愛される少年は運命を捻じ曲げに行きます!   作:春山三冬

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20:空腹って恐ろしい

あの後は僕が散々モフっていたらついに魔力の壁がぶち壊されて3人と一匹にフルボッコにされた。

巻き込まれたキールには後でちゃんと謝っておこう。

そう思いつつ謝罪を述べてみるもまあ当然許してもらえるわけもなく、3人と一匹に完全に無視される。

 

あ、あとちなみにミスリルもシトリーも何も反応してくれない。

 

うーん、何とかしてみんなと和解したいんだけどなぁ…

どうしたものか…

うーん…こういうのはできるだけ早いほうがいいんだけどな…

 

昔も喧嘩してそのことを先延ばしにした結関係を元に戻すのに苦労したテスの前世の記憶が今のうちにどうにかした方がいいことを告げる。

でもはっきりいうとどうにかできる気がしない。

 

唸りながらどうしようかと悩んでいたら隣からも唸り声が聞こえた。

まぁ、この場で声を出すのは僕かキールだけだから、キールだろう。

 

視線を横に向けると案の定食堂のパンを片手に今日習った部分を復習してるキールがいた。

この状況で昼食べながら勉強するとかマジかこいつ!?とは思ったけど、パンを見てると変にお腹が空いてきた。

 

というか、キールはいつのまに食堂に行ったんだろう?

ついついいらんことを考えてしまう。

 

一度考え出したらもうダメで、興味はそっちに引っ張られる。

パンのことを考え出したらどうしてもお腹が減ってきて、物の見事に僕のお腹から音がした。

 

その音にプッと吹き出して笑いそうになった奴がいた。

まぁ意外にもそれがアシューで、今も必死になって口を押さえて堪えている。

 

アシューの笑いのツボが変なところにあるのか浅いだけなのかちょっと気になったけど、空腹には勝らずついついキールの手にあるパンに意識が持っていかれる。

そんな感じの僕に気づいたキールは「テスも食べるか?」といって食べかけのパンを僕の口当たりまで持ってくる。

ここまで来ればわかるだろうけど、その後にキールは「あーん」と若干ニヤつきながら言ってきた。

こいつ全く反省してないな?と思いつつもその目の前に出されたパンに食らいつくか、大人しく別のパンを自分で買ってくるか迷っていると、横からニュッと手が伸びてきて、キールの持っていたパンが奪い取られる。

 

そしてそのパンを持っている白い腕には若干力がこもっているのか、パンが握りつぶされている気がする。

そして、そのパンをその白い腕の動きに合わせてキールの口の中に突っ込まれた。

 

キールはちゃんと口で受け止めたけど、パンを咥えているので何か喋ろうとしていてもいてさい伝わってこないのがちょっと面白さを醸し出している。

そんな姿を眺めていると、どこからともなく紙袋が現れた。

 

そして、それをキールが開けた。

それと同時に先生のいなくなった教室にまだ温かいパンの香りが立ち込めた。

ちょうどお昼時で、お腹が空いているのに、空腹状態の僕らには非常に殺意が高い。

 

僕たちは揃いも揃ってその紙袋に視線を集めてしまう。

それを見たキールがうっすら笑みを浮かべて口を開いた。

 

「これはあんたらの分や。好きに分けて食べ?うちにはうちの分があるから気にせんといてな」

 

といっても自分の分と思わしき紙袋を、またどこからともなく取り出した。

キールが一緒に食べよ?と言わんばかりにこちらを見つめてきた。

 

もう、僕の目にはその顔が神々しく見えて、キールが救いの女神に見えてしまった。

それほどまでに煽られに煽られまくった食欲は絶大だった。

 

それはもちろん僕以外のみんなにも言えることで、アシューもレイラもエリーもみんなキールに喋りかけはしないが無言でその紙袋の中身を掻っ攫っていった。

ちなみにソフィアはいつのまにか寝ていたので放置されている。

 

そんなことは置いといて、僕も早くお昼ご飯を食べたいので紙袋の中にのおっているものが何かを漁る。

ただ、そこでわかった。この紙袋には何も入っていない。他3人が全部掻っ攫っていったのだ。

 

流石の僕でもこれは許されざる行為なので何とかして取り返そうかと模索していると、横からまたもやキールが話しかけてきた。

 

「あちゃー、テスだいぶ意地悪されてんな〜。しゃーない、うちの分けたるよ。ほらっ、もうちょいこっちきいや」

 

そう言って少し空いてる距離をさらに詰めろというキール。普段ならちょっとは気にするであろう距離感になりそうだが、今ばかりはキール様に逆らうことはできない。

 

僕は言われた通りキールにさらに近づいて、ほぼゼロ距離まで来たところで耳元でキールに「ほらっ、あーん♡」と囁かれてしまう。

ちょっとゾクゾクきたが大人しくたべようとくちをひらこうとする。

ただ、ここで気づいたのだが、なぜかものすごいデジャブを感じる。

 

このままではキールが危ないか!?と思いつつも食欲とキールには抗えず、あと少しでキールのあーんを受け入れるというところで、やっぱり腕が伸びてきた。

ただ、今回はさっきと違って3本の腕が同時に伸びてきて、その手にはそれぞれパンが握られていた。

 

そして次の瞬間、キール、アシュー、レイラ、エリーの4人同時に口の中に勢いよくパンがぶち込まれて、勢いでそのまま軽く後ろに吹っ飛んでいった。

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