Reinkarnation & Abenteuer【完結】 作:吾妻原昌孝
「・・・ハッ」
男は、広場のような場所で目を覚ました。
「ここは、一体・・・?」
──俺は、あの時、死んだはずでは・・・。
──なぜ生きている?
しかし、その疑問に答えてくれる者は、どこにもいない。
ため息をついて周りを見渡すと、まるで中世ヨーロッパのような建築が目に入る。
耳をすませば、蒸気機関車の汽笛が、甲高くなっているのが聞こえた。
「空気はあって、しかも美味しい。だが、石炭のような匂いがする・・・ 何が何やらさっぱりわからない」
そう呟き、あてもなく歩き出す。
数十歩ほど歩いた時、男は、農夫らしき人物に出会った。
「あの、すみません」
「んぁ? お前さん、この辺じゃ見ない顔だな。何があったんだ?」
「ここはどこです? そして、今は何年何月何日何曜日の何時何分ですか? 教えてくださると、助かります」
矢継ぎ早に訊いた男は、「しまった」と言う風に口を歪ませる。初対面でこれは、失礼に値する。
だが、農夫は、
「そんなことも知らないのかい。 珍しいこともあるもんだ」
と言いつつ、不機嫌な様子を見せることなく、質問に答えてくれた。
「えぇと、まずここはどこか、か。ここは、『レーンドラ連邦ミズイル』の『ラーダイカ』という町だ。ラーダイカはミズイルの主要都市の一つでな、大体の施設はここにあるんだぜ。小売店とか、駅とか、あと
男は、「仲間会合」という単語に興味を示した。
「その、仲間会合というのは?」
「これはな、わかりやすくいうと事務所だ。いろんなイカれた・・・というと語弊があるが、いろんな奴らが所属しているし、実は俺もその一人なんだ。これがその身分証明証の
そう言って、農夫は会合員証を見せる。だが。
「旧時代?」
男は、農夫の言葉に、引っ掛かりを覚えた。
──旧時代? むしろ今がそうじゃないのか?
このような疑念が、頭から離れないのだ。
男は、ついさっきまで現代文明に触れていた。それこそが新時代であるという考えが、存在していたのである。
「そう。この旧時代というのが、お前さんの知りたがっていた『何年何月何日』に繋がるのさ。今は、R.L.200年。R.L.ってぇのは、このレーンドラ連邦を統一した大英雄の名で、フルネームは『リリーゼ・ルネッサンス・ルグンシ』。連邦で知らねぇ奴はモグリって言われるくらいの有名人だ。彼の死をきっかけに、今の時代が生まれ、それ以前を、俺たちは旧時代と呼んでるのさ」
「なるほど」
「んで、今は7月8日金曜日の10時39分。時計があるのはやっぱり便利だぜ。・・・っと、これで満足かい?」
農夫は、男に確認を取る。
「はい、ありがとうございます」
「行くとこ無いんならよ、仲間会合本部に行って、登録してきな。住居も支給してくれるし、お得だぜ。こっから4つ目の角を曲がった先にある」
仲間会合への行き方を、男は教わった。そして、農夫に向き直り、
「何から何まで、本当にありがとうございます」
と礼をした。農夫は、
「いいってもんよ。困った時はお互い様、ってな」
と、笑って返した。
さて。
農夫と別れた男は、仲間会合本部に足を踏み入れた。
「ええと、受付受付っと・・・」
受付は、案外すぐに見つかった。なぜか男には、この世界の文字が読めたのである。日本語に訳すと「受付」と書いてある。そんなものを見れば、いやでも気づく。
「あのう、すみません」
「いらっしゃいませ。登録ですか? 見ない顔ですが・・・」
「はい、そうです」
受付嬢に話しかけ、二言三言交わすと、
「では、この水晶球に右手を置いてください」
と言われた。
男は、それに従い、右手を置く。すると、水晶球が光り、その下にある長方形の紙のようなものに文字を刻んでいく。
数秒して、光は収まった。
「この内容で間違い無いですね。では、お渡しします」
そう言って、受付嬢(名を、ジョゼフィーヌ・テクケ・ウラメイデンというらしい。名札にそう書いてあった)から会合員証を渡される。
そこには、こう書いてあった。
バルジャマン・アルプス・メネレウス 17歳
使用可能技能 なし
と。
「一応説明しておきますと、階級というのは、依頼の達成によって貯まる星の数によって決められるもので、30まであります。使用可能技能とは、呼んで字のごとくですね」
「はぁ。ところで、バルジャマンというのは?」
男には覚えのない名前だが、
「あなたの名前でしょう。馬鹿なんですか? 鶏ですか?」
と一蹴されてしまった。
「魔法も、学べば使えます」
「え?」
男──バルジャマンは、思わず呆けた。彼にとって魔法といえば、RPGのように、レベルアップ(この世界で言えば階級を上げる)ごとに習得できるものという認識である。だが、ジョゼフィーヌによれば、魔法とは、知識をもとにイメージを放出するものであるという。そのため、発動の方法は人それぞれであるという。そして、魔法は、下級、中級、上級の三種が存在するようである。
「──では、説明は以上です」
「ありがとうございます」
そういうと、バルジャマンは、あ。と顔を青ざめた。
「その、ですね。あの、代金などは・・・」
「いりません。うちは、入会金、手数料、年会費全て永年無料が売りですので」
「よかった・・・」
現在、バルジャマンは1メル(メルは、この世界の通貨単位。日本円に直すと、1メル=10円)も持っていないため、助かったというふうに胸を撫で下ろした。
「では、これを」
そう言ってジョゼフィーヌが渡してきたのは、鍵である。
「これは・・・?」
「宿舎の鍵です。家がない、もしくは遠方にあるというのであれば、部屋を無償で貸すことになっておりますので」
「そうなんですか・・・。本当に、ありがとうございます」
「職務として当然のことですので」
愛想のかけらもないが、ジョゼフィーヌの説明は、わかりやすかった。
そして、宿舎は、仲間会合本部から歩いてわずか13歩の場所にある。バルジャマンの部屋は、3階の308号室である。
「・・・広いな。一人暮らしにしては広い」
そこは、10畳(寝室除く。寝室含めて19畳)という、圧倒的広さを誇る空間であった。ベランダもあるし、家具も一通り揃っている。トイレや風呂は共用スペースであり、望めば食堂でご飯も食べられる。1階には魔導書を所蔵した図書館もあり、まさに新人向けと言えよう。
この日、南来細異は、バルジャマン・アルプス・メネレウスとして、第二の人生の、第一歩を踏み出したのであった。
説明回みたいになってしまいました。今回出た設定は、決してこれを崩すようなことはしません(タグから目を逸らしつつ)。
裏設定ですが、農夫の男の名前は、ファーム・フノウ・トラクタコンバインと言います。
さて次回は、早すぎるかもしれませんが特訓回です。ジープは登場しませんが、そこそこ過酷にしたいと思っております。
ぜひ、楽しみにしてください。
そして、これが2022年最後の投稿となります。来年も、よろしくお願いいたします。
良いお年を、お迎えください。