詰んでる国の王女様 作:花見月
やっほー、脳内の友人たち。
やっと、私に直接仕えてくれる人ができたよ。
ブレイン・アングラウスっていうの。刀使いの剣士なんだよ。
あの初めてのお出かけの御前試合の後にスカウトして、しばらくしてから是の返事を貰った。
御前試合から結構間が空いてたから、城門前でひと悶着合って、私のとこに連絡来るまで結構時間かかったことは秘密。牢屋に入れられかけたらしい。
連絡系統もう少しなんとかしとけばよかった……すまんかったブレイン。この辺、王族は面倒だよねえ。
決め手は、なんでもブレインが決勝で負けた相手であるガゼフが、ヴェスチャーっていう人の元に弟子入り……っていうより、むりやり弟子入りさせられた? というか。たまたま、その師匠にガゼフが連れて行かれるところを見たのだそうだ。
ヴェスチャー……確か、ローファン卿?(オリジナルちゃん的に、この人には全く興味なかったのかぼんやりとしかわからない)だったかな。騎士爵持ちで、元アダマンタイト冒険者。城下に剣道場を構えていたから、御前試合も見に来ていたんじゃなかろうか。
そういえば、お父様は御前試合のあとからずっとガゼフを騎士にしたい、自分に仕えて欲しいとものすごい推していた。
でも、「礼儀作法も何も出来ない傭兵風情を騎士だなどと……」と、貴族たちの猛反対を受けて諦めかけてたんだよねえ。
だから、ローファン卿がちゃんとその辺教えてくれてることを願う。お父様の余りない望みの一つだから、叶えてあげたい。それで、騎士にできるかどうかはわからないけどね。
まあ、とにかくブレインは、それでガゼフに師匠ができたから、一人でやることに限界を感じたらしい。
当初は、盗賊まがいの傭兵団にでも入って、対人戦の腕を磨こうと思っていたと話を聞いたときは、こんな貴重な人材が盗賊にならなくてよかったと心底思ったよ。
私の部下になれば、対人戦の経験なら、王城内でも死ぬほど(比喩無しで)できそうだし。
平民だから、見下されるからね。大体、継承権もないような末姫が爵位みたいなもの用意できるわけがないのだ。
まず、大前提として、王族に仕える者達って貴族なんだよ。
騎士の中には平民出身の一代限りの騎士爵もいるけど、基本的に貴族出身だ。近衛兵ですら下級貴族の三男四男とかだったりする。
そして、料理とか洗濯といった汚れ仕事は平民がやってるけど、身の回りの世話をする女官や従者は高位貴族から選ばれてる。
だから、父王や妃たちの女官たちは言わずもがな、私の乳母もイヴル侯爵の婦人だし、バルブロ兄様の従者はボウロロープ侯爵の派閥の貴族の子息だし、女官長はブルムラシュー侯爵の……叔母だか何だかで伯爵婦人とかじゃなかったっけ。侍女の中には中位や下位貴族の行儀見習いの子もいるけど。
あ、ちなみにザナック兄様には、まだ決まった従者はいない。というより、従者として送ってくる貴族がいないんだよ……年齢考えればそろそろ従者を持つ年齢なのに。
世継ぎとして、期待されてないんだろうね。この辺が本当にかわいそうになるところだったりする。
顔立ちは良いんだから、まずは見た目からと痩せればいいだけなのにと私は思うわけで。
そんな貴族だらけの中だから平民であるブレインは、料理とか洗濯なんかの一部の使用人と同じように通いで登城してる。
今のところ城内での私の護衛は近衛兵がしているし、それで間に合ってしまうので、私がもう少し大きくなったら、あちこち出かけたいから、その時に護衛してもらうつもりでいる。
そんなわけで、彼は基本的に城の訓練場で、他の騎士や兵士と共に訓練する毎日。
複数を相手にすることも多いらしくて、本当に対人戦の経験を否が応にも積んでるらしい。
一つ不満があるとすれば……その訓練場、バルブロ兄様も使ってるから、度々私が顔を出すので無駄に絡まれるようになったことだろうか。
我が兄ながら面倒くさい……平民がそんなにだめか、兄よ。
まだ矯正が効く年齢だし、絶望的な挫折を味合わせるべきだろうかと思う。
ブレインに何かあったときに困るので、刀を用意した際に私は手持ちのアクセサリーからリボンを組紐の材料にして
組紐というよりミサンガ的な編み方してしまったけど、材料が材料だし、三才児が頑張って作ったんだからちょっと残念な出来なのは許してほしい。
◆
さて、部下が出来たと喜ぶ私だけど、ついに(?)他の貴族の子女と交流する機会が来た。
『はじめてのおともだち』と言うやつである。
……うーん、いつも思うんだけど王族って早くから婚約者とか決められるもんじゃないの? 婚約者候補と顔合わせもできるのかと思ったんだけど?
私が婚約破棄物や悪役令嬢物読みすぎてたんだろうか。ちょっと腑に落ちないけど、異世界は異世界。こういう世界もあるのだろう。
そういえば、以前『帝国に輿入れして逃げよう計画』のためにちょこっと帝国のことを調べてみた(周辺国に発表してる程度)けど、第四王子のジルクニフ王子か第五王子のアベンカイル王子辺りが年回り的に良さそう。それ以外は私とはちょっと年が離れてるし。
確か第四王子は、皇后の子だから、第四王子が皇帝になるのかな? えー、皇后はパスしたい……。
だとすると第五王子がいいのかなあ。でも、第五王子は第四王子ほど美少年じゃないと聞くし……悩ましい。
まあ、皇帝はまだまだ若いし、もう少し保留。そのうち、帝国に行けることとかあるかもしれないので実物見てから考えよう。
今は『おともだち』が重要よね。
今回は私の母の第二妃も一緒なので、うっかりしたことは出来ないので、オリジナルちゃんが覚えているはずのテーブルマナーをしっかり思い出す。
乳母に抱かれながら、母の後ろをゆっくりついていくと、やがて王宮の庭園に出た。
庭園の東屋のガーデンテーブルには、白いテーブルクロスが引かれ、その上にカラフルな菓子の乗った三段のケーキスタンドが置かれているのが、遠目からもわかる。
テーブルには、すでに何組かの貴族の親子が座っていて、私達が来るのを待っていたらしい。
そして、私は今生にて一番の親友となるラキュース・アルベイン・フィル*2・アインドラと出会うことになった。