オラーシャに日はまた昇る   作:vespa MDRN

6 / 37
前回のあらすじ……
輸送隊リーダーの反対を押し切り、戦う覚悟を決めたレイラ。ひとり惨劇の場に取り残された彼女の前に、瘴気を纏う黒き厄災が再び立ちはだかる。自分の存在意味を示すため、少女は火中へと進むのであった。


Ⅴ…交戦

 戦っていると、さっきまで感じていた恐怖は私の中から姿を消していた。何故か、今は力が湧いてくるのだ。心のうちにある燃え盛る"何か"が私の原動力となっている。これは勇気か?

 違う。この気持ちはネウロイと対峙したこの時、迸りはじめたんだ。これは勇気ではなく、怒りや憎しみと言ったものだ。この黒い塊を見ていると、無性にムカつく。

 ネウロイ達が私を見つけて先制射撃を繰り出す。これは既に予測済みだ。すぐさまビームを回避し、民家の裏に隠れる。覗き込むとやはり三機で追ってくる。まだ奴らは高度を落とさない。

 

(舐めているな、追跡速度も遅い)

 

 魔導エンジンをふかし、一気に加速をかけ、建物の反対方向から飛び出す。ネウロイはまだこちらに気づいていないのか、そっぽを向いている。その間に狙いを中央のネウロイに定め、機関銃の引き金を思い切り絞る。銃口から凄まじいスピードで弾丸が小さい炎とともに飛び出してくる。

 弾丸はネウロイの下部に命中、その装甲が砂糖の如く容易に破ける。破壊された部位から運よくネウロイのコアが露出する。私は躊躇ためらわず射撃を続ける。数発の射撃でコアは砕け、中央のネウロイは木っ端微塵になる。だが左右ネウロイは依然として健在である。

 

(コアの強度が脆い……中型サイズだからか?)

 

 すぐさま背の高い建物に移動して隠れる。壊れた壁の隙間から敵の様子を窺い、慎重に背後に回り込む。まずは一機だ、ストライカーの調子も悪くない。La-5よりか重く小回りは効かないが、それでも誤差の範囲内だ。

 こいつらが全て同一個体ならコアの位置も同じはずだ。今度は左側のネウロイの機体下部に向かって射撃する。同じように装甲が破壊されてコアが露出するが、その間に真ん中のネウロイが復活しかけている。アレンスカヤ中尉はこの再生行動を”戻ってきた”と表現したのだ。

 

(再生が早いタイプか……面倒だな)

 

 露出しているコアを破壊するため引き金を引くが避けられる。どうやら仮説は当たりだ。三機それぞれのコアを全て破壊されると死ぬ。乱れのない陣形、同じ姿、同じ攻撃方法とタイミング。やはりこのネウロイは三つで一つであり、何らかの方法でコアを分離しているのだろう。だからコアの一つ一つが脆いのか。

 だが仕掛けが分かればこっちのものだ。陣形が完璧だと聞いたからどんな連携攻撃を仕掛けてくるのかと身構えていたが、大したことはしてこなかったな。

 逃げたネウロイを追いつつ、家屋を盾にする。顔だけを出してネウロイを探すが、いない。私と同じように建物の影に隠れて再生を図っているのか。学習もできる、機転が利くネウロイとはまたまた厄介だ。

 

「小癪な奴、イライラさせて!」

 

 頭に血が上り始めるが、呼吸を整えて平静を保つ。戦い方はまだ考えてある。あっちが下なら、こっちは上になるだけだ。

 手榴弾を二つ取り出し、上昇する。上からならばどこに隠れていても見つけ出せる。

 

「そこか!」

 

 木々と草むらに漆黒の塊を見つける。手榴弾のピンを抜き、爆撃するかの如く目標めがけて投げる。この高度から投げれば地面すれすれの付近で爆発するはずだ。

 爆発音とネウロイの声が辺りに響く。ドンピシャだ。私はまた一つ手榴弾を投げ入れるが、奴らが飛び出して惜しくも外れる。だがそれも想定内だ。ある程度の移動場所を予測して、手榴弾を投げる。

 見事命中。右側ネウロイの上部装甲が丸ごと破壊された。そして一発当たれば動きが鈍り、次弾が当てやすくなる。また一つ、二つと手榴弾で確実に弱らせていく。最後に二つの手榴弾を同時に投げ込み、命中させたところで武器を機関銃に持ち帰る。これで剝がれかけの装甲を破り、一気に叩く。これなら勝てる。

 

「去ね!」

 

 ネウロイへ急接近する。しかしそこに奴の姿はない。どうしてだ。爆発の土煙を煙幕に別の場所へ隠れたか。

 周囲を捜索していると急に地面が爆発する。手榴弾?

 咄嗟にシールドを展開する。煙の中からは複数のビームが放たれる。地面に潜っていたのか!

 急いでシールドを貼るが、数発ストライカーに命中する。肩にもビームがかすり血がにじむ。そのまま後退するが、ピッタリと張り付いてくる。その間に敵はビームによる斉射を行ってくる。

 

「しつこい!」

 

 耐え兼ねて私も機関銃で射撃をする。残弾数に気を付けて射撃をするが、怯む様子がない。一つずつ潰す他ないのか。

 また中央のネウロイに向けて射撃を開始する。機体下部のコアの位置へ弾丸を叩きこむとやはりコアが現れる。弱点へ攻撃を仕掛けるとネウロイは少し距離を置いてきた。狙いを定め、引き金を引くとカチッと嫌な音が聞こえる。機関銃の弾が尽きてしまったようだ。これはまずい。

 それを感づいたのかネウロイはまた接近しながら真紅の光線を放つ。

 私はすかさずトカレフでコアを撃ち抜き、中央の奴を撃破する。がその間のビーム射撃でストライカーは更に被弾し、燃料が漏れだす。これで戦闘継続時間は大幅に縮む。

 一方僚機を失ったネウロイはまた距離を置いたが、最初よりも遠く離れている。

 武装が尽き始めている。これではアレンスカヤ中尉の二の舞だ。最終手段を使うしかない。私は両腕の対装甲ブレードを展開する。鋭い金属音と共に私の腕に銀色の刃が姿を現した。

 射撃武装はもう必要のないデッドウェイトだ。これで決める。機関銃についているスリングを刃で切り裂いて即座に捨てる。

 呼吸を整え、深呼吸をする。ネウロイと互いににらみ合う。幼い頃に見たリベリオンの西部劇の様な雰囲気に、余計に緊張が走る。

 ネウロイは再生を始めている。今から仕掛けても左右を倒しきる頃には中央が完全再生する。そうなれば私の『切り札』固有魔法の限界が来るだろう。そうなれば体力か魔法力が尽き、仕留められない可能性がある。それは不確実だ。だけど……

 私は今、ただひたすらに、こいつを切り刻みたい。

 ネウロイの再生が完了すると同時に耳を塞ぎたくなるような金切り声を上げた。雄たけびのつもりだろうが、それがお前の断末魔だ。

 

「仕留める!」

 

 私は固有魔法『感覚暴走』を発動させる。生まれつき真っ赤な瞳はこの時だけ、青い光を放つ。この固有魔法は視力、聴覚といった感覚器官が研ぎ澄まされ、より繊細に物事を感じ取れるようになる。同時に思考速度も上がるためか、時間の流れが少し遅く感じるが、これには体力と魔法力を大幅に消耗する危険性があるため使うのは禁止されていた。前までは。

 私は加速しつつ、ネウロイへ接近する。私を迎撃するために敵は高度を上げながら、多数のビームで薙ぎ払おうとするが全て回避される。射撃の量を厚くしてもそれは無意味に等しい。私にはその全ての軌跡がゆっくりと見える、だからこそ避けられる。

 

「一つめ!」

 

 右側の個体の下部に潜り込み、斬撃を二回食らわせる。一回目で装甲を、次でコアを切り裂く。手応えありだ、一人目はもう死んだ。

 すかさず真ん中に攻撃を仕掛ける。左横ループで、攻撃に必要な勢いをつけると同時に、攻撃の角度を調整する。エルロン・ロールも繰り返しながら急接近し、ネウロイの本体下部に潜り込み、ロールの回転で切りつける。こいつも殺った。同時に右側が砕け散る。まだ時間に余裕があるが、魔法力が持たないかもしれない。固有魔法と刃に込める力でだいぶ魔法力を消費した。

 固有魔法を解除すると、ネウロイの動きは等速に戻り、私の目が赤色に戻る。敵は砕け散りながら低空へ逃走を図る。

 

「逃がすか!」

 

 結局、お前らはひとりじゃ何にもできない。私には出来る。この世界はお前らの好き勝手にさせてたまるか。私は約束したんだ、守れなかった人たちの、いなくなってしまった人の遺志を継ぐ。そのみんなが報われるため、私は戦い続ける。

 この国の大地も、自然も、人も、何より私が目指した空を取り返す!!

 私はネウロイを追跡しながら一気に上昇する。位置エネルギーを利用し、目標めがけて急降下する。この速度なら確実に仕留められる。刃に魔法力を込めて、振りかざす。

 そして確実に殺しきるためにもう一度固有魔法を発動する。疲労が一気に全身を襲うがそんなものは、喪った人たちが受けた痛みに比べれば大したことではない!

 持ってくれ私の体。あいつを絶対にここで殺すために!

 最後のネウロイは悪あがきの射撃を行いながら少しずつ再生するが、私の固有魔法の前では無力だ。遅い!

 

「この空は、私達のものだ!!!」

 

 全身全霊の力でネウロイを斬りつける。刃は驚くほど容易に装甲を引き裂き、コアを一刀両断する。私は体全体を最後の力を振り絞り、引き起こす。しかし努力も虚しく地面にぶつかり、体を大地に擦り付けながら不時着する。

 ネウロイの方向を見るとそこには、ネウロイだったものの欠片が散っていた。

 私はひとりで勝ったのか?

 いや違う。私だけの力ではない。レナータやグリエフ少尉は私を送り出してくれた。アレンスカヤ中尉は敵の情報をくれた。エレーナは武器をくれた。そして、アンナの遺志は私に勇気をくれた。

 

「ははは……」

 

 自然と笑いがこみ上げる。これが勝利の優越感というものか。でもちょっと疲れた。意識が次第に薄れ、視界がぼやけてくる。流石にもう動けそうにない。頭も痛い。

 これで終わりか……

 

 

***

 

 

 何かの音で目覚める、キャタピラか?

 兵士は戦車であの世に送られるのか、何だか少し滑稽だな。ちょっと興味が湧いてきたから操縦士にでも何故戦車なのか聞いてみる。

 

「どうして戦車なんだ」

 

「起きたか」

 

 聞き覚えのある女の声。

 

「戦車じゃない、ストライカーだ。陸戦用のな」

 

 目を開けると見覚えのある顔があった。アレンスカヤ中尉だ。確か怪我をしていたはずでは。どうしてここで私を背負っているのだろう。

 

「何故、ここに……」

 

「あたしが起きたとき、既にレイラはいなかった。聞けば一人でネウロイに立ち向かったって。それでトラックから飛び出してきたのさ」

 

 そうして疎開地に向かったら、私が倒れているのを見つけたようだ。彼女は私が五体満足なのを見て、ネウロイは倒したのだと確信し、自分の陸戦ストライカー使って私を運び出し、今に至るそうだ。

 

「ありがとな、約束守ってくれて」

 

 アレンスカヤ中尉は前を向いてポツリと呟いた。それに対して私は「当然です」と返し、二人で輸送トラック部隊の後を追う。

 




※AI絵注意

【挿絵表示】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。