今と昔で変わった喫茶店で、看板娘と元居候が出会った 作:ボルメテウスさん
その日、千束とたきなの2人は、とある依頼を受けて、電車に乗っていた。
トップハッカー・ウォールナットから、同業者のハッカーから命を狙われ、国外逃亡を手助けしてほしいという内容だった。
その依頼者と合流する為に、現在は電車に乗りながら、その目的地まで目指していた。
「いやぁ、それにしてもこうして遠くに行くと、なんだか旅をしている気分で良いねぇ」
「旅ですか。
千束は結構、その話題を出しますね」
「おう、なんだって私も冒険に出てみたいと思っているからね。
まぁ、リコリスである以上、それはできないんだけどねぇ」
そう、呟く千束に対して、たきなは思い出したように言う。
「それはもしかして、あの五代さんの話を聞いてですか?」
「そうそう!
五代さんって、色んな所で冒険しているからね。
聞いているだけでも楽しいんだぁ」
そう千束は笑みを浮かべながら答える。
たきなが、喫茶リコリコで働くようになって、千束と会話をする機会が多かった。
様々な話題が出る千束だが、その中で最も出るのは4号ことクウガの話題が多い。
だが、その話題が出る度に思い出すのは、現在の未確認達が狙う相手。
それが誰なのかも既にたきなの元に情報は来ている。
「千束は、怖くないんですか?」
「何が?」
「あの未確認生命体に狙われる事に」
これまで数々の殺人。そして多くの人々を殺してきた未確認生命体。
既にリコリスの中でも特に戦闘能力が高いファーストを46人は殺している。
つまりは、千束と同等とはいかなくても、たきなよりも強いだろうリコリスが多く犠牲になっている。
そんな未確認生命体に、何時襲われるか分からない状況において、千束はいつもと変わらない明るい様子だった。
その事に、たきなは疑問を感じずにいられなかった。
「うん、まぁ怖くないと言ったら、嘘になるよ。
実際に何度も遭遇したから分かるけど、本当に怪物だよね」
「それだったら、なんで」
「クウガがいたから」
「4号が」
その言葉に、たきなは思わず呟く。
「そんなの信じすぎです。
4号は確かに味方かもしれません。
それでも、いつでも助けてくれるとは限りません。
もしも、4号がいない時に襲われたら」
「そうだね、死んじゃうね。
けど、信じるのを諦めても駄目な気がするんだ」
そう言った千束の目は、確かな信頼があった。
それ以上、たきなは何も言う事はできなかった。
「分かりました。
ですが、決して油断だけは。
未確認生命体はどこから狙ってくるか、分かりませんから」
「勿論、油断なんて、できないからね。
奴らは」
そう、千束は警戒するように窓の外を見つめる。
その視線の先に、千束は気づかなかったが、確かにいた。
カサカサと、無数の足と共に、彼女を狙うグロンギの影に。