレ」

 

 ラスベリーの目に入ったのは、波打ち際に集まっている数人のプレイヤー。

しかしその様子は、とても海で遊んでいるようには見えなかった。

 

 寧ろまわりを囲んでいるガラの悪そうな連中が、中心の人たちを一方的に痛めつけているような。

言葉を選ばずに表現するなら、いじめにも似た光景がそこにはあった。

 

「まさか、九の懐(ナインポケット)!」

 

「助けに行くぞ、リズベット!」

 

「おっけー!」

 

 あたしたちの判断は言葉を交わすよりも早かった。

何せ九の懐は第2層以降度々プレイヤーたちの前に現れては、様々な妨害を行ってくる迷惑集団。

彼らの誘いを断った者はその場で攻撃される。

今まさに起こっていることがそれだ。

 

 まず先陣を切ったのがラスベリー。

流れ星を思わせる速さで奴らの懐に潜り込み、そのまま一閃。

鋭い銀色が恰幅のいい男を貫くと同時に、襲われていた人たちを守るようにして立ち塞がる。

あたしも少し遅れて、その隣に並び立った。

 

「下がってろ」

 

「ここはあたしたちに任せて!」

 

「あ、あぁ!」

 

 敵が同様している間に、彼らは開かれた退路に向かって慌てて走り出す。

当然それを阻止しようと相手も動くが、あたしはその拳に重い一撃を浴びせてやった。

 

 反動でその手からこぼれ落ちた得物は、奇しくもあたしと同じ片手棍。

けどたった一発やられただけで手放しちゃう辺り、力に関しては雲泥の差みたい。

 

「おどれら、よくもやってくれたのぅ!

俺らが九の懐・南城会と知ってやっとるんやろうなぁ!?」

 

「……南城会?」

 

 耳を劈くような異様に高い声が告げたのは、まったく聞き覚えのない名前。

思わず反射的にラスベリーが聞き返す。

 

「九の懐の特殊部隊や、よう覚えときぃ!

そんで冥土の土産にしぃや!」

 

「悪ぃがメイドならもう間に合ってんだ。

うちの相棒はそんじょそこらのヤツよりも可愛いんでね」

 

「やかましいわ!

おどれら、この二人いてこましたるで!!」

 

「出来るものならな。

……リニアー!」SS1

 

 キザったらしい発言にキレた関西弁のリーダーの咆哮を合図に、周囲から手下たちが迫りくる。

しかしラスベリーはそれをものともせず、そのうちの一人を貫いた。

 

「リズベット!」

 

「うん!」SS1

 

 それこそがあたしへのサイン。

ラスベリーの背中を力強く蹴ることで飛び上がり、落下の勢いを利用してそのままメイスを地面に叩きつける。

瞬間発生した衝撃波が男たちを吹き飛ばし、一部は海の中へと落ちた。

 

「や、やるやんけ……

こうなったらこのゴローちゃんが自ら相手したるわ!」

 

 焦りの感情を噛み潰しながら、ついにリーダー格の男ことゴローが突撃してくる。

銀の刃を振るうその腕は、あたしには阿修羅に見えた。

それほどまでに早いのだ。

 

 だがそれを迎え撃つラスベリーは、一つ一つを丁寧に受け止めていた。

それも一対一じゃない。

複数の攻撃に対して、大振りな一回で対抗している。

 

 短剣は手数が多くなる反面、攻撃力に難が出やすい。

ラスベリーはそれを理解しているからこそ、最低限のカウンターのみで防御し続けているのだ。

 

「チッ、このままじゃ埒が明かへんわ。

オイおどれら、そこのアマ潰しぃや!」

 

「っ、リズベット!!」

 

「オラよそ見すんなや!!」SS3

 

 こちらを心配するラスベリーの隙を突き、ゴローのソードスキルが炸裂する。

それと同時に薄気味悪い笑みを浮かべた男たちがジリジリと距離を詰めてきて、今にも襲いかかってくる直前だった。

 

「くっ……!」

 

 歯を食いしばる。

ラスベリーがゴローに捕まっている以上、この場はあたし一人でなんとかするしかない。

でもこの数を相手に戦えば、最悪死ぬかもしれない。

そんな恐怖に足が竦みかけていた時、敵の一人が悲鳴を上げる。

 

「っ、何!?」

 

 動揺したのは仲間たちも同じようで、全員の視線が一斉にそこに集まった。

南城会の構成員を倒したのはあたしでもラスベリーでもなく、一振りの刀を握る黒髪の少年。

いや、よく見ると青っぽいかしら。

 

 つまり紺色――そこであたしは、先程聞いたばかりの情報を思い出す。

驚き息を呑んだ直後、さらに背後から響く衝撃音。

さらにもう一人――ラスベリーが言っていた特徴そのままの人物が大剣を振り下ろしたあとだった。

 

「ふぅ……無事か?」

 

「え、えぇ……助かったわ。

アンタたちは?」

 

「話はあとだ、まずはこいつらをどうにかするぞ!」

 

 こちらの心配をしてくれた大剣使いとは裏腹に、刀使いの少年が冷静に団員を斬り裂く。

それに続くようにしてもう片方も戦闘を開始し、手下たちを圧倒していく。

 

 どうやらこの場は彼らに任せても大丈夫みたい。

そう判断した私は、その足を大事な相棒の元へと向ける。

 

「判った、あたしはアイツを助けに行く!

任せても良い?」

 

「あぁ、無理はするなよ。

はぁっ!」SS1

 

 こちらの身を案じつつ、刀使いの少年はSSを振るう。

たった二人で三倍近い数の相手をする彼らに感服しながらも、あたしはこの手に握る得物に光をまとわせながらラスベリーのいる場所へと走り出した。

 

「……強いな、あの娘」

 

「急にどうした、ヒロキ」

 

 激しい金属音を奏でながら、二人は息も切らさず完璧な連携で敵を蹴散らしていく。

その最中口を開いたのは大剣使いの少年、ヒロキだった。

 

「いやさ、こんな状況普通の女の子なら怖くてたまらないだろ。

なのにあの娘、俺たちが来るまで一歩も引かなかった。

まるで‘あの人’みたいじゃないか?

コウキ」

 

「……確かに、ちょっと思った!」SS2

 

 ヒロキの言葉に応えつつ、刀使いの少年ことコウキは鮮やかな斬撃を繰り出す。

さらに直後空中で一回転しながら刃を振るい、次々と獲物を捉えて行った。

 

 時を同じくしてあたしはラスベリーと合流し、SSを放つ直前だったゴローの脇腹に渾身の一撃を浴びせていた。

 

「ぐふぅぁあ!?」

 

「リズベット、ナイスタイミング!」

 

「えぇ、すっごく良いことがあったからね!」

 

 あたしの登場を喜ぶラスベリーとは対象的に、ゴローの表情はとても滑稽なものだった。

こちらと向こう側を交互に見ては信じられないと言わんばかりに、その目を見開いて困惑している。

 

「ど、どういうことや!

まだ仲間がおったんかいな!?」

 

「いいえ初対面よ!

けどアンタらの味方じゃないのは確かね」

 

 完全に形勢逆転、ゴローの顔色がどんどん悪くなっていく。

こちらにはあたしとラスベリー、手下たちは強力な助っ人が相手をしている。

この状況から負けるビジョンなんて、少なくともあたしには見えない。

 

「どうするゴローちゃんよ、まだ続けるかぃ?」

 

「グググ……

こうなったら撤退や!

死んだらアカンでおどれらぁ〜!!」

 

 苦い顔で下された指示は敵前逃亡。

一斉に武器を収めて情けない悲鳴を上げながら走り去り、中には大根を引き抜くような要領で海に沈んだ仲間を救助した後に踵を返す者もいた。

 

 ちなみに言うまでもないかもしれないが、ゴローは前者のほうである。

 

「……なんとかなったな」

 

「うん、あの人たちのおかげでね」

 

 小波の音と潮風を背に受けて、あたしたちは助けてくれた二人の方に視線を向ける。

彼らも同様に得物をしまい、こちらに近づいて来ていた。

 

 見れば見るほど情報通りの少年たち同様、ラスベリーがゆっくりと歩を進める。

爽やかな笑みを浮かべた彼は姿勢よく立ち止まった直後、両の手を差し出した。

 

「助けてくれてありがとうな。

俺ァラスベリーってモンだ、よろしくな」

 

「っ……あんたが、ラスベリー」

 

「へっ?」

 

 今微かに、コウキって人が驚いたような気がした。

あの反応、まるでラスベリーのことを知っているみたいな。

次に出てきたのはその答えではなく、明るい表情。

 

「俺はコウキ、隣にいるヒロキの相棒だ。

メインは刀。

ラスベリー、よろしくね!」

 

「俺はヒロキ。

見ての通り大剣使いだ。

よろしくな」

 

 気持ちのいい自己紹介が終わるとともに二人は、自分たちに向けられた左右の手を握る。

 

 それにしても、相棒か。

あたしたちもお互いのことをそう認め合っているだけに、どこか親近感を覚えていた。

 

 ほんの数秒の握手を終えて、ラスベリーは二人の顔を順に見る。

おそらくアルゴさんからの情報と照らし合わせているのだろう。

やがて確信したように頷くと、早速本題を切り出し始めた。

 

「少し聞きたいんだが、お前さんたちはミトってプレイヤーを知ってるか?

ワケあって探しているんだが」

 

「ミトを?」

 

「えぇ、どんな些細なことでも良いの。

助けてもらって図々しいかもしれないけど、お願い!」

 

「君は、さっきの」

 

「ぁ……

あたしリズベットね、覚えてよね!」

 

 いけないいけない、あたしとしたことが名乗るのを忘れていたわ。

そのことを思い出した途端、飛び跳ねたような声が出ていた。

 

 一瞬だけ気まずい空気が流れたけど、どうやら二人ともあまり気にしてないみたい。

あたしたちの質問に対して、先に口を開いたのはコウキの方だった。

 

「ミトとは、何度か一緒に戦ったことがあるんだ。

ラスベリー、あんたの名前もその時に聞いた」

 

「そうなのか……

ちなみにミトは、俺のことをなんて?」

 

「確か……親友の大切な人。

だったよな、ヒロキ?」

 

「いやうろ覚えかよ。

あってるけど」

 

 若干とぼけたような言動のコウキに対して、ヒロキが呆れた様子でツッコミを入れる。

あたしたちの前で恥ずかしげなく行っている辺り、二人にとっては慣れ親しんだやり取りなのかもしれない。

 

 まだ出会って間もないけど、似た者同士でなんだか羨ましいと思う。

相棒と一口に言っても、あたしたちとは正反対のタイプみたいだし。

 

「それでラスベリー、ミトを探してるんだったよな。

悪いけど、俺たちは何も知らないんだ。

最後に会ったのも5層だからね」

 

「5層って言うと……

確か少人数でボスを倒したっていう。

まさかとは思うがお前さんたち、そのメンバーだったりしないよな?」

 

「いや、実はその通りなんだよ。

と言っても、活躍したのはほとんどミトだったけど」

 

 ラスベリーにこのゲームの醍醐味を教えた人、とは聞いていた。

彼も師匠みたいな存在だと言っていた。

だからこそヒロキの語る内容には、妙に説得力があるような気がする。

直接その戦いぶりを見たわけでもないあたしでも、自然と頷いてしまうほどに。

 

「ごめんな、大して力になれなくて」

 

「いんや、充分なってくれたって。

アイツが何してたか判っただけでも大きな一歩だ」

 

「そうね、何から何まで助かったわ。

そういえばコウキとヒロキは、どうしてこの層に?」

 

「さっきの奴ら……

九の懐を追ってきたんだ」

 

 その時、コウキの瞳が色を変えた。

さっきまでの人当たりがいいものじゃなく、静かな怒りを孕んだような鋭いものに。

真っ直ぐにラスベリーを見つめる視線は、それだけで彼を突き刺してしまいそうだった。

 

 尤もそのラスベリーも彼の様子を察して、同じように空気を一変させているが。

 

「アイツらはプレイヤーたちを無理やり仲間にしようとして、断れば危害を加えてる。

そんなこと、許しちゃおけないだろ」

 

 真剣な眼差しでラスベリーを見上げ、一拍おいてさらに言葉を続ける。

 

「囚われたプレイヤーたちを解放するには、ゲームをクリアしなきゃならない。

けどアイツらがしているのは、その逆なんだ。

俺たちは、出来るだけ多くの人を守りたい」

 

「……なるほどな」

 

 少しだけ、コウキの気持ちが判るような気がする。

現在アインクラッドの攻略状況は18層まで。

九の懐の妨害を受けていることを考慮しても、かなり順調なペースと言える。

しかしその過程で、決して少なくない犠牲が出ていることは事実。

彼はそれを一人たりとも見逃したくはないのだ。

 

 でもなんでだろう。

ラスベリーが妙に納得しきれていないように見えるのは。

少しの間を置いて、彼がようやく口を開く。

 

「うし、じゃあアイツらを追うぞ。

まだ近くにいるはずだ」

 

「へっ?」

 

「理由はたった一つ、助けてもらった礼だ。

協力させてもらうぜ。

良いよな、リズベット」

 

 素っ頓狂な声を洩らすヒロキの不思議そうな顔も気にせず、ラスベリーが軽い口調で確認してくる。

まったく、判ってるくせに。

その言葉を直接ぶつけずに、あたしは鼻で笑ってやった。

 

「どっちかって言うとお礼しなきゃなのはあたしでしょうが。

まぁ、アンタならそう言うと思ってたけど」

 

「ありがとうな、二人とも。

そうと決まったら早く行こう、アイツらがいなくなる前に!」

 

「あっ、おいコウキ!」

 

 あたしたちの協力が得られると判った途端、コウキは焦った様子で一人駆け出して行った。

さっきから薄々思っていたけど、九の懐のことを話し始めた辺りから彼の様子がおかしかった。

真剣な話をしているから雰囲気が違うのは当たり前なんだけど、それだけじゃない。

 

 もしかするとラスベリーが感じていた違和感の正体はこれなのかもしれない。

事実今起こったことに対して特に驚いてはいないみたいで、『やっぱりな』と言わんばかりに溜め息を溢している。

 

「……お前さんは急がない辺り、言い出したのはコウキだな?」

 

「っ、どうして」

 

「理由はたった一つ。

お前さんはコウキの言うことに対して、同意するような仕草は見せていない」

 

 『まぁ、さすがに相棒ってことは事実だろうがな』と付け加えるラスベリーに、あたしは首を二回振る。

思えばコウキが話している間、ヒロキは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

ラスベリーが協力を申し出た時も反応を示していたし、何かあるのだろう。

 

 その答えは、少しの間を置いてヒロキ自身の口から語られることになる。

 

「さっき5層でミトと一緒にいたって話、したよな?

そのぐらいからなんだ、アイツが変になったの」

 

「……何があったの?」

 

「それは――」

 

「――おーい、早くー!」

 

 真相に触れる直前、遮るようにあたしたちの耳に届いたコウキの大きな声。

徐ろに視線を送ると、待ちぼうけを食らったせいなのかやや不機嫌そうにしていた。

 

「わりぃ、すぐ行く!

……その、ラスベリー」

 

「良いって良いって、出会ったばっかのヤツが深入りするのも違うだろ。

んじゃあ行こうぜ、鬼ヶ島に」

 

「いや桃太郎じゃないんだから。

気を取り直して、悪者退治に行くわよ!」

 

 こうして私たち一行は大海に囲まれたこの層に潜む鬼こと九の懐を探すため、共同戦線を張ることになった。

 

 二つの名前が新たに視界の左上に表示され、ラスベリーも含めて三つ。

これがこのゲームにおける仲間、パーティメンバーの証だ。

ちなみにあたしも含めるとちょうど四人だが、誰が桃太郎なのかは特に決まっていなかったりする。

 

 

 

 道すがら、あたしとラスベリーはコウキとヒロキの話を簡潔ながら聞いていた。

どうやら二人は元々最前線で戦うコンビだったらしく、今は少し置いていかれている状態だとのこと。

 

 それでもレベルはどちらもあたしたちより上で、さすがは攻略組だと思わずにはいられない。

先ほどの戦いでも獅子奮迅の活躍を見せてくれたし、あれで遅れているのならトッププレイヤーたちはいったいどれほどの実力を持つと言うのか。

彼らには到底程遠いあたしには判らない。

 

 会話の最中、何度かラスベリーに目を向けてみた。

やはりというべきかコウキのことを気にかけているようで、ちょくちょく様子を伺っているようだった。

 

 追求しないとは言っていたものの、さっきヒロキが口にしかけたことをそれなりに気にしているのだろう。

実際今も眉をひそめている。

あたしの相棒が考えることは時々判らない。

 

「そんで今は、攻略に復帰するため切磋琢磨してると。

わざわざ下層まで降りてきたのも、その一環ってワケだ」

 

 それまでずっと静聴していたラスベリーの発言に、二人は特に異を唱えることなく頷いた。

九の懐を追いつつ、経験値を重ねていくのが彼らの目的。

その認識に間違いはなさそうだが、少なくとも前者はコウキのみなのだろう。

 

「上に行くほどどんどん厳しくなるはずだし、最前線の奴らだって何もしてないワケじゃあない。

大変だぞ、今から戻るのは。

……って、言われなくても判ってるか」

 

「はは、まぁね。

ラスベリーたちはミトを探してるって言ってたけど、普段は何してんだ?

最前線で一切見かけなかったけど」

 

「そりゃあまぁ、あたしたちの目的は攻略じゃないからね。

今はまだパワーを蓄えてる段階ってところかしら」

 

 このゲームには色んな人がいる。

最前線で攻略を進めて少しでも早く先の階層を開く者や、そう言った人たちを支える生産職のプレイヤー。

街の自警団のような団体もあるし、そんな人たちが支え合って現状が成り立っている。

 

 何が欠けてもいけないとは思うが、特にあたしが重要視しているのは生産職。

どんなに強いプレイヤーがいるとしても、彼らが充分に力を発揮するためには質のいい装備やアイテムが必要不可欠。

それらを作り売買する者がいることで、攻略組の息はより長くなる。

あたしはその役割に、強い関心を抱いているのだ。

 

「二人とも筋は良いし、もったいないな。

それに細剣と片手棍だから、俺たちとのバランスも取れてるし」

 

「いやそれ、仲間になって欲しいだけじゃね?」

 

 冷静な口調のヒロキに対し、すかさずコウキがツッコミを入れた。

ただ言っていることは同意出来る。

何せ二人は刀と両手剣、どちらも属性は斬撃。

一方あたしたちは刺突と打撃であり、物理三属性がすべて揃う。

今回のような一時的な共闘ではなく、この先も同行してほしいと思うのも判らないではない。

 

 尤もここはソードアート・オンライン。

剣が主体のゲームであるが故に、斬撃に偏りやすいのは仕方がない。

その点あたしたちは色んな意味で異例だと言えるが。

 

 ちなみにだが、現在ラスベリーが装備しているのは先日NPCショップで仕入れたばかりの細剣である。

普段使っているものは本人曰く『ここぞという時に解禁したい』とのことで、ストレージの奥に眠っている。

そのおかげか、コウキたちには‘普通の細剣使い’として映ったようだ。

 

「攻略組にいたプレイヤーのお墨付きをもらえるたぁ光栄だねぇ。

ここは一つカッコいいとこ見せて、さらに認めてもらおうかな」

 

 ラスベリーが促した方角を見ると、数体のモンスターがこちらに向かって来ていた。

三叉槍を構えた半魚人や宝箱がそのまま怪物になったようなものまで、生理的嫌悪感を感じる混成軍。

一見のんきにしていたようで、彼は周囲への警戒を怠っていなかったらしい。

 

「見ててくれよパイセンども。

リニアー!」SS1

 

 息をつく暇もなく銀閃が走る。

それによってモンスターたちのヘイトが一斉に集中し、ラスベリーが包囲された。

 

「……ラスベリーって、普段からあんな感じなの?」

 

「SSのこと?

なんか癖らしいわよ、あたしはもう気にならないけど。

さ、あのカッコつけを手伝いに行くわよ」

 

「えぇ……?」

 

 二人が後ろで呆れているような気がするが、やはり慣れとは恐ろしい。

だからといって真似をするワケではなく、あたしはお手本通りの挙動を取る。

 

「やぁっ!」SS1

 

 重たい感触を浴びせたことで何体かの視線がこちらを向き始め、ラスベリーの包囲が僅かに緩くなる。

それでも彼は安堵するような様子はなく、寧ろ何かを待っているように見えた。

 

 コウキたちのことかと思ったが、二人もすぐに戦闘を開始した。

けどラスベリーの表情は変わらない。

恐らく先陣を切って間抜けにも囲まれたのはわざとなのだろう。

狙いの事象を誘発するためのトリガーとして。

 

「コウキ、焦るなよ」

 

「判ってるよ。

……こんな奴ら、すぐに倒す!」

(神里流・神速雷斬)

 

 その一瞬何が起こったのか、あたしには判らなかった。

まるで青天の霹靂、雷が光を放つよりも僅かな刹那。

すでにコウキは目の前の魔物を斬り倒していた。

 

(神里流・月下)

 

 続いて大きな袈裟斬りが落ちる。

文字通り月に押しつぶされたかのような衝撃が、半魚人の姿を塵へと変えた。

 

「相変わらずとんでもないな……

なら俺も!

行くぜ……鷹の爪」

 

 ヒロキが繰り出したのは本当に大剣の攻撃なのだろうか。

あたしには振り下ろされた直後しか、その刃は見えなかった。

けどその連撃はしっかりと対象を捉えていて、モンスターが苦悶の声とともに無へと消えていく。

 

 言葉が出なかった。

ふと背後で戦うラスベリーに目を向けると、僅かだが反応を見せている。

やはり彼としても、あの二人の振るう力は異質なのだろう。

まだまだあたしの知らないことがこのゲームにはある、そう感心している時だった。

 

「ヒーヒッヒッヒ、もろたでぇ〜!!」

 

 頭上から降り注ぐ狂気的な声。

同時に鳴り響いた金属音とともに、その正体が白日の下に晒される。

それは先ほど部下とともに逃げたゴローだった。

 

「やっと来やがったなゴローちゃん!

待ってたぜ、お前さんが来るのをよ!」

 

 全体重を乗せたダガーを受け止めつつ、ラスベリーが威勢の良さを見せる。

そう、これだったのだ。

彼が狙っていたのは。

 

「あぁん!?

どゆことや!」

 

 鋭い音が鳴り響き、互いに距離を取る二人。

怒気を隠そうともしないゴローに対し、ラスベリーは計画通りと言わんばかりの悪い顔を浮かべて答える。

 

「さっき言ってたよな、撤退だって。

まだ戦えた状況にも関わらず、お前さんはそう指示した。

確かに勝機は無かったかもしれない、だが判断が早すぎた。

……お前、俺たちのこと諦めてないだろ?」

 

「……ハン、正解や。

さっきのは戦略的撤退。

おどれらを倒すために、準備を整えさしてもろたでェ!」

 

 ゴローの咆哮を合図に、先ほども戦ったスーツ姿の男たちが一斉にあたしたちを取り囲む。

未だモンスターが健在しているこの状況は、最初の時よりも不利と言わざるを得ない。

 

「そこのガキども、今度は不意打ち出来へんで。

おどれら全員、ここで倒さしてもらうわ」

 

「それはこっちのセリフだ!

お前らを倒して、そのふざけた活動を終わりにしてやる!」

 

「コウキ!!」

 

 九の懐を前にして、抑えていた感情とともにコウキが一人飛び出して行く。

しかしその攻撃はあまりにも直線的すぎた。

ゴローは刀が振り下ろされるよりも早く動き出し、軽快なフットワークでそれを回避したのだ。

 

「なっ……!?」

 

「ヒッヒ、甘いでェ」SS2

 

 攻撃直後の僅かな隙を狙われ、ゴローの刃がコウキの胸に吸い込まれるようにして迫りくる。

だがそこは彼を心配して追いついてきたヒロキがカバーに入り、なんとか事なきを得た。

 

 しかし、大剣使いの行動というのはどうしても弱点を見せやすい。

 

「っ、ヒロキ!」

 

 コウキの声にヒロキが振り向くと、すでに背後には各々の武器を振り上げた手下たちが三人もいた。

特にそのうちの一つは大鎌。

これを受けてしまえば、手痛いダメージをもらってしまう。

 

「でぇりゃぁっ!!」

 

 間一髪のところで耳を劈く鉄の音色が響き渡る。

すべての攻撃を横一文字に防いだのは、ギリギリ双方の間に割り込んだラスベリーだった。

 

「悪ぃな……その武器見ると、無性に腹ァ立つんだわ。

覚悟、出来てんだろうなぁ!?」

 

「ひ、ひいぃぃっ!?」

 

 一回目の交戦時には見せなかった般若の面に、ゴローの部下たちはそのリーダーともども狼狽えた。

直後ラスベリーが振るうSSの前に、三人のHPが大きく削られていく。

 

 何故ラスベリーが大鎌使いを見るとこうなってしまうのか、その理由はやはりミトさんが大きく関係しているのだろう。

 

 自分の師匠みたいな人が使っていた得物を、彼女の象徴とも言えるものをぞんざいに扱われるくらいなら、その前に倒し切る。

この人にとって一番の鎌使いはミトさんにほかならない、だからこそ怒りが燃え上がるのだ。

 

「やっぱごっつ強いのぉ。

けどおどれらの弱みはもう知っとるんや。

そこの一番弱いアマってことはなァ!」

 

「ッ!?」

 

「しまった、リズベット!!」

 

 残ったモンスターたちを引き付けているあたしの元に、稲妻のような速度でゴローが近付いて来る。

ラスベリーは手下たちを相手しているために間に合わず、コウキも少し反応が遅れてしまった。

 

 もはや万事休すか。

諦めかけ、目を閉じた瞬間。

耳に届いたのは鋼の衝突音と、ラスベリーとは違う低い声。

 

「リズベット、大丈夫か!」

 

「ひ、ヒロキ……!」

 

 この少年、ヒロキはゴローの狙いにいち早く気付いて動いていたのだ。

だが先ほどコウキを守った矢先の行動であるためか、攻撃を受け止めているその表情はとても苦しそうだ。

 

「まぁさすがにそう上手くは行かんよなぁ」

 

「何……!?」

 

 しかしそれとは対象的に、ゴローは怪しい笑みを浮かべている。

こうなることが判っていたみたいに。

 

「こうなったら切り札使わせてもらうわ。

兄弟、出番やで〜!!」

 

 瞬間、凄まじく荒々しい重低音が辺りに響き渡る。

恐竜や怪獣の鳴き声に近いような、圧倒的な轟音。

直後頭上から、何か巨大なものが落ちてきた。

 

「ッ、二人とも避けろ!!」

 

 ラスベリーがそう叫ぶも間に合わず、あたしたちはとてつもない衝撃によって空中へと放り出されてしまう。

寸前でヒロキが受け止めてくれたものの勢いは止まらず、二人とも海の中へと沈んでしまった。

 

「ヒロキ、リズベットッ!!」

 

 微かにコウキの声が聞こえた気がするが、すでにあたしの意識は朦朧としていた。

冷たいまどろみの中、すべての五感が薄れていく。

 

 

 

 水の滴る音があたしの意識を覚醒させた。

重くなった身体を起こした時、真っ先に目に入ったのはもう一人の姿。

どうやら先に気がついたらしいヒロキが、こちらを見て安堵の声を漏らしていた。

 

「目を覚ましたか、良かった」

 

「ヒロキ、ここは……?」

 

「水中の洞窟だ。

どうやらここまで流されてきたらしい」

 

 なるほど、道理で空気がひんやりしてるワケね。

よく見れば深い青に染まった場所があるし、おそらくあたしたちはあそこから出てきたのだろう。

 

 それにしても、よく無事で済んだものだ。

現実なら海中を漂っているうちに息が止まりそうなものだが、これもゲームならではというべきか。

尤も二人とも、HPがイエローゾーンまで減ってしまっているが。

 

 まだラスベリーとコウキの命は消えていない、そのことは同じく左上の表示を見れば判る。

しかしそれらは増えたり減ったりを繰り返しているので、今も九の懐と戦いを繰り広げているのだろう。

 

 すぐにでも助けに行きたいが、あたしたちは自分が今どの辺りにいるのかすら判らない。

もしかしたら近いのかもしれないし、気が遠くなるほど離れてしまったのかもしれない。

だがあたしは、この時不思議と冷静だった。

 

「幸いこの辺りにモンスターはいないみたいだし、少しなら休める。

……まぁ、あまりゆっくり出来ないだろうけど」

 

「そうね、応急処置を済ませたらとっとと行動しましょ。

早くここを出なくっちゃ」

 

 お互い手持ちのアイテムを使ってHPを満タンにすると、最低限の準備を済ませて一本道を歩き出した。

 

 いきなり海に叩き落されたが、幸いあたしたちは何一つ大事なものを無くしていなかった。

貴重な消耗品や普段使っている武器に至るまで、すべて無事だ。

 

 これなら二人を助けに行ける。

その安心感が、あたしの足を軽くしてくれた。

だってあたしはまだ、ラスベリーに何も返せていない。

こんなところで何もせず縮こまっているなんて出来るはずがないんだ。

 

「わわっ」

 

「おっと、大丈夫か?」

 

 急に身体が宙を舞ったと思ったら、次の瞬間にはヒロキに手を取られていた。

どうやら道の小石に躓いたらしい。

 

「うん、ありがと」

 

「気にすんな、こうなった以上一蓮托生だし。

というかずっと同じような道で不安になるしさ、なんか話そうぜ」

 

「はは、それもそうね」

 

 ヒロキなりに励ましてくれているのだろう、彼の言葉からはそんな優しさが感じられた。

思えばラスベリーと初めて会った日もこんな感じだったかもしれない。

出会ったばかりの男と同じ道を歩き、ぎこちなく笑い合ってはなんだかんだ力を合わせて。

 

 それから様々な経験を経てあたしたちは相棒になった。

なのにそんな相手に何も出来ていない。

それはあたしにとっての、確かな重み。

 

 ならこの二人は、コウキとヒロキはどうなのだろう。

彼らもお互いのことを相棒だと認め合っているようだし、確かな信頼を感じた。

その正体が気になったあたしは、思い切って話してみることにした。

 

「あたしね、ラスベリーに命を救われたんだ。

一ヶ月ぐらい街に引き籠もって、やっと外に出たらモンスターに囲まれちゃって。

その時来てくれたのが、アイツだった」

 

 目を閉じればいつでも思い出せる。

蘇る景色は当時の何倍も輝いていて、彼の表情も数段素敵に見える。

美化されていると言えばそれまでだが、あたしにとっては宝物だ。

 

「それからね、色んなものをもらったんだ。

このゲームの生き方とか、必要な知識とか。

アイツの……優しさとか」

 

「……そうか」

 

 一言一言声に出す度に、弱々しく口籠る。

いざこうして他人に話すと恥ずかしいわね、これ。

羞恥心から僅かな沈黙を招き、少しだけ視界がぼやけ始める。

 

「でもね……何も返せてないんだ。

命を、力を、色んなものもらったのに……

あたしはお礼の一つも出来てない。

これじゃあ駄目だよね、相棒として」

 

「……リズベットはさ。

ラスベリーのこと、好きなのか?」

 

 真剣さと優しさを両立したトーンでヒロキが聞いてくる。

潤んだ瞳では彼がどんな顔をしているのか見えなくて、小さな嗚咽を隠すように目元を擦る。

 

「判んない……大切だとは思うけど。

この感情がなんなのか、恩返しが終わる頃には判るかな」

 

「……俺もさ、ずっと支えられてきた。

相棒に、コウキに。

だけど俺は?

……同じだけ何か出来たなんて思えない」

 

 その時ようやく、ヒロキの表情をまともに見た。

泣き出しそうというほどではない、だがしんみりとした雰囲気の微笑。

それが彼の浮かべるものの正体。

 

「ずっと隣にいた癖に、ミトのことが頭から離れなくなってるアイツを肯定も否定も出来なくてさ。

何も進展しないまま今日が来た。

……でもさ、俺は信じてるんだ。

俺の相棒を」

 

 直前まで暗かったヒロキが、最後のセリフを言い切る頃には明るい顔を見せていた。

神々しい光というよりも、夜道を照らす蝋燭の火程度の灯りではあるが。

 

「考えるんだ、コウキが恩返しなんて求めるのかなって。

……それはない、アイツお人好しだし。

だったら俺はどんな時でも、俺の相棒を信じる」

 

「……信じる、か」

 

「余計なお世話かもしれないけど、どこまでもラスベリーを信じてみろよ。

もしかしたらそれが、最高の恩返しになるんじゃないか?

何も出来ないって悔しがるよりも、その方が絶対良いって」

 

 どんな時でも大切な人を想う気持ちが恩返しになる。

ヒロキの語ることは他人からすれば夢物語かもしれないが、あたしにはとても心地良く聞こえた。

 

 何かしたい、彼を助けたい。

そんな感情に焦っていたのかもしれない。

何かを成し遂げるためには、まず信じることから始めなければ。

そんな当たり前のことが、ラスベリーの力になるのなら。

 

 あたしは前を向くしかない。

 

「……そうね。

ありがと、話聞いてもらっちゃって」

 

「いいや、おかげでけっこう時間潰せたし。

つってもあんま景色変わってないし、どうしたもんか――」

 

「――あれ、ヒロキ君?」

 

 その時ヒロキを呼んだのはあたしではなく、綺麗な女の子の声。

向かい側から顔を覗かせていたのは、長い栗色の髪が特徴的な榛色の瞳を持つ少女。

あたしはその姿に見覚えがあった。

 

「あ、アスナ!?」

 

 答えを口にしたのはヒロキ。

元々最前線にいたのなら、確かに顔を合わせていてもおかしくないか。

まぁアスナさんがここにいることが意外だったのか、心底驚いているようだが。

 

「やっぱりヒロキ君だった。

コウキ君は一緒じゃないの?」

 

「あー、実はアクシデントがあって逸れちゃってさ。

気がついたらこんなとこにいたんだ」

 

「なるほどね。

それで、そっちの娘は?」

 

「あぁ、あたしはただ居合わせただけだからお構いなく!」

 

 少し焦ったが、別に嘘は言っていない。

なんだかアスナさんにまじまじと見つめられているような気がするが、きっと顔色には出ていないなず。

そう信じたい、というかそうであって欲しい。

 

「それでアスナ、今あっちから来たよな。

悪いけど出口まで案内してくれるか?」

 

「判ったわ、着いてきて。

あなたはどうする?」

 

「あ、行きます。

あたしも迷い込んだクチなので」

 

 こうしてあたしたちはアスナさんの案内の元、脱出路を目指すことになった。

どうやら彼女は人を探してこの層までやって来たらしく、パートナーのとあるプレイヤーとは一旦別行動を取っているという。

 

 十中八九ラスベリーのことだ。

何しろ彼はアスナさんにとって、ミトさんとともに三人で冒険していた仲間。

でもあの人は突然本当の理由を言わず、彼女の元を去った。

それ以降何度もメッセージが送られているそうだが、いずれにも返信していないという。

 

 あの人はある事情により、アスナさんの傍にはいられない。

あたしは彼に協力する立場なので当然味方をしなければならず、それ故にミトさんのことを聞き出すことが出来ない。

完全に赤の他人であるはずのあたしがその名前を出せば、確実に関連性を疑われるから。

 

 ミトさんのことを一番よく知っている人物なだけに、なんとも歯がゆいものである。

ヒロキが聞いてくれれば助かるのだが、その望みは一片の花びらより薄いだろう。

 

 幸いというべきなのは、アスナさんがここにいる事実。

おそらく彼女は、フレンドリストに載っているマップ情報を頼りにラスベリーを追ってきている。

とすればあたしたちは、彼らからそう離れてはいないのだろう。

尤も、二人を会わせてしまうリスクがあるのは否めないが。

 

「リズベットさん、大丈夫?

難しい顔をしているけれど」

 

「へっ?」

 

 思わず飛び出た間抜けな声が洞窟内にこだまする。

どうやら自分でも気づかないうちにまわりが見えなくなっていたようで、アスナさんとヒロキがこちらを覗き込んでいた。

 

「だ、大丈夫よ!

あと!

あたしのことは呼び捨てで良いから」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

 人差し指を立ててビシッと言い放った直後、顔を逸らす勢いのまま飛び出した。

奥から風の音が聞こえる、出口が近いのだろう。

 

 早いところラスベリーたちと合流し、アスナさんを撒かなければ。

そのことに囚われていたあたしの思考は、突如視界に入り込んできた眩い光に遮られる。

 

「な、何……?」

 

 発生源はすぐ脇に見える壁。

ただの岩盤であるはずのそれが放つ輝きは少しずつ、一つの形を組み立てていく。

生きていれば誰でも頻繁に目にするであろうそれが開かれた時、中から現れたのは不思議な格好の人物。

 

 あたしと同じぐらいの身長に、フードの奥から僅かに見える真珠色の瞳。

そして何より目を引くのは、この人が女性であると簡単に判別出来るほどの軽装。

腕と足を片方ずつ大胆に露出した左右非対称の装備は最低限の防御力を確保しつつ、それでいて一切動きを阻害しない印象を受ける。

 

「……お前、何者だ。

ローラはいないのか?」

 

「えっ……!?

あ、あたしは……」

 

 華奢な身体に反して低い声が静寂を揺らし、思わずあたしは萎縮する。

どうやら誰か探しているようだけど、出てきたのは知らない名前。

一人困惑していると、ヒロキとアスナさんが遅れてやって来る。

 

「……お前はアスナ」

 

「え、えぇ……そうだけど」

 

「それに、ヒロキ。

元攻略組の」

 

「元は余計だ、これから戻るんだからな」

 

 何故だろう、あたしの時と明らかに態度が違う。

それも友好的というわけではなく、明確な敵意。

二人を見る彼女の目は、ドス黒い憎悪を宿していた。

 

「フフフ……よもやこのような僥倖があろうとはな」

 

 謎の少女が不気味に喉の奥で笑う。

微かに見えた口元は、悪魔のように歪んでいた。

それを見たヒロキたちは当然警戒心を露わにし、二人とも得物に手をかける。

――だが。

 

「遅い」

 

 何か起こったのか、いやそもそも時が経ったのか。

その事象を認識するよりも早く、アスナさんたちの身体が斬り裂かれる。

ダメージが発生した直後には、少女はすでに二人の背後にいた。

 

「がっ……!?」

 

「あぁっ……!」

 

 二人が遅れてやって来た衝撃によろけ、少女の頭上に浮かぶカーソルの色が夕焼けと同じ色に染まる。

彼女の手に握られていた赤紫の刃は、あまりにも異様な雰囲気を放っていた。

 

「ふむ、中々使い勝手がいい。

これがローラの言っていた、特別なチカラ」

 

「アンタ……いったい」

 

「あらゆる獣を葬る者、とでも言っておこうか」

 

 その時初めて、彼女の刃物のような視線があたしに突き刺さる。

同時に邪悪な形状の短剣も、すでにあたしを捉えていた。

 

「お前も攻略組に与する者なら、ここでまとめて始末させてもらう」

 

「くっ……」

 

 少女の発するオーラはまるで大型のモンスターや物語に出てくるような魔王そのもので、自分の意思とは関係なく足が竦む。

この人は何故ここまでの闇を抱えているのか、今すぐ突き止めることなど到底出来ない。

 

 それよりも今は、この状況をなんとかしなければならない。

彼女が敵意を向けてくる以上、こちらも立ち向かわなければいけないだろう。

 

「そんなこと、させるワケ無いでしょうが」

 

「ほぅ?」

 

「アスナさんは、このゲームの攻略において必要な存在。

そしてヒロキは、あたしのこと助けてくれた。

二人は……あたしが守る!」

 

 もちろん勝てるなんて保証はない。

それでも僅かな希望を残したくて、あたしは武器を取った。

確かにあたしは弱い、だけど戦うための力を持っている。

あとは信じる心さえあれば、叶えられるはず。

 

 そんな気持ちを後押ししてくれるのは、二つの抜刀音。

体勢を立て直したヒロキとアスナさんが、あたしの前に並び立っていた。

 

「守られてばかりじゃねぇよ。

俺たちも黙ってやられるつもりはない!」

 

「リズベット、必ず生きてここを出るよ!

あなただって大事な命なんだから!」

 

「ヒロキ、アスナさん」

 

 振り返り、あたしに微笑みかける二人。

たったそれだけのことで、不思議と勇気が湧いてくる。

しかし相対する少女は、そんなあたしたちを嘲るように鼻を鳴らす。

 

「これが学芸会というものか?

初めて見るが意外と滑稽なものだな」

 

「なんですって……!?」

 

「あの世に抱かれろ、無知蒙昧なる愚者たちよ!」

 

 それが開戦の合図となった。

フードの少女は銃弾のような速さであたしに迫り、あっという間に零距離。

しかもそれを認識した時にはすでに刃を振り上げていて、間もなく袈裟が落ちる寸前。

反応が遅れたあたしは、それを見ていることしか出来ない。

 

「やらせない!」

 

 赤色が落ちてくる寸前、ヒロキが割り込んでそれを受け止める。

大剣と短剣の衝突だと言うのに、彼が浮かべるのは苦悶の表情。

 

 その様は小人が巨人を圧倒しているかのような、まさに下克上。

それほどのパワーを前に、あたしたちはまとめて突き飛ばされてしまった。

 

「アスナ、今だ!」

 

「うん!」

 

 しかしヒロキの狙いは別にあり、鍔迫り合いの間にアスナさんが背後を取っていた。

攻撃の直後で隙を晒した少女に、閃光のような刃が降り注ぐ。

 

「フンッ!」

 

 あり得ない、まさかあそこからカウンターを繰り出すなんて。

アスナさんの素早い連撃の一つ一つを、彼女はあろうことかすべて防ぎ切って見せた。

その上直後には懐に潜り込み、得物に独特の光をまとわせている。

 

「はあぁ!!」SS2

 

「んんっ!?」

 

 奏でられる絶望の音。

アスナさんのHPが削られ、血しぶきにも似た粒子が宙を舞う。

怯んだ彼女を庇うようにして飛び出たあたしがSSを放つもフードの少女はアッサリと回避し、脇腹に凶刃を差し入れてくる。

この人、あまりにも隙がない。

 

「止めろォォオ!!」SS3

 

 切り刻まれるあたしたちを助けるためにヒロキが突進するも、その剣は何も捉えることなく空振りする。

彼の頭上にはすでに、闇をまとう刃を振り上げる悪魔がいた。

 

「果てよ!」SS1

 

「ぐあぁっ!?」

 

 一刀両断、文字通りヒロキが強烈な一撃を食らう。

左上に表示された彼のHPがごっそりと削られ、あたしとアスナさんのもすでに残り少ない。

数ではこちらが勝っているはずなのに、状況はまったくの真逆。

 

 それでもヒロキは諦めず食らいつき続けるが、ただの一撃すら掠りもしない。

敵の素早さに翻弄され、重機のような威力の刃に蹂躙される。

こんなやり取りが三回ほど繰り返された。

 

 にも関わらずヒロキが逃げないのは、あたしたちに目を向けさせないため。

追い詰められたアスナさんやあたしを守るために、必死で耐えているのだ。

その間に回復することは出来たが、おかげで手持ちのポーションが尽きた。

やはり応急処置のために使ってしまった分が痛い。

アスナさんの表情を見るに、あと僅かといったところか。

 

 おそらくヒロキの手持ちも、そこまで多くはないのだろう。

だが彼は今も絶えず降り注ぐ鋭利な雨をやり過ごすので精一杯で、アイテムを使う暇すらない。

 

 せめてボタン一つで味方のHPを回復出来たら良かったのだが、生憎そんな魔法はこのゲームにない。

かといって下手に近づけば、餌食になるのはあたしたちの方。

それではヒロキの想いが無駄になる。

 

 ではこのまま放っておくべきなのか、そんなはずはない。

じゃあどうすれば良いのか。

思考を巡らせ続けていたその時、いよいよヒロキに限界が来た。

 

「ぐぁっ……!」

 

「ここまでよく耐えたな。

だがもう終わりのようだ」

 

 耳を疑う破裂音。

振り上げられた凶刃によって、ヒロキが使っていた大剣が粉々に砕け散ってしまった。

欠片の一つさえ残さず、そのすべてがデータの中に霧散していく。

 

「ヒロキ!!」

 

 耐えきれず声を張り上げながら飛び出した時には、奴はすでに攻撃を開始していた。

アスナさんも同時に走り出しているが、この距離ではとても間に合いそうにない。

 

 もうどうしようもない――

諦めかけた瞬間、微かに見えた一筋の光があった。

 

「むっ!?」

 

 その時響いたのは肉を斬り裂く音ではなく、金属の衝突。

得物を失ったヒロキにそれが出来る術が無い今、どうしてそれが起こったのか。

正体は、彼を守るようにして立ち塞がる一人の少年だった。

 

「ラグラス君!?」

 

「ぜぇりゃあっ!!」SS4

 

 アスナさんにラグラスと呼ばれた青髪の少年が攻撃を受け止めた体勢から、怒涛の勢いで剣を振るう。

突然の出来事に対応が遅れたフードの少女はそのうち二発をダイレクトにもらってしまい、最後の一撃は紙一重で回避し後退する。

 

「何やってんのアスナ、ビーターが心配してたよ」

 

 溜め息を吐きながら、ラグラスがアスナさんに視線を向ける。

よく見れば彼は背後にいるヒロキに小瓶を投げ渡していて、そのすぐ後にHPが緑色に戻っていくのが見えた。

 

「ラグラス……お前どうして」

 

「アイツの代わりにアスナを探しにね。

アンタを助けたのは偶然。

……にしても、面倒な状況みたいだね」

 

 今の会話から、どうやらヒロキもあの人と面識があるようだ。

このことから彼は、おそらく攻略組に関係のあるプレイヤーなのだろう。

 

 頭の裏を掻きながら、面倒くさそうな表情のラグラスは眼の前の人物を見据える。

相対するその少女は、一層強力な殺意を彼に向けていた。

 

「貴様……攻略組のラグラスだな?」

 

「なんだ、知ってるんだ僕のこと。

けどその目を見る限り、慕ってくれてるワケじゃないね?

なら潰させてもらうよ、アンタを」

 

 その言葉が戦いの引き金となる――

ワケではなく、ラグラスは徐ろにメニューを開いてあるものを出現させた。

それは身の丈以上はありそうな、焔を思わせる赤い大剣。

彼は何を思ったか、ヒロキに向かってそれを放り投げた。

 

「っ、これって」

 

「この前の戦利品。

攻略に参加してれば、もっと早く手に入ったのにね」

 

 紅い瞳に映すものをヒロキからフードの少女へと戻し、ラグラスは低い声を発する。

 

「手伝え、それともこのあとは見てるだけか?」

 

「でもラグラス、アイツは強い!

このままやっても……!」

 

「関係ない。

人を助けるために悪を斬る、それだけのことだよ」

 

 電流が走った。

ラグラスは眼の前にいる化け物と対峙しても、まったく恐れていない。

暗い色をした刃を両手で持ち、真っ直ぐに構えるその姿勢をあたしは見たことがある。

あれは確か、剣道のものだ。

 

「ラグラス……そうだな」

 

 その姿に鼓舞されたのか、ヒロキが渡された得物を持って立ち上がる。

ラグラスと並び立つその勇姿は、どこか聖火のように燃え上がって見えた。

 

「誰かを守るのに迷ってる暇なんかない。

おかげで目が覚めた!」

 

「あっそ、それは良かった。

……アンタらは少し休んでろ、その間に終わらすから」

 

 実質の勝利宣言と、それに見合うだけの気迫。

ラグラスの態度は奴の神経を逆撫でするには充分だった。

 

「大言壮語、貴様にはこの言葉がお似合いだ」

 

「だったらどうした、僕はいずれ最強になる。

せっかく羽があるんだ、飛ばなきゃ損だろ?」

 

「フン、戯言を!」

 

 今度こそ戦闘再開。

二人が同時に踏み出し、そこに空間など無かったかのように零距離となる。

だが僅かにラグラスのほうが早かった。

全身の重心を前に起き、そのまま力強い踏み込みを見せる。

それによって生まれたスピードは、空を自由に舞う妖精を彷彿とさせる。

 

 お互いの刃が激しくぶつかり合い、どこまでも勢いを増す攻防。

しかし参戦したばかりというのも合ってか、体力ではラグラスに分がある。

そんな状態では敵がどれだけ強い力を持っていようと、必ず隙が出来てしまう。

そしてこの少年は、その瞬間を決して見逃さない。

 

「ヒロキッ!」

 

「あぁ!

竜華!!」SS2

 

 ドスの効いた指示とともに敵の背後を取り、逃げ場が無くなったところにヒロキが突撃。

心なしか紅い焔をまとったような、強烈な六回攻撃が炸裂する。

 

「ぐっ……まだだ!」SS3

 

「甘いよ!」SS4

 

 短剣使いの三連撃をものともしない四回攻撃。

SSの発動後に発生する硬直時間が二人を縛り付けているこの光景は、唯一フリーなヒロキにとって絶好のチャンスだ。

 

「終わりだ……竜星!!」SS4

 

 夜空から飛来した光のような、怒涛の十二連撃。

ヒロキの宣言通りとまでは行かずとも、それは奴に致命的なダメージを与えた。

微かに見えたHPバーは赤色に染まり、彼女の中で危険を報せるアラートが鳴る。

 

「くっ……あまり無茶は出来んか。

……む?」

 

 何かに気付いたフードの少女が戦闘態勢を解き、徐ろに指を縦に振る。

察するに、誰かからメッセージを受け取ったのだろう。

シンプルに考えるなら、最初に言っていたローラという人物だろうか。

 

 彼女が内容を確認している間も、ヒロキたちは警戒を緩めない。

何せ先程まで相対していたのは、三人がかりでもまったく歯が立たなかったほどの使い手。

ラグラスの増援によって状況は変わったものの、決して油断出来る相手ではない。

 

「……ちょうど潮時か」

 

 それだけ呟くと、フードの少女は凄まじい跳躍力をもって大きく後退し、あっという間に姿を消してしまった。

あっという間の出来事に誰も口を挟めず、ただ沈黙だけが残る。

 

 だがそれこそ、あたしたちが無事に生き残った何よりの証明。

災害とも形容出来るような恐ろしいプレイヤーを前に、なんとか事なきを得たのだ。

 

「はぁはぁ……くっ」

 

「まったくだらしないな、前線からだけじゃなく体力まで落ちた?」

 

 息を切らして膝を着くヒロキに対し、ラグラスが容赦のない皮肉をぶつける。

しかしそこに悪意は感じられない。

寧ろその声色は、心配を表すかのように微妙に震えている。

 

「……無事で良かったよ、ヒロキ」

 

「はは……最初から、そう言えよ」

 

 ようやく笑顔を見せたラグラスに手を引かれ、少しよろけながらヒロキが立ち上がる。

それに少し遅れるようにしてあたしとアスナさんは二人の元に駆け寄った。

 

「助かったわラグラス君。

あなたが来てくれなかったら、今頃どうなっていたか」

 

「言ったろ、アンタを探しに来ただけだって。

こうなったのは偶然。

……しかし、まだ諦めてないんだね?」

 

「……まぁ、ね」

 

 そのことを指摘する時だけ、ラグラスの声色が変わったような気がした。

アスナさんの表情が少し曇っているのを見るに、ほとんど成果はないのだろう。

だからこそ彼は『まだ』と言ったのかもしれない。

尤も、あたしたちは尻尾を掴ませないように動いてきたので当然だが。

 

「散々探しても会えないのによほど大事なんだね、その人のこと」

 

「えぇ、絶対取り戻さなきゃって思ってる。

彼に会って本当のことを聞くまでは、私諦めない」

 

「……羨ましいな」

 

 一瞬だけ、ラグラスがしんみりとした顔を見せた。

しかし直後に元の皮肉っぽい表情を浮かべ、ヒロキに視線を移す。

 

「今回はなんとかなったけど、相当無茶をやらかしたね?

コウキはもちろんだけど、‘あの娘’が知ったらカンカンに怒るんじゃない?」

 

「あの娘って……あ、いや!?

別にアイツとは何も!」

 

「あれ、僕まだ何も言ってないんだけど?

それとも何、僕への当て付け?」

 

「ちげぇよバカ!!」

 

 正直そんなリンゴみたいな色した顔じゃ何も説得力がない、少なくともあたしはそう思った。

先程までとはまったく真逆のヒロキがなんだか面白くて、思わず笑みが溢れる。

 

「ちょっ、リズベット!

お前まで!」

 

「いやごめん、違うの。

アスナさんもヒロキも、大事な人がいるんだなぁって思って。

それって、凄く良いことだと思う」

 

「……大切な人がいるなら、簡単に諦めちゃだめだよ」

 

 その時ラグラスが静かに放った言葉に、あたしたち全員の視線が集中した。

 

「アンタらは僕とは違う。

ヒロキにはコウキとあの娘が、アスナにはビーターや例のヤツが。

まだ手の届くところにいる。

だから……頑張りなよ」

 

 彼の言葉は二人を勇気づけているもののはずなのにどこか遠くを見ているようで、形容しがたい寂しさを宿していた。

『僕とは違う』――

これが意味するものはなんなのだろうか。

その正体は判らない。

 

 だがラグラスの語ることはあたしの胸にも強く響いた。

ヒロキにも言った通りまだこれが恋心なのかは判らないけど、あたしがラスベリーを大切に想う気持ちだけは真実。

その彼が傍にいる限り、あたしは信じ続ければ良い。

今のあたしに出来る、最高の恩返しになるはずだから。

 

 その後洞窟を出たあたしとヒロキはアスナさんたちと別れ、マップ情報を頼りにラスベリーたちを捜索し始める。

幸いにも二人のHPは、まだ危険域には達していなかった。

 

 

 

 あたしたちが丁度フードの少女と交戦を開始した頃、ラスベリーとコウキは海岸近辺にある岩石群に身を寄せていた。

広大な海を見下ろせる位置にあるその場所は薄暗く、風の通りすらも悪い空間。

幸か不幸かモンスターは湧かないため、二人が隠れるには最適と言える。

 

 では何故二人がここにいるのか。

あたしたちが海に落とされた直後、状況を不利と見たラスベリーの判断によって撤退。

当然コウキは大事な相棒を放っておけずそれに反対したのだが、『闇雲に助けようとしても自分たちが危険なだけ』と諭され、止むを得ず従った。

 

 別にラスベリーが薄情なワケではない、彼はあたしやヒロキを信じていたのだ。

まだHPが表示されている以上生きている、なら必ず無事に戻って来ると。

 

 当然九の懐は二人を追いかけてきた。

数が多い上にリーダーのゴローが異様に素早く、またあたしとコウキを突き飛ばした何者かの存在もあって撒くのに大分苦労したが、ラスベリーの機転で姿を眩ませることに成功。

こうして今、小さな洞窟に隠れているというワケである。

 

「はぁはぁ……さすがにここまで来れば大丈夫だろ」

 

「……」

 

 空元気を見せるラスベリーとは対照的に、コウキは何も言わない。

ただ手元の刀をぼんやりと眺め、沈んだ表情をしているのみ。

数秒ほど続いた沈黙を破り、彼に一つの質問を投げかけることにした。

 

「……なぁコウキ。

その刀、ただの武器ってワケじゃあないな?」

 

「えっ?」

 

「見てりゃ判る。

戦闘中でもねぇのにずっと出しっぱだし、よっぽど愛着があるんだろ?

性能で選んでるってワケでもなさそうだ」

 

 まだ疲れの残る足にムチを打ち、微かに覗く空を見上げながらラスベリーが立ち上がる。

コウキはその様を無意識のうちに見上げ、彼の神妙な面持ちをその時初めて認識した。

 

「この世界の武器はデータにすぎない。

それでも人が感じる気持ちってのは本物で、色んな想いがこのゲームにはあるんだろう。

……例えば、大事な人から渡されたとかな」

 

「ぁ……」

 

 胸の奥に何かが深く突き刺さるような感覚。

コウキが浮かべるのは想定外といったような表情。

それはラスベリーの指摘が当たっていることを何より証明していた。

 

「んまぁ言いたくねぇなら黙っときゃ良い。

お兄さんの勝手な妄想ってことにしとくからよ」

 

「……この刀は、大切な人との絆なんだ」

 

 ラスベリーの気遣いを受け取りつつも、俯いたままポツポツと語り出す。

 

「これが俺の前に現れた時、運命だって思った。

だって、あの人が使っていたものにそっくりだったから」

 

「‘現れた’……?

店で買ったとか、鍛冶師に造ってもらったんじゃなくてか?」

 

 それはラスベリーにとって当然の疑問であると同時に、強烈な既視感。

何せ彼はまるで意思を持っているかのように、独りでに武器が現れる様を実際に目撃している。

コウキを見下ろすその瞳には、密かに驚きの色が混じっていた。

 

「5層のボス戦を終えてから、俺とヒロキは消息を絶ったミトを探し始めた。

……いや、俺だけが……かな。

大事な相棒を、勝手に巻き込んだだけだ」

 

「……なぁ、ずっと聞こうと思ってたんだが。

お前さんとミトはどういう関係なんだ?

ただ一緒に戦っただけにしちゃあ、妙に引っかかってよ」

 

「初めて会ったのは1層のボス戦の時。

やられそうになった時にミトが助けてくれて、それから何度か一緒に行動したりしたんだ。

何度か笑顔を見せてはくれたけど、どれも虚しそうでさ……

見てられなかった」

 

 コウキの語るミトさんがどんな気持ちを奥底に隠していたか、とても図り知れるものではない。

だが、なんとなく予想するだけの材料はある程度揃っている。

何せ経緯は異なれど、ラスベリーもまた同じ境遇の持ち主だから。

 

 二人ともそれぞれ異なる事情でアスナさんの元を離れ、ラスベリーはあたしと出会い今日に至るまで冒険を続けてきた。

その間彼が見せてきた笑顔は、とても嘘とは思えない。

少し恥ずかしい話だが、あたしが心から信頼されているからだろう。

 

 でもミトさんには、心安らぐ時間が少しも無かったのだろう。

ラスベリーよりも若くして裏切りの業を背負い、自身の行く道を見失ってしまっては仕方がないというものだ。

しかしそんな事情など知らないコウキからすれば、今にも壊れそうな少女としてのみ映ってしまう。

 

「5層の時も辛そうで、ほっとけなかった。

声をかけようと思った時にはいなかったし、フレンド登録してなかったからどのエリアにいるのかも判らない。

けど見過ごせなかった!」

 

「そんでお前さんはヒロキと一緒に、足を使って探し始めたと。

……やっぱそうか。

コウキ、お前さんは少しでも多くのプレイヤーを守りたいって言ってたが。

本当は……ミトを守りたいんだな?」

 

「……あの人と同じ顔をしてた。

もしかしたら、あの人みたいになっちゃうんじゃないかって思うと怖くて。

ミトを助けることが、俺の償いになるって思った!

……そんな時なんだ、九の懐が現れたのは」

 

 コウキ曰く、突然の出来事だったらしい。

骸骨のような甲冑をまとう男たちが、彼とヒロキを包囲するようにして現れたのは。

その集団は最前線で活躍を続けるコウキたちに目をつけ、襲いかかってきたのだ。

 

 定石通りなら二人を仲間に引き入れようとするはずだが、彼らにとって攻略組は相反する存在。

プレイヤーたちの勢いを削ぐために、端から潰すつもりでやって来たのだろう。

さすがのコウキたちも多勢に無勢、ずるずると劣勢に引き込まれていく。

 

「俺もヒロキも絶体絶命で、もうダメだって思った。

でもせめてヒロキだけは助けなきゃって、無我夢中になって戦った。

……そうしたら、奇跡が起きたんだ。

今まで無かったはずのスキルが突然、この刀と一緒に現れたんだ」

 

「なんだって……!?」

 

 尋常ではない出来事を耳にしてラスベリーが驚きの声を上げる。

誰も把握していないエクストラスキルがいつの間にかあった例なら知っているが、戦闘中にそれが武器ともども出現するなどという事象は聞いたことがない。

 

 ここはゲームの中なので、そういった王道のような展開が起こる可能性は決してあり得ないワケではない。

事実ラスベリーも類似した現象に立ち会っているし、未だエクストラスキルはその習得条件も含めてすべてが解明されてはいない。

 

 手に入れようと思って出来るものではないものを引き寄せた。

これはコウキの言うように、奇跡と呼ぶ他ないだろう。

 

「……なぁ。

そのスキルの名前は?」

 

「‘抜刀術’だ。

それを得た途端自分の感覚がアバターと完全にリンクしたみたいになって、それはSSにも表れた。

神里流……あれは俺自身の技なんだ」

 

「限定的にOSSを生み出せるスキル、か……」

 

 その力が二人を襲った九の懐を容易く撃退したことは想像に難くなかった。

それよりもラスベリーが引っかかったのは、一スキルにしてはあまりにもオーバーパワーと言える効果。

 

 存在が伏せられた能力なので通常のものよりも強力であることは間違いないのだが、さすがに新たなSSを実装出来るのは強すぎる。

しかも専用武器まで同時に与えられるなど、よほどの理由がない限りはご都合主義と言わざるを得ない。

 

 これに思い当たるフシがあるラスベリーは、彼の持つ危険性に頭を悩ませた。

いったいどんな言葉を選ぶべきか――

そう考えているうちに、コウキは話を続ける。

 

「九の懐のことは何度も聞いていた。

必死になって現実に帰ろうとしてるプレイヤーたちに迷惑かけて、平気で人を殺す奴らだって。

そんな奴らがいたらミトも危ない。

だから俺たちは出来るだけ情報を集めて、何度もアイツらと戦った。

この力さえあればアイツらを止められる、この刀と一緒ならそれが出来る!

……そう思ってたのに、ヒロキたちを助けられなかった」

 

 散々捲し立てたあと、コウキの声が震え出す。

直後に地面を叩いた彼の握り拳から、言葉にしきれない悔しさを感じる。

 

「傍にいるヤツすら救えないで何がミトを守るだよ。

こんなんじゃ俺、前に進めない……」

 

「……コウキ」

 

 微かにだが、啜り泣く声が耳に届く。

俯いたその顔は、今頃ひどいことになっているのだろう。

九の懐を倒すことばかりに囚われ、大事な親友をあたしという協力者ともども海に落とされ、自分はラスベリーに説得されるまま逃げるしかなかった。

 

 そんな無力感に打ちひしがれているコウキの気持ちとは裏腹に、外から最も聞きたくない声が聞こえてくる。

 

「探してへんのはあとここだけや!

おどれら、あのガキども絶対いてこますでェ!」

 

 瞬間、コウキの身体が震え上がる。

狂気的なまでに高いその声は今日だけで二度も交戦した人物のものに違いない、そう確信したラスベリーは一人洞窟の出口へと赴いた。

 

「……ラスベリー?」

 

「コウキ、言っておくがあの娘は……

ミトは、守られるだけじゃない。

女の子らしい弱さと同じぐらい、誰にもない強さをたくさん持ってんだ」

 

 目を閉じて思い返す。

ミトさんの笑った顔、困った顔、怒った顔。

アスナさんも含めて三人で各地を巡っていた頃の思い出に、二人きりで話したという秘密の夜。

そして、その時に交わした大切な約束。

 

 ラスベリーは間違いなく、ミトさんに導かれてこの世界を生きてきた。

彼女がいなければ、きっと自分はここまで強くなっていないだろう。

そう心から思えるほど、彼にとって大きな存在なのだ。

 

「それでも本気でミトを守りたいと願うなら、自分がすべきことを見失うな」

 

「俺が……やるべきこと」

 

「思い出せ、お前さんはなんのために戦ってきた?

もちろんミトのためってのは否定しねぇよ。

でも、最初からそうだったワケじゃあないよな?」

 

 その瞬間コウキの中に蘇るのは、正式サービス初日からの日々。

相棒のヒロキに支えられながら順調に経験値を重ね、困難を乗り越えて行った末に第1層のボス戦に参加することになった。

 

 なんのためにその道を選んだのか。

答えはこの世界を生きるプレイヤーなら、誰もが同じものを持っている。

 

「俺ァ正直、お前ら攻略組が羨ましいって思う時がある」

 

「えっ……」

 

「例えめちゃくちゃ怖くても、みんなのために武器を持って戦う。

それって中々出来ることじゃあ無いぜ?

お前さんたちの活躍一つ一つが、すべてのプレイヤーを励ます灯火なんだ」

 

 笑顔を向けるラスベリーの手元に召喚されたのは、眩い光を放つ純白の刃。

それは先程までの戦闘で使っていた細剣とはまるで違う、彼本来の得物。

独特の形状を持つそれは、コウキの目をアッサリと釘付けにした。

 

「へへっ、やっと顔上げたな」

 

 ゆっくりと、一歩ずつラスベリーが出口へと向かっていく。

その背中がどこまでも大きく見えて、まるで物語に出てくる勇者のようだった。

 

「どんだけ下を向いたって良い。

だがお前たちは、戦えないすべてのプレイヤーに希望を与えるために戦うんだ。

準備が出来たらその刀を持って、前に出ろ!

んでいつかは高みの見物してるゲームマスター様に、ソイツをぶっ刺してやれ!」

 

「っ……その、言葉は」

 

「俺は先に行って、奴らの相手をする。

‘待ってるぜ’、コウキ」

 

「ラスベリー!」

 

 明るく、そしてカッコよく立ち去ろうとするラスベリーをヒロキが呼び止める。

鬼気迫るその声に違わず、彼はすでに立ち上がって複雑な表情を向けていた。

 

 それはまるで光と闇の中間、昼間と夜の境目。

奮い立った気持ちを頼りに立ち上がれるか否か、まさにその階段を昇る寸前というべきもの。

 

「奴らだけならともかく、今はヒロキたちをやったアイツもいる。

奴らの切り札ってこと以外情報がないし、ラスベリーだってやられちゃうかもしれない!

それでも、行くのか……?」

 

「情報が無かったら行かないのか?」

 

 なんの迷いもなく発せられたその一言に、ヒロキは思わず言葉を失う。

 

「可能な限り情報を集めて、数を揃えてから攻略に挑む。

確かにボス戦の定石だがよ……

これから先、想定外なんかいくらでも起こる。

それでも突き進んで、みんなの道を切り拓いていくしかねぇんだ。

……それに」

 

「それに?」

 

「……それを乗り越えるのも、醍醐味の一つ。

ミトだったら、そう言うと思うぜ」

 

 そう言ってラスベリーは、コウキを残したまま洞窟を飛び出した。

それもただ姿を現したワケではなく、近くにいた九の懐構成員に渾身のSSを放ちながら。

細剣の基本技《リニアー》が脇腹を割く音とともに、周囲の視線が一気に集まる。

 

「なんやそこにおったんかワレェ!

おどれら、かかりや〜っ!」

 

 次々と波のように押し寄せる男たちを、鮮やかな動きでかわし続ける。

目を覆いたくなるような刃の雨にも関わらず、たったの一人を捉えられないことにゴローの苛立ちが募っていく。

 

 彼の手下たちが別段筋が悪いワケではない、なんならしっかりと鍛錬を積んだと思しき者も何人か混じっている。

では各々の個性が互いを阻害し合っているのかと言われれば違う。

 

 答えは簡単――

今対峙している相手が、それまでとはまったく別人のような異なる動きになっているからだ。

まるで踊りのような無駄のない身のこなしは、すべての攻撃を紙一重で回避していく。

その様は彼らに、空気そのものを相手しているのではないかと思わせるほどだ。

 

「な……何やっとんじゃおどれらァ!

とっとと倒さんかい!」

 

「で、ですが兄貴!

こいつ、まったく攻撃が当たりません!」

 

「ドアホ!

余所見すんなや!」

 

 敵の一人がゴローに目を向けたその瞬間、強烈な重みがその頭に叩きつけられる。

その正体はラスベリーの足。

彼は手下たちをジャンプ台に、空高く飛び立ったのだ。

 

「なっ……!?」

 

「受けろや、ライジング・ノヴァぁっ!!」

 

 巨人の身長を優に超えるほどの高さからの超急降下攻撃が隕石の如く降り注ぎ、地面を打ち付けた反動で発生した衝撃波が戦闘員たちを呑み込んで行く。

これこそがラスベリーの持つシステム外スキルにして、彼の持つ身体能力があってこそ可能となる大技。

ライジング・ノヴァだ。

 

「……よし、HPは残ってるな」

 

「なんや殺さんのかいな。

あとで痛い目見ても知らんで」

 

「これでも一応、人を守る側にいるんでね。

例え敵でも命を取る気はねぇよ」

 

「嘗めとんのかワレェ!

兄弟ぃ、もういっちょ出番やでェ!!」

 

 怒りの咆哮とともに再び現れたその男は、着地と同時に怪獣の鳴き声にも負けない轟音を鳴らした。

力士のような体格と、並大抵のモンスターですら及ばないほどの異様な圧。

人間にして怪物とでも言うべきその存在こそ、ゴローの兄弟分『タイガー』である。

 

「……ウオオォォォ!!」

 

「くっ!?」

 

 初めて対面した時もそうだったが、彼の発する圧は雄叫びを上げるのみで周囲のすべてを震え上がらせた。

そこにいるだけで感じる威圧感に大地が震え、それを伝ってラスベリーの身体が強張る。

野獣のような眼光を向けるタイガーが、その両手に鉄爪をまとった。

 

「さぁ、あの二人みたいにくたばれや!!」

 

「グオオォォォ!!」

 

「チッ、スラント!」SS1

 

 ゴローの指示とともに怪獣のような声を上げ、タイガーが突撃してくる。

幸いというべきか、彼は見たままのパワー型。

動き自体は鈍重であり、ラスベリーは冷静にSSをもって迎え撃った。

 

 しかし想定外なことに、奴の攻撃は重すぎた。

まるで高層ビルが突然倒れてきたかのような、あるいはロードローラーがいきなり頭上に降ってきたような衝撃。

おそらく並の得物なら簡単に砕いてしまうであろうその一撃に、ラスベリーは突き飛ばされてしまう。

 

「ガッ……!?」

 

「ウォラアァァァ!!」SS4

 

 いくら本人が鈍足であろうと、システムのアシストを受ければ関係ない。

SSは特定のモーションさえ取ってしまえば、あとは身体が勝手に動いてくれる。

タイガーはその恩恵を生かし、鉄球のような腕を素早く突き出してきた。

 

 しかしこれはSS、一度発動してしまえばテンプレート通りのモーションをしてしまう。

故に知識を持つ者ならその一挙手一投足を見切り、力を持つ者なら僅かな隙を見つけて反撃の一手を浴びせることが出来る。

この場に限って言えば、ラスベリーは両方だった。

 

「そこだ!

リニアー!」SS1

 

「グァッ!?」

 

 ようやくタイガーに攻撃が通るも、そのダメージはあまり大きくはない。

体格に違わずその防御力も膨大なのだろう、まとっている装備の性能もあるのかもしれない。

 

 それでも根気良く攻め続ければいつかは勝てる、どんな者も無敵ではない。

ラスベリーはそう信じて追撃に向かうも、そこに一つの影が立ちはだかる。

 

「ヒーヒッヒッ、甘々やでェ!」

 

「しまった!」

 

 不意に現れたゴローの凶刃を寸前のところで回避し、大きく後退。

それでも彼はしつこく追ってくる。

中々遠くならない距離は徐々にラスベリーの体力を奪い、同時にタイガーを自由にさせてしまう。

 

 荒れ狂う怪獣と光速の狂犬。

真逆とも言える二人のアタッカーの前に追い詰められ、確実にラスベリーの勝機が遠退いて行く。

幸い避けきれないほどではないが、彼らの絶妙なコンビネーションの前では単独の時と違い、付け入る隙がない。

 

 いくらラスベリーの回避能力が優れていると言えど、人間である以上限界はある。

かといって一瞬でも気を抜けばタイガーの一撃必殺の剛拳に撃ち抜かれてしまうだろう。

 

 まさに崖っぷち。

このままでは確実に負けてしまうだろう。

そう、あくまでラスベリー一人だけなら。

 

(……だいぶ粘ったとは思うが)

 

 ふとコウキが隠れている岩場に目を向ける。

無論その間もゴローが刃を振り下ろしてくるので、回避に専念しながらだが。

 

(充分な情報が集まるか、リズベットたちが戻るか。

どっちが先かね)

 

 そう、ラスベリーにはまだ可能性が残っているのだ。

ここまでの流れはすべて計画通りであり、同時にコウキのために行っている時間稼ぎ。

 

 彼が口にしていた『情報がない』という不安を少しでも取り除くため、出来るだけ彼の近くでその存在を隠しながら、敵の主格であるゴローとタイガーの手札を可能な限り使わせる。

そのためにラスベリーは、早々に手下たちを眠らせたのだ。

 

 別にこの作戦は博打というワケではない。

何せ彼の視界にはまだ、あたしとヒロキのHPが表示されているから。

しかも緑一色、つまり体力全快。

即ちこれは、離れ離れとなったあたしたちが危機を脱したことを意味する。

 

 これにより例えコウキの登場が遅れたとしても増援が見込めるし、早ければより戦況が有利になる。

鍵はどちらかが実現するまで耐えきれるかどうか――

これがラスベリーの立てた、勝利の方程式。

 

 そしてその計画は彼の見立て通り、少年が戦うための舞台を完成させた。

 

「神里流……神速雪火!!」

 

「なっ、ぎぃやぁ!?」

 

「グガァア!?」

 

 落雷のような衝撃とともに振り下ろされたのは、焔をまとう一閃。

白く煌めく刃を持つ彼を見て、ラスベリーが微笑む。

 

「ヘヘッ……よぉ!

もう良いのかぃ?」

 

「うん……

おかげでもう、こいつらの動きが判る。

ここからは、俺も戦う!」

 

 後に『白鷺の剣聖』と称される刀使い、コウキ。

万全の状態となった彼が今、ラスベリーにとって最強の助っ人として並び立つ。

 

「俺がやるべきことは……

今やるべきことは傍にいる仲間を信じて、守ることだ。

だから俺は、ラスベリーを信じる!」

 

「……ハッ。

だったら、今だけは相棒だな。

やろうぜコウキ、俺たちの覚悟を見せるんだ!」

 

「あぁ!」

 

 特別な得物を持つプレイヤー二人。

成人男性と、中学二年生くらい。

ラスベリー、そしてコウキ。

二人がこの瞬間、SAOの常識を覆すところから話は始まる。

 

「な〜にが覚悟や。

そんなショボいモン、すぐぶっ壊したるわ!

行くで兄弟!」

 

「さてコウキ、俺はどう動けば良い?」

 

 凄まじい勢いでゴローたちが迫ってきているにも関わらず、ラスベリーはのんきな様子でそう訪ねる。

それは決して油断しているワケでも、まして敵を嘗めているワケでもない。

 

 コウキが来たことで、勝利を確信したのだ。

 

「ゴローを頼む!

あのデカいのは俺が!」

 

「あいよ!」

 

 先ほどまでの戦いをコウキはずっと見ていた。

軽快なフットワークが厄介なゴロー、規格外のパワーを持つタイガー。

この二人を攻略するにはどうすれば良いのかを限られた時間の中で考え、そして思いついた。

 

 その作戦が今実行される。

まずゴローだが、息を吐くように容易く距離を詰めてくるほどのスピードを持つ反面、その攻撃力はあまり高くはない。

これは攻撃速度に優れるラスベリーで対処が可能であり、時間稼ぎの最中に見せていた動きから判断した。

 

 次にタイガー。

彼は一見単体では付け入る隙が多そうだが、下手な一撃を加えても大した痛手にならないのはすでに確認済み。

しかもSSを受けたとしても怯むことなく攻めてくる。

いわゆるスーパーアーマーというやつだ。

 

 しかしそれなら、より強力な攻撃を叩き込めれば対処出来るのではないか。

神里流の剣技と自身の動体視力があれば、絶妙なタイミングでそれが可能となる。

それ故にタイガーを相手に選んだ。

 

 それらのコウキの選択は正しく、時間が経つにつれてゴローたちは窮地に立たされていく。

 

「コウキ!」

 

「あぁ!」

 

 空中に躍り出た二人は互いの足を合わせ、そのまま向かい側に相手を蹴り出す。

瞬間彼らはロケットのような轟音を立てながらそれぞれの敵のいる方へと飛んでいき、渾身のSSを叩き込む。

 

「おのれぇ……なんで俺らが追い詰められんのや。

このボケがあぁぁ!!」

 

「ラスベリー!」

 

 その時コウキが自らの象徴とも言える刀を垂直に投げ飛ばし、鋭い刃がゴローの肩を掠める。

直後後ろにいたラスベリーがそれをキャッチし、槍投げのように綺麗な投擲を見せた。

 

「ぐおぉっ!?」

 

「ナイス!」

 

「そっちもな!」

 

 再び刀を握るコウキがサムズアップを送り、同じくラスベリーも彼を讃える。

すでにゴローは虫の息で、たった一人となったタイガーはもはや動かない的も同然。

 

 ここで勝負を決める。

二人の想いは同じだった。

 

「クロスオーバー!」

 

 ラスベリーが宣言するのは当然、大事な得物がもたらす大いなる力。

細剣と片手剣、本来は別々であるはずの属性がここに交わる。

 

「ディメンション・ソード!!」CS1

 

「神里流終の型、白鷺ッ!!」

 

 異空間から現れた魔王の大剣と、神里流が誇る奥義。

ラスベリーとコウキが持つ最高クラスの技によって、その勝負は決した。

 

「きょ、兄弟……!」

 

「どうする、まだやるか?

それともなけなしのHP、温存しとくかぃ?」

 

「……くっ、今日はこのくらいで堪忍しといたるわ。

ほなおどれら、ずらかるで!」

 

 そうしてゴローたちは最初の時のように、情けなく撤退していった。

図体の大きいタイガーを数人がかりで引きずりながら。

もしこれがリアルだったら彼の背中は大変なことになっていただろう、というのは触れないほうが良いのだろうか。

 

「……なんとかなったな」

 

「だな。

……ってかラスベリー、なんなんだよさっきの!

全然見たことない技は出るわ、というか細剣と片手剣のSS同時に使うわで!

何がどうなってんだよ!?」

 

「いやいっぺんに聞くなちゃんと答えるから!

この武器な、アウリオンって言うんだ。

どういうワケかは俺も判らんが、細剣と片手剣のどっちでもある」

 

 その時、コウキが間抜けな表情を浮かべたまま固まってしまった。

おそらくラスベリーの言っていることがイマイチ理解出来ないのだろう。

うん、大丈夫。

あたしも実際そうなるだろうから。

この目で直に見ていなければ。

 

「いやそんな顔すんな俺だって疑問だらけだわ。

……あとはさっきみたいに、クロスオーバーっていうSSが使える」

 

「クロスオーバー……共演。

今回で言えば細剣と片手剣ってことかな」

 

「そうなるな。

……ぁ、そうだコウキ」

 

 唐突に何を思い立ったのか、ラスベリーが目の色を変える。

次の瞬間彼が口にした内容に、コウキは驚きを隠せなかった。

 

「お前の持つエクストラスキル、抜刀術だったな。

そいつを持ってることは公にしない方がいい」

 

「えっ……」

 

「おそらくだが、そのスキルはお前だけのモンだ。

これまでもこれからも、同じものを手に入れるヤツは現れない。

そんなレアどころじゃあないスキルがあるなんて知れたら、他のプレイヤーたちはどうなると思う?」

 

「それは……」

 

 ゲーマーというのは、大変嫉妬深いものだ。

新しく実装された強力な装備やアイテム、誰も存在を知らない隠されたスキルなどには目がない。

なのでそれらのものを所持しているプレイヤーに対しては羨望の目以上に、醜い感情を剥き出しにすることが多い。

 

 他に何人か同じものを持っているプレイヤーがいるのならただの『珍しいスキル』で済むのだが、コウキの場合そうはいかない。

それが世間に公表されてしまえば、最悪かのビーターのような立場になってしまう可能性もあるのだ。

 

「その時が来るまで隠しとけ。

もうバラしちまっても良いって思えるような時までな」

 

「……判った、そうするよ。

そうか、俺だけの力か……

なんていうか、ラスベリーがそういうの手に入れたらとんでもなく強くなりそうだな」

 

「俺が?

いやいやまさか、ありえねぇよ。

特別な力っつーのはもっと――」

 

「――おーい!」

 

 その時ようやく、あたしとヒロキはラスベリーたちを見つけた。

どちらともなく声を上げて、二人の元に駆け寄る。

 

「リズベット、やっぱ無事だったか」

 

「えぇ、あたしも信じてた!」

 

「……コウキ、どうやら一皮むけたみたいだな」

 

「まぁ、な。

色々あったからさ」

 

 それぞれの相棒と再会を喜び合い、お互い情報整理をしながら帰路へとつく。

気が付けば時刻はすでに黄昏時。

 

 海を照らす夕陽があまりにも幻想的で、いつまでも見ていられる。

しかしあたしたちとコウキたちは、ずっと一緒にいられるワケではない。

 

「ありがとうな二人とも、ここまで見送ってもらって」

 

「今更気にすんな、一緒に戦った仲だろ。

んでこれからのことだが、やっぱり最前線に向けて頑張るってところか?」

 

「あぁ、俺たち共通の目的だし。

今のコウキとなら、きっと出来る」

 

「フフッ、そうね。

頑張んなさいよ、二人とも!」

 

 どんなことがあっても相棒を信じ抜くヒロキと、傍にいる人を信じ守ることを知ったコウキ。

彼らならきっと、すべてのプレイヤーに希望を届けられる。

攻略組の一員として、みんなの力になってくれる。

そう心から思えるだけの輝きが、今の二人からは感じ取れた。

 

「そういえばコウキ、さっきの話の続きなんだが」

 

 そろそろお別れかというムードの中、ラスベリーが唐突に静寂を破った。

あたしとヒロキがキョトンとする一方、コウキは少し笑って口を開いた。

 

「アウリオンのこと?

それならさっき……」

 

「あぁ、話したな。

けどあれが全部ってワケじゃあない。

でも口だけで説明出来るなんて正直思えねぇ。

……だから、実際に確かめてみねぇか?」

 

 瞬間コウキの前に現れる真っ白な窓。

それが通知した内容は、デュエル申請。

差出人は当然相対する男、ラスベリーだ。

 

「ら、ラスベリー?」

 

「これから先、こいつみたいに特殊な武器を持つボスが現れるかもしれない。

そう思ったら、今やっといて損は無いんじゃあねぇか?」

 

「……確かに、そうだな」

 

 首を縦に振ったコウキがその指を青いボタンに合わせ、軽く前に倒す。

これによって二人の対戦が受理され、空中に大きく数字が映し出される。

早くもカウントダウンが始まり、残り二十五秒。

 

「遠慮は要らない!

本気で頼むぞ、ラスベリー!」

 

「ったりめぇだ。

そっちこそ手ェ抜くんじゃねぇぞ、コウキ!!」

 

 まったく男の子って、どうしてすぐ熱くなるのかしらね。

けどこの二人を見ていたら、不思議と悪い気はしない。

寧ろ彼らの楽しさがこっちにまで伝わってくるようで、その眩しい笑顔が夕日に染まって目が離せない。

 

 数字が0になり、互いに得物を構えて前進。

開幕から繰り広げられる激しい攻防に、SSの応酬。

空中に示されたそれぞれのHPが交互に削られていき、あっという間に半分近く。

初撃決着のルールであるこの試合が間もなく終わることを意味していた。

 

「ヘヘッ……すげぇよコウキ。

そのスキル、その剣技。

さすが最前線にいたプレイヤーは違うねェ!」

 

「ラスベリーこそ。

そんな凄い武器を使いこなしてて、攻略組にだって負けないよ!」

 

 相手を讃え合う二人。

これこそが本来あるべきゲームの形なのだろう。

デスゲームと化した世界の中で忘れていた、競い合うことの楽しさ。

少なくとも彼らは、とっくに取り戻している。

 

「決めさせてもらうぜ!

ディメンション・ソード!!」

 

「終の型……白鷺!!」

 

 力を合わせて勝利を掴み取った二人の大技が、雌雄を決する――

 

 

 

 

 

 

 

「――なるほど、そんなことがあったのね」

 

「えぇ、正直今でも忘れられないわ」

 

 そして現在。

あたしは自身の店に来ていた滅龍様ことミトに、まだ髪の色が焦げ茶だった時のことを話していた。

 

 あのあと試合がどうなったのか、結局勝ったのはどちらなのか。

それは各々の想像に任せることにするわ。

少なくとも言えるのは、あんな戦い滅多にお目にかかれないってことだけ。

 

 ミトのことをひたすら心配していた彼は、あたしを助けてくれたあの人は今どこで何をしているのか。

今も二人仲良く協力し合い、攻略に貢献しているのだろうか。

ふとそのことを思い出したあたしは、目の前でのんきにお茶を呑んでいる少女に昔のことを語ることにしたのだ。

 

「しかし、コウキ君とヒロキ君か……

懐かしいわね」

 

「ちなみになんだけど、ミトから見てあの二人ってどんな感じだったの?」

 

「凄く良い人たち。

絶望しきっていた私をずっと気にかけてくれて、何度も励ましてくれた。

……もしかしたら、彼らと一緒に冒険する道もあったかもね」

 

「……そっか」

 

 どこか寂しそうなその表情は、きっと偽りではないのだろう。

これはあくまであたしの想像だが、もしかしたらミトはまた二人に会いたいのかもしれない。

そのあとどうするのかは定かではないが、確実に悪いことではないと言える。

実際あたしから見ても、彼らは善人だったからね。

 

「リズ、お茶頂戴。

とびきり冷たいの」

 

「いやもう!?

というかもう十五杯目よね!?

大丈夫なの!?

お腹壊さない!?」

 

「問題ないわ、リアルじゃないし。

ちなみに正確には十七よ」

 

「あっはい」

 

 だけどこの天然ぶりだけは知ってほしくないと思う自分がいる。

あたしがおかしいのかしら。

うん、そういうことにする。

ミトの名誉のためにも。

 

 結局諦めて半ば呆れ気味にお茶を淹れていた時、店の扉を開く音が聞こえた。

慌ただしく入ってきたのはお客様ではなく、あたしたち共通の想い人ことラスベリーだった。

 

「二人とも、新しい依頼だ!

今回のは凄いぞ!」

 

「ちょちょっ、どうしたのよラス。

何がそんなに凄いのよ」

 

「そうか……きっとアメーバが侵略しに来たのね」

 

「いやどこのSF!?」

 

 いったいどこからそんな発想が出てくるんだっていうミトの発言にツッコミを入れながらも、あたしたちはラスが共有してくれた依頼を確認する。

内容自体は一見どこにでもありそうなごく普通のものだったが、あたしたちが目を引いたのはその依頼者の名前。

 

「これって……!」

 

「あぁ……

今回の依頼者は――!」

 

 

 

 

 

コラボ編

 

『ソードアート・オンライン〜白鷺の剣聖と剛腕の戦鬼〜』

 

葵楓=闇夜照らす者たち/12

 

THE END




【この章のラスベリーたちのレベル】

ラスベリー Lv23
リズベット Lv21
コウキ Lv26
ヒロキ Lv27
アスナ Lv28
ラグラス Lv32



〜あとがき〜

どうも皆様、神矢レイラです。
儚き虚夢のラスベリー、初のコラボ編を最後まで読んでくださり、誠にありがとうございます。
コラボしてくださったyoru07様、ありがとうございました!
散々質問したり長い文章を確認させてしまって色々諸々申し訳ない……(´・ω・`)

ですがおかげで、とても良いものが書けたと思います。
遅ればせながら、このお話はyoru07様の監修の元制作しておりますので、作中のコウキ君とヒロキ君は原作のイメージ通りかと(諸説あり)

今回で初めて彼らの存在を知ったという方は、この機会にyoru07様の作品を読んでみてはいかがですか?
二人のオリ主がアインクラッドを駆け抜け、このお話でもキーパーソンとなったあのキャラがヒロインとして活躍しております。

それでは今回はここまで!
また本編などでお会いしましょう!
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