リリカルなのはFlourish   作:ビブロス

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覚悟による犠牲

「派手にやる、アカギもやられれば俺が出るのが道理だが……」

 

予想外に大きいチーズケーキとにらめっこしつつ、ケーキへとフォークを突き刺す。思いの外美味しく残すに残せないのだ。

 

残すのは御法度、そうレオ・エルフォードは心に決めている、食事をいつも残していた″アイツ″のようにはなりたくないから。

 

「しかし美味い、もって帰ろうか」

 

「レオぉ!お前!このお前!」

 

「セイトか、どうした息を荒げて?」

 

バリバリにガラスが破けた窓から覗き込む白衣の男が居た。セイト・アスミックである。酷く汗をかいて息切れしてるのは走って来たからだろう、10キロほどの地点で置いて来たのを思い出す。

 

「何か飲むか?」

 

「この非常時に何言ってる!ちなみに何がある?!」

 

「コーラかな、さっき買ったのがある」

 

「それくれ!後、この結界は誰が張った?!」

 

「結界?あの報告にあった卑猥な形をした獣だ、それがどうした?」

 

「そいつの結界は″大丈夫か?″」

 

「……何だ?」

 

「此処の上空でミッド式とは違う転移反応があった、後数十秒で此処に″何か″が来るぞ」

 

自分に仕事が回ってきた、そう思ったレオは腰を上げることにした。膝を思いきりぶつけた。

 

 

 

 

 

 

多くの者にとって、劣勢とは忌むべきことである。しかしツバキ・カーミラにとっては違う、違うのだ。

 

何度かの鍔競り合い、火花が顔面に当たるのを気にせずに踏み込んで亜種型三鈷柄付剣を振り抜く。

 

京介の刃はそれを受け流し、再び予想外の方向から刃を帰してくる。

 

その刃に強かにバリアジャケットを刻まれつつも、ツバキは歩みを止めずに亜種型三鈷柄付剣を振るうのを止めなかった。

 

「弱いな」

 

「…?それ、何です?」

 

「てめぇが弱いっていってんだよ、くそ女」

 

その言葉に対して言葉を返せずにいたツバキの顔面へと京介の握り拳が直撃した。いきなりの素手の攻撃に対応出来なかったのだ。

 

揉んどりうってツバキは真後ろへとぶっ飛び、ビルの壁面へとめり込んだ。背骨が軋み、痛みが身体を走る。

 

「俺はてめぇになぶられたのが気に食わないから、今日まで死ぬほどリブラとレイジングハートに鍛えられた、んで、わくわくしながらてめぇと闘ってる、それがなんだこの″体たらく″は!」

 

『電磁操作開始します、コントロールを使用者へと移行』

 

京介の周りに幾重もの稲妻が走り、それはビルの柱へと収束し、一つの稲妻へと変貌した直後柱は長さ5mほどにへし折られ、京介の真横まで″浮いて″移動した。重さはゆうに3トンはあろうかと思われる鉄筋コンクリートの柱が浮いていた。

 

「がっかりだよ!てめぇにはな!」

 

その鉄筋コンクリートの柱は物凄いスピードでツバキの腹部へと思い切り振り回された。バリアジャケット越しに来る衝撃がツバキを襲う、食べた物が吐瀉物として飛び散った。

 

「くそみたいに余裕な面してやがったのに何だよその顔は!?あぁ?!」

 

かお?顔?/ビルの壁を貫通し、床に打ち付けられ、起き上がった目の前にガラス張りの扉があった。

 

そこには顔があった、私の″泣き顔″が。これが私の顔?私の顔なのか?

 

「泣き顔なんざ見せやがって!普通の女の子じゃねぇか!」

 

女の子、それならば手を止めるべき。しかし、京介は止まらない、電磁加速で柱を音速以上に加速させツバキの顔面へと思い切り振り抜いた。

 

ツバキの頭の中に火花が散る。亜種型三鈷柄付剣の高性能な物理制御が効き、ダメージの1割以下しか通らないがそれでも十分な威力がツバキの頭へと入る。

 

意識が飛んでいき、″アタシ″が表へと現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……切り替える、切断せよ、己の我を出せ、ツバキ、己の二つ名を紡げ』

 

思考制御、魔法型人格改変プロトコルが起動、私の仮面が剥げる。

 

「リンガー・ザ・ジルベル(銀鐘を鳴らす者)」

 

鐘が鳴る。直後、京介の怒り顔へと向けて拳が叩き込まれる。女の子の柔肌で包まれた鉄拳だった。

 

 

 

 

 

 

 

夜空に金色の光と桜色の光が交差する。なのははフェイトの高速機動に翻弄されつつも、その戦闘距離を自分の独壇場へと持ち込んでいた。

 

「このまま倒すよっ!!」

 

『戦術構築、魔力運用開始、どうぞ』

 

「亜種型(アナザー)ディバインシューター!」

 

『撒き散らします』

 

ガトリングのように撒き散らされる桜色の閃光。点で攻撃しても私に当たらないとわかったから攻撃方法を変えた、とフェイトは感じた。この娘は″面″で攻撃してくる。

 

フェイトは前方に推力を展開、急制動をかけつつ、後退する。直後、桜色の閃光の一発一発が″分裂″した。

 

「っ!?」

 

『クラスター(集束爆撃)!防御しろ!避けても爆風でやられる!』

 

金色の防御壁が展開される、次の瞬間、桜色の閃光の全てが炸裂した。とてつもない圧力がフェイトを四方八方から襲う、しかし流石と言うべきであろう、彼女はしっかりとその爆風の嵐を耐えていた。

 

その″場″でしっかりと踏ん張って耐えていた。

 

「やっと動きを止めたの」

 

『魔力4割引、弾速を上げます』

 

「地面に叩きつけるよ!」

 

『ディバインバスター、どうぞ』

 

なのはの短距離加速は優秀である、爆風をもろともせずにフェイトの直上へと速やかに移動していた。そして桜色の閃光が真下へと放たれる。

 

気付いた時には避けようがなかった。フェイトは真上から来る閃光に対して防御壁を向けることしか出来ず、直撃は防げたものの、そのまま地面へと叩き付けられた。

 

半球状に抉れるアスファルト、フェイトの全身へと衝撃が走る。肺から空気が抜ける感覚、意識が飛びかけるが、それを現実へと縫い付ける根性は見事だった。

 

しかし、なのはは手を緩めない。

 

「続けて追加術式!」

 

『畳み掛けます、クラスター(集束爆撃)、もう一度いきます、残存魔力が4割になります』

 

「ここで絶対″落とす″の!」

 

『撃ちます』

 

覚悟ある攻撃/無数の閃光がフェイトへ向けて降り頻る/炸裂、しかしその瞬間、金色の″線″が無数に発生した。

 

「…!」

 

『格闘系術式、″緊急回避″します』

 

レイジングハートによる自動の後方へ向けての短距離加速、直後放ったディバインシューター全てがなのはの至近距離で炸裂した。

 

爆風でなのははさらに真上へと飛ばされる、爆煙の向こうからうっすらと金色の光が見えた。

 

『″アナザー(亜種型)アークセイバー″、土壇場で術式構築出来たのは奇跡だ』

 

「ありがと、バルディッシュ」

 

『お嬢の為なら、奇跡など造作もない』

 

金色の刃を持つ″鎌″=サイズフォーム、フェイトの独壇場である近接、その為の形態。

 

「…もう一発!」

 

『でもこれ処理複雑なのだがな、疲れる』

 

「頑張って…!」

 

鎌が振り抜かれると同時に無数の魔力の刃が走る、なのはは即座に防御壁を展開、そして直撃、爆発。

 

思いの外威力は″小さい″、普通の投てき型格闘術式を無数に″分割″してる、クラスター(集束爆撃)に比べて魔力消費は少ない。

 

ただ、その攻撃はなのはの動きを″止めて″いた。

 

目の前まで接近するフェイト=バルディッシュを振りかぶっている/対応=防御してもジリ貧に持ち込まれる、ならば″反撃(カウンター)″。

 

レイジングハートのフレームを魔力で強化、同時に前方へ向けて″短距離加速″、真正面から打ち合う。

 

その激突の瞬間、二人の真上が爆発した。正しくは結界の境目が爆破されたのだ。そして虹色の閃光が大量に結界内へと降り注いだ。

 

その一発がここにあった″ジュエルシード″に当たるなんてことを撃った″本人″は考えもしていなかった。

 

 

 

 

 

 

とにかく、俺=京介はコイツが気に入らない。最初は余裕しゃくしゃくで俺をぶん殴って一発で気絶させやがったのもあるが、思った以上に簡単に倒せそうなことも、そして極めつけが、実は″三味線引いてやがった″ことだ。

 

ホントに腹が立つ、だから…

 

俺の顔面にめり込んだ拳をガン無視して、思いっきりこの″女″の腹部に拳を叩き込んでやった。生身を殴った感触が右腕に走る、思ったほど″悪くない″。

 

鼻血と吐瀉物が空中で混ざり合いつつ地面へと飛び散った。少しは痛みに耐える為に一拍置くところだろうが、間髪入れずに俺と″コイツ″は動くことにした。

 

「フヒィッ!ヒィッヒヒヒヒヒッ!!!!!!」

 

「ハハハハハ!」

 

こぼれ出た笑い。笑いながら互いに自分の得物を相手に突き刺していた、いつの間に非殺傷設定を切っていたのだろうか?二人の動脈にものの見事に命中した刃先付近からは鮮血が吹き出していた。

 

『術式介入、痛覚遮断』

 

『術式起動、身体再生を恒常的にかけます、筋力強化最大、使用者の限界まで後5分』

 

「「ハハハハハハハッッッ!!!!!!」」

 

術式の作用が思考を加速させ、感覚を鈍らせる、本能が書き換えられ、戦闘への欲求が全てに勝る。二人はそういう状況だった。

 

殺し合いこそ彼等の″会話″である。

 

こんにちは、と言うように気軽にツバキは京介の脇腹へと刃を突き立て、真横へ切り裂いた、噴き出す血飛沫が顔を赤に塗りたくる。

 

お元気ですか、と言うように丁寧に京介はツバキの顔面へとリブラを突き出し、右耳と右頬を吹き飛ばし、綺麗な歯並びを露出させた。

 

すぐさま傷口は術式により止血され、再生がかかる、とはいえそれは完全に治る物ではあったが、″時間″がかかる代物である。

 

故に彼等の殺し合いは同時に削り合いでもある。

 

『驚異の増大を確認、術式兵装のロック解除、″マキシボルトブレード″、″サンダースロウス″起動』

 

『攻撃の手数を増やす、多層術式起動、モード″エクシードドライ″』

 

リブラの刀身が砕け散ると同時にいくつもの透明の刃へと顕現、砕けた刀身の代わりにグリップから赤黒い稲妻が刃となって現れる。

 

亜種型三鈷柄付剣はその全ての形態を顕現させる、浮遊する刃と砲身、そして禍々しくなった籠手は赤い魔力光をおびただしく漏らしていた。

 

『ボルトアクセル』

 

『ブロッサムアクセル』

 

『『最大加速』』

 

最初は衝撃であった。二人の真正面からの最速での打ち合いは凄まじい衝撃を伴い、周辺のビルの窓をことごとく叩き割り、アスファルトをひっぺがした。

 

そして世界を赤く染めると言わんばかりに血飛沫が躍り狂う。

 

攻撃で攻撃を弾くなど二人にとっては無駄な行為であり、己の身体を犠牲にしても先に相手を食い尽くせば勝ちである。故に二人の間は正に嵐であった。

 

刃が身体中の皮膚を引き裂き、殴打が節々の関節を潰し、衝撃が内臓を愛撫した。

 

しかし両者は止まる気配もなく、互いを貪り合う、狂犬のように。命を喰らう為に。

 

しかし、それが永遠に続くわけも無し。いつかは限界は来る、ならばその時に両者が″喉元″を喰い千切りに行くのは自明の理である。

 

『術者活動限界まで30秒、緊急術式兵装ロック解除″マキシボルトエクゼキューション″』

 

『魔力機関過熱確認、モード解除推奨、否定の意志確認、打開する為の可及的措置を選択、″一撃必殺″、概念型破壊術式″ツクヨミ″起動』

 

両者が一瞬止まる。

 

先に動いたのはツバキだった。ブロッサムアクセルの多重展開、音速を凌駕する速度で拳を京介の鳩尾へと叩き込む。そして、直撃と同時に″ツクヨミ″が展開、京介の心臓へ向けて破砕術式が浸透する。

 

京介を貫通する破砕術式が真後ろのビルを悉く薙ぎ倒す。それは確実に死を京介にもたらす事象だった。

 

『術式″因果応報″最大稼働』

 

但し、死を耐え抜く術が彼に無い訳ではなかった。

 

『局地的″事象改変″を確認、対象の停止を失敗、退避を推奨』

 

『″喰い殺せ″マキシボルトエクセキューション』

 

リブラの稲妻により構成された刀身が脈動し増大する。逃げるツバキに対してサンダースロウスが殺到、両手足と腹部を貫きビルの壁面へと縫い付けた。

 

そして脈動する刀身は漆黒に染まり、京介はそれをツバキに対して振り下ろす。直後、結界内の街並みが縦に割れた。

 

 

 

 

 

 

物陰に隠れていたユーノは自分の結界の一部が崩壊したことを感知した。術式を重ね掛けしていたはず、加えて相互補完もさせていた、一部崩壊すると″全部″壊れるのだが、見たところそれはない。

 

何を使ってる?ユーノの頭の中に破壊した術式を補填しつつ穴を開ける術式等は存在しないし、聞いたこともない。

 

しかし、それよりも厄介な事が一つ。

 

ジュエルシードがユーノの隠れている場所から数百メートルぐらいで思いっきり発動していることである。しかも、何か暴走しているように見える。

 

ホントに勘弁してほしい。通常の封印処理が出来るわけもなく、下手をするとなのはの封印砲撃でさえ無駄かもしれない。

 

転送魔法でどっかに放り投げて、エネルギーを放出させた後に封印、というのも考えた。しかしどうにもその暇は無さそうである。

 

物凄く獰猛そうなデカイ犬がこっちを見ていたからだ。

 

こっちに来て何回か犬は見たが、立て髪ついて、大型で、額に水晶ついてる犬なんて見たことないし、加えて

 

「おい、そこに隠れてる奴、出てきな」

 

この世界で″喋る犬″なんて見たことない。

 

首だけ物陰から出す。直後、思い切り犬の牙が僕の頭を噛み砕きかけた。

 

術式を展開していたおかげで牙が防壁の上をすべり、僕は″吹き飛ぶ″だけで事なきを得ることになった。

 

したたかに背中を壁に打ち付けるが、意識は保てる、両の眼をしっかりと開き、前を見る。犬は余裕寂々な風貌で僕を見据えていた。

 

「噛み砕けた、と思ったんだけどねぇ」

 

「一瞬、噛み砕かれたと思ったよ、君は、なのは達と戦ってる人達の仲間かい?」

 

「だったらどうすんだい?止めるのかい?私を?」

 

「理由を聞くんだ、どうして集めるのか、ってね」

 

「答えると思ってるのかい!」

 

返答と共に犬はその爪を僕に振り下ろした。術式を展開するも、一発で防壁は砕けた。とはいえ、用心で違う術式の防壁を張っていたのが幸いしたのか、爪は僕を切り裂くことなく、目の前で停止していた。

 

「ちっ!またか!」

 

「防壁破壊、魔導師のサポート系術式だ、君は使い魔だね」

 

「はぁ?あんたもだろ!イタチ!」

 

「フェレットだよ、僕はそれに使い魔でもないよ」

 

するりとユーノは術式を展開し己の身体へと定着させた。直後その身体は″少年の身体″へと変貌していた。

 

「ユーノ・スクライア、もう一回聞くよ、君はあの人達の仲間だね?」

 

「ちっ、肯定してやるよ、チビッ子、あたしはフェイトの使い魔さ、ついでに言ってやるけどジュエルシードを狙ってるのもフェイトさ、後の二人は手伝いだよ」

 

「狙う理由は……そこまでは聞かなくていいか、言うつもりもないんだろ?」

 

「そうさ、わかってるじゃないか、チビッ子、″お姉さん″が相手してやるよ」

 

犬が立ち上がる。しかしその身体は大人の女性特有の張りのある、艶やかなものに変わっていた。すげぇ胸が揺れたのをユーノは見逃さない。

 

「ふん、ジュエルシードは頂いて……、あんた何で前屈みになってんだい?」

 

「あー、気にせず、ちょっと目線しくじっただけです、それでここで待ってる暇もないはずだ、そこのジュエルシードは臨界寸前、今さら封印砲も効かないよ」

 

「なら、どうすんだい?″あんた″は」

 

「転送させて、暴走した後に回収……と行きたいが、そこまでさせる暇を与える気はない?だろ?」

 

「ああ、そうさね、あんたが転送するまえに私がして、私が回収すればいい話さ、″邪魔者″を排除してね」

 

「確かに、でも取り出せない封印があるとすれば?」

 

「はぁ?」

 

「そこで″じっとしててね″」

 

遅延術式が発動し、女性の首から足にかけて全ての関節にバインドがかかる。そのまま攻性の防壁が頭上に展開され、斥力が女性を四つん這いへとさせる。派手に胸が揺れる。

 

「なっ!?あんた!て、また凄い前屈みになってるし!」

 

「おさまれ僕のゲイボルグぅぅう、かっこつけてこれは無い……、さて、仕方ないよね、僕が身体張るのが義務だもん、僕がこの事件を引き起こした人間だから」

 

「……!?あんた何を!」

 

「昔、聞いたことがあるかい?自分の遺伝子事態を術式として改造して己の身体を作り替える術があるって?」

 

「……何を!今!」

 

「今やってみるのも悪く無いよね、ジュエルシードを収める″器″として」

 

「そんな技術はあったとしてもとっくに廃れてる!″死ぬ気″?!」

 

「お、そんなとこ心配してくれるの?あんまり悪い人じゃなさそうだね、でも、仕方ないのさ、転送してもこのエネルギー量だとどこに転移するかもわからない、そこで人が巻き込まれるかもしれない、ならここで″封印″する、それにジュエルシードは″願いを叶える″、それは暴走している″今″も同じこと」

 

ユーノは悠然かつ毅然とジュエルシードに素手で触れた。暴走したエネルギーは何かしらの転換を起こし、ユーノの掌を焼いた。焦げた肉の匂いが鼻を刺激した、だが痛みを感じるほど僕に余裕はなかった。

 

そうだ、余裕なんてない。

 

「……こんなものか!えぇ?!世界を滅ぼした機械が!お前は人の思いを叶える機械なら、僕の願いも叶えて見せろ!その為ならこの身体も差し出してやる!ジュエルシード!」

 

直後、エネルギーが僕の身体を駆け巡った。掌の血管から入り込んだエネルギーは僕の魔力と結合しつつ、身体を″書き換える″。凄まじい魔力と書き換えによる衝撃は身体を内側から瓦解させるが、それを防壁の術式を自身に向け、抑え込む。

 

「やめろ!死ぬぞ!」

 

「″死んだって良い″!!!どうせ僕は一人だ……っ!悲しむ人もいない!」

 

胸の防壁を解除、ボロボロと肉が崩れる胸へとジュエルシードを叩き込む。心臓が焼かれ、ジュエルシードが周囲の臓器を取り込んで繭を造り出す。血圧が上がり、凄まじい量の血液が口から噴き出す。血液が何かと″入れ替わる″。

 

そして、僕は″死ぬこと″にした。

 

 

 

 

 

 

 

「″パンツァーレイン″、久々に撃ちましたねー、こんなのほとんど撃ちませんよ」

 

″目隠れの女″が結界の破れた部分からゆっくりと降下する、その回りに5mほどの人型の機械が三機追随していた=まるで狩人に追従する猟犬。

 

「″アイズレス(目無し)″、ジュエルシードは確認出来るか?」

 

猟犬の一機がアイズレスへと視線も向けずに質問を飛ばす、それをめんどくさそうに手に持つ銀の錫杖を掲げつつ、返答する。

 

「せっかちだなぁ、ちょっと待ってよ」

 

『検知、危機拡大、次元相転位確認、ジュエルシード発動』

 

錫杖からの意外な返答だった。アイズレスは仲間の三機に困った顔を向けるが、三機とも顔を背けるだけである。

 

「明らかにさっきの魔法のせいだよな」

 

「箔をつけるとか言っていきなりぶっぱなしたし」

 

「アイズレス考えなしが多いしなー、この前の管理局の連中バラした時も思い付きだったから女将に怒られてたし」

 

「うるさいですよ!わ、わたしのせいじゃないし!あ!あれです!星の巡りが悪いんです!」

 

「占い信じてる女子ってどうよ?」

 

「中二だな流行りの中二病って奴だ、帰ったらアイツの部屋探したらポエム出てくるぜ?」

 

「女将が掃除したがっても部屋に入れなかっからその可能性ありかもな」

 

「乙女の部屋に入るとか!あなた達は神の領域を侵しています!」

 

「神の領域も敷居ひっくいなぁ」

 

「ほら、回収回収、俺帰ってドラマ見たいのよ」

 

「「うーっす」」

 

「話聞いてぇー!」

 

「ポエムを書くのか、なかなかに高尚な趣味を持っているな、うちの妹達も書いているよ」

 

刹那である、アイズレスの悪寒が回避行動を取らせていなければ、彼女の首が落ちていたと言わんばかりの斬撃が首もとを掠めていた。見れば、首のハードシェルの一部がいとも簡単に吹き飛んでいる。

 

視線を前に向けると空中に仁王立ちする男が一人、直刀に似たブレード型デバイスと盾を携えている。

 

「避けたな?今のを避けれるのは俺ぐらいと思っていたが、認識を改めるべきだな」

 

「…っ!?」

 

「御高説垂れるのはやめておこう、俺はレオ・エルフォード、先程の魔力攻撃はお前がおこなったか?返答次第では悪ければ捕縛するし、良ければ任意同行してもらう」

 

「どっちも同じような物ですね、管理局の人間が初撃から首を狙うなんて、信じられません」

 

「否定しないな?先程のは貴様が撃ったものだな、それに非殺傷設定ではなかった、故に捕縛する、反抗するなよ?」

 

「しないとでも?」

 

直後、彼女の錫杖が分割し″伸びる″。その一つがレオの前顎部を狙ったが、するりとそれを回避した。

 

「″避けました″ね?」

 

「管理局の規約により、対象からの殺意を認定、正当防衛だ」

 

「うるさい、御高説垂れるな、墜ちろ人間風情が」

 

僚機である三機からポポンッと二発ずつ、計六発の金属の柱が射出された。次の瞬間、柱は周囲に雷を″撒き散らした″。

 

レオは身を捻り直撃コースの雷を捌くと即座に急降下した、遮蔽物の無い空中では部が悪いと踏んだのだ。

 

ビルの中にガラスを破りつつ転がり込む、姿勢を制御するために床に剣を突き立て制動をかけた。直後、飛来する追撃の雷がビルの壁面を打ち砕く。

 

「流石に本物の雷は″速い″な、避けるので精一杯か」

 

「雷を避けるなんてどんな反射神経してるんです?」

 

ガオンッ!と腹の底から響くような重低音が鳴ると同時にレオの真横、ビルの壁面が半径5mの球状に抉れた、正しくは消え去ったと言って良い。

 

消え去った穴の向こう側には錫杖を構えた女が空中に浮いている。

 

「手品かな?壁がすっぽりと無くなってるぞ?」

 

「もっかい″手品″を見せましょうか」

 

再びビルが抉られる、しかもレオを飲み込まんばかりに″大量″にだ。そそくさとレオはビル内を走破しつつ反対側の窓ガラスをぶち破り空中へと飛び出した。そして、待ってましたと言わんばかりに大量の″雷″がレオに向かって降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

煙で前が見えない。レオはそう思いつつのそのそと飛び込んだビルの一階テナントから外に出た。

 

左手に術式を走らせると、避雷針替わりに使った盾がこちら側に飛んでくる。少し焦げたが損傷は無いようである。

 

「さて……」

 

見上げた先に三機と一人が浮いている、どうせ探知系の魔法で自分の位置は知られてる。ならば、どうする?そんなもの、すでに答えは決まっている。

 

「反撃といこうか」

 

トン、とレオは空へと舞い上がる。

 

 

 

 

 

 

内心だが、アイズレスはちょっとこれはヤバイのでは?と感じていた。特機級の正式装備ではないにしろ、指向性の雷撃を三機による十字砲火でぶっぱなしても当たらず。自身の″トネリコ″の侵食転送による攻撃、それからの雷撃による完璧な″トドメ″だったが、奴は盾を焦がした程度。

 

いや、ちょっとではなく、かなりヤバイ。僚機である三人も此処は引いとこうぜと言い出しかねない雰囲気である。正直、臆病なアイズレス的には即座に撤退したいところだが、プレシアに大見得切った手前、帰るのもバツが悪い。

 

「……ジュエルシード回収して即効で帰るのはどうでしょうか?」

 

「「賛成」」

 

「撤収!ジュエルシードはわたしが適当な所に転送して暴走終わった後で回収で!」

 

「逃がさん」

 

ビルの壁面を垂直に走るレオ。やっぱりかぁー!と四人は再び攻撃を開始、容赦ない雷撃が連続して叩き込まれる。そのわりにはレオは普通な顔。

 

「なんとなくだが…、そいつは内部に内臓した電流をぶちまけてる、なら、″誘導する術式″がある、故にそれは攻撃よりも先行してくる」

 

術式をブレード、『ソウルレスワン』へと定着させる。昔、気まぐれでアカギにならった幻影系の術式を使ってみる。

 

レオは瞬時にソウルレスワンで空を数回斬った。直後、雷撃はレオへと直撃せずに明後日の方向へと飛んでいく。

 

「いっ!?」

 

「剣で誘導術式をそらした?!嘘だろ!見えねぇはずだ!」

 

「いや、見てねぇ!タイミングで斬ってやがる!あの数回で誘導から攻撃までのタイミングを覚えてやがる!」

 

「何ですか!?この人!?」

 

「通りすがりだ、ちょっと通るぞ…!」

 

レオがソウルレスワンを疾走からの下段構えで真下から四人へと近付いた。このまま、自分の独壇場へと引きずり込む、そこまでは考え通りだったが。

 

真横から五人を巻き込むように赤黒く長大な魔力攻撃が叩き込まれるなんてことは考えもしなかった。故に容易に五人は魔力攻撃で仲良くビルごと吹き飛ばされることと相成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッと目が覚める。目の前にレイジングハートの防壁が展開されている、いつ展開したのか疑問に思う。瓦解したビルの瓦礫の中から立ち上がり周りを見回した。

 

あれだけ乱立していたビル郡がほとんど薙ぎ倒されている。あの上からの砲撃のせいだろうか、いや、砲撃ならビルが縦に″割れる″ということ等は無い。

 

徒歩で瓦礫の中を抜ける。レイジングハートがさっきから反応しない、よほど防壁に処理を使ってフリーズを起こしてるようだ、そんなに″戦闘″が激しかったのだろうか?

 

そして、その″空間″に私はたどり着いた。どこもかしこもボロボロだというのにそこの空間だけは何ともなっていなかった、″彼″を中心に直径10m程が完全に無傷で残っていたのだ。

 

私が、そして彼等が集めたであろうジュエルシードを除く″全てのジュエルシードを付き従えたユーノ君″の周りの空間だけがすっぽりと残っていた。

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