今年もよい一年となりますようお祈りします。
中央歴1639年1月24日18時
クワ・トイネ公国 マイハーク沖北東70㎞
クワ・トイネ公国海軍第二艦隊所属の軍船ピーマは突如と出現した未確認艦隊の臨検のために帆をいっぱいに張って、太鼓の音に合わせオールをこぎ、航行していた。
軍船ピーマの船長であるミドリは、単眼望遠鏡で未確認艦隊の先頭にいる艦を見ながら、乗組員に戦闘態勢を命令した。乗組員全員が、革の鎧をまとい、弓の準備をし、いつでも戦えるように待機した。
「船長、未確認艦隊はこちらの接近に気づいたのか、速度を落としている模様です。」
「そうだな、臨検は私が先頭で指揮する。もしものことがあれば、ミドリにすべて任せる。」
「了解しました。しかし何か懸念することがありますか?」
ミドリが未確認艦隊中央にいる大型艦を凝視したまま顔を動かさないでいた。副船長も、大型艦を注視する。皆が黙り、誰かが喉を鳴らすほど緊張感が漂う。しばらくしてようやく気付いたピーマは、あまりの大きさに絶句した。
「副船長...あれは我々が見てきたどの船よりも...いや、船そのものの基準を超えていないか?」
「は...い...私もあれほどの船を見たことがありません...」
ミドリもまた絶句しており、なんとか絞り出した会話だった。
「船の上には、白地に赤い丸が描かれ、下が青色に塗られている旗なんて見たことないぞ。」
「どの船にもついていますね。私は研修で一度パーパルディアに言ったことがありますが、一隻一隻がパーパルディアの船より大きいです。」
軍船ピーマの隣を大型艦(軽巡洋艦ネノジマ)が通り過ぎて行く。
気づけば艦隊中央におり、艦隊の中で特に大きい船(二等戦艦ラスカル)の隣まで来ていた。その大型艦から明滅する発光が何度かあったが理解できず、何かの攻撃かと身構えたら、大型艦の乗組員が笑顔で手を振っていた。
「どうやら、彼らは敵意がないようだな。」
「そのようですね。」
「これより!同船の臨検を行う!諸君らは私の指示、もしくは攻撃しない限り決して、こちらから攻撃してはならない!また、相手国は新興国の可能性が高い!失礼のないように!」
「は!」
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ラバール連合王国海軍第七艦隊副旗艦 ラスカル
戦艦ラスカルは「重巡洋艦キシジマ」「軽巡洋艦ネノシマ、ハシダテ」「駆逐艦キシナミ、エノナミ、カワナミ」随伴艦として、輪形陣を組み航行していた。
水上電探で補足した小型船を異世界の艦艇と断定し接近した。小型船を目視した乗組員は興奮気味に報告した。
「前方200(20㎞)に小型船と思しき艦艇を発見!おそらく電探に映った小型船と思われる!」
ラスカル艦長のオセットは部下に指示する。
「小型船を我が艦に招待せよ。おそらく臨検だ。総員臨検に備えよ。」
「は!しかし艦長、言語の壁が問題となりますが...」
「そうだな、そこが問題になるな。」
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戦艦「ラスカル」に乗艦したミドリ率いる臨検隊は啞然だった。
見るからに高い艦橋、とてつもなくデカい大砲、ハリネズミのごとく突き出ている小型砲、どれを見ても、自分たちでは真似ることも、作ることもできない代物でできていた。おまけに甲板も広く直線上で騎馬戦ができるほどだった。
(なんなんだ...この船は...)
そう思っている間に、臨検隊(ミドリ)が話をする相手だろう、黒色のしっかりとした服を着た人と、白色の服を着た人が近づいてきた。
「私はクワ・トイネ公国第二艦隊所属、軍船ピーマ船長ミドリです。ここは我がクワ・トイネ公国の近海であり、このまま進むと我が国の領海に入ります。貴船の国籍と航行目的を教えていただきたい。」
担当者たちとその周囲の者たちが、驚く顔をする。
「なんと!ラバーリア語が通じるのですね!」
ミドリは理解できず首をかしげる。
担当者は気にせず続けた。
「失礼。私はラバール連合王国外務省のタナカと申します。貴国はクワ・トイネ公国という国名なのですね、突然ですが、我が国は貴国と交流を持ちたいと考えております。状況によっては国交締結まで視野に入れております。貴国の担当者にお取次ぎいただけると幸いなのですが。」
「なるほど、貴国は一国の使者、というわけですね。」
「はい、そうです。後ろの皆さんも緊張なされていますが、攻撃などの敵対意思はありませんのでご安心ください。」
「わかりました。その旨を本国に報告します。それと一つお尋ねしたいことあるのですが、今日の朝方にマイハーク沖上空に現れた騎は、貴国の騎士でしょうか?」
「騎士?...あ、我が国の『USU-3』の事でしたら、左様でございます。その件については、改めて公式に謝罪をお伝えしたく存じます。」
(ユーエスユースリイ?聞いたことのないな...)
「我が国は突然、この世界に転移しましたので、周辺に何かないか確認するべく哨戒機を飛ばしておりましたので、大変ご迷惑をおかけしました。」
国ごとの転移を聞いたことのなかったミドリたちは疑問に思ったが取りあえずありのまま報告することにした。
「わかりました。そのことについても本国に伝えますのでしばらくお待ちください。」
「何日くらい待てばよろしいでしょうか?」
「いえ、魔信で本国に伝え、判断を本国に仰ぎますので、少々お待ちいただくだけで結構です。このようなことは、我々では判断しかねますゆえ。」
「ほう…通信手段があるのですね」
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クワ・トイネ公国 経済都市マイハーク
会談場所となった首都クワ・トイネに向かうため、艦隊を停泊するべくマイハーク港に向かった。マイハークでは、ラバール艦隊の来航により、大混乱となっていた。イーネ団長率いるマイハーク防衛騎士団が各所を奔走し混乱を収束させているため、次第に落ち着き大事には至らなかった。
タナカ率いる外交団は馬車に乗り道中、宿に泊まり日を跨ぎながら、首都クワ・トイネに向かった。
クワ・トイネ公国 首都クワ・トイネ 政府官邸
政治部会での報告の数日後のラバール連合王国の外交団の来る日に、首相のカナタや外務卿のリンスイ(その他数人)が会談に出席するため応接室で、ラバール連合王国の外交団を待っていた。会談始まりは1月26日の10時頃からだった。
コンコン
「どうぞ」
ガチャ
扉が開くとタナカとその他複数の役員が入ってくる。
「初めましてラバール連合王国外務省のタナカです。本日は、急な訪問にもかかわらず、首相自ら対応してくださり誠にありがとうございます。」
「ええ、こちらこそ本日はよろしくお願いします。」
「では、この会談の司会を務める外務卿のリンスイです。それでは会談を始めさせていただきます。早速なのですがラバール連合王国の皆様、今回は貴国の来訪目的をお伺いしたい。」
「はい、その前に先般、我が国の哨戒機及び艦隊の領空・領海を侵犯したことを謝罪したく考えております。」
(やはり彼らのだったのだな。)
カナタは笑顔を以って謝罪を受け入れた。
「貴国からの謝罪を、公式に受け入れます。」
「ありがとうございます。それでは、我が国についてご説明させていただきます。」
「まず資料を配布いたしますので少しお待ちください。」
資料が配布され、それを見たリンスイは顔をしかめた。
「見たこともない字で、読めませんぞ。あなた方は大陸共通語を話しているようだが、この文字は違うな」
「左様ですか、では言葉で説明いたします。」
「まず我が国は.......
その後、ラバール連合王国の国土面積、軍事力、国の歴史を話した。
「ご清聴ありがとうございました。ここまでで何かご質問がある方はございませんか?それでは、クワ・トイネ公国との国交樹立についてご説明させていただきます。現在我が国は、食糧難となっております。転移前は、合わせて年間7000万トンの食糧を輸入していました。ですので、それら食糧の輸入を行いたいと考えております。勿論すべてではありません、貴国の可能な限りで構いません。それらに見合った対価を支払う準備はできています。」
カナタ首相は資料(急遽クワ・トイネ側の方にお願いし大陸共通語にしたもの)を読み話す。
「さすがに3億人近くの人口だとこれだけの量はすごいですね。年間7000万トン位、食料自給率を100%を越える我が国では問題ありません。全ての品目を輸出できますよ。」
「本当ですか!?」
「ええ、我が国クワ・トイネ公国は、ほとんどの領土が大地の神の祝福を受けているため、種を植えれば何もしなくても作物が育つのです。しかしその大量の食量を輸送する手段を公国は持っていません。」
「それに関しては、我が国が公国に資金を出し、輸送手段の鉄道や港湾施設などの整備、増強をすることが可能です。」
「なんと!是非ともよろしくお願いします!」
「それと、もう一つ。我が国と帰国の間に安全保障条約を結びたいと考えております。」
「安全保障条約ですか?」
「その、安全保障条約とやらを結ぶとこちらにどの様なメリットが?」
「はい。この条約が結ばれますと、貴国に脅威が迫ったとき貴国に代わって我が国が守るというものです。また、貴国の軍隊の強化につながる軍事訓練などを行います。」
「なるほど...。実は、我が国クワ・トイネ公国は隣国のロウリア王国と緊張状態が続いておりますので、こちらとしましては願ったり叶ったりなのです。ですので是非結ばせていただきたい。」
「わかりました。それでは、こちらにサインを」
こうして、ラバール連合王国とクワ・トイネ公国は
その後、クワ・トイネ公国の隣国、クイラ王国にも同様の条約を結んだ。
次回予告
ラバール連合王国の大陸進出により、大きく変わる
次回、ロデニウス大陸
*あくまでも予定ですので変わるかも