リリカルなのはFlourish   作:ビブロス

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トンズラするモノ

夢を見ていた。白黒でぼんやりした夢だった。

 

昔々、多くの人々が願った。平和を、幸せを、この世の不幸を全て消してくれ、と。

 

それを聞く巫女がいた。その巫女は人々の願いを″神″に伝えることの出来る人間だった。巫女は来る日も来る日も人間の願いを神へと伝えた。

 

神はそれを聞き届け、人々全てを幸せにしていった。そしてその巫女だけが幸せを願っていない人間となった。

 

あと一人だけ、神は自ら質問した。

 

『君は何を願う?』

 

『私は願って良いのでしょうか?』

 

『君も僕の力の対象さ、何なりと願うと良い』

 

『良いのですか?』

 

『良いさ、言ってごらん』

 

『貴方のお嫁さんにしてください』

 

驚く神をよそに、巫女の顔は笑顔に満ちていた。

 

 

 

 

目が覚める。いつもの部屋、なのはの部屋の中に僕は居た。違うのは自分が机の上の籠の中ではなく、″ベット″の中に居るということだ、ついでに身体も通常の人間形態である。

 

「え、なのはのベットに寝てるとかチャンスなんじゃね?」

 

「何がチャンスなの?」

 

おもいっきりなのはも同じベットで寝てた、チャンスとかそんなレベルではなかった。

 

「おっと、なのは、あんまり動かないでおくれよ、布団がズレて、ジャッキアップしたものが見えてしまう」

 

「何を持ち上げてるの?」

 

「テント張ってるんだ、気にしないで」

 

「″ユーノ″君、ちゃんと身体は動く?苦しくない?」

 

「……なのは、どうしたの?」

 

困惑する自分をよそになのはは、僕の胸に素手で触れる、というか僕、上半身裸じゃないか。肌を生で触られる、しかも女の子にだ、胸がバクバクとするはず、だが。

 

「暖かいし、血色も良い、でも″動いてない″」

 

「何が動いてないのさ?」

 

「ユーノ君の″心臓″だよ、ユーノ君なんで″生きてる″の?」

 

 

 

 

「お前の心臓は現在、ジュエルシードのNo1と完全に融合している、というよりジュエルシードがお前の心臓を取り込んでいるんだ」

 

なのはの家のリビングで負傷しまくった赤城先生が厳かに喋る。その周りには同じく負傷した皆が立っていた、京介は今も寝ているらしい。

 

「……ジュエルシードが僕を生かしている?」

 

「認識はそれで良い、俺にも何がなんだかわからんのだ、お前の中の血液の替わりに血管を満たし循環しているものは赤くとも″血″ではない、ジュエルシードから発生する流動体がお前を生かしている」

 

「…………そうですか、まだ僕は生きるんですね」

 

「……比較的だが、俺はお前が京介やなのはのように無茶をやる人間ではない、と思っていたが、お前も大概だな、″命″を捨てるのがそんなに平気か?」

 

平気。平気なわけがない、ただ、必死にジュエルシードを止めたかっただけだ、その結果として″死ななかった″だけだ。死にたかったわけじゃない。

 

「ユーノ君」

 

ソファーに座る僕を後ろからなのはが抱き締める、ふわりと良い匂いが鼻をつく、落ち着け僕のゲイボルグ、お前の出番ではない。

 

「″ジュエルシード″…これで全部なの?」

 

なのはが耳元で囁く。その言葉通り、目の前のテーブルに広げられた十数個のジュエルシード、それは残り全てであった。あとは、あの金髪達が持つジュエルシードのみ。

 

「これだけでも管理局に引き渡せませんか?狙う敵が多すぎる」

 

「そうしたいのは山々だが出来ない」

 

「なぜです?」

 

「重症の怪我人がゾロゾロと民家に寄せ駆けてるのに病院にも連れていってない、わかるか?」

 

「…?」

 

「高町の親御を今日″見たか″?」

 

なのはの家に居るのに家族が″居ない″、外を見ても通りを歩く人間は見る影無し。まるで、″ずれた″世界に居る感覚。

 

「まさか……結界…!」

 

「そうだ、現在海鳴市は術式不明の高度な結界に閉ざされている、故に俺たちに逃げ場はない、″狩場″に閉じ込められたのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴市街から離れた山の中腹、そこの打ち捨てられた民家、いつもなら何もない場所だが、今はせわしなく金属の塊が動いていた。

 

「かー、いってぇー、表面第一装甲全部融解してるぜ、第4までの積層式に替えてて良かったな、″死んでたぞ″」

 

「その代わりに外部兵装がほとんどおシャカだ、正式装備の結合阻害防壁でも積めば良かった、これだけでも相当修理に時間がかかる」

 

「仕方ねぇから動く兵装は全部引っこ抜け、昔ながらの地上戦になるかもしれん、使えそうな外部兵装の装甲もひっぺがせ、そのまま盾に組み換える」

 

「盾持って攻撃?自殺行為だ、狭い空間ならまだしも、それで市街戦なんてしたら″良い的″だ」

 

「……仕方ねぇだろ、アイズレスがヤル気になってんだ、言うこと聞かねぇんだよ、しかも援軍呼んだとか言ってやがる」

 

「機師級を?誰です?」

 

「トゥーソードだ」

 

 

 

 

アイズレスは山の頂上で錫杖を掲げていた。隠密仕様の術式も展開し管理局に気取られないように侵食転送を起動する。黒い過重領域が発生し、地面を抉る。そこから現れる黒く細い金属の化け物が現れる。

 

その化け物は二本足で立ち、その足を腰布のような装甲で覆っている。上半身は背骨のようなフレームに大型の腕部ユニットが取り付けられ、その腕には一対の太刀が搭載されていた。

 

「アイズレス、私を呼ぶなんてそんなに今回は″厄介な仕事″なのか?」

 

黒い化け物は重低音の言葉を発した。歩く度にガシャガシャと金属同士が擦り合う。スライド式の関節はその騒音と手入れの難しさに眼を瞑れば最もスピードと堅牢さを両立させた機構だ、″彼女″の闘い方にはこの二つは重要である。

 

「仕事は簡単、ジュエルシードを奪うだけ、敵が厄介なの、私達の雷撃兵装を″避ける″相手よ」

 

「……ほぅ、まさかお前の″浸食転送″も避けられたか?」

 

「……次はリミッターを外す、街一つ無くすぐらいの勢いでやらせてもらうわ」

 

「ふふ、私を巻き込んでくれるなよ、我々の装甲でも焦げてしまう」

 

「避けなさいよ、貴女が一番速いんだから」

 

「そうだな、とりあえず歩兵用の装備をいくつか持ってきた、そちらの仲間に装備させろ、FCSはすぐにインストール出来るだろう?」

 

「ありがとう、…………女将は何か言ってた?」

 

「いつもどおり、『生きて帰って来なさい』とのことだ、しかし珍しく写真を寄越せと言っていたな」

 

「写真?」

 

「お前の協力者、プレシア・テスタロッサとその娘フェイト・テスタロッサの写真だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人がこれほど″崩れた″のを目の当たりにするのは初めてだ、フェイト・テスタロッサはツバキ″だったであろうもの″からの流血を見ながらそう思い、吐き気を抑え込む。

 

『体液を3割″焼失″、全身の殆どの皮膚を三度の熱傷、左腕と右足なんて炭化してる、気道熱傷で肺なんかほとんど機能してない、そのわりにはこの娘、よくもまぁ″生きておる″』

 

「疑似体液精製しつつ循環させる、肺の機能の回復を優先、酸素を赤血球に直接転送する、脳の機能を完全に保持しろ、他は後で″何とかなる″で御座る」

 

見慣れたものと言わんばかりにトヨヒサは淡々と素早く処置を施していく、それを補佐するデバイスである″エルキドゥ″も見事だと感心する。

 

「″姉上殿″には連絡ついたで御座るか?んげ……、脱腸したで御座るよ、防壁で閉鎖、亜種型三鈷柄付剣の機能を一部復活、脱腸を押し込めろ、今のツバキ殿の魔力循環量だと″中身″が全部出るで御座る」

 

ツバキの焦げた腹部が引き裂けうねって綺麗に収まっていた食道がずるずると外に飛び出すのを防壁でおさえる。血と肉の臭いでむせかえる。

 

『ついてるぞ、後数分で着くようだ、ほれ、亜種型三鈷柄付剣も機能が復活する、妾に血生臭きことをさせるな、起きよ』

 

『…………ぎ、ぎ、ぎ、軋む軋む、は!我が気を失う等遺憾なこと!遺憾!まことに遺憾である!』

 

『目を覚ませばやかましいのぅ、この元神霊の類いは』

 

『あいや、神代の土塊殿には言われとうないことですな、主の元伴侶は何をしています?しかし、感謝する、我が主の命を繋ぎ止めるのはご足労であった』

 

『どこかで妾と同じことになっておろうなぁ、あの唯我独尊バカタレは、ほら、機能を継げる、さぁ、主を回復させよ』

 

機能の引き継ぎ、防壁の魔力光の色が変わる=銀色から赤色に

 

「あとは姉上殿がツバキ殿を回収、その前にジュエルシードを回収で御座る、好都合なことに回収済以外も全部集まってるようで御座るからなぁ」

 

「…………ツバキはこのままにするの?」

 

フェイトは青い顔でトヨヒサの裾を引っ張る、対してトヨヒサはさも当然のような涼しげな顔である。

 

「ん?そうで御座るよ?亜種型三鈷柄付剣がついてるし、さほど″重傷″で御座らんからなぁ」

 

「貴方の大切な人じゃないの?横に付いとくとか、しないの?」

 

「大切で御座るよ、妹みたいなもんで御座るし、信用してる、それ故に此処に置いてくで御座る」

 

「薄情じゃない……の?」

 

ニコリとトヨヒサはフェイトへ微笑んだ。その笑みは″これ以上喋っても意味がない″というトヨヒサの気持ちの現れだろう。察しの良いフェイトはそれ以上踏み込めずに押し黙る。

 

それを見たトヨヒサはエルキドゥを担ぎ上げ、ついでと言わんばかりにフェイトも″担ぎ上げる″。自分とさほど変わらない年と背丈の男の子に抱えられ、フェイトは身を固めた。

 

「……?」

 

「まだ、本調子ではないで御座ろう?移動するで御座るよ」

 

「どこに……?」

 

「結界の穴を見つけたので御座るよ、そこへ行くで御座る、恐らくはそこを狩場にするので御座ろうなぁ、″マシーナ″は」

 

聞き慣れない単語にフェイトは疑問を持つが、直後のトヨヒサの疾走に言葉が喉の奥へと引っ込むことになる。流石に時速100kmで突っ走られてはフェイトも押し黙るのも当然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「解析が出来た、故に対策を立てた、しかしこれは十中八九罠だ、そこに飛び込む羽目になるが…………良いか?」

 

セイト・アスミックは高町家のロビーに海鳴市のホログラムを展開し、状況と作戦を説明する。

 

「解析したところ、この結界は皆も知っている通り解除が出来ないほどの高密度高圧縮の魔術によって組み上げられており、外に出ることは出来ない、しかしだ…………」

 

セイトはホログラムに一つのマーカーを展開する、それは海鳴市の山中を指していた。

 

「一部、術式が甘い部分があり、この部分だけ解除が可能と思われる、実際模造した術式はミッドチルダ式の術式で解除が出来た」

 

「ならそこまで行って、次元の狭間にいるアースラにユーノを転送してもらう、それが妥当だろ…………だよな?」

 

「桜萪君は罠に引っ掛かりやすい性格だね、悪い女に引っ掛からないように」

 

「だってそこに敵が待ち伏せてるのは確実だけど、それぐらいしか方法ねーじゃんよ!正!面!突!破!」

 

「…………まぁ、そうなんだけどね、裏をかけるほどの技術はあるけど、アカギが本調子じゃないから危ない橋は渡れない、故に先に真正面から″撃ち崩す″、その仕事をやるのは君だ、桜萪君、そして流君だ」

 

「…………僕はケガしたので寝てます、お腹すきました、御飯食べたい」

 

でろん、と流はソファで項垂れる。シルバーミョルニルの防壁とバリアジャケットは非常に薄く、トヨヒサからの攻撃で流のあばら骨は折れ、心臓と肺に突き刺さる寸前だったが、重力操作で防いだのだ、デバイスを展開していない今でも重力操作で身体を無理矢理動かしている。恐ろしいまでの技量である。

 

「撃ち合いは良いけど、今の俺だと移動が出来ないぜ?アーベントが最大出力で防壁張ってくれたおかげで俺はピンピンしてるけど、こいつの内部処理能力はほとんど失なわれてる、撃ちながら飛行なんて、もっての他だ」

 

「そこは大丈夫、撃ち合いにはアカギも参加してもらう、作戦は後ほど、そして強行突破組はユーノ君、なのは君、レオ、そして俺だ」

 

「……セイト、お前も出るのか?」

 

一人黙っていたレオが口を開く。心配するなと言わんばかりにセイトはサムズアップを返しニッカリと笑った。聞く耳は持たない、そういうことなのだと、レオは理解し、再び黙ることにした。

 

「というわけで、作戦名は『ヤ○マ作戦』で行こうな、オーケー?」

 

「オーケーじゃねぇよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リンディ・ハラオウンにとって今回の事件は比較的小規模な物と考えていた。ロストロギアが関わっている以上、大事になるのは理解出来ていたが、かの有名なテン=コマンドメンツまで出てきたことには驚いていた。

 

テン=コマンドメンツはあの″ローガン″の子息が立ち上げた精鋭部隊、この部隊が出てくる事件は″死人″が出る。未だ、自分の部隊から死人は出ていないが、いつ出てしまってもおかしくはない。現に、テン=コマンドメンツからは大量に死人が出ている。

 

とはいえ、隊長であるレオ・エルフォードと直に話してみれば、彼が信用に足る人物であることは一発でわかる。あの眼、あのまっすぐな眼は信用出来る、自分の夫と同じ眼をしていたからだ。″自分自身が勘定に入らない″人間の眼だった。

 

故に死なせることなど有り得ない。二度目等、あってはならない。

 

「海鳴市の半分が謎の結界に包まれてから10時間、未だエルフォードさんとは連絡は取れない…………救援を出します、クロノ、部隊の編成は任せます」

 

クロノと呼ばれた10代の少年は手に持つデバイスの石突きでゴツン!と床を叩く。同時に透明なディスプレイがいくつも展開する。

 

「了解です艦長、エイミィ!解析は出来てるか?」

 

「もう出来てるよ!解除可能な部分が少しあったからそこに転送するよ!」

 

「アースラ反転!″地球″へと向かいます」

 

そして、リンディの部隊は数名を残して全員死ぬことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

色と位置が反転した太陽が海鳴市の真上から照り付ける。その真下へと四人は躍り出た、なのは、ユーノ、レオ、そしてセイトである。

 

その身はバリアジャケットに包まれていたが、一人として空は飛んではいない、徒歩だった。

 

「徒歩とかありえないんですが、ねぇ、ユーノ君?」

 

「いや、これには理由があるのさ、なのは、だから僕を担いで走るのはやめないかな、カッコ悪いんですけど」

 

「ユーノ君の固くて太いのがあたっているんですが!これは!当てているのかな!」

 

「当ててないし!当たらないし!そんなに太くないし!」

 

「固いのは否定してないの」

 

「ユーノ君は病み上がりみたいなものさ、それに″ジュエルシード″が体内にある状態で魔法なんて使ってみろ、″何が″起こるか全く検討つかない」

 

セイトは白衣から飴玉を取り出しつつ、なのは達二人に渡す。口のなかに含むと馴染みのない味がした。

 

「……不思議な味ですね、なんですこれ?」

 

「うちの地元で作ってる奴さ、俺の実家がこういうの作る家でね、近所の子供達にいつもやってるのさ、それは地元に生えてる香草の味だよ」

 

「おいしいですね」

 

「そうか、うちの母さんも喜ぶよ、さて……″攻撃″来るから避けるよ」

 

体力が無いと聞いていたセイトはひょいとなのはとユーノを掴み上げるとおもむろに″跳躍″した。瞬時に20mほど前方に移動する三人の真後ろで黒い鏃が突き刺さり、発生した黒い″何かが″住宅街の一画をまるごと抉りとった。

 

「なっ……!?」

 

「これが聞いてた″転送攻撃″か、レオ?」

 

「ここまでの威力じゃなかった、おおかた″リミッター″でも外したか、前回は手加減してたかだ、しかし好都合だな、今ので″敵の位置がわかった″」

 

ニヤリとレオはほくそ笑み、盾と剣を抜き放ち、先行する。追従するようにセイトは通信を後方の三人へと繋げた。

 

『″見えたね?″、狙撃で相手を封じ込めてくれ、頼むよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

『了解だ!叩き込むぞぉ!』

 

ハッハー!と雄叫びを上げながら桜萪は匍匐姿勢から″狙いを定める″。しかし彼が見ていた発射地点は今の地点からでは建物が影になっており、狙える位置ではなかった。

 

「流!前方300m先に10mごとに3つグラビティポート展開!1度ずつ左下にずらして加速させろ!」

 

「人使いが荒いです、ノリノリ、早く寝たいです……zzz」

 

「ねるなねるな!」

 

『グラビティポート!3連チャン!大盤振る舞いだぜぇ!』

 

シルバーミョルニルから発生した三枚の黒い板が前方に展開する。そこに桜萪は寸分の狂いなく流により高圧縮された氷の弾丸を叩き込む。

 

弾丸はグラビティポートを通過すると脅威的な超重力加速により速度を上げるとともに僅かに下に曲がりつつ、見えない位置の敵へと着弾する。二人による多段式偏向狙撃である。

 

「つーわけで、俺は暇なんだよな」

 

一人で赤城は弾丸の飛んでいった方向を見つめ、愚痴をこぼす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははー!くらいなさいよー!」

 

満面の笑みで鏃=″侵食転送型爆撃槍″をかっ飛ばすアイズレス。その横でやることもなくトゥーソードと他三人はズルズルとヌードルを啜っていた。

 

「やる気あるなー、がんばれよー」

 

「うぇ、この秘境の魔物塩煮込み味ヌードル最悪、産業廃棄物まみれのタイヤの味がする」

 

「え、トゥーソードさんはタイヤ食ったことあるの?」

 

「え、あ、うちの機師級の長老がタイヤマニアでタイヤ食ってるんですよ、たまに私たちに振る舞うし、どこで消化してんだか」

 

「機師級は変な人ばっかりだねー」

 

「なっ!?私は変じゃない!」

 

「いや、ヌードルチョイスがおかしいじゃん、俺らとかノーマルとカレーだよ?秘境の魔物塩煮込み味とかチョイスする時点でありえないし」

 

「あなた方が残したから私が食べたのに!残したら悪いと思ったから!」

 

「良い娘なのに味覚が壊滅的とは嫁の貰い手ねーな」

 

「もしかして未通女かー?やーい処女処女ぉー」

 

「セクハラ!セクハラです!それに、わ……私は処女じゃないですし……!!処女賭けても良いですよ!」

 

「やべぇ処女じゃねーか、あそこに蜘蛛の巣張ってるぞー」

 

「…………ひ、ひ、ひどい!アイズレス!なんですか!あなたの仲間は!失礼ですよ!?」

 

「うるさい!ボッチだからあんたよんだのよ!生き遅れ処女!相手してもらえるだけ良いと思っときなさい!」

 

「ボッチじゃないし!長老相手してくれるし!あと、たまに親方がお菓子くれるし!」

 

「長老の孫があんただから相手してくれるだけ!親方もぼっちだからあなたに同情してるだけ!わかるっ?!」

 

「……うぇぇぇぇぇぇぇっひっひぐぅううううう…………、もうやだぁぁあ、おうちかえるぅううう、あたしかえるぅぅぅ」

 

「すぐ泣くからぼっちなのよ!」

 

泣かしたのはアイズレスだよな、と他三人はズルズルとヌードルを啜る。その直後、とんでもない爆音とともに五人の真後ろにあった木々が薙ぎ倒された。

 

衝撃でヌードルがかっ飛んでいく。誰一人喋らずに姿勢を低くし、衝撃が飛来した方向へと視線を向けた。しかし、そこにはビルが見えるだけで″狙撃者″等、見えはしない。

 

「……反撃?向こうの狙撃系魔術師は負傷してた、そうでしょ?」

 

「一撃で仕留めるつもりだった?アイズレスの攻撃から距離を算出して弾道飛行で当てる腹積もりかな?」

 

「どちらでもいいわ、とりあえず反撃、トゥーソード行くわよ、向こうの狙撃者は三人で相手をする、私達は近付いてくる四人を相手にする、良い?」

 

「……イライラをぶつける」

 

「その調子よ」

 

ズドン!とトゥーソードとアイズレスは跳躍し、四人へと向かう。そしてのんびりと三人は″狙撃用装備″を取りに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、四人は敵と遭遇していた。盾を前に構え、レオはジリジリとその敵との間合いを詰める。

 

フェイトとトヨヒサとの間合いである。

 

「初っぱなから本命と遭遇で御座るな、駆け引きも糞もないで御座る」

 

「……ジュエルシードをこちらに渡して!私にはそれが必要なの……!」

 

フェイトはバルデイッシュを構え、四人へと突き付けた。この娘程度なら対応出来る、レオとセイトはそう感じていた、しかし問題はその″後ろの奴″である。

 

「ユーノ君、走って目標まで行けるね?なのは君、足止め出来るね?」

 

「…………行けます」

 

「……やれるの」

 

「よし、セイト、″二人とも″此処で倒す、行くぞ」

 

了解の返答は無く、セイトは思い切り前へと飛び出す。その右手にはクリスタルの嵌まった手甲が装着されていた。

 

「″ジャンナルベ・ケ・ペール(獣の足)″、狩るぞ、レオ」

 

トヨヒサは咄嗟にフェイトを真横に撥ね飛ばし、エルキドゥを盾にした、そうしなければ″避けられない″と思ったからだ。

 

セイトはその右手を手刀にし、突き出す、ただの″貫き手″である。その″ただの貫き手″には魔力も何も纏われてはいなかった、しかし避けねばならなかった、″防御″してはならない。

 

貫き手はあっさりとエルキドゥを貫通したのだ、というより通過、透過と言って過言ではなかった。トヨヒサは咄嗟にセイトの左肩を蹴り飛ばし真後ろに飛ぶ。セイトの貫き手は眼前まで来ていた。トヨヒサの背筋が凍るほどの恐怖であった。

 

「魔法じゃないで御座る……っ!なんだ!?」

 

『ふふ、久しき物を見たぞ、我が伴侶、こやつはお前の″天敵″よ、ほらほら、油断してると獣に手足を″喰われるぞ?″』

 

「からくりを言わないで御座るなぁ……!お前!」

 

『言うてもお前の為にはならぬ、″師範殿″も言うておったぞ、それに理不尽は人を育てるもの、気張るのじゃ』

 

ガリガリと地面を滑りつつ、トヨヒサはエルキドゥを構え直す、その目にはセイトとレオが迫ってきているのが見えていた。

 

「無双は終わりだ、眼鏡小僧」

 

「此処がお前の」

 

「地「罪を」獄だ」数えろ」

 

「ちゃんと台詞合わせるで御座るよ!えらいことなってるで御座る!」

 

トヨヒサの突っ込みに意も返さずに二人は技を叩き込み、トヨヒサは民家を四軒ほど薙ぎ倒しながら吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残されたのはユーノとなのは、そしてフェイトである。フェイトは一言も喋らずになのはへと斬りかかる。すばやくなのはは前方に短距離加速を掛け、フェイトの打ち込みへと反撃する。

 

火花、そして魔力の奔流が激突した。

 

「……渡して!お願い!」

 

「渡したらどうするの?!それに!人に物を譲ってほしい時に名前も名乗らないなんて、どういう教育受けてるの!」

 

「なんで……?!」

 

「常識なの!ねぇ!ユーノ君!」

 

「いや、この状況で聞くなのはの方が常識ないんじゃないかなぁ、ていうか空気を読んだ方が……」

 

「うるせぇ!なの!このビックマグナムっ!昨日の夜中見てるからね!私!」

 

「いやぁあああああ!ケダモノ!ケダモノ!」

 

「ぐへへ、いいもんもってんじゃねーかよぉー、えー?ユーノ君よぉおお?」

 

「いい加減にして」

 

『フォトンランサー、頭を冷やせ小娘共』

 

ズドム、と金色の閃光が炸裂、防御の上からなのはとユーノは吹き飛ばされ、民家の玄関へとぶちこまれた。ダイナミックお邪魔しますである。

 

「痛い!」

 

「知らない家にお邪魔しますしたの!」

 

「「お前が名前を名乗らないからぁっ……!!」」

 

『無茶苦茶言ってるぞお嬢、こいつら頭おかしいぞ』

 

「…………フェイト……、フェイト・テスタロッサ、お願いだからジュエルシードを渡して……」

 

「名前を聞かせてもらったから渡すとか一言も言ってないの」

 

「美少女に物をねだられてもねぇ?なのはで美少女は間に合ってるし、それに僕達急いでるんで」

 

『お……おのれらぁ』

 

「……奪い取る、そういうことしか出来ないよ?良い?」

 

「良いも何も、ねぇ?なのは?」

 

「そうだよねぇ、ユーノ君、私達向こうに行きたいだけだから……、一切合切の躊躇無く全力全開でここはぶち抜かせてもらうの、ねぇ?″フェイトちゃん?″」

 

 

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