森の探索が終わってすぐ、さっきからミスリルの反応がないのを不思議に思い、何度か話しかけてみるも、うんともすんとも言わない。
『うん。すん』
言ったわ。
で、なんで反応しなかったの?
『いや、さっきの森の出来事、あのガイアウルフがバラバラになる瞬間。グルーシャの力の気配がした。一瞬だけだけど。そして、もしかしたら神に愛されるものなのかもしれない。呼びかけて見たけど反応がないから確証はないけど』
なっ!
本当に?もしほんとならなんの能力だったの!?
『ごめんだけど、ボクにはそこまでわかんなかった…』
そっか…いや十分。ありがとう。
『ん。役に立てたようでよかったよ』
そうか…グルーシャ。しかも神に愛される者…僕と同じ。
近くにそんなやつがいる。
危険だな。これ以降あの森には近づいてはならないな…
「テス。プルチネルラ学院に入らないか?」
「どうしたの母さん?」
「いや、な。グルーシャである以上。あそこほど安全面が完璧な場所は他にはない。何せ、あそこには『勝利の女神ヒエル・シュバイト』がいるからな」
ヒエル・シュバイト。
聞いたことのない名だな…27年前には名が上がらなかったやつだな。
「勝利の女神さんはどんな人なの?」
「あの人は現世界最強のグルーシャで、今まで多くの戦いに参加してきたが、負けたことが一切ないから勝利の女神という異名がついた人。エルフらしいが、エルフの中でもずば抜けて魔力量が多く、魔法だけでも多くのものをねじ伏せてきた。グルーシャの力は不明だが、グルーシャであることは間違えがないらしい」
ほーう。
そこまで強い人があの学校にいるのか。
『面白そうだね。久しぶりにあの学校へ行かない?』
そうするか。父も母もそれを望んでいるし、あの学校なら実践練習がしやすいからいいしな
「わかった、僕あそこを受験するね。階級は3級でお願いしていい?」
「なっ!?3級だと!?無理だやめておけ!」
父さんが全力で否定する。今の3級はそんなに強いのかな?
「大丈夫だよ。受験まであと数日でしょ?今からでも十分勝ち残る自信があるし、心配しないで」
「そうか?」
「それに、あの学校は、受験した級に受からなくても、相当するところに入れてもらえるんだから、問題は全くないはずだよ」
「それはそうだが…」
「それなら1番高い場所に行くしかないじゃん。てことでよろしくね?父さん母さん」
そう言って僕は自室へと戻って行った。
『ねぇねぇ。今の3級ってそんなに強いのかな?』
うーん。よく知らないけど、一定の強さの基準が変わってさえいなければ余裕で合格できるでしょ?
『それは間違えないね。あと、その勝利の女神も気になるし、楽しみになってきたね』
テンションの高い声でミスリルが頭の中で叫ぶ。
僕もその叫んでるミスリルに同感で、どんなふうに変わっているかがとても楽しみだ。
◆◆◆◆◆
「頑張ってこいよ。テス」
「任せて、父さん」
「私たちも見てるから、頑張ってね!」
「しっかりみててね。母さんじゃあ、行ってきます」
「「いってらっしゃい」」
父と母に見送られ、学園の門をくぐる。
そこには広い道路があり、奥には城にしか見えない校舎と寮が一緒になった建物がある。
川の上の橋を渡っていると、どこからか風が吹いて、甘い香りを運んでくる。
辺りをキョロキョロしていると、少し奥にパン屋が見えた。
匂い的に蜂蜜か何かの匂いのようだ。甘く、食欲を刺激する匂いにうっとりしていると、ドンと誰かにぶつかった。
「ごっ、ごめん!大丈夫?」
「んーん。私の方こそごめん。もうちょっと前見て歩けばよかったね」
ぶつかった子は、綺麗な銀色の髪と吸い込まれそうになるくらいきれいな青い瞳を持つ女の子だった。
見た感じ、僕より少し年上っぽい見た目だから同い年だろう。
「君は?」
「私はエイリス・トレイス6歳。エリーと呼んで。君は?迷子かな?お父さんとお母さんは?」
「僕はテス・バークソン。言っておくけど僕の年齢は君と同じで6歳。エルフとのハーフだから成長が遅いんだよ」
「なるほどね。さっきの言葉は聞かなかったことにして?あらためて、これからよろしくねテス」
「こちらこそよろしくね。エリー。早速だけど、一緒に会場まで向かわないかい?」
「いいわよ。案内してあげるわ」
そう言ってエリーは僕の手を取り、引っ張って行ってくれた。
ここにいるということはプルチネルラ学院の受験者でしかないのはお互いにわかっていたため何も言わなかったが、出会っていきなり手を繋ぐなんて、幼いからできることなんてわかってるんだけど、同い年の女子と手を繋ぐのは少しドキドキした。
『エリーちゃん大胆!!でも、テスは僕のだから絶対あげないもんねー!!』
ドキドキしてる心も、この神のせいで一気に冷めた。
うるさい
『ひどっ!!!?』