魔法族とは杖を振るい呪文を唱えることで魔法を使い、空を飛んだり、対象を別の何かに変身させたり、果てには相手を一瞬で絶命させたりする特別な存在と言える。
だがそんな魔法族から見ても「彼ら」は更に特別な存在であった。
彼らは産まれた時から体のどこかに「黒い輪っかのようなアザ」があり、ある日「こことは違う異世界で生きた記憶」を思い出すと、その異世界での自分に変身する能力に目覚める。変身した姿のほとんどは屈強な戦士のものであり、この事から人々は彼らのことを「
変身したウォーガスは高い戦闘力を持つだけでなく、
そのためウォーガスは魔法使いの世界で大きな戦いが起こった時、前線に立って力を振るうのであった。
また魔法界には変身したウォーガス同士が戦ってそれを観戦する「不死者の決闘」という競技があり、これは空を飛ぶ箒を使った競技「クィディッチ」に比肩する人気がある。
「ふざけるなよ。誰が前線に立つかっての」
列車の中で座席に座りウォーガスについて書かれた書物を読んでいた
「大体何だよウォーガスって? そんな設定『原作』には無かったぞ。本当に何なんだよ、今回の『転生』は?」
一人で愚痴を言う刀也はいわゆる「転生者」という存在だった。しかも彼が転生してのは今回が初めてではなく、今回で二回目なのである。
一回目の転生は刀也が「ダークソウルリマスタード」のラスボスを倒してクリアした時、自分が使っていたキャラクターの姿となってダークソウルの世界に転生したことだった。
そして刀也が何回も死んで蘇ってを繰り返し、二回目のゲームクリアをすると、今度はこの「ハリー・ポッター」の世界に日本の魔法族の子供として転生したのだ。しかも「ダークソウルのキャラクターに変身できる」という転生特典付きで。
つまり戦士もどきというのはダークソウルのキャラクターに変身できる能力を持つ者達のことで、それだけなら刀也も特に気にしなかったのだが、ここに一人の人物が現れたことで話は大きく変わることになる。
アルバス·ダンブルドア。
この物語の主な舞台となる魔法使いの学校ホグワーツの校長を勤めている、世界でもっとも偉大な魔法使いとされている人物。
ダンブルドアはこの十数年くらい前から、世界各地のウォーガスの子供が生まれた家に直接足を運び、ウォーガスの子供をホグワーツの生徒としてスカウトしていた。そして当然ダンブルドアは刀也の家にも訪れ、刀也が父親の仕事の都合で幼い頃から英会話を習っていることに加えて、両親がダンブルドアの大ファンであったことから、刀也のホグワーツ入学が決まってしまったのである。
(ダンブルドアがウォーガスの生徒を集めているのって、主人公のハリーと一緒にラスボスと戦う戦力に育てようってことだよな? 本当に勘弁してくれよ。ようやくあの無限地獄のようなダークソウルの世界をクリアしたのに、どうしてまた命をかけた戦いなんてしないといけないんだよ?)
刀也はダンブルドアが自分を含めたウォーガスをスカウトする理由を想像すると内心でため息を吐いた。
(とにかくこうなったら主人公のハリーは勿論、他の生徒とも極力関わらない方がいいな……)
流石に目の前で襲われている人がいれば助けるが、自分からわざわざ厄介事に首を突っ込むつもりはない。刀也はそう決めると、手に持っていたウォーガスについて書かれた本を閉じて別の本を取り出し、ホグワーツに着くまで読むことにした。
数時間。刀也を含めた生徒達はホグワーツの校舎に到着した。
前世でハリー・ポッターの映画を観たことがある刀也が、映画と全く同じホグワーツの校舎を見て軽く感動していると、新入生が入る寮を決める儀式が始まった。
ホグワーツにはグリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリンの四つの寮があり、「組分け帽子」という喋る帽子を被ることで組分け帽子が生徒の資質に合った寮を決めるというのが寮を決める儀式であった。
儀式で主人公のハリーは物語と同じくグリフィンドールとなり、他のこの物語の中心にいる人物達もを物語と同じく寮となっていった。そしてついに刀也の寮を決める時がやって来た。
「ザントー·トーヤ」
ホグワーツの副校長でグリフィンドールの寮監であるマグゴナガル教授がやや言い辛そうに刀也の名前を読み上げる。
苗字のイニシャルが「Z」であるため最後の生徒の上、新入生で唯一の日本人だからか全ての生徒達の注目が刀也に集まる。その事に若干の居心地の悪さを感じながら刀也が組分け帽子を被ると、頭の上から組分け帽子の声が聞こえてきた。
「ほぅ? 君は戦士もどきだね? 今年の新入生で戦士もどきは君だけだよ。しかし難しい……。戦士もどきは異世界の記憶のせいか複雑な心の持ち主が多いのだが、君はその中で特に難しい」
組分け帽子は悩み考えるような口調で刀也に話しかける。
「勇敢さと臆病さ。好奇心とそれを諌める心。他者とのふれあいを求める気持ちと他者とのふれあいを恐れる気持ち。全く正反対の心が丁度同じくらい君の中に宿っている。君はかなり力のある戦士もどきのようだが、異世界でどんな生活を送っていたのやら……」
刀也は組分け帽子の言葉を否定することはできなかった。あの複雑怪奇で危険に満ち溢れたダークソウルの世界で、自分と仲間と思った人物の死を何度も経験した刀也は、自分の心が普通ではないという自覚があったからだ。
「その中でも特に強いのが慈悲と冷酷さ。君は一度仲間になった相手をとても大切にする慈悲深さを持っているが、必要となればその相手を自分の心を押し殺して手にかける冷酷さも持っている。……ふむ、決まった。君に相応しい寮は……スリザリン!」
(スリザリンか。……ん?)
『『ーーーーーーーー!』』
本音を言えば物語でもあまり話題に上がらないレイブンクローかハッフルパフが理想であったのだが、主人公がいるグリフィンドールよりはマシだと判断した刀也が組分け帽子を頭の上から下ろすと、スリザリンの生徒達が集まっているテーブルから割れんばかりの歓声が上がった。
「何だ? 一体何をそんなに喜んでいるんだ?」
「それは喜ぶさ! 何といっても君はスリザリンで最初の戦士もどきなんだからな!」
「ホグワーツには他にも戦士もどきが何人もいるけど、どいつもこいつもスリザリン以外の寮に行っているんだ。だから歓迎するよ、戦士もどき!」
刀也がスリザリンの生徒達が集まっているテーブルに行くと、最初はほとんど彼に無関心であったスリザリンの生徒達全員が笑顔となって刀也を歓迎してくれた。その事に刀也が首を傾げて疑問を口にすると、上級生と思われる二人のスリザリン生が説明してくれたのだが、それはあまり他者と関わりを持ちたくない彼にとって決してありがたくない内容であった。
「これまでは他の寮の戦士もどきが戦う不死者の決闘を眺めているだけだったがこれからは違う! これからはスリザリンが不死者の決闘の頂点に立つ! 覚悟しとけよ、お前ら!」
突然の展開に刀也が戸惑っていると、今度は別の上級生が他の寮の生徒達に挑戦じみた言葉を叩きつけ、次に刀也の方を見てきた。
「さあ新入生! お前が変身した姿をあいつらに見せつけてやれ!」
「ええ!? ここで? それは……ん?」
他の寮の生徒達を指差して言う上級生の言葉に驚きとっさに断ろうとした刀也は、気がつけば他のスリザリンの生徒達が期待するような目で自分を見ていることに気づく。
「仕方がないな……分かりましたよ」
流石にこの空気の中で断る勇気は持っていない刀也は、観念するとスリザリンの生徒達の前に進み出る。戦士もどきは変身する際にそれぞれ異なる呪文を唱える必要があり、刀也はスリザリンの生徒達だけでなくホグワーツの全生徒が見守る中で自分だけの変身の呪文を唱え始めた。
「突撃するぞ!
我が剣と炎は鋼すらも切り裂き燃やし尽くす!
我が鎧は岩山の如く全ての攻撃を弾き返す!
我こそは猪の戦士!
我が名は『ガンガ』!」
刀也が呪文を唱え終わると彼の体が一瞬光に包まれて、光が収まるとそこにはホグワーツの新入生ではなく一人の屈強な戦士の姿があった。
岩石と鋼鉄の塊。
刀也であった戦士の印象はその一言でつきた。
鋼鉄でできた猪の兜を被り、岩を削りだしたような大鎧を身につけ、滑らかな曲線をした鋼の手甲と足甲を手足に装着し、まるで槍のように長くて細い片刃の剣を右手に持った姿は、どこか東の国の戦士のように見えた。
『『…………………………!?』』
(あ~あ、やっちゃった……。これからどうなるんだろう、俺?)
戦士に変身した刀也の姿にホグワーツの生徒達だけでなく教師達もが驚いて目を見開き、それを見た刀也はこれからのホグワーツでの生活に不安を抱き内心でため息を吐くのだった。
キャラクター名:ガンガ
右手:物干し竿
左手:呪術の火
頭:牙猪の兜
体:ハベルの鎧
腕:カタリナガントレット
脚:カタリナレギンス
続かない