「やぁ、リリアンの生徒たち。私はマードロスト…ロスとでも呼んで」
そういってこちらを向き、優しい笑みを浮かべる先生の師匠。
髪型のせいで左目は見えないが、見えている方の目の色は透き通るような青色で、僕らを見つめるその目はまるで僕らの心の奥まで見透せそうだった。
「うん。事実私は君たちの心が見えるよ」
『っ!?』
この場にいる先生とアリスを除いた全員が思わず目を見開いた。
驚いたのはもちろん、ミスリルたちまで驚いていた。
その驚いた様子を見て、満足げに頷く先生の師匠。
「師匠、私の名前は———「あーあー、リリアンなんて可愛い名前は勝利の女神には似合わないとかいって名前変えたんだっけ?せっかく私が名前をつけてあげたのに、ひどいねぇ」———チッ」
そう言ってからかうように先生に話しかける先生の師匠と、それに対し明らかに嫌そうな顔をして舌打ちをする先生。
そして、自分たちの心を当然のように読みなんでもないふうに告げてくる先生の師匠に僕たちは警戒せざるを得なくなり、無言で見つめる。
ただ、この中でボクが1番先生の師匠のことを警戒しているだろう。
だって、あの力の正体が全く読めないのだから。
『なにあれ、グルーシャの能力か何か?』
『ごめんテス、ボクにはわかんない…でも、グルーシャの力なら私が察知できる』
『なら…あとは魔法かな?』
『それすらもわかんない。とりあえず、今は様子見としか言えないね』
ミスリルですら知らない力、それだけで僕は不安を覚えずにはいられなかった。
僕の今までの6回の人生で、一度たりとも心を読む力なんてものを持ってる奴はいなかった。
僕はミスリルとの短い会話で、警戒心が一気に強くなった。
もし仮にあれか魔法だったとしたら今までに存在してない魔法だ。ただ、それらしき魔力は感じないので、心を読む魔法から出る魔力はこの部屋には溢れているから何百、何千とも取れる魔法の中の一つなのかもしれない。
それすらわからない。もしくは、わからないようにしているのだとしたら、僕はこの人が心底恐ろしい。
注意深く先生の師匠を見つめていると、先生の師匠がこちらを見ることもなく話しかけてきた。
「まぁ、そんなに警戒しないでテスくん。別に危害を加えるつもりなんてないからそれよりも…」
先生の師匠がそう言ってずっと何かを描いていた手が止まり、ペンをおいたその瞬間みんなも先生もソフィアすらも消えた。
それに対して僕はみんなが消えたことを認識したときつい反射的に先生の師匠に攻撃を仕掛けようとした。
しかし、使おうとした魔法は、発動するまえの魔力を込めた瞬間で打ち消された。
僕自身は驚いているが、先生の師匠はというとさっきからずっと座っている場所から一切動くことなくこちらを見つめている。
そのままの状態でまだ話を続けてきた。
「君と話がしたい。といっても、君は私と話す余裕はなさそうだね」
そういって笑顔でこちらを見つめる先生の師匠を僕は睨みつけながら全力で今起こった出来事を理解しようと試みた。
まず、みんなの行方だが、転移魔法どころか魔法が使われた痕跡すらない。
そして魔法が消えたこと、試しに一回転移魔法で抜けられるか試してみたところ、全くダメだった。
構築し、魔力を注ぎ、転移先の座標などの細かい設定をしようとした瞬間魔法が消された。
そして、これが魔法結界のリメイクだと気がついた。
本来普通の魔法結界は魔法の術式の構築から打ち消すため術式に魔力を注ぐ前に消えるの魔法での魔力の消費はない。
ただ、この結界は魔力を注ぎ終えて次の細かい設定の部分に入った瞬間打ち消すため、無闇に魔法を撃つと確実に魔力が減る。
挙げ句、今までと景色が本当に全く変わっていないため、おそらく結界自体は不可視。
だが、そこそこの魔力を込めた魔法を撃とうとしたのでこの結界自体に込められた魔力量は非常に多い。
あくまで推測だが、隔絶結界に似た特性も含んでいるのか、結界外からの全ての情報の遮断により結界外の音や魔力の流れがわからない。
ただ、光だけは例外なようで、景色が変わっていないのがいい証拠だ。
そこまで理解し、次の瞬間には相反之力で結界を消そうとした。が、その瞬間体が動かなくなった。
見ると真っ黒な鎖が僕の足元から生えていて、僕を完全に拘束していた。
そして、そんな僕を見てパチパチと手を叩きながら先生の師匠が立ち上がり、僕の近くに歩いてきた。
「すごいねテスくん。私のはった結界の効果をそこまで一瞬にして読み取り、ついでに瞬時に自身の力でなんとか対抗しようとできた人は少なくとも今回はリリアンと君以外いなかったよ。そこは素直に称賛しよう。ただ、少しはこちらの話も聞こうか?」
先生の師匠の笑顔には確かな圧と怒りがこもっていて、なぜか僕がそれに恐怖を感じた。
そして、先生の師匠は抵抗をする暇も与えず僕を拘束したまま、どこからともなく現れた椅子に僕を座らせた。
もちろんこれも無理やりでなんとか抜け出すために相反之力を使おうとした瞬間、違和感に気がついた。
ミスリルの力が使えない。
ミスリルの反応すらない。
魔力の流れを感じない。
いやでも気づくし、僕の本能がかつてないほどの危険な存在だと教えてくれる。
初めて本気で死を覚悟したエンシェントドラゴンよりも危険と感じて、今までされてきたどんな拷問よりもこいつの存在自体が恐ろしく感じた。
全身から溢れる恐怖の感覚が、こう告げている。
こいつは…化け物だ。
そう心の底から思った時、なぜか口にしてしまった。
「この…化け物が」
そう口にしてしまった時、自分でも感じるほど僕の口角は釣り上がっていた。
〈いろんな設定の説明コーナー〉
このコーナーでは説明しないと理解不能になるかもしれないレベルの独特な設定をつけたがる私の作品を少しでも楽しく読んでもらえるようこの作品の設定などを説明します!
というわけで今回は〜、今回の話に出てきた結界魔法についてです!!
〜結界魔法〜
魔法において、数少ない生粋の防御魔法。
この魔法は特殊で、魔法は本来術式を展開した後魔力を注いでから細かい設定をするのだが、結界魔法は術式を展開してすぐに設定をし、そのあと魔力を注ぎ魔法が発動するのです。また、結界魔法による結界は魔力の塊みたいなもの。
結界魔法は内側から外に出られないのと外側から内側に干渉できないようにする二つの性質がある。
ただ、基本は光も音も空気も通し、明らかに形をもつもの以外は通してしまうことが多い。
また、注いだ魔力量に応じて結界の魔力の密度が上がり、光や音も通しにくくなり、強度も増す。
昔はこの魔法は守るために使われていたが、最近では封じ込める時に使ったり、光や音だけを通さない結界だったり、完全にこの世界と内部が隔絶される隔絶結界などがある。
隔絶結界はこの世界とは別の場所だと判定されるので、神や創造神ですら手が出せない…が、ものすごく魔力を必要とするし、完成できるものはほとんどいないと思っていい(隔絶結界を完全に作れるのはマードロストと全盛期テスのみ)
魔法結界はその名の通り結界内の魔法を術式を組み立てる時点で分解し、結界外から結界の表面に触れた魔法も分解する魔法。
基本は完全に透明で、使われていることが気づかれにくい結界だが、外側からの攻撃は結界に込めた魔力量以下の魔力が込められた魔法でないと分解できず、それ以上のものだとあっさり壊れる。(内側からだと込められた魔力量に応じて効果時間が伸び、対処法は魔力結界に込められた魔力量以上の魔力で結界内を満たすこと)
しかも基本は魔力しか防げないため人が入ってきたり、魔力の関連しない攻撃は余裕で通すのでほとんどの場合魔力結界と通常の結界は同時に同じ術式に組み込み、二つの効果がある結界として使用されることが多い。