リリカルなのはFlourish   作:ビブロス

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戦前の休暇

時の庭園。それは彼女の家であり、″船″であった。古代の遺跡を内包する船は次元の狭間を浮遊し、厳かにその身を佇ませていた。そこには屋敷が存在していた、そしてそこを一人の男が歩いていた。

 

口笛を吹き鳴らす男であった。流行りの歌ではなく、昔の歌のサビの部分を何度も何度も繰り返す。男は歩き、扉を次々と開けていく。

 

「君にとって、命とは弄ぶものかい?それとも尊ぶべきものかい?」

 

独り言である。しかし優しい口調であった。ずんずんと歩く男は地下室へと向かっていた。

 

「僕にとって命とはいくらでもある物と思ってる、しかしその価値は各々によって違う」

 

「価値とは何か?それを問うのも面白いかもしれない、問いとは全ての欲求の起源とも言えるからね」

 

「しかし話の主旨は命の意味を問うている、そして問う、君にね、命とはどういった″価値″を持っているのか?」

 

ズバーン!と最後の扉を開けた時、男は陽気にクルクルと回りながら部屋の中心へと向かった。

 

「命!どうだい?!どう思うね?君は!なぁ!プレシア!」

 

「……どうでもいいわ」

 

部屋の奥には女が椅子に座り、冷めた目線で男を見つめていた。それを機敏に感じ取った男は悲しそうな眼で彼女を見つめた。

 

「しょんぼーりねー、おかしーねー30数年前の君なら『先生教えてー!』って言って、俺に抱き着いて来たのに!あぁ!ショック!」

 

「何年前の話をしてるの…?」

 

「ちっちゃい頃の話さ、気にせず、それで?ジュエルシードは幾つ集まったんだい?」

 

「三つよ、降りてから数日経つと言うのにあの子は……本当に使えない娘…」

 

「んで、帰ってきて鞭打ちかい?人様の教育方針にとやかく言う気は無いし、僕も三人には鞭打ちよりも厳しいことやってるからね、それでもそれは三人が″望んだ″事だからしてるだけだけど、君の娘は″望んで″いるのかな?」

 

「……あの娘の肩を持つのなら、貴方が探せば良い、すぐに見つかるでしょう?助けると言ってきたのは貴方よ?」

 

「なかなかに魅力的な相談だが、止めておくよ、今は二人を鍛える為に遣わせてるだけだからね、最後になってヤバそうなら僕自身が手を貸すよ」

 

「……好きにすれば良いわ」

 

「わかってるねー、好きにするよー僕は、″今まで″ずっとそうしてきたからね、あ、そういえば君の″僕が″作ってあげたデバイスって使ってるの?」

 

「……バリアジャケットが気に入らないから捨てたわ」

 

「アイヤー!なんだよー!見たかったのにー!あ、でも君の娘の使ってるバリアジャケットと少し似てるのは僕に対して何か思い入れの現れ?それなら最強に嬉しいんだけど」

 

「性能が良いから、私の使い魔が似せて作っただけよ」

 

「うーわショックぅ、さて、僕はちょいと彼等の動向を見てくるよ、良い席を陣取ったからね」

 

「……そう」

 

「んで、さぁ、一つ聞くけど、僕達以外にも協力者……いるかい?」

 

「……いないわ」

 

「んじゃ気を付けてね、ジュエルシード狙ってる連中が居るらしいから」

 

男はそれだけを言い残すと魔方陣も展開せずに霞のように消えていった。微かに漂う魔力光を目で追いながら彼女=プレシア・テスタロッサは口を開く。

 

「良かったわね、彼の分身体で、感覚素子が不充分だったから見つからなかっただけよ?」

 

「ホントに怖いですねー!私チビりそうでしたよー!」

 

するりと稲妻を纏いつつ、遺跡に居た目隠れ女が現れた。その身体は機械の装束に包まれ、その背中には銀色に輝く錫杖が存在した。

 

「それで?アーカーシャの剣は起動出来そうなの?」

 

「模造ジュエルシードで実験したところ、理論上は成功です!」

 

「そのおかげで共振反応でジュエルシードがあの街に散らばったってこと、わかってるの?」

 

「だから、集めてるんでしょう?!で、聞くんですけど、貴女の娘、効率悪いから邪魔だったら、こっちで殺しても構いませんか?!」

 

「……好きになさい、あの子は最後にはいらなくなるんだから」

 

「はっはー!了解ですよー!」

 

「でも……、そう簡単にあの子が殺せるかしらね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所は海鳴市街中心部。時は夜8時を回ったところ。男四人と女一人に獣一匹の珍妙な客が焼肉店で網を中心に囲んで座っている。なのは達である。

 

私服に着替えた京介となのははそこで新ためて三人から事情と自己紹介を聞いていた。焼肉しながら。

 

「さて、俺は良いよな?お前らの担任の赤城で、管理局の部隊であるテン=コマンドメンツに所属してる斥候役だ、流、俺の骨付きカルビを喰うんじゃねぇ」

 

「僕は、風上 流、14才です、流で良いですよ、名字で呼ばれるの慣れてないんで面倒なんです、桜萪、ハラミ焼いてください」

 

「俺は櫻井 桜萪な!同じく14な!よろしく!店員さーん!石焼きビビンバ追加ねー!大盛りでー!流!ハラミなんて食ってんじゃねぇ!豚バラ食べろよ!いっぱいあるんだから!」

 

「え、先生って副業ってできなかったような気がするの」

 

「なのは、チクろうぜ校長に」

 

「変な事に知識持った子供だな、お前ら、でも無駄だぜ?そういった類い、幻術や催眠系は俺の得意な分野の一つでな、何とかなるんだよ」

 

赤城はもしゃもしゃとキャベツを頬張りつつ、なのはと京介を一蹴する。そのなのはの膝上からユーノがテーブルへと顔を出す。

 

「それより、何で貴方のような管理局員がこの世界に?」

 

「ユーノ・スクライア、そいつはうちの部隊の特殊性故ってやつさ、管理局の中でもうちの部隊の大元はちょっとばかし『攻性』が強くてな、何かしらの驚異に為りうる魔導的存在を感知した場合、即座に調べに行くのさ、んで俺はその為に来た」

 

「それはジュエルシードの件、だけではないですよね?なのは達に聞く限り、赤城さんは一年前から学校に居ます、一年前にジュエルシードと同じような反応があったのですか?」

 

「反応はそれよりももっと前からあったさ、でも一年前からその反応は増えた上に″さらに″強くなった、それで俺が出張ってきて、見つけたのがこいつら二人の持ってる『シルバーミョルニル』と『イクスアーベント』だ」

 

流と桜萪は待機形態のデバイスを二人へと見せた。流のシルバーミョルニルは銀色の装飾が施された金槌で、桜萪のイクスアーベントは緋色のクリスタルであった。

 

「ま、こいつらとの出会いは割愛ということで、んでユーノ・スクライアお前にはジュエルシードの探索と封印に関して協力を願いたい、こっちは少しばかりジュエルシードに関して知識に乏しいからな」

 

「わかりました」

 

「それでなのはと京介」

 

「俺達も協力だな、俺達のデバイスには封印機能があるからな」

 

「封印なら任せてなの」

 

「いや、″今後一切″この事件には関わるな、キツい言い方だが、『邪魔』だ」

 

嫌な静寂の後、京介は怒りのこもった眼で赤城を見据えた。それを彼は真正面から見つめ返す。相対であった。

 

「なんでだ!」

 

「お前達が″弱い″からだ、あの三人にお前達二人は手も足も出なかった、その事実を認識してるか?」

 

「次は勝つ!絶対だ!」

 

「京介、二度目のキツい言い方をするが、お前はこの事件に関係することを″スポーツ″か何かと勘違いしてないか?入念な訓練期間と経験がモノを言う世界が魔導師の戦いだ、才能も必要だが、それ以上に必要なのが経験と知識、それがお前達二人にあるか?」

 

「だったら俺達は訓練する!それでもか!」

 

「時間がない、その一言に尽きる、こいつら二人、流と桜萪は管理局に入ることを確約しているし、この一年間俺がみっちり経験と知識を叩き込んだ、お前達にそれを凌駕出来る何かしらの″要因″があるか?」

 

「……っ」

 

「言い詰まったな?それがお前達の″現状″を表すものだ、もし、魔導的な物に関わりたいのなら、この事件が終わった後にでも、俺が教える、それが教師としての仕事の一部だからな」

 

「わかったなの、私達二人はこの事件には関わらないの」

 

「なのは!お前!」

 

「命を落とすかもしれない、そう、先生の眼は言ってるの、その覚悟が私達には無い、私はあの時の一撃を貰ってそれがわかったの、あの娘は″必死″なの、私達はあの″必死″には敵わない」

 

「必死ってお前……」

 

「京介君は″死ぬ気″で何事かを為そうとする人を止められるだけの力があるの?私には無いよ?必死ってそういうことなの」

 

「……」

 

「なのは……」

 

「ユーノ君は気にしなくても良いの、だから先生、ユーノ君は今まで通りうちで暮らしてても良い?」

 

「そいつはお前達二人が決める事だ、俺が要求してるのは事件への無関与だ」

 

「なら、ユーノ君はうちに居たままで良いの、わかった?」

 

「良いのかい?本当に?」

 

「良いの、でもやっぱり弱いとか言われて腹立つから炙るの」

 

「ちょ!なのは!そのトングはなんだい!?トングで何を……やっぱりか!やっぱりだね!僕を掴むんだね!金網熱い!熱い!熱い!しゅごいのぉおおおおおお!!!!!」

 

「ユーノぉっっ!!」

 

「性的なウインナーがwww焼かれてるwwwワロスwww」

 

「すげぇ!流が腹かかえて笑ってるぜ!先生!見ろ!」

 

「うわ、珍しい、すげぇ」

 

阿鼻叫喚の地獄絵図で大暴れするなのは達、彼女達が店から追い出されたのはその20分ほど後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴市中心街、そこの高級マンションが建ち並ぶ中の最も高額なマンションの屋上。芝生が敷き詰められたそこで、執事服の少年が律儀に高そうな肉を金網の上でひっくり返していた。BBQである。

 

そこに茜色の髪をした筋肉質の女性が近付いてくる、その頭には耳がついていた、獣の耳が。その腕の中には追加の肉が抱えられている。

 

「トヨヒサー、追加の肉持ってきてあげたよ」

 

「感謝で御座るよ、ワンコ殿、それで?金髪殿の怪我はどうで御座る?」

 

「ワンコ殿はやめて、あたしはアルフだよ?たいしたことなかったよ、当たる直前でフェイトが無意識に完全な直撃を防いでたのさ、もうちょいでこっちに来るよ」

 

「天賦の才で御座るな、見事で御座る」

 

「そりゃそうさ、フェイトだもん」

 

「金髪殿アゲアゲで御座るな」

 

トヨヒサがニヤつく。それを見たアルフはほんの少し、苦い顔をトヨヒサに見せた。

 

「あたしだけでもフェイトのこと誉めてあげたいから……ね」

 

「金髪殿の御母堂は誉めないので御座るか?」

 

「あの人は自分のやる事にしか興味なさそうだからさ」

 

「ほう、子煩悩な感じがしたのに意外で御座るな」

 

うぬぬ、とトヨヒサは腕を組みつつ頭を捻る。

 

「子煩悩?あの人が?トヨヒサは見る目が無いね」

 

「自分、酷いこと言われたで御座る、金髪殿に報告で御座る」

 

「それはやめな、マジであたしが怒られる」

 

「その割りには、ニヤついてるで御座る」

 

「そうかい?フェイトは怒ると恐いんだよ?可愛いんだけどね」

 

「……自分も見たいで御座るなぁ、怒った金髪殿、かわいい顔でぷりぷりしてるんで御座ろうなぁ…」

 

ほぅ、とアルフは若干とろんとした表情のトヨヒサを見ると、即座にニヤニヤしだした。

 

「………あんた、フェイトのこと好きなの?」

 

「くぁwせdrftgyふじこlpござりゅ!」

 

「言葉喋りな、何言ってるかわからない」

 

「す!好きなんてそんなことないで御座るよ!いや、確かにマジで好みで御座るし、御母堂がマジ巨乳だからでっかくなったらおんなじぐらいでかくなるんだろうなぁ!とか思ってるけど好きなんてそんな!そんな!」

 

「……身体目当てか…最低」

 

「身体目当てじゃないで御座る!好きじゃないけどピュアにラブしてるで御座るよ!」

 

「好きじゃないのにピュアにラブって………、ちなみに私のスタイルってフェイトの成長した姿を予測した数値で構成されてたりするんだけど?」

 

「ひゃっはぁっ!やったぁっ!でけぇ!でけぇ!で御座るよ!埋もれてぇ!」

 

「………あんた、正直だねぇ」

 

「あー!違いますよ!違うんで御座るですますですよ!金髪殿なんてだーい嫌いで御座る!大嫌い!」

 

「トヨヒサは私のこと嫌いなの?」

 

「そう!嫌いで御座っ…………!……んっ?」

 

くるりと振り替えると笑いをこらえてプルプルしているアルフの横にほんのり悲しそうな眼をしたフェイトが追加の肉を持ってトヨヒサの方を見つめていた。ぶっちゃけフェイトの事が大好きなトヨヒサには絶望である。

 

「おほぉーっ!金髪殿ぉっぉー!!これは!ちが!ちょ!」

 

「トヨヒサさん、此処にお肉置いときますね」

 

「敬語!此処に来て敬語!そんな!突き放さないで下さいで御座る!!」

 

「コイツ、フェイトのこと好きらしいよー、どうなのさフェイトー?」

 

「速攻とんでもカミングアウトで御座るなワンコ殿!話的にはスッゴい引っ張る所で御座るのに!」

 

「え、困る…」

 

ゴシャァァァ……!、とトヨヒサは膝を着く。それを不思議そうに見つめるフェイトと『やらかしたー』といった顔のアルフであった。

 

そこにこんもりと盛った切り野菜を抱えたツバキが上がってきた。いきなりこの場面を見せつけられたツバキは困惑顔で

 

「え?トヨヒサ、肉でも焦がしたの?まだいっぱいあるよ?それともお腹すいたの?」

 

全くの検討外れであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次元の狭間。宇宙空間に似たその空間に一隻の次元航行艦がどっしりと構えていた。その艦の名前は″アースラ″、管理局所属の艦である。

 

その内部の転送魔法用の補助機械に二人の男が立っていた。それを迎え入れる一人の少年が仁王立ちで待っていた。

 

「テン=コマンドメンツのレオ・エルフォード三佐とセイト・アスミック少佐ですね、執務官のクロノ・ハラウオンです、長旅ご苦労様です」

 

「ごふろう」

 

「レオ、物食いながら喋るな、てかなんだよ、何食べてる?」

 

「乳酸菌飲料ピザ、ゴルゴンゾーラソースを添えて、だ」

 

「お高めか、お高めだな、主婦が自分に御褒美とか言ってる″おふらんす″って奴だな」

 

「吐瀉物みたいな味がする」

 

「またか、やめろ、また吐くぞ、というか吐きたいのかお前は」

 

「気にするな、しかし、クロノ執務官、我々二人が地上に降りる事はリンディ提督の耳に入っているのか?此処に飛ばしてもらうまで相当ゴタついたが?」

 

「ゴタついた?私は提督にお話を通しましたし、提督も本部の方には話を通してるとのことでしたが?」

 

「こっちに飛ばす手続きに横槍が入って二日ほど伸びた、最後はレオが直接出向いてやっとだった、横槍もかなり変な所から出ててな」

 

「…?どこからです?」

 

「遺失物管理部だ、相当期間名目だけの部署らしい、お飾りの部署だ」

 

「そうですか、調べます、しかし、うちの母と似たようなセンスですね、レオ三佐は」

 

「喜んで良いのか?それは?」

 

「緑茶に砂糖とクリーム入れて飲んでます」

 

「旨そうじゃないか、今度試そう」

 

「やめろ、お前の血糖値上がるぞ」

 

「気にしない、それよりこのまま地球に降りる、向こうに俺の部下の一人が降りてる、そこの視察も込みだ、良いな?」

 

「了解しました、降ろす準備をします」

 

「さぁ、ケーキ屋だ、血糖値上げようぜ」

 

「目的が漏れとる漏れとる」

 

「そうだ、レオ三佐を海鳴市のケーキ屋に降ろせ、そうだ、一番美味しい所だ良いな」

 

「大丈夫か、この艦は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、焼肉でのユーノ全焼事件から2週間。赤城達がそこそこ順調にジュエルシードを集めてる事を包帯グルグル巻きのユーノから聞きつつなのはと京介は翠屋の店番をしていた。

 

京介がなのはの父親にクリームぶちまけた件でブチ回されてるのを横目に、なのはは店のマスコットと化したユーノを弄る。

 

「さー、次は柑橘類の皮の汁をかけるねー」

 

「やめてなのは!やめて!火傷に染みるからマジでやめっ…ごがぁああああああああっっ!!!!!」

 

「はー、ユーノ君弄るのあきたー」

 

「飽きる!飽きるだと…!?ここまで痛め付けた挙げ句に飽きるなどと…!ご褒美か……!」

 

「ユーノ君がえらいことになってきたの」

 

「そういえば、最近、なのはと京介は何かやってる?」

 

「びっくりするぐらい、唐突に話変わったの」

 

「だって、ホントにジュエルシードに関わらないからさ、赤城さんは少ししたらあいつら黙って何かやらかすぞ、って言ってたよ」

 

「信用ないの、私はもうジュエルシードに関わらないって言ったのに、京介君も同意見だよ?」

 

「へー、案外素直なんだね、なのはと京介って」

 

「私は言わずもがなだけど、京介君は喋り方とか雰囲気とか、あんな感じだけど、ホントは良い子だよ?」

 

「胡散臭い、特になのは」

 

「はい、追加どーん」

 

「かぼす!そうきたか!かぼすときたか!ぬあぁああああああ!!!!!にょほおおおおおお!!!!」

 

「実は保育園の時に京介君の両親って死んじゃったの、玉突き事故に巻き込まれてね、だから京介君は今は叔父さんの家で住んでるの」

 

「問答無用で話が進むか……、許せる!」

 

「許せるんだ、実は私もその事故の時にうちのお父さんが怪我しちゃってね、少しの間、私と京介君って病院で会ってたりしたの、向こうはすぐにお父さんお母さんが死んじゃって2週間ぐらいで会わなくなったけどね」

 

「ん、それじゃ幼馴染みたいな感じかな?」

 

「そうでもないよ、まともに話すようになったのは最近だもん、それに京介君がこっちに越して来たのだって一年生の頃だし、最初の頃の京介君ってすんごく暗くてピリピリしてたな、私少し怖かったもん」

 

「信じられないね、なのはが怖がるなんて」

 

「マムシ酒につけてやるの」

 

「そんな微妙に名産物に浸けられるだなんて!五臓六腑に染み渡るよ!」

 

「飲む気か、スピリタスにしてやる、それでね、京介が一年生の後半頃かな?上級生達に絡まれて体育館裏に連れてかれたの、みんなでヤバイねー、って言ってたら、京介君、一人で全員病院送りにしちゃった」

 

「んなアホな、なのはの仕業じゃなくて?」

 

「私のイメージってなんなの?」

 

「チタンで出来た金剛力士像みたいな感じかな?」

 

「おとうさーん、ハンドミキサー借りていいー?」

 

「やめて!そんなの!どこ突っ込んでもしゅごくなっちゃう!」

 

ハンドミキサーを振りかぶるなのはと尻をつき出すユーノだったが、店の玄関がカランカランと開けられた瞬間に二人揃って即座に営業スマイルを作り

 

「こんにちは、スイーツショップ翠屋にようこそ」

 

「こんにちは!って、赤城さんじゃないですか、桜萪さん達も一緒ですか」

 

「お前ら…ハンドミキサー持ってなにやってんだ、てかユーノお前喋って良いのかよ」

 

「腹話術でなのはが喋ってるという設定のマスコットです、あれ、声が普通に来るよ、みたいな?」

 

「普通に来てんじゃねーか、ていうか、高町、店のはしっこ使って良いか?五人くらいになるんだけど」

 

「いいですよー、机並べますねー」

 

「わりぃな、うちの上司が此処を待ち合わせ場所に決めやがったんだ、それで俺の専属部下扱いの二人の紹介もすることになってな」

 

「あ、それで桜萪さんと流さん、微妙にフォーマルな格好なんですね、就活かと思いました」

 

赤城の後ろでネクタイを締める桜萪と暑そうに上着を脱ぐ流が見てとれた。二人ともこういった格好に未だ慣れていない様子である。

 

「就活って、まだ早いよなのはちゃん」

 

「初任給手取りで30万貰わないと働きませんよ、僕は」

 

「流、管理局はスカウトだと初任給30万超えるぞ、俺もそうだったからな」

 

「先生、いえ、先生様、何か上司の方にケーキを買いますので、何か良いものを教えて頂けませんか?」

 

「目の色変えやがって、あの人チーズケーキ喰いたいって言ってたな」

 

「なのはちゃん、チーズケーキワンホールよろしく」

 

「買いすぎだろ、流」

 

「流石にワンホールはねぇだ……」

 

「チーズケーキワンホールだと?評価しよう、風上 流君」

 

カランカランとドアを開け、頭だけ出した男が一人居た。流れるような黒髪短髪、若干幼い顔付き、紺色のスーツを着た青年と少年の間のような男が居た。その男は能面のような顔でそそくさととテーブルに腰掛けた。そして懐から拳銃でも抜き出すような鋭い動きでフォークを取り出し、さも当然のような顔で

 

「まずはチーズケーキだ、話はそれからだ」

 

「変なのが来たの」

 




次回は戦闘だけです、俗に言うリベンジマッチ。お楽しみに。
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