Reinkarnation & Abenteuer【完結】   作:吾妻原昌孝

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お待たせしましたッ! 文字通りの超展開です。


第3話 Mörder

 ここは、ラーダイカの一角。

 夜は、霧が立ち込めやすい場所でもある。

 そこに、呑んだくれの男が二人、話しながら歩いていた。

「・・・でよ、俺は言ってやったわけ、って、ん?」

 見ると、霧の向こうから、何者かが歩いているのが見えた。

「どしたよ、おい?」

「いや、小汚ぇ野郎がいてよ」

「唾でもかけてやれ」

「そうだな。カーペッ」

 歩いてきた男に唾をかけた呑んだくれ。

 しかし、男はそれを気にしない。

 そして、呑んだくれたちと男がすれ違ったその時。

 

ス                                                                                                                                パッ

 と、音がした。

「おいテメェ、何しやがったよええ?」

「この服、高かったんざよい。弁償しr・・・」

 喚いた呑んだくれたちは、一瞬の間を置いてバラバラ死体となった。

「───斬ったか」

 そう呟き、男は去っていった。

 その場に凶器はなく、凶器で切り付けられたと思えないほどに、その死体の切断面は綺麗であったという。

 男の名は、アルベルト・ハーミリオン・ヒッシュ。殺人鬼である。

 

***

 

 「・・・ッあーーー! 仕事明けの、ちょっといい酒は美味いっ!」

 バルジャマンは、本部内の酒場で、一人酒を飲んでいた。五〇〇メルの、そこそこいい銘柄の酒である。

 基本、この世界におけるビールは、二五〇メルで飲める。五〇〇メルということは、言ってしまえば、安めのワインである。

 では、なぜバルジャマンが、そこそこいい酒を飲めるようになったのか。この世界では、飲酒は、一六歳から可能となっている。そして、現在のバルジャマンは、特訓終了から半年ほど経ち、階級を10にまで上げている。そのため、報酬の良い仕事も、受けられるようになったのである。いや、正確には、受けることができる実力がついた、というべきか。

 それはともかく、チビチビと酒の味を噛み締めるバルジャマンの隣に、中年風の男が座ってきた。

「おぉ、ベルラムさん。どうしたんです?」

「いやな、坊主。こんな噂を知ってるかい?」

「噂?」

 バルジャマンは、ラーダイカの人間と、かなり打ち解けてきた。口調が軽くなっているのは、そのためである。

 ベルラムは、

「アルベルト・ハーミリオン・ヒッシュ。通称『霧裂きヒッシュ』っつうんだが」

「切り裂き?」

「違う、()裂き。ほら、昨日か一昨日、霧が立ち込めてたろ?」

「あぁ、そうですね。それが?」

「出たんだよ、死体が。凶器はなく、そのくせ綺麗な断面でよ、ヤードの連中も手ェ焼いてるみたいだ」

「・・・それと霧裂き、何の関係が?」

「まぁまぁそう急かすな。噂好きの間じゃよ、これがそのヒッシュの仕業なんじゃないかって言われてるんだ」

 それからベルラムが語ったのは、どれもこれも荒唐無稽なものであった。

 曰く、すれ違ったら死んでいた。。曰く、一時期刑務所に入っていたが、入ったその日に、看守含めて皆殺しにした。曰く、凶器を持たない殺人鬼。曰く、死んだことにすら気付けない速さで殺す。そういった噂がついて回るのが、ヒッシュの恐ろしさである。無論、冒頭部分を読んだ読者諸君は、それが嘘でないことを理解していただけるだろう。バルジャマンは、疑っているが。

「ま、そういうこった。気ィつけろよ。明日は、俺かお前、どっちかはたまた両方かが死んでてもおかしくないんだぜ?」

「そう、ですね。気をつけます」

 そうやって、バルジャマンは、ヒッシュの噂を、右の耳から左の耳に聞き流した。

 それを、マフラーを顔に巻きつけた、荒々しい風貌の男が、じっと見ていた。

 

***

 

 翌朝。

 バルジャマンは、仕事を請け負いに、仲間会合本部を訪れた。

「おっはようございま・・・ッ」

 ドアを開け、元気よく挨拶をした彼は、そこで絶句した。

 朝なのもあり、灯りは点いていない。

 そして、足元には、赤い液体が溢れていた。

 目の前を見る。

 荒々しい風貌の男がいた。

 その周りには、骸があった。

 左にも骸、右にも骸、前にも骸。

 骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸骸────骸!!!

「ッ、ァゎ、─────ッ」

 バルジャマンの脳裏に、フラッシュバックが起こる。自身がこの世界に生を授かる切っ掛けとなった事件を思い出したのだ。腹を刺され、頭をタイヤで潰され、内臓がシェイクされた感覚を、血液が溢れ出していく感覚を、頭蓋骨が割れていく感覚を、脳髄がずり落ちる感覚を、首の骨が180度回転する感覚を、首の皮膚が回転したことによって千切れていく感覚を、視界が消滅していく感覚を、眼球が潰れていく感覚を、鼓膜が破れる感覚を味わった記憶が、フラッシュバックした。

「・・・」

 男は、バルジャマンの姿を認識した。

 そして、

「!」

 その命を刈り取ろうと襲いかかってきた。

 そして、この作品は主人公であるバルジャマンが死んでしまったので、打ち切られることになりました。千生鉄斗羅の次回作に、ご期待ください。 ・・・ということにはならなかった。

「見つけたぞヒッシュッ!」

 甲高い男の声が響いた。刹那、バルジャマンの姿は消えた。いや、言葉は正確に使おう。男が、バルジャマンを抱えて、猛スピードで離脱したのだ。

「!」

「追いつかれてなるものかッ! 少年!」

「死にたくない死にたくない死にたくない・・・・・・・・・」

 バルジャマンは、壊れたレコードのように、同じ言葉を繰り返すだけだった。なので、男は、

「仕方あるまい・・・。 トゥーッ!」

「ア゛ーーーッ!」

 人差し指でバルジャマンの額を突き、強引に正気に戻した。

 ・・・荒々しい男から逃走しながら。

「あ、あんたは一体!? というか、なんで逃げてるんです!? しかもなんか風よりも早い足だし、心は炎よりも熱い? いやどうでもいいけど、何が起こったのか説明してくれませんかねぇ見知らぬあなた!?」

「駄目だ」

「駄目!? 嘘でしょ!?」

 説明を求めたバルジャマンだったが、状況が状況のため、一蹴された。

「まぁ、名前くらいは教えておこう。私は、シオン・コウ・ロマンチスト。そして、追ってきているのが、アルベルト・ハーミリオン・ヒッシュ!」

「それって噂の、霧裂きヒッシュ・・・! あぁ、俺はバルジャマンです」

「バルジャマンか、長いからバンと呼ぼう!」

「そんな!? ・・・いやまあ、本名じゃないけどさ

 しかし、悠長に会話をしている暇はない。なぜならば、背後数メートルに、ヒッシュが迫ってきているからだ。

「どこまでにげるんですか!? というか、下ろして!」

「それは無理だぞバン。いまここでお前を下ろしたら、確実にお前は死ぬッ!」

「だったらせめて、お米様抱っこをやめてーーーッ!」

「それも無理だ! 今ここで体勢を変えたら、最悪死ぬッ! よくて半身不随だッ!」

「最悪じゃないですかヤダーーーーッッ!!!」

 そんなコントを繰り広げている間にも、ヒッシュは迫ってくる。

「───!」

 そして、ヒッシュが左腕を水平に振って繰り出すのは、大気をも切断する風刃である。真っ直ぐに、シオンの首を狙っている。

 だが。

「その程度で死ぬと思っているのか殺人鬼ッ!」

 シオンは、無詠唱で防御魔法を発動し、無傷。

 しかし、ヒッシュはそれを読んでいた。

「死ッ!」

 突如シオンを襲う、不可視の斬撃。

 彼の肉体を三六〇度完全に覆っており、逃げ場などない。

「そう来たかッ! だが、所詮は馬鹿の一つ覚え、この程度で私が死ぬかッ! いや、死ぬのはお前だヒッシュッ!」

 そう叫ぶや否や、不可視の斬撃を耳で捉え、その全てを防御魔法で捌き切った。そしてそのまま、指を鳴らして、空中よりギロチンを召喚する。無論、標的はヒッシュのみ。

「え、え、えぇぇ・・・」

 バルジャマンは、状況の変化についていけない。

「よし、今のうちに離脱するぞッ!」

「why?」

「あのギロチンは、日が暮れるまで絶対に破壊されることのないギロチンだッ! もっとも、その程度で奴が死ぬはずはないのだが、気休めにはなる

 説明した直後、シオンとバルジャマンの姿は消失した。

 

***

 

「い、今のは・・・」

「転移魔法だ。ここは、馴染みの教会だ」

 バルジャマンたちは、石造りの教会の中にいる。

 間一髪で、ヒッシュから逃げ仰せたのである。

「しかし、ふぅむむむ」

 シオンは、バルジャマンの顔を穴が開くほどに見つめている。

「どうしたんです・・・? もしかして、ホモォ・・・」

「ホモォとやらではない」

 一応言っておくと、この世界には、いわゆるボーイズラブやガールズラブといった文化は存在しない。そのため、ホモォ、つまるところ腐女子という概念も存在しないため、シオンにはそのネタが通じなかったのだ。もっとも、今回バルジャマンが使用したのは、所謂「アーッ!」な関係を迫る男、という意味だったのだが。

 それはそうとして。

「いや、見れば見るほど、似ているのだよ。我が友、リリーゼに」

「!」

 バルジャマンは、驚愕した。驚きで、声すら出せなかった。

──リリーゼ?

──それって、大英雄リリーゼ・ルグンシのことか?

──でも、リリーゼはだいぶ昔に死んでいるって聞いたけれど・・・

──何者なんだ、この男は?

──いや、その前に。

「・・・ヒッシュ」

「ん?」

「ヒッシュってのは、何者ですか?」

 バルジャマンは、訊く。仲間会合の仲間を皆殺しにした、ヒトデナシが一体何者なのかを。

「ヒッシュ。アルベルト・ハーミリオン・ヒッシュ。神代より生きる、厄災の化身さ」

「・・・は?」




いかがでしたか?
正直、皆殺しはやりすぎたかもしれません。ですが、これで物語は、動き始めます。
・・・なんて大層なことを口走っていますが、実は今後の展望を何一つ考えておりません。
しばらくは、IS二次創作の方に集中するかもしれません。
できる限り、早期に。今年中には、完結させたいと思っております。
ぜひ、感想をお願いします。
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