もうやだ
あの後一人一人の部屋を訪ねて了承を得た。
正直言って僕は全く持って必要なかったと言っても過言じゃない…というかほんとに先生の隣にいるだけだった。
先生は出会って初日だから警戒されていると思っていたらしいが、『勝利の女神』としての今までの行動と、そこからくる信頼で誰1人として抵抗することなく先生の提案を受け入れてくれた。
僕も一応先生に「これ僕いりませんよね?」と聞いてみたはみたが、隣に誰かいるかいないかで不安が全然違うからとりあえずいて、と言われてしまったからには先生の隣で見守るしかできなかった。
そして、全員の部屋を回り終わったら、先生が礼をさせて欲しいと先生の自室に僕を連れて行った。
先生の部屋に入り、まず思ったことが
「なにこれ広すぎるでしょ…」
そう思わず口に出してしまうほどには馬鹿でかい部屋だった。
とても1人用の部屋とは思えない。
多分その辺の貴族の屋敷の部屋よりでかい。
部屋のデカさに心の底から驚いているといきなり『なんだこれ馬鹿でかいじゃん!!』と騒がしい声が聞こえてきた。
さっきまでずっと黙りこくってたミスリルがいきなり叫ぶもんだからさすがにびっくりした。
その声はどうやら先生とアリスにも届いていたらしくアリスが『ミスリルもよかったらここに住まない?』と提案していた。
そこからはミスリルとアリスがなんか『お話ししてくる!』と言って僕らに会話が聴かれないようにしたようだった。
2人の話し声が聞こえないだけでこの部屋はずっと静かになった。
いや、側から見たらほんとに静かなのだ。だって一般人には神の声は聞こえないから。
そんなことを考えているはいるが、実際は僕の心の中は焦りでいっぱいだった。
理由は簡単で、単に先生が無言を貫いているから、こちらもそれに気圧され何か言おうとできないのだ。
そして見つめ合うこと大体十分。ようやく先生が口を開いたくれた。
「なぁテス。その、早速だが明日私の師匠の元にいくと話しただろう?」
「そうですね、ちょっと急すぎて聞いた時にはびっくりしました」
「入学2日目に何させるきだってなるとは思うけど、お前らは今のままでも国の即戦力になることは自覚しているよな?」
僕は先生の問いに無言で頷いた。
そう、僕ら特別クラスの人間は、『勝利の女神』であるヒエル・シュバイトが見込んだ化け物集団という認識をされている。
それはあながち間違っていなくて、まだまだ経験を積まなきゃいけないアシューやキールを除いて、エリー、僕、ソフィアは学校の規則に従って3級からということになっているが、実際の実力は一級レベルなのだ。
そしてこの学校での1級は、少佐から中佐レベルに相当する。
この国の軍では完全実力主義なので3級の底辺であっても二等兵ほどの実力はある。
この学校に通う時点で戦争時、軍の要請があれば兵として戦場に出ることが義務となっている。
子供に何てことをさせるのか!という批判的な声はもちろんあるが、現にこの国の今の陸軍大佐は14歳の子供が勤めている。
14歳にもなればアシュー、キールをのぞいた特別クラス生は大佐に劣ることのない実力を手にするはずだ。
しかし、この国は子供に頼るしかないほどには軍事力が弱く、完全に先生頼りになっている。
だから、きっとこんないきなり年齢を無理やり上げるなんて行動を取ることになったのだろう。
ここまで僕は予想した上で先生の案をのんでいるのだ、僕としても『勝利の女神』を信頼している。
その思いを込めた僕の頷きを、先生がどう捉えたかはわからない。
ただ、変な方向には受け取っていないのだろう、その証拠に先生はさっきの話を進めて行った。
「そこで、だ。私の師匠はこの国には住んでいない…というよりどこの国にも所属していないから、何かと食が淡白になると嘆いていてな。次来る時は何か食べものを持ってきて欲しいと言われているんだ。だから、その師匠への手土産を今から一緒に選んでもらえないか?」
「え!?あー。まぁ別に大丈夫です。でも今からですか?もう消灯時間間際ですけど…」
「いちいちそんなこと気にするな、私が許可を出すから、いくのか?いかないのか?」
そう、再び問う先生の顔は、やたら真面目だったが、どこか怯えている節がある気がする。
先生の師匠は…どこまで恐ろしい人物なのか今から怖くなってきてしまった。
ただ、そんなことで先生のお願いを断るわけにはいかないので、僕は了承した。
流石にお互い少し着替える時間が欲しいので僕は一度自分の部屋にもどり、パジャマから外出用の服を選び、着替えようと服を脱いだ。
そして、いきなり部屋の中に先生が現れた。
ほんとになんの前触れもなく。僕は驚きのあまり「きゃーっっっっ!!!???」なんて悲鳴をあげてしまい、隣の部屋のエリーとアシューがその悲鳴に気づいたようで勢いよく僕の部屋に飛び込んできた。
そして、そこからは地獄だった。
僕はズボンを着替えようと思っていたので、先生合わせて3人に僕のパンツが見られることになった。
アシューとエリーは僕のパンツを食い入るように見ながらどういう状況かとブチギレていて、先生は先生で2人にといつめられる僕を静観していると思えば、視線の先には僕のパンツだった。
僕が恥ずかしさと怒りでワナワナと震え始めたタイミングで、窓からソフィアが帰ってきた。
さっきまでどこかに出かけていたようで、帰ってくるなりこんな状況だったので驚きつつも、先生とアシューエリーを部屋の外に追い出してくれた。
僕はそのことに素直に感謝して、礼をすると伝えたところ、今度同じベットで寝させて欲しいとのことだった。
その程度のことならなんら気にする必要はないし、僕としてもモフモフを触れるのでむしろウェルカムだった。
徳しかないことに喜びつつ、着替えを済ませ部屋を出た。
部屋を出ると先生しかいなかったので、おそらく2人をなんとき説得して帰ってもらったんだろう。
「よし、では、デっ…デートに、行こう」
そう言って僕の手を取り先生は歩き出した。
僕もその手を握り返し、先生の横をついて歩いて行った。
2人の真夜中のデートはまだ始まったばかりだ。
<神様side>
『ねぇミスリル、うちのリリってちょっと歳の割にはウブ過ぎない?』
『リリ?もしかしてヒエルの本名?』
『そう、リリアン・シュバイト。で、あの子何手を繋いだくらいで顔真っ赤にしてるのかな?』
『まぁ確かにすっごくウブだね〜。しかも相手は6歳児…ショタコンか何か?』
『そんなはずない…よね?』
『まぁ、とりあえず今はボクたち2人で生暖かい目で見守っておこっか』
『そう…だね』