詰んでる国の王女様   作:花見月

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 やあ、脳内の友人たち……って、そろそろ、本当の"おともだち"もできたし、イマジナリーフレンドは卒業したいところだけど、呼びかけしやすいからこのままでいいかしら。

 

 友達になったラキュースは、伯爵令嬢だけど冒険者……いや、英雄になりたいという変わった子だったの。

 王国だとたとえ貴族でも、女に生まれちゃうと冒険者になるしか英雄になる方法がないんだよねえ。他の国では目指すこともできる文官にも騎士にもなれないから、それで英雄なんて目指せないし。

 なんで、この国は自分で自分の首絞めてるんだろう? 女でも優秀な人間は多いと思うんだけど。

 

 ところで、異世界転生のテンプレで身分を隠して冒険者登録、そしてひっそりお金稼ぎと俺TUEEEみたいなルートがあるけど、この世界での冒険者はモンスター専用の傭兵みたいな立ち位置なんだよね。

 ちょっとだけ憧れもあって冒険者について調べた時にそれを知った。一番近いのはファンタジー系のTRPGの冒険者と言う名の何でも屋かな。少なくとも、ラノベのテンプレ冒険者とは違う感じ。

 

 それなら、冒険者が安定してお金が稼げる仕組み作ったほうが良いのかなあと思って、冒険者組合にお金を落とすために「モンスター討伐による報奨金制度について」の枠組みとその効果のプレゼン資料を作ってお父様に見てもらうことにした。

 

 

 

 ────うん、大して反対意見もなく、採用されたらしい。

 

 

 えぇ、本当に貴族達に反対とかされなかったの? 

 

 普通に通っちゃった……反対意見がなかったことにびっくり。

 根回しみたいなの今の私にできるわけないし、どうせ通らないんだろうなって思ってたのに。

 

 どうも私の化粧領*1からの税収の一部が報奨金にされることが同時に決まっていたらしい。

 

 なるほど? 言い出しっぺが私だから、私の資産でなんとかしろってことで採用されたのか。

 私が帝国に輿入れしたらどうするんだろう……そこまで考えてないのかな。まあ、いいけど。

 

 ちなみに、プレゼン資料は幼女(もうすぐ四歳)が作ってきたとは思えないほど、堅実にまとまったものだったから渡された父王だいぶ面食らったみたいです。特に手直ししないで、会議に提出されたらしい。前世の仕事(時々やってた営業事務)が役に立ったと思ってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、折角おともだちも出来たので、今日はおでかけです。

 アインドラ家に遊びに行くと先触れを出して、馬車を出してもらいました。

 

 で、現在地は王都近くの街道ござる。

 

 もちろん、途中でちゃんとアインドラ家でラキュースを拾ってます。

 同行者はブレインとラキュース、そして馬車の御者とアインドラ家から連れてきた護衛(馬に乗って外にいる)が二人。

 さっきから、どこに行くのかとラキュースとブレインがうるさいけど、目的地は"ここ"なのよ。

 

 馬車が急に止まる。

 王家の馬車だから、内装は割と良い物なので急ブレーキでぶつかってもそこまで痛くない。

 外の護衛達が馬車の外に絶対に出ないで下さいと叫んでいて、ブレインが刀の柄に手をかけ外を睨んでいる。

 

 どうやら、目的のモノが現れたらしい。

 

 最近、王都近くの街道で強盗被害が増えた。

 護衛が少ない馬車や商人が狙われるのだが、奪われるものが金銭と魔術書のみで、その場には商品や品物が残されているのだ。

 もちろん、襲われた者はだいたい死んでいる。奴隷として売れば高い値段がつくような女性すら殺されている。その死亡状況も焼かれたものばかりで、剣などで切られたあともない。

 

 運よく生き残れた者が残した言葉から、襲っているのはボロボロの黒いローブを纏った魔術師らしい。

 討伐隊が組まれたりしているけれど、なかなか足取りが掴めなくて王都の冒険者組合も困ってるみたい。

 

 この話を聞いたときは、食い詰めた魔術師が強盗という手段を取ったのだろうかと最初は思ったのよ。

 

 王国だと、魔法使いの地位が低いからね……

 先の女性の地位とかさ、この状況詰んでるのに、なんで誰も気がつかないの……?

 

 いやまあ、それはそれとして。

 

 金銭と魔術書のみが目的の強盗とか、いくら魔術師にしたって、おかしいじゃない?

 残された品物の中には高く売れるマジックアイテムや武器、ポーションの類、更には宝石のアクセサリーとかもあったのに全く手を出されていない。

 

 なのに、金銭と魔術書はきれいに無くなっている。

 

 これはもしかして、魔法を覚えるために魔術書が欲しくて、魔術書を買うために金銭を強盗しているのではと。

 他の換金アイテムに手を出さないのも、その価値がわからないから。

 

 つまり、人とはかけ離れた価値観で動いている。

 

 ということは、この魔術師は人間ではない……?

 

 と思い当たったわけである。

 

 今のままでは、討伐されるのは時間の問題だし、魔法の教授と魔術書の手配でこの人外(仮)の魔術師が部下になってくれないかなあと思いつき、私は今回の行動に至った。

 

 まあ、失敗しても最近手に入れた神刀もどきを持っているブレインには敵わないはず……期待してるぞ、ブレイン。

 

 ラキュースを巻き込んだのは、私が外出する大義名分が欲しかったのだ。

 一応反省はしているが、後悔はしていない。

 

 

 

 

 さあ、とりあえず交渉しましょうか、人外(仮)魔術師さんや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
本来の文字と意味は、化粧料であり中世の相続権のなかった女性に唯一許された生前に相続した財産のこと。転じて、化粧領とは身分の高い女性が生まれた際に親から割譲された土地や領のこと。将来結婚する際に持参金としたり、生活費の足しにしたりする個人資産である

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