試合が終わり、控え室に戻ってすぐミスリルの力を使ってみる。
今回は少し体が軋む程度で、それ以外はなにもなかったが、たまに、確実に制御できるレベル以上の力を使うと、流れている水みたいになかなか歯止めが効かず溢れることがあるので普段以上の力を使った後は確認を怠ってはいけないのだ。
そして、安心して落ち着く暇もなく次の試合の準備をするよう控え室の外から声をかけられた。
僕は渋々準備をし、結界内に分身体を作る魔法陣に触れた。
すると、次の瞬間内部アリーナの結界内に飛ばされ、程なくしてレイラが現れた。
試合開始までに少し時間があるためその間に会話をする。そのために近づこうとしたらレイラは割と大きめな声で喋り出した。
「やあテス。これからよろしくね」
『いきなり呼び捨てだ。馴れ馴れしいねこいつ』
若干ミスリルの言うことに同意をするが、ちょっとミスリルの言い方がトゲトゲしい気がしなくもない。
けど、向こうから話しかけてくれるのは割と好都合だ。たまに会話をしようとしない奴がいる。
というか、会話しない奴の方が多い。たぶん。
「君の能力は力を操るんだよね?魔法とか色々なものを」
「なっ!?」
『うっそ!?なんでわかったの!?まさか、さっきアシュー?に話した言葉が聞こえてたの!?』
いやっ、それはない。結界内の音は結界外には一切聞こえないし、アシューの炎で隠れてたはずだから口の動きを見られたわけでもないはずだ。
『じゃあもっと謎じゃん!!』
そう、さっき僕が言った通り、なぜ知っているかが本当に謎でしかない。
相手の能力を見破る能力かとか考えたが、その線は薄い。
もし相手の能力を見破る能力ならあの桁外れの怪力の説明ができなくなるからだ。
身体強化魔法なんかじゃ子供の身体能力をあそこまで上げることはほぼ不可能に近いし、大人だってできない人がほとんどだろう。
見た目は普通の人間だから、人間以外の怪力を持った種族という可能性も低い。
あかん。考えれば考えるほどわからなくなる…
「……どうして知ってるんですか?」
「あっはは。そう警戒しないでよ。あと敬語もいいよ!」
そう言ってヘラヘラと笑いながら軽いノリで返してくる。
すると急に顔が少し真面目な顔になり、人差し指と親指で輪っかを作って、それを左目に当てながら口を開いた。
「私の左目は…義眼なんだよ。その義眼に込められた能力が、相手の使った能力や魔法の特性とかの情報を教えてくれるんだよ。さっき遠目で見た感じだと、肉体の中の力には影響しなさそうだね?私と相性最悪だね!」
そう言ってさっきのポーズのままニカッと笑った。
僕は正直レイラの言葉を疑ってはいない。実際レイラの左目は右目の黄色とは違って真っ赤で、本来白い部分は赤黒い色をしているからだ。
それに、そのタイプの義眼があることも作り方も知っているのでレイラの言葉を信じざるを得ない。
ただ、少し気になるのがどうやってその義眼を入手したかだ。
場合によっては普通に犯罪だし、ていうか、普通作ったら即死刑ものだ。チート臭い能力持った義眼だし。
だから、おそらくは資格とか権力があるものが渡したのか、ヤバい奴が渡したかのどっちかだろう。
後者の場合はバレた時点でレイラ自身にも罰が与えられているはずだから可能性としては低いだろうけど。
とか色々考えていると試合開始の合図が聞こえ、レイラの「いっくよ〜!」という声とともにレイラが消えた。
それに対し僕はすぐに風魔法を使い、さっきまでより少し力を分散させた状態で構える。
するとすぐに左斜め後ろからレイラが現れ蹴りが飛んでくる。
そこに合わせて構えておいた風魔法をレイラの体にぶつけ吹っ飛ばす。
流石にレイラ自身も子供のため体重を操作してない限り吹き飛ばすことだけなら出来る。
吹き飛んだレイラに突っ込むふりをし、レイラが現れた場所に近づく。
そして、魔法の痕跡を調べてみる。するとやっぱり転移魔法だった。
『テス、あの子やばすぎるね。その辺の子供が転移魔法を使えるわけがない…』
そう、ミスリルの言う通り子供が転移魔法を使うことが難しいのだ。
転移魔法はまず、魔法を展開し自分の位置と転移したい場所を正確に指定して、そこから移動する速度を指定し、出てくる時の体制や体の向きを設定、その後に魔力を消費して始めて成立する魔法なのだ。
普通の子供は魔法発動までの工程が多過ぎて魔力を消費するより先に失敗する人がほとんど。
それに、失敗の仕方にもよるが、場合によっては体の一部だけが転移するとかいうわりとムゴいミスをする人が多い。
だから、この魔法は基本的に魔法専門の兵士や魔法使いなどのミスをすることが極めて少ないという人物達が緊急用に使う場合がほとんどで、一般的には使う人がほとんどいないのだ。
ただ、レイラはそんなのを無視して無詠唱で短時間の間に魔法を発動ししかも完璧に転移してきた。
これは、おそらく将来とんでもない化け物になる。
ただ、そんなに悠長に考えてられる暇もなく、ガンガン攻めてくるレイラに反撃を加えつつもなんとかやり過ごしている。
ただ、このままではレイラ対ワーグナーの時みたいな耐久戦になりかねない。
そうると不利なのはこっちで、早く決着をつけなければ行けない状況になった。
ただ、ここでまた許容範囲外の力を出すと暴発しかねないため無闇に使えない。
だから今僕の状況は非常に悪い。早く決着をつけにいかないといけない上、さらに出来る限り慎重にやり合わなければいけない。
そして、今はお互いに一切攻撃を受けていない。だから僕は一撃で決めにいくことにした。
そうと決めたからには全力で魔法を使う。無詠唱なんて言ってはいられない。
「
そう叫ぶと、左右の手からそれぞれ炎魔法と雷魔法が出てきて、それを
そして、飛ばしたあとすぐに小声で「
レイラは当然避けたが避けた地点で炎と雷がぶつかりちょっとした爆発が起きる。
それに触れた地面がありえないほどの高温になり、一部蒸発した地面が現れる。
そこにさっきの水魔法をぶち込み大爆発を起こした。
僕はあらかじめ硬めのシールドを作り身を守ったが、シールドごと貫通して僕自身も吹き飛ばした。
もちろんレイラも吹き飛んでいるため試合は引き分けとなった。
再戦は基本的には行っていない。それはもちろん分身体とはいえ作るのにも結構な体力を消耗するし、何度も死ぬ気分を味わうのは心地いいものではないため、出来る限り戦闘する回数は減らす様にしてあるからだ。
だから、結局は優勝トロフィーをレイラと2人で並んで受け取り、2人で掲げてトーナメントは幕を閉じた。
そのあと、トロフィーはレイラに渡すと言ったが、それは不公平だと言って結局レイラが公平だと思う場所に置いてきてくれることになった。
そして、もちろん僕はあんなヤバい爆発を起こしたことでいつのまにか有名人になってしまっていたらしい。