今と昔で変わった喫茶店で、看板娘と元居候が出会った   作:ボルメテウスさん

2 / 15
カレー

 店長からの買い出しを頼まれた千束は重い荷物を両手に持ちながら、リコリコへと戻る為に歩いていた。

 

 そんな彼女の目の前に、ふと見覚えのある人影が見えた。

 

 首を傾げながら、ゆっくりと近づくと共に。

 

「あぁ、やっぱり五代さんだぁ!!」

 

 千束は大きな声を出すと共にその人影に向けて大きな声を出す。

 

 

 

 その言葉に五代は後ろに振り返る。

 

「あれ、もしかして千束ちゃん?」

 

 その言葉と共に、五代は振り返る。

 

 彼はいつも笑顔を絶やさない男だった。

 

 最近になって日本に帰ってきた冒険家らしい彼は、相変わらずのマイペースさを見せていた。

 

 その事に呆れながらも懐かしさを味わう私。

 

 そんな私の目の前にいる五代さんはニコニコしながらこちらを見てくる。

 

 そして、私はふと思ったことを彼に聞いてみた。

 

「そういえば……どうして日本に帰ってきていたんですか?」

 

 私がそう聞くと、彼は顎に手を当てて少し考えるような仕草をする。

 

「えっと……それはね」

 

 何か言いにくい理由でもあるのか、少し歯切れの悪い感じで答える彼。

 

「少しね、気になる事があったんだ。

 

 それに、少し懐かしかったからね」

 

 そう言った五代の表情はどこか寂しかった。

 

 それを見て、千束は五代の人柄の良さや雰囲気を感じ取り、五代に対する好感度を上げていた。

 

 そして、五代と一緒にいることで安心感を得ていた。

 

(ああ……この人は良い人なんだなぁ……)

 

 そんな風に思いながら、ふと買ってきた材料を見る。

 

 喫茶店でのランチメニューの候補として、様々な材料を買ってきた。

 

 その中にある材料を見た千束はとある事を思い出す。

 

「五代さん! 五代さん!」

 

「んっ、どうしたんだ?」

 

「これから、カレーなんてどうでしょうか」

 

「カレー?」

 

 千束からの提案に、五代は首を傾げる。

 

 

 

「えぇ、今、喫茶リコリコでランチメニューを考えているんですけど、今までスイーツばっかりでこういうランチメニューを考えた事なかったの。

 

 だから、元々喫茶店で働いていた五代さんの意見が欲しいんです!」

 

 リコリコの建て替える前の喫茶店ポレポレ。

 

 長年、多くの客に愛された喫茶店であったが、店長であった飾玉三郎が歳で働けなくなった事をきっかけに店を閉める事に。

 

 その際に千束が聞いた話ではカレーが評判であった事。またそのカレー屋には常連客が多く、店ではお酒も提供している事などを聞く。

 

 そして五代はカレー屋の話題が出た際にふと思い出したように言った。

 

「そういえば……最近カレーを食べてなかったなぁ」

 

 そんな五代の言葉を聞いた千束は「じゃあ、今から一緒に行きましょうよ!」と言う。

 

 しかし五代は少しだけ考える素振りを見せると言った。

 

「うーん、そうだね。

 

 せっかくだから、買い物に付き合ってよ」

 

「え? あぁ……うん、いいけど」

 

「やったね! じゃあさっそく行こう!!」

 

「ちょ!? 引っ張らないでってば!!?」

 

「ほらほら早く行くよ~♪」

 

 その言葉と共に、そのままリコリコへと入店する。

 

「千束が戻ってきました! 

 

 先生、お客さんも連れてきたよ!」

 

 そう言いながら、リコリコの中へと入っていく。

 

 和風喫茶店の雰囲気があり、店内には畳が敷かれている。

 

「御帰り、お客さんというのは」

 

 そう店長だと思われる泰然と構えた大柄なアフリカ系の中年男性。

 

 黒縁の眼鏡をかけており、そのまま五代を驚きように見つめる。

 

「あぁ、この人は五代雄介さん! 

 

 ここのリコリコが建てる前のポレポレの元居候さんらしいですよ!!」

 

「……そうか」

 

 その店長は驚きを隠せない様子だった。

 

「んっ、とりあえず、すぐにカレーを作ってきますので、待っていてくださいねぇ」

 

 そう、千束はそのまま店の奥へと向かっていく。

 

 その間、五代はそのまま促されるまま椅子に座った。

 

「……君の正体は、彼女は知っているのか?」

 

「それって、まさか、俺の事を」

 

 店長はそのまま五代に向けて、問いかける。

 

 その言葉の意味を知る五代はすぐに目を向ける。

 

「当時から、私も奴らに対抗する為に活動していた。

 

 そして、その最中で君の正体も知った」

 

「そうでしたか」

 

 それと共に五代はゆっくりと息を呑む。

 

「こうして面を向かって会えたのは偶然かもしれないが、ゆっくりしてくれ。

 

 君は、千束にとっては恩人だからね」

 

「それじゃ、10年前のビルで助けた子なんですね」

 

 そう、五代はゆっくりと息を吸う。

 

「ここに帰ってきたのは、本当に日本への里帰りかな。

 

 それとも」

 

「本当は、里帰りにしたかったです。

 

 10年前の戦いを最後にしたかった」

 

 そう言った五代の顔はどこまでも暗かった。

 

 その答えに、店長もまた顔を俯いた。

 

「五代さん! 先生!! 見て見て!!!」

 

 そう、会話している間に、料理をしていたが、何か古い本を持ってきた。

 

「これは?」

 

「なんだか、店の奥にあった本なんだけど!」

 

 その言葉と共に見せたのはスクラップブックだった。

 

 既に20年以上も経過している事もあり、少しボロボロであった。

 

「これ、未確認生命体4号の記事だよね! 

 

 まさか、当時の記事がこんな風に残っているなんて!!」

 

 そう言いながら、千束は笑みを浮かべながら、見つめる。

 

「そうか、おやっさんの。

 

 懐かしいなぁ」

 

 そう、五代もそのままスクラップブックを見つめる。

 

 そこには確かに、笑顔があった。

 

「おっと、そろそろカレーが出来るね! 

 

 待っていてね!!」

 

 その言葉と共に、再びカレーの匂いが立ち込めた。

 

 それはまるで、お腹が鳴るかのような錯覚さえ起こすほどだった。

 

「なんだか、本当に懐かしいな」

 

 そう言いながら、五代は彼女が運んでくるカレーを来るのを楽しみにしていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。