リリカルなのはFlourish   作:ビブロス

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やり返す二人

「あれが、先生の上司なの?」

 

ガツガツとチーズケーキワンホールを胃袋の中へと収納していく男をなのはは指差した。指先を下げるように赤城はなのはの指を遮りつつ、口を開いた。

 

「そうだ、俺より凄い階級上だ、しかし歳は若い、まぁ、19歳だけどな」

 

「アカギ、俺は17だ、間違えるな」

 

「イントネーションおかしいですよ、赤城です、赤城」

 

「認識出来るだろう?自分だと、なら良いだろう?しかしこのチーズケーキ美味いな」

 

「ありがとうなの」

 

「君が作ったのかい?えー、名前は?」

 

「高町なのはです、よろしくおねがいします!作ったのは両親です」

 

「元気だ、元気なのは良いことだ、セイトなんか俺が走ったらすぐに見失ったんだ、身体が怠けてる証拠だ」

 

「あー、それでセイトさん居ないんですね、また怒られますよ」

 

「ふふ、奴は俺を怒る以外に楽しみがない男だ、好きにしてやれ」

 

ふふん、と笑うレオを見ながらなのははお茶を用意しようとクルリと振り返ると頭にたんこぶを作った京介が興味ありげに顔を出していた。

 

「ん、どうしたの?京介君?レオさんのこと気になるの?」

 

「いや、何か変な音がしたなーって思ってさ、なのはは聞こえなかったか?」

 

「音?」

 

「コーン、て音だよ、まぁ、聞き間違えなら良いよ」

 

「ふーん、あ、お茶を取ってくれる?レオさんに出すから」

 

「了解、しかし、何を話してんだか」

 

くいっと京介が顎で指し示す方を見ると、いつの間にか桜萪と流がレオの前に座っていた。

 

真面目な話がこちらへ聞こえてくる。

 

「櫻井桜萪です、両親は既に他界してます、管理局への就職が決まるなら喜んでそちらの道に行きたいと思います」

 

「風上 流、両親顕在ですが、お金を頂けるなら喜んで」

 

「一人真っ当だか、一人かなり正直だな、アカギ?」

 

「最近の中学生なんてこんなもんです、桜萪は然り、流の所も俺が話を通しましたが、放任主義なのでかまわないそうです」

 

「上々、ロストロギアデバイスを使用出来る逸材なんてそこらにやるほど俺は馬鹿ではない、しかしお人好しでもない、今回のアカギが関わっている事件の結果を見て決めることにする、もう首は突っ込んでるのだろう?」

 

「もちろん、とっととあいつらを捕まえます、しかし半分ほど居なくなった俺達の部隊って大丈夫なのですか?」

 

「やられたのはお偉い方のコネで入った奴や純粋培養のエリートの奴ばかりだ、うちでは役に立たん」

 

「なら、突っ込みが入ってくるのでは?″お偉い方″の方から」

 

「バラバラにされた隊員の写真を腐るほど見せた後に、そちらでやりますか?と言った所、会議室が吐瀉物だらけになってな、そのままうちが続行して事件担当だ、ついでにアースラの所もこの事件にかち合いそうだ」

 

「アースラ?リンディ提督ですか?」

 

「そうだ、あそこの懐刀の息子も参戦するそうだ、思いの外、早めにこの事件は終息するかもな」

 

ニヤニヤとしながらレオはチーズケーキを頬張る、既に9割が無くなっていた。それを見ながら赤城は懐から書類を出し、チーズケーキの横に置いた。

 

「なんだ?」

 

「今回のジュエルシードに関わった子供五人です、そこに居る二人、京介となのはは俺が報告した通り、これは追加です」

 

「ほう、女の子二人の素性は全くわからずか、管理局のデータベースには乗ってなかったか?」

 

「この金髪美少女は全く、掠りもせずです、赤髪美少女は閲覧禁止が出ました、登録はされてますね、凄く厄介な所に」

 

「男の方は大当たりか、トヨヒサ・バンブルスロート、辺境世界の出身か、ん?魔導師資質無しと書かれているが、こいつはしっかりとデバイスを使っていたんだろう?」

 

「詳しい所は事務の方に調べてもらっています、正直、この三人の中ではこいつが一番厄介ですね、手合わせしてわかりましたが、下手をすると貴方より強いかもしれません」

 

「ほう、その根拠は?」

 

「先日の戦闘、俺の攻撃を正確に″見切って″いた、間一髪で避けたんじゃなかった」

 

「お前の攻撃を?″ウィルオーウィスプ″のアカギがか?」

 

「昔の話です、とはいえ注意してください、写真では顔だけですが、背丈は130㎝程度、黒髪、執事服、センスのある眼鏡をかけています、あと、語尾が″御座る″でした」

 

「……サムライ?それともニンジャ?」

 

「さぁ、ニホンカブレでしょ」

 

さぁ、といった顔で二人は不思議そうな顔で向き合っていた、それをただただ見つめるだけの流と桜萪だった。

 

それを尻目になのははお茶を注ぐとお盆に載せて運ぼうとした瞬間だった。カランカランと再び入り口が開いた。

 

″セイト″と呼ばれた人が来るものだと思っていたが、予想外にそれは見たことのある顔と格好だった。

 

黒髪/眼鏡/執事服/130㎝程度の身長/「チーズケーキ奢るの自分で″御座る″かぁ?マジで?」=御座る口調。

 

トヨヒサ・バンブルスロートと言われた少年がそこに居た、その後ろに″私″が、″京介″が目的とした、″少女達″も居た。

 

トヨヒサは後ろに向けて爽やかな笑顔を飛ばした後に、なのは達が居る正面を向いた、それと同時に後ろのツバキとフェイトも正面を向く。

 

目があった、呼吸が止まった。

 

止まる時間。

 

シーンとなる店内。

 

誰かがカチャンと食器に触れた音/即座に展開された結界=ユーノ/「捕まえろ」=赤城の大声/しかし、それよりも二人が大きな声で叫んでいた=なのはと京介。

 

「「ここであったが百年めぇーっっ!!!!!」」

 

二人の魔力による閃光=デバイス構築とバリアジャケットの着装/遅れてフェイトとツバキのデバイス展開/しかしその途中をなのは達は問答無用で体当たりする。

 

まさしく不意打ちであった。

 

「お前らなにやってんだコラぁー!」/赤城の声だけが虚しく響いていた。

 

 

 

京介とツバキは揉み合いながら結界により基底現実とは無干渉となったビルをぶち抜きつつ、大通りへと飛び出した。瓦礫が降り頻る中、二人は相対する。

 

「暴力的!それ、最悪です!

 

「うるせぇ!」

 

初手は京介である、進化したボルトアクセルは彼をとんでもないスピードでツバキへ向けて加速させた。真正面からの攻撃、ツバキは彼が全く成長してないことを確信した、″先手を取れば勝てると思ってる″、舌舐めずり出来る相手だ。

 

ツバキのデバイスである、アナザードライシュルツラーゲン(亜種型三鈷柄付剣)は″ロストロギア″であり、三種の形態を持っている。″小技″を繰り出す形態が現在の手甲形態である。

 

『驕りである!ふざけおる!』

 

「また砕く!それ、振り出しです!」

 

ツバキは突っ込んでくる京介に対して迎撃の構えをとった。正拳突きである。それに対して京介は真正面から斬り込んだ。

 

左利き故の足さばき、先行する右足、踏み込んだ地面が陥没。直後凄まじい電流と共に紅い稲妻の刃がツバキの正面へと向かった。

 

右利き故のカウンター、コンマ以下のタイミングを合わせ、右足で地面を抉り、その反作用を拳に乗せた。

 

しかし、刃は拳とは激突せずにツバキの正面を″素通り″した。空振りに終わる拳、感触の無い一瞬にツバキは戸惑った。

 

しかしその直後ツバキの顔面へとさらに″加速した″稲妻の刃が叩き込まれた。

 

『驕りは我等か』

 

ズドム!という爆発と共に、稲妻が周辺に飛び散り、地面を打ち砕く。京介の刃は的確にツバキの顔面へと届くはずであったが、それを″四つの刃″が交差しつつ防いでいた。

 

「アナザードライっ!勝手に…!」

 

『眼を開くべし、こやつは出来るようになっておる、まともに相対すべし』

 

「なっ!?てめぇ!三味線引いてやがったのかっ!最悪だ!」

 

「弱いくせに!それ!当たり前です!」

 

「うるせぇ!」

 

京介は思い切りツバキの腹部にヤクザキックをかます。が、しかし、やはりと言うべきか、同じ様に考えていたツバキもヤクザキックをかまし、二人揃って後方にブッ飛んだ。

 

しかし二人は止まらない。

 

「…ち!仕方ないですね!それ!アナザードライ!カノーネクロッソ!」

 

「リブラ!ボルトスマッシャー!」

 

『承知!』

 

『了解』

 

直後、赤色系の魔力が真正面からぶつかった。その衝撃は周辺の建築物の窓ガラスを破砕し、アスファルトをこれでもかと言うくらいにひっぺがしていた。

 

その衝撃と爆発の中へと突っ込む影が二つあった。その二つは当然ながら、京介とツバキである。

 

二人は互いに知っていた。数少ない相対であるが、二人は互いに理解していた。己の相手がどんな種類の人間か、よく、知っていた。

 

煙を突き破り、互いが視認できる距離に入った時、京介はリブラを肩に構え、ツバキは4つの剣を内包した形態へと変化させた状態で構えていた。

 

「「潰す!!」」

 

京介のリブラはボルティックブレード状態である。対してツバキの亜種型三鈷柄付剣は三つの形態における斬撃形態とも呼ばれることのある『クアトロスウォルド』形態である。

 

手甲の爪の部位が収納され、替わりに手首周辺のパーツから直刀と呼ばれる直線的な刀が二つ飛び出していた、それが二つで刀は四本である。

 

「ブロッサムアクセル!」

 

『腕に集束させる!踏ん張れ!』

 

加速術式がツバキの肘へと集束し、腕だけの速度を加速させた。

 

唸るような文字通りのアッパー″カット″。京介はリブラを咄嗟に盾とした、弾ける火花と共に京介は後方へと弾かれた。踏ん張る足のおかげで吹っ飛ばされることは無かったが、攻撃の始まりを″潰された″。

 

強引にリズムを掴め…!京介は踏ん張る足を軸に″身体ごと″回転し、その勢いに乗せ、リブラを真横に振るう。

 

ツバキは難なくそれを屈んで回避、京介の足を払うように反対の腕を振るった。

 

絶好のタイミングによる斬撃であったが、驚くべきことに京介はそれを避けたのだ。しかも巨大なリブラの重さに振り回された形で身体を浮き上がらせたことによる回避であった。

 

面妖な!しかしラッキーで回避出来ただけ、次は無い。そうツバキは一瞬だけ思った。しかし京介の刃は間断無く、再びツバキへと向かったのだ。

 

京介は空中で身体を再び回転させ、その勢いにリブラを乗せたのだ。″身体全てを使って振るう剣″である。数週間程度で会得出来るような技術ではないはず、ツバキは現実に対し、歯噛みした。直後、刃はツバキの亜種型三鈷柄付剣の片方を弾きあげていた。

 

 

 

 

京介はツバキとのリベンジマッチ、それならばなのはもフェイトとのリベンジマッチを行うのも道理である。

 

二人の特訓は″その為″に行っていたのだから。あの目の″意味″を知るために、かつて同族であった二人があの目をした奴を放っておけないから。

 

しかし、相手は武器を持っている、力づくで押し通ってくる。ならば相対するべきだ、力を持って会話するべきだ。

 

なのははそう思っている。

 

「ジュエルシードは危険なものだってわかってるの?君は!」

 

「……」

 

返答は無い、ならば″喋るまで″会話するまでだ。ビルの間を高速で駆け抜けつつレイジングハートをカノンモードへと移行する。

 

『このままでの命中率は2割以下ですよ?』

 

「私、最初から当てるつもりなんてないの」

 

『戦術プランGですね、魔力配分を調整、術式準備』

 

「よろしく!開幕ぶっぱ!いくよ!」

 

『了解』

 

レイジングハートを構えるなのは、その目にはマーカーに捉えられたフェイトの姿がビルを透過して写っていた。

 

「ディバインバスター!いくよ!」

 

『どうぞ』

 

魔力がレイジングハートの先端へと集約し、術式によりその結合を変遷させ、驚異の砲撃魔法へと変化させ、解き放った。しかも今回はなのは自身が術式の構造を理解し、それに合わせた魔力を出している、威力はそれに見合った物であった。

 

飛来する砲撃魔法を先に感知したのはバルディッシュではなく、フェイトであった。獣染みた感性はフェイトを急速に真横へと移動させる。

 

直後、桜色の砲撃が真横を通過した。同時にフェイトのバリアジャケットを一部融解させていた。

 

「…!」

 

『掠りもしてないぞ…!なんて威力だ…、これより薄かったら撃墜されていた!』

 

「近付くよ!」

 

『砲撃する相手に近接、流石に肝が座ってる、お嬢!』

 

「牽制いれて!」

 

『フォトンランサー!時間差で撃つぞ!』

 

フェイトの周囲に展開される金色の槍は凄まじい速度でなのは達へと向けて放たれた。それを正確に視認していたなのはは冷静に砲身を槍が飛来してくる方向に向ける。

 

『亜種型ディバインシューター、Bをセット、タイミングはこちらが行います、回避に専念してください』

 

「なら加速なの!」

 

『フライヤーフィン展開、どうぞ』

 

飛来してくる槍が目前に迫る中、なのはは冷静に真上へと短距離加速を実施した。ものの見事に槍はなのはの真下を通過し、後ろのビルへと着弾し窓ガラスをまとめてぶち破る。

 

そのすぐ後に後続の金色の槍が飛来する。なのははセットされていたディバインシューターを発射した。緩やかなカーブを描きつつ桜色の射撃魔法は槍へと直撃する。

 

爆発/ビルの窓ガラスが吹き飛び一面にガラス片の雨が降る/爆煙、その中から数発の桜色の″十字光″がフェイトへと向かう。

 

「誘爆してない?!」

 

『弾頭を防御術式で包んでいる、AAクラスの技術だ、こやつ、どれ程の才の持ち主か!』

 

「それでも…!」

 

『ならば避けろ!あの十字光は″炸裂″するぞ!突き進め!』

 

「…うん!」

 

ギャン!とさらに加速しつつ、バルディッシュを鎌へと変型させる。飛来する十字光へと真正面から突っ込んでいく。

 

 

 

 

トヨヒサはすぐさま、外へと駆け出した。同時に窓ガラスをぶち破りながら赤城がトヨヒサへと突貫する。デバイスを展開した赤城は加速術式を起動し、瞬時にトヨヒサへと肉薄した。

 

「逃がさん…!」

 

「早いでござるな!」

 

赤城は身体を落としつつ、踏み込んだ足に力を込め、左拳を振り抜いた。吸い込まれるように拳はトヨヒサの腹部へと直撃した。直後、その衝撃でトヨヒサの足元のアスファルトが砕け散る。

 

確実な直撃だった、確実にトヨヒサに拳は届いていた。しかし、拳を直撃させた赤城自身はその″違和感″に気付いた。

 

それもそのはずである、足を止めたものの、トヨヒサは苦悶の表情ひとつ見せずに涼しい顔でデバイスである大剣を引き抜いていたのだ。

 

「なっ……!?」

 

「良い直撃でござるよ、それが自分に効けばの話でござるがな」

 

「なら、もっとデカイのを当てますね、桜萪」

 

「足止めなら任せな!三番目くらいに得意だ!」

 

直後、トヨヒサと赤城の間に桜萪の砲撃魔法が叩き込まれた。感の良い両者は当たる寸前で後方に引いていた。衝撃と爆炎の中から二人が飛び出す。

 

「厄介な相手を三人もでござるか、骨が折れるでござるよ」

 

「骨程度で済ますかよ、半年は入院させてやる!」

 

桜萪の真上からの狙撃、上空から精密にトヨヒサの足を狙っての3連射撃が敢行される。トヨヒサはくるりと側転、足元に大穴が三つほど開いた。

 

「あぶないでござるよ」

 

「あぶねぇのはこっからだ!」

 

開いた大穴から突如として氷の刺がトヨヒサへ向けて″生えた″のだ。回避出来るタイミングではなかったが、トヨヒサはギリギリで自らの大剣により氷の切っ先を弾いた。

 

そしてそのまま切っ先の方向、空中へと″弾かれた″。

 

「弾き飛ばされたら逃げられねぇだろ?」

 

″ジャックポッド!″=桜萪はニヤリとした表情で引き金を引く/対してトヨヒサも″ニヤリ″と笑う=不敵ではなく喜びによる微笑みであった。

 

「真っ正直過ぎて、″見えやすい″で御座る」

 

トヨヒサへと飛来する超音速の氷の弾頭は″ヒョイっ″という感じに真横からトヨヒサにより軽々とキャッチされていた。

 

弾丸を素手で掴み取ったのだ、尋常ならざることだった。それは桜萪でさえも驚愕するほどだ。

 

「なっ…!?はぁ?!」

 

「加速が足んないで御座るよ、エルキドゥ」

 

『かかか、伴侶も意地が悪い、イグゼクスブースト』

 

瞬時に銀色の魔方陣がトヨヒサの前方へと何重にも展開され、それを包むように幾何学的な魔力光が螺旋状に纏われていく。

 

「″ジャックポッド(大当り)″で御座る」

 

トヨヒサは無造作に掴んだ氷の弾丸を親指で弾く。瞬間、目映い閃光が瞬き、同時に桜萪が結界内の端に立っていたビルへと衝突していた。

 

「氷の弾丸で御座るからなぁ、途中で溶けてなくなったで御座るなぁ」

 

「では桜萪は衝撃波だけで、飛んでったのですね、お笑い種です」

 

トヨヒサの胸部へと蒼白い光のラインが当たる、衝撃は無く、その光のラインの根元へと視線を向ける。

 

空中に浮いた流、その周りにある四つのビルへとそのラインは接続されていた。まるで″通り道″のように。

 

『魅せるぜ大技!ドンドーン!』

 

「軌跡を描け、グラビティライン」

 

直後、四つのビルが真上に向けて″落ちる″。

 

砕ける地盤、鉄筋コンクリートがぶちぶちと音を立てて引き千切れる、そして支えを無くしたビルはトヨヒサへと向けて一直線で真横に″落下″する。

 

『重力魔法、ここまで自在なのは見たことがないのぅ、見事なり』

 

「無駄口は叩かないで御座るよ、久々に″書き換える″、邪魔しないでくれで御座る」

 

ビルがトヨヒサへと直撃する最中、彼は悠長に人指し指を突き出す、全盲の人間が点字に触れるようなしっかりとした手付きだった。

 

「″曲がれ″」

 

直後、光のラインはトヨヒサを外れ、明後日の方向へと進み、四つのビルは彼を避け、周囲のビルへと突っ込んでいく。

 

瓦礫が舞う中、トヨヒサは悠然と流に向けて歩いてくる。

 

「……なに?」

 

『俺様の技が!なんだ?!何した!?』

 

「惜しいで御座るよ、ちっと早くしないと自分には当たらんで御座る」

 

『嘘つけ伴侶、普通に避けたであろう?』

 

「いや、避けられないさ、あれはそういう類いで御座る」

 

先程の桜萪を撃墜した魔法が展開される、今度はそのなかへとトヨヒサが入っていく。

 

直後、500m以上離れた流の目の前にトヨヒサが立っている。目と鼻の先程の距離であった。

 

『何っ!?』

 

「…!」

 

「しかし近接は苦手で御座るか?こんなところまで自分を入れてはいけんで御座るよ」

 

トヨヒサの左拳が流の鳩尾へと深く食い込む/炸裂するアスファルト/鉄板を銃弾でぶち抜いたような音が響き渡る。

 

流は殴られた勢いのままビルを三つほどぶち抜いて停止した。

 

「二人目」

 

「それじゃあ俺がラストってかぁ?えぇ?」

 

真横からの打撃である。トヨヒサはエルキドゥによりそれを防ぐ、しかし次は″反対側″の方から打撃=拳が襲ってきた。

 

それを間一髪で避けるトヨヒサだが、″赤城″はそれだけでは済まさない、二人も教え子を潰されれば当然である。

 

″最後″までやる、そう決めていた。

 

「″ブルーフランム″10秒間限定解放!」

 

『術式解凍!制御開始なのです!』

 

「『ウィルオーウィスプ!!!』」

 

ブォン!という音がトヨヒサの耳に入った直後、蒼白い炎と共に拳が顔面に向けて″三発″もかっ飛んで来た。

 

普通に考えて腕は二本、拳は二個、ならばそれを上回っている分は幻術。

 

「しかしそうではないで御座るな」

 

三発の拳はトヨヒサによる手刀の一撃により軌道をずらされ、顔面を掠めた程度で終わる。

 

赤城の顰めっ面が曇る。余裕寂々で奥の手の一つを潰されればそうもなる。しかも手刀は思い切り赤城の喉元ギリギリで止まっていた、正しくは赤城のウィルオーウィスプによって止めているものだ。

 

奥の手の二つ目まで知られた。

 

「速度の超過により時の流れまでも干渉する、それにその術式の時の干渉によって一時的に貴方は基底現実から逸脱し、こちらからの攻撃を喰らわない、ということで御座るな」

 

「てめぇ…!」

 

「自分の眼は少々″特別″で御座る、その程度の裏など容易く見透すで御座るよ、その術式が相当な負担ってことも承知で御座る、ほら、″二秒ほど力が抜ける″んで御座ろう?」

 

折れる赤城の膝、トヨヒサはその喉元へと突き付けた手刀を再び握り拳へと変える。

 

「三人目」

 

トヨヒサの拳が赤城の顔面へと叩き込まれ、彼はビルの壁面へと突き抜けていった。それをトヨヒサは涼しい顔で見つめた。しかしすぐに振り返り、自分の仲間二人の方向を″見透かした″。

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