ちょっと性格の悪い魔術師が「記憶消去魔術」を使えたら   作:ジョク・カノサ

29 / 35
夜明け

 事態の処理を終えてヘレンを言いくるめた後、俺達は何事も無く拠点へと戻り、そこには律儀に焚火近くの壁に寄り掛かり見張りを全うしていたトゥエンティが居た。

 

 拠点は静かであり、木が弾ける音と微かな虫の声だけが響いている。どうやら、本当にあの戦いはここまで届いてなかったらしい。他の二人も他の部屋で変わらず休息を取っているようだった。

 

 トゥエンティにはヘレンと同じく、盗賊達の存在をリスティアとミカエルから隠すように要請。理由はヘレンに使ったモノと同じだ。トゥエンティは少し考えた末にこれを了承した。

 

 ……俺がトゥエンティに見張りを任せてから不自然に空いた時間。ここの言い訳は特にしていない。俺が盗賊達を結果的にどう処分したのかも伝えていない。が、ヤツにそれらについて聞いて来る素振りは無かった。

 

 コイツの目的は恐らく魔王討伐と俺達の監視と報告だ。前者さえ達成出来れば道中の些事、偶然出くわしたタイヨウの仔にも関係ないであろう盗賊二人の結末なんてどうでも良いのだろう。俺と連れ立った勇者であるヘレンが特に変化も無く帰って来たことには注目していてもおかしくはないが。

 

 その後に休息していた二人を起こし、トゥエンティを含めた俺達三人は朝までしばしの休息を取った。

 

 そして夜が明けた後、森を出発する段階でリスティアが二人組についての話題を切り出した。俺はリスティアとミカエルに対し、お前達が起きる前に一度様子を見に行ったが居なくなっていた。どうやら夜の内にどこかへ行ったらしい。だから俺達以外の旅人と行動を共にして人数を誤魔化すのは諦める。

 

 そう説明し、二人は特に怪しむ素振りもなく納得した。元々あの二人は盗賊であるという事前情報なしに見ても怪しかった。怪しい二人組がなぜか夜の内に消えた。二人にとってはそれだけの話であり、なぜかに(こだわ)る必要も無い。

 

 ぶっちゃけ人数を誤魔化すのはそこまで重要な事じゃない上に、別にアイツらが居なくても出来るからな。

 

 そうして、あの二人の存在は俺達の旅から消え去った。事情を知る二人の内トゥエンティは相変わらずのノーリアクション。ヘレンは嘘に加担している事に痛みを感じているのか、若干表情が暗い。

 

 だがそれもすぐに解消されるだろう。盗賊二人と森の中で遭遇なんてのは出来事としては平凡で、それキッカケで心境に大きな変化が起こった訳でも無く、嘘も大した嘘じゃない。これからの旅がすぐに塗りつぶして、罪悪感は薄れて嘘をついたという事実すら記憶の片隅に消える。

 

 俺もすぐに忘れるさ。というか既にあの二人の名前がおぼろげだしな。竜を捕獲出来なかったのは、今でも少しは惜しいが。




短いので幕間的なアレです。次回からはメルクーア編になります。
加えて話のストックが切れたのでどこかしらで毎日投稿は出来なくなるかと思います。その場合は最低でも一週間に一話を目標として投稿していきたいと考えているので、気長に見て頂ければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。