世界一のゴミクズに生まれた   作:Dr.凡愚

7 / 8
クソガキの能力

 

 

 悪魔の実を食べた私に対し、ゼファーは延々と説教をしてきた。やれ馬鹿だの、やれ2度と泳ぐことができんのだぞだの、やれ天竜人が何をしているだのと。全て聞き流し、再びソルド王の方を向く。

 

「さて、これで私が買うのはただの珍しい箱だけになった。天竜人の道楽で買うものに大きな価値はない。噂を補強するようなことにはならんだろう」

「な、なるほど? 確かにそれであれば誤魔化しは効くかもしれませんな」

「まぁ誤魔化しが効かずとも、天竜人の手が入った場所に手を出そうというバカはそうはいないだろう」

 

 これで金銭に関する問題はひとまず解決したとしておく。ソルド王も若干の不安はあれども一応の納得を見せた。

 

「ところで小僧。お前が食った悪魔の実の能力は何だったんだ」

「ふむ、そうだな。ゼファー少しこちらへ来てくれ」

「? 何だ?」

 

 ゼファーが私の近くへ寄り、しゃがみこんだところで声をかける。

 

「"眠れ"」

 

 すると、ゼファーはゆっくりと床に倒れ込んだ。

 

「え? あ、ガルフレド聖!? 一体何を!?」

 

 それを見てソルド王は私を警戒した目で見る。

 

「私の悪魔の実の能力だ。ゼファーのことは心配するな、ただ眠っているだけだ」

「眠っているだけ? 一体何の能力なのですか」

「箱の中に古い紙が入っているだろう。そこに私の食った実の名前が書かれている」

「古い紙?」

 

 ソルド王は寄せ木細工の箱の中を覗き込んだ。そして古い紙を見つけ、中の文字を読む。

 

「ユメユメの実……ですか?」

「そうだ。この実を食った者は夢に関するありとあらゆる事ができるようになる……かもしれん」

「かも、ですか」

「ああ。実際に何ができるのかは追々確認しなければならんが、とりあえず起きている者を夢の世界に引きずり込むことはできるようだな」

 

 そう言ってゼファーの方を見る。床に倒れ込んだゼファーはそのままの姿勢で寝息を立てていた。

 

「では、何時ゼファー殿は起きられるのですか?」

「分からん」

「え!?」

「とりあえずは少し待て。夢の中のゼファーと話している」

「夢の中?」

 

 首を傾げるソルド王を放っておいて、夢の中に集中する。夢の中では、ゼファーが私に襲いかかっていた。

 

 

 

 話は私がゼファーを眠らせたところまで戻る。

 

 能力で眠らされたゼファーは、気づけば何もない荒野にいた。

 

「ここは、どこだ? 小僧とソルド王はどこに行った?」

 

 あたりを見回すが、人どころか何の生物も居そうにない。見聞色で辺りを探るが、何も感じ取れなかった。

 

「おい! 誰かいないのか!」

 

 声を上げ周囲を見渡す。やはりここには自分ひとりしか居ないと確認できた。

 

 すると突然、目の前の空間がぐにゃりと歪み、そこからガルフレドが現れた。

 

「ふむ、こうなっているのか。面白いものだ」

「おい小僧。貴様一体何をした。ここは何だ」

 

 突然現れて辺りを観察する私を睨みつけ、ゼファーが詰問する。

 

「答えろ! さっきの悪魔の実の能力か!」

「ああ、私の悪魔の実の能力だ。私が食ったのはユメユメの実というらしい。能力を確認するため、試しにゼファーにかけてみた。今ゼファーと私が居るのは夢の中といったところだな」

「ソルド王にはかけていないだろうな」

「ゼファーにしかかけていない」

 

 それを聞きゼファーは、安堵してよいやら怒ればよいやらといった感じでため息をつく。そして、ふと思い出したように顔を上げた。

 

「そういえば小僧。ここは夢の中と言ったか?」

「? ああ、言った」

「ではここで起こることは現実には何も関係ないんだな?」

 

 なぜか獰猛な笑みを浮かべながらこちらを見てくるゼファー。大分嫌な予感がしつつも正直に答える。

 

「この中で起こったことは現実には反映されんが……それがどうしたというのだ?」

「そうかそうか」

 

 私の答えを聞き、満面の笑みを浮かべつつゼファーがこちらへ歩み寄る。だが、その笑みは嬉しいや楽しいというよりも、獲物を見つけた肉食獣が舌舐めずりしているような笑みだった。拳をゴキリと鳴らしゆっくりと近づいてくる。

 何をしようとしているのか薄々想像がつくが、丁度いい。夢の中における能力の把握のために付き合うことにした。

 

「いい加減小僧の勝手な行動には灸をすえてやらんといかんと思っていた所だ。ここが現実に関係ないのであれば一切の容赦はいらんな!」

 

 そう言い放ち、ゼファーが殴りかかってきた。その腕は黒く染まっており、一切の手加減も考えていないことは明白だった。

 大ぶりの一撃を後ろに下がって躱し、距離を取る。早めに避けたおかげで、砕かれた地面に足を取られることもなく距離を取ることができた。

 

「ほう。よく避けたな」

「見え透いた一撃だったからな」

「ならば連続でぶん殴るとしよう!」

 

 最初の一撃を躱されたゼファーは笑みを浮かべ、再び殴りかかってくる。横薙ぎの拳を下に潜り込んで躱すと、すぐさま下から突き上げるように拳が飛んでくる。それを後ろに転がりながら避け、次の打ち下ろしを横に避ける。

 かすっただけでも吹き飛ばされそうな連撃を休むことなく躱し続ける。現実であればすぐに体力が尽きてしまい躱しきれなくなるだろうが、夢の中であれば体力が尽きる事もない。精神を削るような猛攻を見聞色で紙一重で躱し続けていると、拳が当たらないことに痺れを切らしたゼファーが挑発をしてきた。

 

「おい! 小僧! 避ける! しか! できんのか! 少しは! 反! 撃! してみろォ!」

 

 拳を振るう合間に一言ずつではあるが挑発をされる。こちらとしても攻撃をされるばかりで少しは反撃したいところだったので、大振りの一撃を躱すと同時に大きく距離を取った。

 

「どうした。少しは反撃するつもりになったか。それとも俺の拳を受け入れる気になったか」

「そうだな。ゼファーの拳を受ける気はサラサラないが、貴様ばかりに攻撃させるのも面白くない。私からも少しは反撃してみよう!」

 

 そして私は周囲の地面に意識を向け、土や岩を拳の形に変え浮かべる。

 

「な、に?」

 

 驚愕の表情を浮かべるゼファーを無視してその拳を増やし、大きく作り上げる。出来上がったのは、私の身長より少し大きいサイズの二対の拳だった。

 

「おい、それはどういう……」

「ここは夢の中だからな。できると思ったのでやってみた」

「そうか……俺にもできるのか?」

「知らん。やってみたらどうだ?」

「そうだな」

 

 私の言葉に同意して、ゼファーも地面を操れるのかどうか試し始めた。それを気にせず、作った拳を圧縮したり動かしてみる。適当に宙を舞わしてみたり、思い切り速度を出して地面に叩き込んだり軽いコンビネーションを試す。

 暫く遊んでいたが、ゼファーから声をかけられ振り向く。

 

「俺ではできんようだな」

「そうか。やはり能力者本人でなければ夢の中を自由に操ることはできんのかもしれんな」

「もしくは能力者本人の許可がいるのかもしれんぞ」

「そうか、では今ならできるか?」

「そうだな、試してみよう」

 

 ゼファーの思いつきを受け、なんとなく許可を出してみる。そしてゼファーが地面へと意識を向けると、地面がゆっくりと持ち上がった。しかし持ち上がったのはいいが、持ち上がる速度もその形が変わるのも緩慢で、私のときのように簡単に変わりはしなかった。その上、出来上がったものも丸い土の塊といった感じで、お世辞にも拳とは言えないものだった。

 

「それが限界か?」

「そのッ、ようだなッ!」

 

 更に、その形を維持するために極度に集中しなければならないようで、拳のようなもの1個を維持することにゼファーは酷く集中していた。能力者の許可があろうとも、能力者本人でなければ夢を好きに操れはしないようだ。訓練をすればその限りではないかもしれんが、流石に意味がないだろう。私が許可しなければ、もしくは私が協力しなければかもしれんが、夢を自由に扱う事ができないのだから。

 そんな事を考えつつ、自分で作り出した拳を同じく適当に作った壁に連続で叩き込み続けていると、ゼファーが集中を切らしたのか土の塊を地面に落とした。

 

「やはり能力者本人でなければ自由自在にできるわけではなさそうだな。ところで……それは何をしている?」

「ん? 暇だったので適当な壁を作って先程の拳を試し打ちしていただけだ」

「そのでかい壁にか」

「ああ、それなりの威力だろう?」

「それが、それなりか」

 

 ゼファーが絶句しているが、別にそれなりの威力だろう。ただ少し、小型の海王類程度の壁が地面から生えては岩の拳で粉砕されるのが繰り返されているだけだ。どこぞのゲンコツジジイは山をサンドバッグにしているのだからそれなり程度だろう。

 

「さて、では本格的な反撃をさせてもらうとしよう。準備はいいか? ゼファー」

「……ところでだが、夢の外はどうなっている? 俺の体やソルド王は?」

「む、確かにな。ソルド王もお前の体を動かしたほうがいいのかと狼狽えてしまっているか。よし、では夢の中から出すのを試してみるか」

「ああ、そうしてくれ」

 

 何故かため息をつくゼファーを不思議に思いつつも、夢の中から能力をかけた相手を出す方法を考える。まあ、出る方法であれば光に包まれて目を覚ますといったイメージでも大丈夫だろう。

 そう考えた瞬間、私の足元から強烈な光が発せられて夢の中すべてを包んでいった。

 

 

 

「あの、ガルフレド聖?」

 

 夢の中に意識を集中させて暫くすると、しびれを切らしたのかソルド王が話しかけてくる。

 

「ああすまん。もうすぐ起きるか」

「はい?」

 

 それに答えてすぐ。眼の前で寝息を立てていたゼファーがピクリと動き、うめき声を上げながらムクリと起き上がった。

 

「ここは……現実か」

「おはようゼファー。突然能力をかけてすまなかったな」

「その通りだ。俺であったからいいようなものを、気をつけろバカ小僧」

「うむ、善処しよう。しかし、ここにいるのは私だけではないのだから言葉遣いには注意したほうがいいぞ」

 

 目を覚まして早々私への小言を始めるが、ここにはソルド王も居るため控えてもらいたい。そう伝えればピタリと口を閉じ、ゆっくりとソルド王の方へ向き直る。

 

「申し訳ないが、今のやり取りは内密に……」

「いえ、誰かに教えようとも誰も信じないでしょう。私の胸の中にしまっておきます」

「本当に申し訳ない」

 

 そんなやり取りを見つつ、話題を変える。

 

「さて、宝物庫の中も確認したことだ。もう用もあるまい。一度出んか?」

「そうですな。では、次はどこを案内いたしましょうか」

「そういえばリスタ妃は大丈夫なのか? 昨日はさほど気にかけられんかったが」

「い、いえ。そんなガルフレド聖が気にするようなことでは」

「ソルド王の大切な家族の一員だろう。気にせん訳にもいかん。それに、私のせいで寝込ませたようで気分も悪い。一度見舞いに行ってもよいか?」

「え、ええ。顔を見る程度でしたら大丈夫だと」

「そうか。では行こう」

 

 私達はゼファーに見つけた箱を運ばせ、宝物庫を後にする。途中の扉を一々閉め直しつつ広間へと戻り、他の海兵に箱を預けた。

 

 そして、ソルド王の案内でリスタ妃の寝所まで足を運んだ。

 

 

 

 

 

 




 どうも皆様、作者です。
 筆が遅くて申し訳ないとは思っておりますが、文章を出すのが下手なのでご了承下さい。

 話は変わりますが、ガルフレドとゼファーにいい加減読者に感想を返せと怒られましたので、ゆっくりにはなりますが返していこうと思います。
 感想が増えますと執筆の励みにもなりますのでできればよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。