愛される少年は運命を捻じ曲げに行きます!   作:春山三冬

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29:少し、お茶しよっか

「化け物…ねぇ」

 

縛り付けられたまま、僕はそう呟いた目の前の化け物を睨みつける。

ミスリルの力が使えない、魔法も使えない。

おまけにフィジカルは6歳児くらいとかいう最低クラス。どう考えても勝ちはない。

というかなんならそもそも縛られていて身動き一つできない。

 

こうなったのも全て、みんながいなくなって動揺して、冷静に物事を考えられなくなっていた僕自身のせいだ。

そうだ、隔絶結界を平気で作り出すような、ここまで莫大な魔力と魔法の数を平気で操っている化け物に勝てるわけがない。

それに今は、ミスリルもいないし力も使えない。さっきの口ぶりからするに他のみんなは無事なのはわかっているが、ミスリルだけがわからない。

この鎖が原因なのはほぼ確実なんだけど、それがミスリルをどうしているのかが全くわからない。

 

とにかく、ミスリル自身がどうなったかと、無事かさえが分かれば、おとなしく抵抗を止めるつもりではある。

もちろん、この心も読んでいるだろう。少なくともさっき言っていたことが本当なら。

 

「ああ、読めているとも……そんなにミスリルが大切かね?って、聞くまでもないか」

 

そいうと、体を拘束していた鎖がふっと消えて、その瞬間魔力の流れを感じた。

 

『ミスリルッ!!』

『わぁ!?な、何!?』

『だ、っ大丈夫…なの?』

 

「よかった…」

 

魔力の流れを感じてすぐに呼び掛けたら、すぐに返事が返ってきて心の底から、安堵しているのを感じる。

多分、さっきのミスリルの反応を見るにいなくなっていた間は意識も何もなかったのだろう。

本当に良かった。

 

「私には理解ができないんだ」

「何がですか?」

 

いきなり話しかけられて、少々びっくりしたが特に何もせず僕の冷静な判断ができなかったことを間接的でも直してくれたので、きちんと返事はする。

そんな僕を鬱陶しそうな目で見てくる先生の師匠。

多分だけど、心が読めているから心の中でそんな感動の再会みたいなことをしないでほしいのだろう。

なんか、そんなふうな鬱陶しそうな顔をしている。

かと思えば睨みつけるような鋭い視線になり、少し重々しい雰囲気を出しながら口を開いた。

 

「私には理解ができない。ミスリルは、その力は、君のごく普通だった人生を全て壊した張本人だろう?」

 

「いや、人と言っていいのか怪しいところだが」そう続けながらまっすぐ、少し睨むようにこちらを見ている。

いや、僕ではなくミスリルを見ているつもりなのかもしれない。

が、この先生の師匠からの質問は3回目の人生を歩んでいるときに言われたら、きっと肯定したい気持ちが少しでもあったかのかもしれない。

 

「それは事実ですね。疑いようもない」

「そうだろう?私は知っているんだ。君が、幾万幾億という命を奪ってきたことも。助けを求められても、感情を殺し目の前の命を奪ったことも。その中に、君の大切な仲間、親友、家族がいたことも。そうなった原因は全て、その君に宿った力と、神のせいだ。なのにどうして?」

「どこで知ったか、後で教えてください。情報交換ですから」

 

そういうと先生の師匠は僕の発言を鼻で笑い、ずっと隠れていた左を髪をかきあげて見せてくれた。

そこには黄色…というよりは琥珀色に近い綺麗な目があった。

ただ、その目からは尋常じゃないほどの魔力が溢れていた。

 

人数十万人分の魔力とかのレベルの話ではない、それ程までにありえないくらい莫大な量の魔力。

僕自身魔力の耐性は強いが、まだ子供だし、こんな量の魔力を浴びれば気分が悪くなる。

それを察したのか、先生の師匠は魔力を抑えてくれた。

 

「私の左目は元は自分を中心に半径2kmほどの範囲で起きたすべてのことを私の脳に情報として流し込んでくるものだった。ただ、昔の私はこれでは満足できなかったらしく、この目に数多の制限をかけた。例えば、手に入れた情報を情報の元になった人物以外には情報を伝えることを不可能にする…だったり、得た情報の処理は自力ではできなくするだったり、そんな制限をしてようやく私は手に入れたんだ。この星で起きた出来事は全て私の脳に情報として流れ込むようになり、世界中の命の心すらも情報として流れ込んでくるようにした」

 

そう言ってニタリと薄気味悪い笑みを浮かべ自慢げに語りかけてくる。

 

「つまり君の全てを私は知っている。私相手に情報交換なんて不可能だよ」

『そう言いながら丁寧に説明してくれるあたり、優しいところはあるんだ』

「僕も全く同じことを思ったよ、ミスリル」

 

この人が優しいことに違和感はなかった。

そもそも言っちゃ悪いけど、割と寂しがりっぽい先生に師匠として色々教え込めたのだからそらまあ優しい人なんだ。

ただ、初対面の人に対して、一緒に来た人をいきなり消すのは殺してなくても殺意を覚えるのは仕方ない。

 

「いや、私は何度も言ったはずだ、話をきけと」

「うへぇ…こないだまでみたいに心の中で思ったこと全てに反応されるのってほんとになんか気持ち悪い」

 

言い返すことができないので文句を言って誤魔化してはみるが、改めて、思考が全部誰かに筒抜けだということの君の悪さに気づいた。

ほんと、今までよく平気で生きてられたよ、なんて自分で思ってしまう。

 

「そういえば、なんで今までずっとテレパシー?使える状態にしていたんだ?」

 

それは全て、ミスリルが悪い。

このボクっ娘駄女神め!僕の今までの人生のプライバシーを返せ!!

 

『それは…ほんとにごめんじゃんテス』

「ははっ、アホな神がいるもんだな。まぁ、私の心を読む力に対処法はないからな。諦めるといい」

 

そういって高笑いする先生の師匠を見ながら、全くもって嬉しくないと心の底から思った。

そうしていると、どこからともなく机と椅子、そして机の上に乗っている茶菓子と紅茶が出てきた。

 

「少しお茶しよっか」

 

そう言われ、そのどこからともなく出てきた椅子に座り、その目の前の椅子に先生の師匠が座った。

椅子は木製で、触った感じ魔力はないし下から生えてきたり術式の形跡もない。

ミスリルが反応しないと言うことは愛されし者というわけでもないしグルーシャの力というわけでもなさそうだ。

多分今ここで作ったわけではない。が、隔絶結界内からどうやって引っ張り出してきたかがわからない。

 

そんなふうに悩んでいると、どこか満足げに先生の師匠は頷いているのが目に入った。

目が合い、こちらにニコリと笑いかけてから先生の師匠は手元にあった紅茶を一口だけ飲んでから口を開いた。

 

「残念。確かに私は魔法でその椅子を作ったんじゃない。それは君の予想通り。そう、“魔法”ではね」

「転移させたわけでもない…よね」

「あぁ、もちろん。答えは簡単。今この場で私が創造したまでだよ」

『っ!?それはおかしいっ!』

 

ありえない先生の師匠の発言に対し1番最初に反応したのはミスリルだった。

しかも、その反応は怒気を孕んでいる。

今までミスリルがちゃんと怒ったことなんて数えられるほどしかなかったから、今この瞬間怒ったことに少し驚きを隠せない。

ただ、先生の師匠は表情も顔色も変えずにこちらを見つめている。

 

「なにが…おかしいんだ?」

『その力は神にのみ許された力だっ。ただの人間が使えるわけがない!!』

「何をおかしなことを言う、力の神ミスリル。私は創造神だ。この隔絶結界の」

『は?』

「君らがいう隔絶結界は元の世界に一切干渉されなくなる…いわば結界魔法の頂点のことだろう?」

 

僕とミスリルは沈黙で肯定の意を表す。

ただ、先生の師匠の言葉の意味がわからない。

だから言葉の意味を必死に探り続けるしかない。

最初は1人で考えていたものの、いつの間にか落ち着いたミスリルが話しかけてきて、2人の知恵を振り絞ってその言葉の意味を探ってみる。

 

『まず、あいつはボクたちのいう隔絶結界は違うって言ってるよね』

『うん、もしかしたら解釈が違うのかも』

『いやでも、隔絶結界の原案はボクとテスだから解釈の間違いではない気がする…』

『ってことは、違う魔法?』

「いや、違うよ。私が使っているのは君らが最初に思いついた隔絶結界であっている。今でた二つの考えは両方とも不正解。ただ、強いていうなら解釈の違いの方が近いかもしれない」

「勿体ぶらず話してください。僕たちはあなたと違って心を読めませんので」

 

まあそう焦るな…とでもいうように先生の師匠はまた一口紅茶を飲み「私のことは先生の師匠じゃなくてロスって呼んでくれ」と言った後、一呼吸おき、話し始めた。

 

「隔絶結界は、この世界の創造神ですら結界内に干渉できないのは知ってるだろう?何せこの馬鹿げた魔法を作ったのは君たち自身なんだから」

「えぇ、まぁ」

 

そう、この隔絶結界は何を隠そう1回目の人生で僕と僕の弟子、アイシスと一緒に作った魔法なのだ。

莫大な魔力…それこそ人数百人分の魔力を丸々使ってようやく1分ほど展開できた結界だ。

傭兵として雇われ、戦争で1000人ほどの魔力を頂いたからこそできた奇跡とも言える成功をこうも簡単に1人の人間…かはわからないけど、たった1人で完成させているのが恐ろしい。

 

「どうだ?何かわかったか?」

「いいえ…」

「そうか、ならば答えを教えてやろう」

 

満足そうにうなづいた後、ロスさんは一つの分厚い紙束をどこからともなくだし、その中から一枚だけ紙を取り出し、僕の前に置いた。

 

「これは私が過去にたてた、創造神は複数いる可能性があるという仮説についてまとめたものだ」

 

そう言われてからざっと渡された紙に目を通してみる。

 

内容を一部要約してまとめると

 

「この世界はある種の隔絶結界の中なのかもしれない。私は隔絶結界内部でありとあらゆるものを作り出せることに気がついた。隔絶結界はこの世界から完全に隔絶されていて、創造神すら干渉できない…いわば別世界扱いになるのかもしれない。もしそうだとすれば、私が今生きている世界の創造神もまた別の世界の住人でさらにその世界の創造神もいる…を繰り返していると考えた。今は隔絶結界の維持がそこまで続かず実験ができる範囲が限られているが、隔絶結界に込めた魔力量に応じてキャパが決まり、そのキャパの範囲までなら自由に想像ができることまでわかった」

 

みたいなことが書かれていて、それ以降はさらにめんどくさい話がつらつらと書かれているだけなので興味はあるが今はやめておこう。

ただ、これで答えが出た。

 

「この隔絶結界はロスさんが作った世界で、この世界の創造神たるロスさんはものの創造ができる…と言うことですか?」

「そう、正解だ」

 

『なるほど…ミスリルはどう思う?』

『まず、この仮説はあってるよ。創造神は無数にいる。そして確かに、隔絶結界は創造神ですら干渉できないあたり別世界判定されていると見ていいかも。まぁとにかく、こいつはバケモノで、新たな世界の創造をしてしまう魔法を作ってしまった私たちもまたバケモノだよ』

「君たちにだけは言われたくない言葉だよ」

 

そう言った後も、またロスさんはニヤリと笑い、いつの間にか最後の一つになっていた茶菓子を手にとり食べてしまった。

まだ一個も食べてなかったのに…




〈いろんな設定の説明コーナー〉
〜神(創造神を除く)〜
神は創造神に創造神の権能の一部を創造神が選んだ強い人間をピックアップして与えたことにより生まれた。
しかし、神達は創造神に魂だけの存在にされ、権能を分け与えるかを選ぶ選択肢と、運命を魔物によって変えられぬよう何でもいいから一つの魂を選び、それと融合し魔物を殲滅するという使命を与えられ、世界に送り出された。

ミスリルたちのような神は最古の72柱で、その72柱が魂と融合させられてから少しの間は新たなる神は生まれてこなかったが、世界の文明が発達するごとに神が増えるようになってきた。今では72柱どころではない。

基本的な神の権能は、シトリーを例とすると、風の神なので風に関する全ての事象を操作ができる。そして、神の権能のみに許されるのがその事象の創造。
シトリーなら風の創造が可能。
ただ、アリスのような概念に関する権能は創造はできない。

ミスリルは序列16位、力の神としてテスの魂と融合した。融合してから2215年
シトリーは序列12位、風の神としてエリーの魂と融合した。融合してから314年
アリスは序列9位、勝利の神としてリリアンの魂と融合した。融合してから29年

アシューは序列7位の炎の神アモンの権能から力が与えられている。
キールは序列14位の氷の神レラージュの権能から力が与えられている。
レイラは序列61位の武の神ザガンの権能から力が与えられている。
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