Reinkarnation & Abenteuer【完結】 作:吾妻原昌孝
そろそろクライマックスになりそうな気がします。最も、行き当たりばったりに書いているので、なんだかんだダラダラやる可能性も無きにしも非ずです。
そうそう、これを書く合間(ただし、週単位)に、「死ね死ね団のうた」を聞いてみました。えげつない曲だなと思いました、まる
「『死に引き摺り込む』って、具体的にどうするんです?」
バルジャマンは、シオンに訊く。
ここは、ラーダイカの国立大図書館。バルジャマンとシオンは、ここで、ヒッシュを殺す方法を探っていた。
「それが解れば苦労はせんよ。わからなかったからこそ、我が友リリーゼは、やつを封じるしかできなかったのだ」
そう言いながら、シオンは、さまざまな伝承が記録されている本を手に取った。
「バン、お前は歴史を探ってくれ。私は、伝承を攻めてみる」
バルジャマンは、少しひいた。
「えー、伝承って・・・。それに、歴史も、役に立つんですか?」
すると、シオンは、チッチッチと指を振った。
「長い年月を生きてきた中で、人間は同じことを繰り返すことを身に染みて解った。つまるところ、人間が同じことを繰り返すのなら、解決法のヒントは過去にあるということさ。それに、伝承だってバカにできんぞ。こういうのは、たいてい事実に基づいたものが多いからな、こういう人智を超えた現象の解決には、大いに役立つというものだ」
「そういうもんですか?」
「そういうもんだ」
「そういうもんなんですね」
バルジャマンは、一応納得し、歴史のコーナーに向かっていった。
この世界には、パソコンなんて物はまだ存在していない。我々の世界で言えば、科学力は産業革命直後といったところか。したがって、本を探すのも一苦労である。
しかも、国立大図書館というだけあって、面積は非常に広い。東京ドーム四個分くらいの広さの十階建に、本がぎっしり詰まっている。つまり、一苦労にさらに一苦労が重なり、Death苦労(死ぬほどやばい苦労)である。
「や、やっと見つけたぞ、れ、歴史コーナー・・・!」
時間にしておよそ5時間。バルジャマンは、ついに歴史コーナーを見つけた。
この、ミズイルという国の歴史書は、全3冊にまとめられている。一冊目は大英雄が生まれる前を記した「先史編」、二冊目は大英雄の誕生から死までを記した「激動編」、三冊目は大英雄の死後、今日に至るまでの歴史を記した「安息編」である。
今回目的とするのは、「先史編」と「激動編」である。大英雄リリーゼ・ルグンシの軌跡を辿るだけならば、激動編だけで問題はない。しかし、ヒッシュの起源は、大英雄の誕生より圧倒的に古いことも考えられるため、先史編に、ヒッシュ打倒の手掛かりが載っていると踏んだのだ。
「よし、これだなっと重!?」
バルジャマンは、片手で、二冊の歴史書を手に取ろうとした。だが、この国の歴史書は、一冊にとてつもない量の内容が描写されている。そのページ数は、先史編一五〇〇ページ、激動編一五六〇ページ、安息編九〇〇ページ(それぞれ、編集後記十ページ含む)。しかも、ハードカバー仕様である。軽くても、一キロを超える重さだ。目的とする二冊は、合計およそ五.五キロ。クソ重いのだ。
「なんなんだよこれ、タイヤより重いんじゃないの!?」
タイヤは、およそ十一キロである。というか、図書館で叫んではいけないことは、読者諸君はよくわかっていることだろう。
「そしたら、これを、シオンさんのとこまで、持ってこう・・・、え?」
バルジャマンに、完全記憶能力はない。そのため、どのようにしてシオンの元からここまで辿り着いたのかも覚えていない。そして、ここまで辿り着くのに、五時間かかった。つまり。
「ウッソだろオイ、日が暮れんぞ」
と言うわけだ。その上、図書館では魔法の使用は禁止されている。したがって、筋力を強化して楽に運ぶこともできない。
「・・・」
バルジャマンは、生気を失った目つきで、歩き出した。
***
「お、来たか。遅いぞバン」
「お゛そ゛い゛て゛す゛っ゛て゛!? た゛っ゛た゛ら゛、し゛ふ゛ん゛て゛あ゛る゛い゛て゛と゛り゛に゛い゛っ゛て゛く゛た゛さ゛い゛よ゛!」
「・・・なんかすまん」
シオンは、ほんの少し罪悪感を感じた。今のバルジャマンは、痩せ細り、汗だらけの状態だ。本は汚れないように最大限配慮してあるが、それ以外は、つまり自分のことは極限まで度外視してここまで辿り着いたのだ、そうなるのも無理はない。
「では、先に私の結果から話していこう」
「たしか、民間伝承でしたよね?」
「うむ、その通り。いやー、さすがは国立だ、たくさんの資料がある。時間がたくさんあったのでな、思う存分に調べられたよ」
「ソレハヨカッタデスネ」
バルジャマンは、思わず片言になった。なぜなら、シオンが調べるのに使った時間=バルジャマンが死にそうな思いで合計約六キロの二冊の歴史書を探し、運んできた時間だからである。
「で、それを纏めたのがこれだ」
と、数枚の紙を差し出した。
「読んでみろ」
「どれどれ・・・」
そこには、こう書かれていた。
*ヒッシュについて
・魔法を使うと現れる
・死なない
・気づけば死ぬ
*死を与えるものについて
・石造りの迷宮に隠されている
・最後の魔法である
・普通の人間なら使う前に死ぬ
大体、こんな感じの内容である。
「・・・」
バルジャマンは、熱心に読んだ。その上で、こう告げた。
「無理ゲーじゃないですかこれ」
「だからこそ歴史書だ」
そんなわけで、十五時間かけて、先史編と激動編から、必要な記述を抜き出し、手がかりを集めた。それは、このような内容である。
*ヒッシュとは?
→先史三五〇年、人類は初めて魔法を使った。その年に、ヒッシュは誕生した。
→魔力が集まっているところに姿を現す傾向にある。
→ヒッシュが現れるのは、レーンドラ連邦のみである。これは、魔法という術を使うのが我々だけだからである。
*この世の理
→原始より、生けるものは死ぬと約束されている。
→事実、ヒッシュを除くすべての生物が、死んでいる。
→この世の理を逸脱したものを矯正する力がある。
→神によって与えられた切り札である。
「・・・むしろ宗教な感じがするんですが」
「言うな。先史編は、本当に歴史書というより伝説をまとめた部分も多いんだ」
簡単に言えば、日本の古事記のようなものである。 ・・・サイタマとはなんの関係も無い。いいね?
「石造りの迷宮、ですか・・・」
「そういえば、聞いたことがあるな。ちょうど、レクの中心部。そこに、石の建造物があるはずだ。まさか、あれがそうなのか・・・?」
シオンには、思い当たる部分があるようだ。
「じゃあ、善は急げと言いますし、行きましょう! あ、本は"一人で"片付けてくださいね⭐︎」
満面の笑みで言う。バルジャマンは、この手の恨みは引きずるタイプなのだ。その執念は、学生時代、貸した十円を返してくれなかったと言うだけで、『地獄の果てまで追いかけてやるから覚悟しとけよクソ野郎』と圧をかけ、千倍にして返済させたくらいである。
「う、うむ。では、それまでここで待ってくれr「いやですよ」・・・そんな殺生な!」
これは、シオンがバルジャマンにいけしゃあしゃあと「遅かったな」といったことに対する恨みである。シオンの自業自得といえよう。
***
五時間と二十分後・レク(駅)
「久しぶりだな、特訓以来だ」
「そうか。私は、数十年ぶりくらいだな。・・・あ゛」
「どうしたんです?」
シオンは、ガタガタと首を振るわせた。
「リリーゼの墓参り、忘れてた・・・」
「え?」
「彼は、ここの生まれなのだ」
「そうだったんですか!?」
「そうなんだ。すまんな、少し時間をくれ! 墓参りに行ってくる」
そう言って、シオンは、大英雄リリーゼ・ルグンシの墓に向かった。
十五分で、彼は戻ってきた。
「気はすみましたか?」
「うむ、すまんな。では、中心部に行くとするか!」
そう言って、歩き続けること十分。
「ほげー、遺跡みたいですねー」
「うむ、なんかそれっぽいそ・・・?」
そう感嘆していると。
「お主ら、ここに入ろうと言うのか? 『死の迷宮』へ!」
老人の声が、背後から聞こえた。
「あなたは?」
シオンが訊く。
「儂の名は、ヴェンラボ・ラティベル・ジオク。迷宮の守人の末裔よ」
「私はシオン、こちらがバルジャマン。ヴェンラボ翁、我々は、まさにこの迷宮に立ち入りたいところなのです」
「ならぬッ!」
ヴェンラボは、一喝した。
「それはなぜです?」
「お主ら、死の覚悟はあるのか? 『この迷宮に入りし者、生者として戻ること叶わず』と伝えられておる。その覚悟はあると言うのか!」
バルジャマンは答える。
「・・・あります。なんなら、一度死んだ身ですから。怖いとは思っていますけれど、ある程度覚悟はできています」
ヴェンラボは、目を細める。
「ふむ、お主、嘘は言っておらぬようじゃのう。よろしい、ならば通るがよい」
「ありがとうございます!」
「感謝する、ヴェンラボ翁」
そう言って、バルジャマンとシオンは、迷宮に突入していった。
***
迷宮に入って数メートルの地点。
そこで、バルジャマンは、敷き詰められた石の一つを踏んだ。すると、カチッと音がなり、
「ぬぅおわ!?」
大量の矢が、襲いかかってきた。
だが、シオンにはいくつか命中したのに対し、バルジャマンには一本も当たっていない。
「・・・? どう言うことなんでしょう・・・?」
「運が良かったのだろうさ」
「そうですよね」
そう片付けた二人だったが。
「のわー、落とし穴の底に槍があ゛ー尻にブッ刺さった!」
「ぐぅぉわ! 炎、炎! 熱いぞ貴様!」
「なんで私ばっかりこんな目にってヴァー! でかい石が!」
「壁が、壁が迫ってくる!」
「目が回るぞ! ・・・お゛え゛ぇ゛」
「チャリオットだと!?」
「グファ、剣!」
「ばべべぶべ! びびば、びびばべびばび!(助けてくれ! 息が、息ができない!)」
と、シオンだけ、迷宮の殺す気満々なトラップに引っかかりまくっているのだ。仕掛けを発動させたのはバルジャマンであるはずなのに、なぜなのか。その答えは、最奥部にあった。
「ふぅ、やっと辿り着いたか。長かった・・・」
「その怪我の数々、ご愁傷様です」
すると、最奥部の祭壇の宝石が光り、魔法で録音されていたのであろう音声が再生され始めた。
『ここまできたか、後世の若き者よ。いや、年老いたものかも知れぬな。我が名は、フォエボス。もしシオンがいるのなら、ま、ザマアミロといったところか。奴は、確実に大怪我をする男だからな。
さて、ここは一体何か。それはな、死を体感するための場所だ。道中、何度も命の危機に瀕しただろう? それはそうだ、あの罠を無傷で潜り抜けられるのは、それこそ一度死んで蘇った者くらいだ。そして、この宝石こそが、その鍵だ。死を与えるためのな。だが、この宝石だけではダメなのだ。死を与えるには、自分がそれをわかっていなければならぬ。だからこその、あの罠の数々。それについては、詫びておこう。だが、これを突破した者ならば、きっと、死を与えられる。
達者でな』
再生が終わった。
「フォエボスのやつ、こんなものを作っていたとは・・・」
「フォエボスって、一体?」
「奴もまた、リリーゼ・ルグンシの仲間だ。ヒッシュを封じた後、どこかに消えたと思っていたら、そうか、こんなものを・・・」
「いい人だったんですね」
「うむ。だが、煽ったことは許さん」
「まあ落ち着いてください。これで、切り札はゲットできたんですから、さっさとヒッシュを倒しましょう!」
「うむ、そうだな」
そう言って、二人は、迷宮を出た。
いかがでしたか?
このために、異世界転生という要素を使ったと言って過言ではありません。
次回は、ヒッシュとの決戦となる予定です。
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